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「泣き虫しょったんの奇跡」 (2018)

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10棋士藤井聡太七段の話題で盛り上がる将棋界。この物語は天才棋士と違っ
て、年齢制限のため一度は諦めた将棋人生に再挑戦する35歳の青年の物語。
将棋は全くやりませんが、人生再生物語として、実話だけに興味があります。
将棋に関する知識は「聖の青春」(2016)で知った程度です。
地味な作品でしたが、自分の弱さを知り、“人生あきらめたらあかんぞ”と思わせてくれる作品でした!
監督は豊田利晃さん。監督生活20年ぶりに挑んだという本作、監督自身の人生を投影してるようで、意気込みが感じられます。
 
主演は松田龍平さん。タイトル通りに泣きますかどうか?見どころです。( ^)o(^ ) そして脇を支えるのは超豪華キャストです。見知らぬ男性:藤原竜也さん、2秒の出演です。()
 
あらすじ(シネマトウデイ引用)
幼少期より将棋一筋で生きてきた“しょったん”こと瀬川晶司(松田龍平)は、プロ棋士の登竜門である新進棋士奨励会に入会する。しかし、「26歳の誕生日までに四段昇格」という規定への重圧から勝てなくなり、年齢制限により退会する。途方もない絶望と挫折感を味わう晶司だったが、親友の鈴木悠野(野田洋次郎)や家族など周囲の人々に支えられ、夢をかなえるため再び立ちあがる。
 
前段の小学5年生から奨励会を退会するまでの話が、後段の周囲の人に支えられて夢を取り戻す話より重厚に描かれています。
特に、優秀な者たちが集まった奨励会のなかで自分を見失い、夢を果たすために避けて通れない昇段試験に、勝手な理由をくっ付けて試合を逃げ続ける描写が自分の過去に重なり胸に迫ってきます。若い実力俳優たちにより、出演時間は僅かですが、その重圧感をみせてくれ、とてもよかったです!
 
後段。社会に出て視界が広がり、昇段という重圧から解き放たれ、人々に励まされ、将棋の面白さを取り戻して棋士に再挑戦という展開。前段で描かれた何故棋士を目指したかのエピソードを回収しながら、夢を追う姿がさわやかでした。

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冒頭、袋から駒を取り出し、王将、金将銀将…と、一枚ずつ駒がうつくしい所作で将棋盤に並べられるシーン。そして「泣き虫しょったんの奇跡」の文字が浮かび上がる。瀬川5段自らの出演で物語が始まります。
 
19804月。生まれてから小学5年生までの10年間、何かに熱を入れるこのとなく日々を過ごしていた昌司が、「困った人を助けるよりも、喜んでいる人を喜んであげる人が好きです」という担任が鹿島先生(松たか子)に出会い、自分の好きな将棋に「何かに熱中して上手になる人は、必ず役に立つ日が来ます」と声を掛けられ、彼の人生に大きな意味を持つ言葉となります。
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隣に住む悠野とは、時間があれば将棋で遊ぶ仲。この姿を見て昌司の父敏雄(国村隼)はふたりを工藤(イッセー尾形)の将棋クラブに連れて行き、入れてもらう。
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ふたりは、ここできつく将棋の作法を教わり、中学生になると“感想戦を必ず行うこと”を言い渡され、めきめき腕を上げ、大人たちを負かし快感を楽しみ、すっかり将棋が好きになる。
 
工藤の勧めで、中学生名人戦トーナメントに参加。いきなり対局相手が悠野で、昌司は彼に負けてトイレで悔し泣きします。これが最初のしょったんの涙でした。
その帰り、工藤のおやじさんが、ふたりに、奨励会に入りプロになれと、自分がなしえなかった夢を託す。電車で帰るふたりを見送る工藤の顔に、夢を追えなかった無念の涙が光る。泣けますね!
 
悠野はプロにはなれないと進学の道を選ぶ。昌司は悠野の「おまえは棋士に向いている」という言葉に押され、“自らの決心”で父に奨励会入りの意思を伝えます。父は「好きなことをするのが一番だ」と奨励会入りに賛成します。父敏雄はこの時よりず~と彼を支え続けます。
 
奨励会に入るために安田七段(渡辺哲)の門人となり、「この子はうまくなる」との折り紙付きで、奨励会の試験に合格する。ここで、将棋、将棋の将棋漬の毎日を過ごします。
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1989年.奨励会には年齢制限という鉄の掟がある。26歳の誕生日までに四段にならなければ退会となって、プロへの道を断たれる。
22歳の夏に三段に昇格し、残り4年8回の「三段リーグ戦」に挑むことになる。
 
