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「さくら」(2020)家族の悩みを全て食べたサクラ、便秘は当たりまえ!

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原作が西加奈子さんの同名小説、出演者が若手ホープ北村匠海小松菜奈吉沢亮さん出演ということで観ることにしました。原作は未読です!

サクラと名づけられた一匹の犬と長谷川家の5人家族(長男、次男、長女)と、彼らそれぞれにとって大切な人たちと繰り広げる、日々の幸せ。そんな生活が長男の事故で崩れていくなかで、サクラの存在で再生されていくというハートフルな家族の物語。次男の回想として語られます。

西さんらしい突飛な?エピソードと感性で、“家族の絆や愛の本質”を衝く作風がよく出た作品だと思いました。初めて西さん作品に触れる人には違和感があるかもしれません。(笑)

西さんの世界を表現することは難しい!特に“独特のセリフ”。次男が語部として、小説の言葉?をそのまま持ってきたのはよかったと思います。

監督:「無伴奏」の矢崎仁司、脚本:朝西真砂、撮影:石井勲、音楽:アダム・ジョージ、主題歌:東京事変「青のID」

出演者:北村匠海小松菜奈吉沢亮寺島しのぶ、長瀬正敏、小林由衣(欅坂46)、水谷果穂、山本花純、加藤雅也、趙珉和、ちえ(犬)。


映画『さくら』予告(60秒)2020年11月13日(金)全国ロードショー

あらすじ(ねたばれ)

兄長谷川一(吉沢亮)が自殺で亡くなって2年。兄の自殺で家を出た父・昭夫(長瀬正敏)が年末に帰ってくつというので、大学生の次男薫(北村匠海)が実家に戻ってきた。玄関に父の靴があったが中に入らず、犬のサクラを連れて散歩しようとする。が、先に父が連れ出していた。ふたりは会っても話をしないが、サクラで繋がっている。家族全員がサクラと繋がっている。

サクラは12歳、狭い家から広い家に引っ越したときが春で、サクラの花びらに因んでサクラと名付けた。サクラは何も喋らないが家族の喜びも悲しみ全て知り、全てを受け入れて尻尾を振ってくれる!

夕食は鍋料理。父はビールを飲む。母・つぼみ(寺島しのぶ)が「お父さんにビール!」と促すが、薫がビールを注ぐことはない。が、長女の美貴(小松菜奈)が愛想よく注ぐ。これにはある秘密があった!

昭夫はトラック運送会社に勤務し、運転手に的確に進路を伝えるのが仕事。これがとても恰好よく、子供たちには自慢の種だった。

ここからは、薫による家族の回想という形で描かれ、ナレーションは北村匠海さんです。

昭夫が“つぼみ”をデートに誘って、出てきた料理が餃子だった。つぼみは「食べられるような関係になったら・・」と食べたいのを我慢した。この想い出から、長谷川家の元旦は餃子!(笑) “出来た婚”で、最初のセックスで出来たから長男が一(ハジメ)。美貴は美しく愛おしく生まれたので、頑固でわがままだ!(笑)

前の狭い家に住んでいたころ、美貴が母と父のあのときの喘ぎを耳にして、朝食時「あの猫みたいな声なんなの?」と聞く。母は「お父さんが好きで、ふたりが魔法を出し合って、あなたが生まれてきたの!」とかなり詳しく性教育します。(笑) これが西さんの面白いところ!

美貴が産まれたときには、兄と一緒に花をプレゼントし、大きくなって“変なおじさん”フェラーリ(趙珉和)に絡まれそうになると必死に守った。三人は同じ部屋で寝ていた。新しい家に引っ越して、それぞれに部屋が与えられたが、美貴は兄と離れるのを嫌がった。こんなときにサクラがやってきて家族の一員に加わった。

兄は少年野球で活躍。家族みんなで応援した。美貴が大きくなり、ある夜、兄がそって美貴の手を解いて自室へ出て行った。「大人になることはひとりで寝ることではなく、寝れない夜を過ごすことだ」と思った。

高校生になり、兄は野球部のエースで活躍し女生徒の憧れの的。薫は自分を隠したい気持ちだった。

兄が恋人・矢島優子(水谷果穂)を家に連れてくるという事件が起こった。矢島さんは母とふたり暮らしで、訪ねてくる男に暴力を加えられるという。ちょっと暗い感じの子だった。昭夫はきれいな子だと気にいっていたが、美貴は兄を奪われると徹底的に嫌がった。しかし、矢島さんもサクラに触れることで柔らかくなり、薫は恋という力を知った。兄が「矢島は初めてでない」というのを聞き、自分も女性は欲しいと感じた。

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こんなときにサキコという名の差出人から手紙。母つぼみが狂ったように夫・昭夫を問い詰めた。昭夫の同級生・溝口先史(加藤雅也)からのもので、彼はオカマだった。家族でオカマバーを見学。母は安堵し上機嫌だった。(笑)

このサキコから「父母より好きな人が出来るよ!いつか父母に嘘をつく日が来る。嘘をつくときは愛のある嘘を!自分も苦しい、愛のある嘘をつきなさい」と教えてくれた。オカマだからと偏見を持ってはいけないと思った。これ以来、矢嶋さんがやってくると美貴の嫌がらせは激しくなった。

