波乱の慶応4(1868)年が静かに開けます。国内の情勢が不穏なまま、大奥は寂しい正月を迎えます。追い詰められていく徳川を案じ、天璋院(宮﨑あおい)が「私たちにできることは、戦にならぬことを祈るのみ」と静寛院(堀北真希)に話しかけるのでした。
このころ薩摩では、帯刀を島津忠敬が訪れ、天璋院は薩摩に帰らず徳川と運命を共にすることになったと伝えます。帯刀は何としても上京したい意欲に駆られる。
御旗の威光により、幕府軍は恐れおそれおののき、兵力で圧倒的に勝っていたはずが、総崩れとなった。
「薩長の軍勢が兵を整え、遠からず江戸を目指してくるのは間違いありません。徳川追討の命も、すでに朝廷から出ているやもしれません。一方で大坂には大兵が残されている。いかがなされますか」と追及すると、「なにも考えていない」と言い「力を貸してくれ」という。勝は「頼るべきはわたしではない。天璋院さまです」と意見する。
天璋院は「よもや慶喜が逃げ帰ってくるとは!」とその不甲斐なさに憤慨する。ましてや、大坂に残された兵が城を捨てて逃げだしたと聞いて、情けなくなる。慶喜帰還を聞いた本寿院(高畑淳子)が怒りのあまり「慶喜を殺すのじゃ。殺して差し出すのじゃ。さすれば徳川宗家も大奥も生き延びることができる」と叫ぶ。これに天璋院も「許すことはできぬ!」と応じます。
「早速ですが、此度の顛末について・・・」と聞き出そうとすると、
「薩摩の策略にまんまと乗せられ、はからずも戦に引き込まれ、敗北を喫しました」と投げやりな口調でいう。島津の分家出の天璋院に何がわかると蔑んだようすが伺える。
「このようなことで徳川を潰すわけにはいかぬ!」と問う。
「私とて、徳川宗家を救えるなら、この首のひとつやふたつ、差し出す覚悟はできています」と、何をいまさらという返事をする。天璋院は「あなたには生きてもらいます。その生き恥をさらさねばならぬ! もうひとつやるべきことが」と静寛院の部屋に誘う。
「それだけでは敵も許してくれぬでしょう。私は嘆願書を書こうと思います。徳川慶喜を救ってくれるように。できれば、宮様にも力添えをいただきとうございます」と和宮にお願いすると「母上様の仰せでしたら」と応じます。
慶喜には、ふたりの言葉が意外であった。「なぜ、そこまでことを、この慶喜のために」と言い出す。「あなたは家族です。徳川という家に集った家族である以上、私は命を賭けてあなたを守らねばならぬのです」と天璋院。そして「人の上に立つ者は孤独です。それが天下を治める将軍ともなればいかほどのものは、それがおわかりなのは、私の知る限り、家茂公とそして、夫であった家定公でした」「あなたは生きてください。おふたりの分まで」と深々と頭を下げるのでした。慶喜の目に涙が光り、江戸城の一室にこもり謹慎することにしました。
京では、西郷が自ら志願して、江戸城攻めの参謀役になることが決まった。勅命による討伐のため、大総督の任には、有栖川宮熾仁親王(竹財輝之助)がつく。岩倉(片岡鶴太郎)が「熾仁さん、和宮さんの許嫁やった人や。歴史というのは、むごいことを時々やりおる」と嘯く。
西郷は「むごいとは思えない。縁もゆかりもない相手に討たれるほうが、いっそむごい」という。
1月半ば、龍馬と幾度となく語った新しい国つくりを実現されるため、帯刀は痛む足を引きずるようにして薩摩を発った。
***第46話おわり***