映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「カモン カモン」(2021)ここに出てくる子供たちの声が凄い!未来の彼らに対する親の責任は!

監督が「20センチュリーウーマン」(2016)のマイク・ミルズ。時代をとび越えた母と子の生き様、絆が暖かくユーモアたっぷりに描かれたこの作品が大好きで、本作に期待していました。

監督・脚本:マイク・ミルズ撮影監督:女王陛下のお気に入り」のロビー・ライアン、美術:ケイティ・バイロン衣装:カティナ・ダナバシス、編集:ジェシーファー・ベッキアレッロ、音楽:ブライス・デスナー アーロン・デスナー。

出演者:「ジョーカー」(2019)のホアキン・フェニックスウッディ・ノーマン、ギャビー・ホフマン、スクート・マクネイリーモリー・ウェブスター、ジャブーキー・ヤング=ホワイト。

あらすじ

NYを拠点にアメリカを飛び回る独身のラジオジャーナリストのジョニー(ホアキン・フェニックス)がシカゴで子供たちの未来を聞くインタビュー中に、LAに住む妹ヴィヴ(ギャビー・ホフマン)kら「演奏旅行で家を空けてる夫ポール(スコット・膜ナリー)が精神疾患で倒れたので数日面倒を見て欲しい」と電話がかかってきた。LAに駆けつけ、9歳のちょっと風変わりな甥ジェシー(ウッディ・ノーマン)と対面。その後、ポールの症状が芳しくなく、ジェシーを連れてNYに戻り、子育ての厳しさを味わうことになったが、驚きに満ちたかけがえのない体験をした。この体験を通して、ヴィヴやジェシーと新しい家族としての絆を築くことになっていく・・・。

物語は、監督が前作で父親や母親を物語のベースにしたように、この作品では息子の子育て体験をもとにして作られたと言われ、情感豊かでリアルです。

ジョニーは「現在の生活」「世界について」「未来について」と米国各地の子供たちをインタビューして巡る。この行動と甥の面倒を見る物語がシンクロナイズして描かれ、「大人は子供の未来に責任がある」という強いメッセージ性を持つ作品となっています。エンデイングで沢山の子供たちの発言が紹介されますが、我々の想像を超えたもので、素晴らしい。このことで一層、子育ての重要性を認識することになります。

ホアキン・フェニックスとウッディ・ノーマンが父と子の関係になっていく自然に演技に魅せられます!

感想(ねたばれ:注意):

エピソードを追いながら感想を述べ、最後にまとめたいと思います。

 デトロイト

ラジオジャーナリストのジョニーが子供たちに「将来はどうなっていると思う?」「未来は今よりも良くなっているかな?」「正しいことをするために大人は何をするべきだった?」とインタビューするシーンから始まる。

自動車産業で栄えた街。未来は思いのほか早く終わったと思っていたが、子供たちの答えは「良い未来になる、希望を持っている」と決してそうではなかった実際にホアキンが学校を訪ね収録したとのことで、子供たちの自由な発言力に驚かされます。本作がドキュメンタリータッチで社会の問題を覗くというのがいい。

LAに住む妹・ヴィヴから「夫・ポールがオークランドで倒れた!様子を見に行くので、ちょっとの間、面倒見て!ジェシーは風変りだが問題ない」と電話が入る。ジョニーは1年前に亡くした母親の介護をめぐる妹との確執がよぎり、この申し出を引き受けた。物語はジョニーの子育てでありながら、思考を広くして、ヴィヴとの邂逅の物語でもある!このあたりは「20センチュリーウーマン」と同匂いがする作品でした。

ロサンゼルス

モノクロで空撮の映し出されるLAの街が美しい。ヴィヴとジェシーに迎えられ、ジェシーが一番大きい部屋だと案内し、「すべてが繋がって木は大きくなる。そのためには栄養を詰め込む必要がある」と絵本の一節を口にした。この一節はラストシーンに繋がる大切なシーンになります。

なんでこの一節を喋ったか、確かに変わった子だ!母親ヴィヴの“読み聞かせ”がしっかりなされていることが伺われる。子供の成長に絵本がいかに大切か!

ヴィヴは寝る前に絵本を読むことだけを言い残して夫の元へと旅だった。朝、大音響のクラッシク音楽で目が覚めたジェシーの黙って出て行った母への苛立ち!だった。それにしても母のメモが楽譜というのもすごい!ジェシーには理解できない世界だった!

ジョニーは機嫌伺いに「君の未来は?」とマイクを差し出すが受けてくれない。しかし、録音機、収録音に興味を示す。ジェシーをLAの街に、海岸に、遊園地へとジェシー連れ出し、音を収録して過ごした。

ジェシーから「母と何を話した?」と聞かれ、母親の介護で意見が合わなかったことしか思い出せない。しかし、ジョニーは母と自分との関係を考え、これがヴィヴ、ジェシーへの想いとつながっていく!