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雨の日、帰校時足をくじいたという須々木原環(山本花純)に出会い、家まで送って初体験した。彼女はゲンカンというあだ名で学業トップの子。廊下で会うと「ワークアップして!」とカラーのコンドームを渡された。(笑) 兄に相談すると「おめでとう」と祝ってくれた。しかしこれは父に見つかった。

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突然矢嶋さんの引っ越しが決まり、兄は悲しい別れをした。薫は何か兄のためにと思ったが何も出来なかった。兄は矢嶋さんからくる手紙を生きる力にしていたが、届かない。兄は活気を失くし、大学の寮に入ると家を出て行った。この日、美貴は部屋から出てこなかった。

美貴はバスケ部に入り、大友カオル(小林由衣)と出会った。ふたりの意気投合ぶりは評判になり、「レスか?」と噂されるようになった。噂するやつを見つけると美貴がキックで攻撃。(笑) 

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夏休みに兄が家に帰ってきた。美貴が大喜び。「サキコさんに矢嶋のことで相談すると、自分で会いに行け!といわれ、バイトで稼いでいる」という。「電池を買ってくる!」と夜の町に飛び出していった。このとき美貴から女の匂い、切ない匂いを感じた。

この夜、サクラは世界中から危険が迫っているように哭いた!

兄が車に跳ねられ、顔面の半分と片足を失い車椅子生活という大事故に見舞われた。こんな兄に美貴は子供のようにまつわりついていた。薫はゲンカンに好きな人が出来たので別れた。

退院して家に戻り、兄は玄関までの石段を車椅子で上がろうとしたが、上がれず泣き、近所の子供が顔を見て逃げる姿に絶望した。笑うことが無くなって父とも衝突するようになった。

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美貴の高校卒業式。カオルが驚くことをやってのけた。壇上で卒業証書を受け取ったあと、マイクを持って「私は長谷川美貴が好きです!」と美貴への想いを語った。美貴は進学せず、車椅子の兄と一日中一緒だった。兄はいつも直球を投げるが、神はいつも変化球を返すと嘆いた!

兄は早朝にサクラを連れて公園に行き、サクラの鎖で首つり自殺した。

美貴がランドセル一杯の矢嶋さんからの手紙を持ってきた。美貴は矢嶋さんが引っ越した以後、兄に出した手紙を隠し持っていた。薫が美貴をぶん殴った

葬儀の席で、美貴が正気を失い、焼香で失禁する始末。こんな美貴に、会葬者のなかからきれいな子という声が聞こえた。薫はこいつを殺したいと思った!

父はランドセルを背負って家を出ていった。美貴は兄の思い出だけで生きていた。家族を励ましてくれたのが溝口先史だった。薫は母と美貴、サクラを残して東京の大学に進学した。

2年ぶりに戻ってきた父と薫。家族で一の墓参り。美貴は兄の墓に手を合わせない。家に戻り、母が夕食準備しているとき、サクラが異変。父の運転で、動物病院を探して街中を駆け巡る。車の中で美貴が「お兄ちゃんのようにならない。好きな人が出来たらすぐ結婚する。お兄ちゃんは笑って死んでいった。お父さんもお母さんもお兄ちゃんは死んだけど、やっぱり生まれてよかったでしょう!」と言い、みんな泣いた。

薫は兄の姿を思い出し、神様は打てないボールばかり投げて打てないと言うが、泣いたり笑ったりしてこちらが悪送球した玉を全て受けていた。受けていたのは近くに居るのではないか、サクラだ!と思った

スピード違反でパトカーに掴まった。その時、サクラが詰まっていた便を排泄!」(笑) 皆で笑った!

感想:

仲のよい夫婦、この夫婦から生まれたよく出来た長男・一とその陰にある薫、そんな一に憧れる長女・美貴。突然に自殺で亡くなる一。これで苦しむ家族の葛藤。こういう話はよくある話、それだけに自分を重ねて観ることが出来ました。この家族の物語は普遍的なものです。

一、薫、美貴の三様の恋物語も面白い。恋とはどうあるべきか、好きになったら即告白、沢山子供を産むという美貴の告白。オカマのサキコを出してきて、ジェンダーの問題に触れるのも西さんらしい。

ラストシーン、狭い車の中で、一の想い出に涙する家族、一はそれぞれの胸に生きていることを確認。このことが、本作が、薫の家族を回想する形で出来ている所以だと思います。

そして便秘の犬・サクラが漏らす糞とともに詰まっていたそれぞれが抱える葛藤を吐き出すという結末は爽快でした。何よりも家族の悩みを全て食べたサクラ、便秘は当たりまえ。(笑) 家族には犬でも猫でも良い、動物が必要です。

出演者の皆さんの演技とてもよかったと思います。特に夫婦の性を説くつぼみ、寺島しのぶさんだから何の違和感もない、適役でした。小松菜奈さん、大変難しい役でした。もう中学生は無理、高校になって本領発揮でしたが、制服はもう無理ですね!(笑) 西加奈子原作による骨太の家族の物語でした。

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