12年と年が経ち、年齢制限という魔物に追い詰められていく。加藤(早乙女太一)は負けがこみ、人が離れ、孤独に苦しみ、遂に退会してゆく。
 
タバコを吸っていると、対局を終えた冬野(妻夫木聡)が近づき「もうどうでもいい、奨励会を退会する。「三段リーグ」は友達を殺すように打つ。人の夢も希望も奪い取ってしまう。こんな将棋は嫌いだ。瀬川君は良い人だった。君は才能がある、羨ましい」と話す。彼もプロに間違いなくなれると言われた男でした。
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三段リーグ」の苦しさをよく表している。これを通過したプロ棋士さんはすごい人達なんだと思います。( ^)o(^ )
 
将棋に負けると人のよい昌司の部屋に癒しを求めて泊まりにやってくる。愚痴が出て、酒を飲み賭け事を始め、そして競輪、競馬にと走り、勝負に耐えられず、遊ぶようになる。それでも昌司は、まだ制限年齢までには四段になれるとあきらめなかった。
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このような緊張した対局をいくつも見せてくれますが、清又(新井浩文)との対局が面白い。() 
昌司のやさしさが出て、勝てた勝負を落とす。新藤(永山絢人)は「なぜ指さない。四段になれたのに」と悔しがる。
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いよいよ最後の「三段戦リーグ」がやってきて、「勝ってプロになって名人を目指す。それ以外何にもない。次に負けたら死ぬしかない」と昌司は精神的に追い込まれます。
 
誰もが認める力がありながら、最後の対局を落とし、泥沼で沈み、もがき苦しむ日々を迎えることになります。
 
9か月後。やっと自室から出て、家族と食事。兄からひどく罵られたが、父敏雄は「おまえはよく頑張った。当分休め!そのあとを考えろ」と庇う。
19974月、神奈川大学二部に合格、26才で大学生になった。が、突然の父の交通事故死。父の遺体を前に「お父さんが思うほど将棋を頑張らなかった、ごめん」と泣いた。ここでの松田さんの涙、これまで見たことのない涙でした。( ^)o(^ ) 彼にはまだ将棋への拘りが残っていた? 
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これを癒すように臨家の悠野を訪ねる。悠野は「俺が入っていたらお前は4段になれていた。久しぶりに指そう」と誘われ、将棋を指す。その将棋は、奨励会で指したものと違って、まるでゲームのようで楽しかった。
 
ふたりは、昔のように、工藤の将棋クラブで、指した。まわりの人が魅入る将棋だった。
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30歳で就職。相変わらず将棋クラブで、将棋を楽しんでいるところで、アマチュア名人の藤田さん(小林薫)に出会う。「負けてあんた笑うね!笑顔が溢れている」と昌司の棋風を褒め、飲み屋に誘う。そして「負けることの悔しさを楽しめないと、将棋は指せない。瀬川さんは違う、あんたは将棋が好きなんだ!」と褒められる。この言葉に昌司は、勝つことにこだわって自滅したことに気づかされます。
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これを契機に、駒を新しくして、将棋にのめり込んでいく!
 
53回全日本アマチュア将棋名人選で、名人となる。これで昌司はアマプロ戦に出場し、負けることを嫌がるプロに勝ってしまう。「三段リーグ戦」の落ちこぼれの自分が勝つとは、うれしい反面、不思議な心境になる。プロに成れる道はないのか? 
 
藤田さんと記者の新條(三浦誠己)が「(将棋を楽しむために)アマからプロになれる道があっていい」と将棋連盟に掛け合う。
昌司は、奨励会で頑張っている後輩たちや、自分以外に泣きながら退会していった棋士たちを慮って悩みます。家族や仲間、恩師らの期待を思い出し、もう一度挑戦してみようと決意します。
 
連盟は、認めれば奨励会の意義がなくなるという強い反対があったが、6局を戦い現役プロに3勝すればよいという「プロ編入試験」を認める。
 
4局までは二勝二敗。
 
家族や会社の同僚、将棋クラブの仲間が固唾をのんで見守る第5局。対局に向かう道すがら、悠野から「おまえの弱点は勝つことに慣れていないこと。勝ことを恐れるな!思いっきりやってこい」と励まされる。
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最終局面。無音、駒の音のみ。これまでのみなの想いが蘇るなかで、「歩」を指す。観戦ギャラリーの驚きの声。「負けました!」の声。
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奨励会退会時、将棋を指すことに燃焼しつくしてなかった、残り火があった。これに火をつけたのが「将棋が好きだ」。「羊と鋼の森」(2018)でのラストシーン、「才能っていうのは、ものすごく好きだという気持ちなんじゃないかな!焦ってはいけません。ここから始まるんです」、この言葉が蘇ります。
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