なぜ結婚しない?」と聞かれ、「分からん!君には経験がない」と子供にどう答えるべきか分からず、やたら絵本を読み聞かせた。(笑)ジェシーが父の口数が少ないことを聞いてくる。「君が好きなように話したらいい」と言えば「子供たちが可哀そうだ!」という。もう俺にはこの仕事は向いてない「お前は変わりもんだ!」と投げ出したい気分になった。

そこにヴィヴから「夫の状況は、今しばらく様子見する必要がある。ジェシーには言わないで」と伝えてきた。ジョニーは、断ろうと思ったが、海辺で一心に海の音を聞くジェシーの姿を見て、ニューヨークに連れ戻る決心をした。

ニューヨーク:

ジェシーの学校の送り迎え。ヴィヴと携帯電話で話しながらのジェシーとの生活。ヴィヴが「母親というのは究極の生贄!世の中を明るくする仕事だ!」という。ジェシーが母・ヴィヴのこと、「寝かせ方」などを話すが、女性のことはさっぱり分からない。もう少し女性の構造を知っておけばよかったと思うようになった。(笑)

ジェシーの体に発疹があることに気付いた。ヴィヴに話すと「栄養でなないか?」という。ジョニーもインタビュー資料の整理などで忙しい。これはまずい!とジェシーを連れてショッピングに出かけた。ところがジェシーがいつの間にはいなくなった。ジョニーは不安で!必死に探していると、何もないようにジェシーが現れた。ヴィヴにこのことを相談すると“ホームシック”と分かった。「ここにいるのは父親のためだ!(我慢しろ」」と言うとジェシーが起こる。父親のことを何も知らせてなかったことで彼が頑張る力を失ったと分かり謝ったこの謝ったことがいい結果に結びついていく!心が通じ合うようになった。風呂で髪を洗ってやる。「もう寝るときの本読みもいらなくなった」とヴィヴに携帯で伝えると「そんなもんよ!最初は自己流でいいのよ」と返してきた。

ニューヨークでは新しい世界を求めてやってきた移民の子供たちのインタビューをする。子供たちの声の録画がスムースに進む!

ピザ店でジェシーが「母となぜ兄妹らしくしない!なぜあなたは孤独なの?」とインタビューで迫ってくる。「自分を理解しないこともある」と答えると「薄っぺらだ!」と怒る。(笑)

街を歩いて、家に戻りふたりでふざけているところにヴィヴから「彼をMHに入れる、絶望的!」と伝えてきた。「俺といればジェシーは丈夫だ!」と返した。ジェシーには電話を渡さなかった。

翌日、街を歩いていて突然ジェシーがいなくなった。バスに乗っていた。昨夜の電話が気に入らなかったらしい。ジェシーを連れ戻し、次の日、荷物をして「もう面倒見切れん!」とジェシーを空港に送る途中で、彼がダイナーのトイレに入って出てこない。「ママはパパのことでいっぱいなんだ!」というと「分かった!何を怒っている」と出てきた。

ニューオリンズ

いくつかの地域が水没してしまう地域、ここでのインタビュー。ここにジェシーを連れてきた。昨日のことを「短気で悪かった!バカ中のバカだ」と謝った。「叔父さんは身勝手だ!」という。父親の病気について心配させまいと配慮したことが裏目に出た。「伝えるべきは伝えないとダメ!」

夜、ジェシーがジョニーのベッドに潜り込み、母親の話をする。「母は優しいし、僕を愛してくれているが、全部は分からない!」と本音を話した!

ハリケーンで苦しむ生活の中でも、子供たちは未来への希望を語っていた。控室でジェシーが泣いている。「星の子供たち」を読んで泣いていたのだった。「旅が楽しくても、帰るときは不思議に悲しくなる」と感想を述べた。ふたりはもう次の生活を考え始めていた。

パレードを見ていたジョニーが倒れるとジェシーが「人間には回復ゾーンがある。だからちょっとそこを触っただけ」と介護した。もうジェシーはジョニーが大好きになっていた。

森の公園を歩きながらジョニーが「未来を考えたことがあるか?」とジェシーに聞くと「未来は考えもしないようなことが!だから前へ前へ進むしかない!」「カモン カモンだよ!」と声を上げた。ジョニーも一緒に声を上げ「泣いている?笑っている?」と囃した。もう大人でも子供でもない関係になっていた!

美術館で絵を鑑賞。そこにヴィヴから「パパはよくなっている、迎えに行く!」と電話が入った。

ジェシーは母ヴィヴと一緒にLAに帰って行った。ジョニーはジェシーと過ごした日々の記録をまとめ、「傍にいてやるから、無茶苦茶でいい。落ち込んだらすべてを思いだしてあげる」と書き送った。

まとめ

エピソードが面白くセリフが洒落ているので感想が長くなりました!

母親が迎えにくる前の公園でふたりが「未来が分からないだから・・」と「カモン、カモン」と叫び合うシーン、ふたりが大人でも子供でもない一緒に未来に期待するシーンに感動しました。

子育ては未知への挑戦!正解なんかない!と子供の自主性を大切にして、強制しないで“よく聞く“ことが大切だと教えてくれます。今の日本の社会、「聞くということが疎かにされている」ように思われ、「茜色に焼かれる」(2021)でもこのことを強く感じました!

ホアキン・フェニックスとウッディ・ノーマンの叔父と姪っ子演技ノーマンが自由変化にすこし変わった子をリアルに演じる。これにジョーカーのホアキンがふりまわされながら、優しい叔父さんへと脱皮していく。2人のやり取り、演技がなんとも魅力的!すばらしい子役が生まれましたね!

ヴディ・ノーマンの描く未来とは「よりよい世界を目指すなら、今抱えている問題をとにかく解決しなければならない。今、世界の指導者たちが過去200年に起きた出来事を赦し、忘れて、その先に進むことが大切だ」という。この言葉に、子供たちに未来を託したいと感動しました!

仕事、仕事で過ごした人生。今にして思えば、子育て以上の大きな仕事はなかった。もっと、もっと聞いて、話して、共感しておけばよかったと反省しています!

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