タイトルがパンク、なんとなく「少年メリケンサック」(2009)に似てるし、と観ることにしました。
冒頭の阿部サダオさん、ラストの吉岡里帆さんのロックライブシーンがとてもよくて満足でした。おふたりがこのように歌が上手いとはびっくり。
監督は「転々」「インスタント沼」の三木聡さん、5年ぶりの監督オリジナル脚本。主演は阿部サダヲさんと吉岡里帆さん、共演は千葉雄大・麻生久美子・田中哲司・岩松了・ふせえり・松尾スズキさんら三木組の常連さんです。
驚異の声量と美声を持つロックスター・シン(阿部サダオ)、実は声帯ドーピングで喉は崩壊寸前。ライブを抜け出し、声が小さすぎるストリートミュージシャン・ふうか(吉岡里帆)と出会う。
シンは過去の自分をふうかに重ね、“やらない理由を探すな!”と容赦なくロック魂を注入していく。自分が声を失うことを利用して一儲けしようとする所属事務所社長(田中哲司)やレコード会社担当者・坂口(千葉雄大)、闇の組織に追われ、ふうかとともに韓国に逃亡する。そこでシンは韓国当局に逮捕抑留されるが、日本に戻ったふうかが、彼のためにある企画をすすめるというストーリー。
テーマは「やらない理由を探すな」で、なんでもやってみて感動させろというロック魂。
大きい声で歌うのが恰好悪い、小さな声でも聴いてくれる人が居る。アルバイトは気に入らねばすぐやめる。オーデイションを受けチャンスを探すことをしないふうか。
なんのためにアーテイストになりたいのか分からんと「それは不燃焼ゴミ」「大きな声をだせ、意思を示せ」とシンが迫りますが、これが心に響きます。
ラストで、韓国釜山に抑留されたシンに、届けとばかりに歌うふうかの対馬ロックライブ。
これは北朝鮮拉致問題を「声を出せ!やらない理由を探すな!」とパロっているようでした。(笑)
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冒頭、シンの出演ライブの大音響のなかで、マンフォールのなかで作業する男が楽屋と携帯電話でわけわからん通話しているシーン。注目のライブの行方、シンははたして登場するかという関心のライブ。皆が心配するのをよそに、ドーピング剤を打って、黒マントを被り登場、HYDEさん作曲の主題歌「人類滅亡の歓び」を、ド派手で不気味なメークでシャウトする阿部さんのロッカーぶりはすごかった! 「少年メリケンサック」のジミーによく似た雰囲気でしたね。
監督おなじみの小ネタ、下ネタ。つくりすぎ、見えみえで、いまひとつ届かなかった。話題があちこちに飛び、会話に含まれるネタがどの程度わかったのか、ちょっと疑問です。(笑)
ふうかの声があまりにも小さいことからバンドは解散。
アルバイトを探すが、あまりにつまらない仕事だから辞めたというふうか。これを諫めるザッパおしさん(松尾スズキ)が、「シュウマイの数を数えるためにグリンピースを並べるんだ」というセリフ。あまり響きませんでしたね!(笑)
ステージから逃げ出して出会ったのがふうか。ふうの路上ライブを観るシンが、隣のロックグループ・パニックバンド(小峠英二)の音が大き過ぎるとクレームをつける。
「音、下げろ!」
「自由だろうが!」
「秩序壊しても、曲順決めてるじゃん!」
この会話、ピンときませんでした。???
店名や真っ赤なそばの意味、ここで吐くおばちゃんの「あれ!美味い。あんたの声も同じよ!」というセリフに感動です。
「やらない理由を探すな」とシンに勧められ、ふうかがオーデイションを受ける。そこで見るオーデイション風景。オーデイション参加のあばちゃんと審査員(岩松了)の交すこの程度の会話が、どこが面白いのかと苦笑です。
シンの所属事務所社長とレコード会社シン担当社員・坂口はゲイ関係。ふたりがラブホテルで、シンの喉が限界であることを逆手にとっての儲け話。この会話のおもしろさがなかなか伝わらず、田中さんがパンツひとつで千葉さんに迫る姿には大笑いました。(笑)
ふたりは社長や坂口、闇の組織に追われ韓国釜山に逃避。そこが、花火工場で、ふうかが育った場所。この設定には唖然としますね!これがロックなんですかね。(笑)
釜山まで追ってきた闇の男たちに、これでもか、これでもかと花火を投げる。笑いを強制されているようで、笑えませんでした。
こんな状況のなかで、「シンが喉を手術するのがよいのか?」と悩むふたり。シンは自分の本来の声が消えるのを無念がり、一方、ふうかは、自分が手術を勧めたことに躊躇する。「俺の声をお前が継げ!」というシンの言葉に泣くふうか。とてもよいシーンでしたが、「このドラマは一体なんなんだ!」と苦笑。
警察車両で連行されるシンとキスしたままで走るというこれまでに見たことのないキスシーン。これが長い、なが~い!(笑)
ついに、離れ、去って行くシンに「あああ・・」と大声を上げるふうか!
大声が出るようになったふうか。釜山刑務所にいるシンに届けと、対馬でのライブを企画。風の強い日、大観衆をまえにあいみょんさん作詞作曲の「体の芯からまだ燃えているんだ」を唄う。吉岡里帆さんが圧巻の歌声を聞かせてくれます。
刑務所のシン、蝶のように舞いながらこれを聞く。突然銃声が・・・
後段は、もうロックコメデイーではなく、メロドラマになってしまいました。ここが「少年メリケンサック」との違い。
「観ない理由を探すな!」、観ての判断です。(笑)
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