実は大久保は先の宴席で岩倉に「西郷に勝ちたい。今の政府を潰したい。そのためには西郷の朝鮮行を覆す」と語り、西郷派遣案を潰す密約を交わしていた。
閣議が続く。
「西郷参議、今、朝鮮国に出向けば戦になります」
「戦にはならん。軍艦も兵もつれずに一人で行く」
「一人で行けば殺され、それが戦の火種になる」
「礼節を持って接すれば、気持ちは必ず通じる」
「甘い、異国を知らぬ者が、異国を語るとは笑止」
「異国であろうと、心を尽くせば必ず伝わる」
「朝鮮国のことなど捨ておけばよい。まずは富国徴兵が先だ。そのためには欧米のよう石炭を焚き蒸気を起こして鉄をつくり、武器、船、鉄道を作る。国の端から端まで走る鉄道だ。これで欧米列国に対応できる力をつける。そうすれば向こうから使節を送ってくる」
「朝鮮と国交を結べば欧米に対する強い壁が作れる」
「陸軍大将を兼務する参議が行けばもめるは必至。そうすれば列強は一気に両国を飲み込みに来る」
「いま国内には混乱で政府に対する士族の不満が滾っている。俺が朝鮮に行くといえばそちらに目が行く。これも強兵だ」
「それが目的ならば、国交を結ぶことにはならない。西郷参議はなにも見えてない」
「お前も見えていない!朝鮮には居留民の2000人が俺たちが来るのを待っている。危険に晒すのか」
「今はその時でない」
「皆殺しにする気か!」
「太政大臣!これ以上議論は無駄だ。私と岩倉卿で唱える案で・・・」
ここで江藤が、岩倉と大久保の参議罷免を要求する。三条(野村万蔵)は決められない。岩倉はついに西郷に屈し、「西郷、望みどおり。朝鮮に行って来い」と決断を下す。
会議室での論議、とても面白い論争でした! 西郷の論は視点が小さく観念的、これに対して大久保は国際的視点に立ち論理的だ。恐らく大久保の勝ちでしょう。何故岩倉は西郷の論に屈したか?
この結果について、大久保が激しく岩倉を責める。ふたりは「これではやっておれない内閣を辞める」と喧嘩を始める。これもふたりで仕組んだ罠?
これを聞いていた三条が突然胸の痛みで倒れ、床につくことになる。(笑)
一方、朝鮮派遣の準備に余念のない隆盛に、従道が「思い留まって欲しい」と訴えるが聞く耳を持たない。
従道が万一の場合と拳銃を渡すが、話し合い行くだけと受け取らない。
鹿児島の家族に隆盛朝鮮派遣の報が届き、糸(黒木華)らが心配する。(笑)
極秘事項でしょう、こんなことが知らされるわけがない!
10月18日の閣議は、三条、岩倉、大久保が遅れ開かれないでいるところに、岩倉がやってきて三条が倒れたために中止と伝える。
予定されていた閣議は中止となり、隆盛は三条邸に見舞いに訪れた。
面会できる状態ではないというので、家令に「ゆっくり休んでください」と頼んで帰り始めると、三条が呼び止め「すまん!留守政府はよかった。帝と政府と日本の民が扇のようにきれいに繋がっていた」と涙を流し、「大久保が恐ろしいことを企んでいる」という。
「朝鮮国使節派遣については、天子様のお言葉を伝える」と派遣見送りを伝える。
板垣、江藤が、「謀議だ、許すわけにかいかん」と岩倉に詰め寄る。岩倉は「三条が倒れ、俺が案を奏上して何が悪い」と反論する。
隆盛は「論議を尽くしたものが駄目なら、我らがここにいる意味がない」と詰め寄る。
岩倉の「天子様が、お前のことを気にかけておられた。死に急いではいかんとな」という言葉に、「万一の事態には居留民を助けて欲しい。おいの役割は、ここまででございます」と岩倉に深く頭を下げ、会議場を出ていった。これを見送る岩倉の目には涙が光っていた。
執務室で荷物をまとめていると、桐野(大野拓郎)たちがやってきて「兵を連れて岩倉のところに行く」という。
隆盛は、これを「兵を動かしてはならん!お前らは一人一人が政府の人間じゃ。それぞれになすべきことがある。辞めることも騒ぎ立てることも許さん!」と言い渡す。
皆、しんみり聞き入るが、従道だけはこれからのことを危惧していた。
明治6年10月24日、隆盛は政府に辞表を提出した。その翌日、「このままでは終わらんぞ」という言葉を大久保に投げ、江藤、後藤(瀬川亮)、板垣(渋川清彦)も政府を去った。
大久保は岩倉に新しい人事を示し、敵対する土佐・肥前の主要な面々を政府から追放し内務卿として、国政における大きな権力を握ることになった。
岩倉は木戸(玉山鉄二)、伊藤(浜野謙太)、山県(村上信吾)を料亭に招き、西郷が去ったことで陸・海の兵が暴れるあるいは薩摩が兵を挙げることを恐れて、木戸に政府に戻るよう懇願する。しかし、木戸は「西郷君はそのような男でない」ときっぱり断る。
隆盛が長屋の子どもたちに「論語」を教えているところに木戸がやってきた。
隆盛が「木戸様まで政府を降りるというのではないでしょうね」と尋ねると、「条約改正に失敗し、留守政府の長州者が汚職にまみれてしまった。その責任をとる」という。
隆盛は「異国を見てきた木戸さんには腕の見せ所で、山県や伊藤のためのも政府に残ってもらいたい」と勧める。
そして「人は皆、間違いを犯すもの。間違いを認め、どうそれを正すかでその人の器量がわかる」と諭し、木戸の政府に残ることを願った。「そのことば、しっかり胸に留めておこう」と微笑む。お互いの気心が一致し、和むふたりでした。
大久保が帰宅すると、隆盛が待っていた。大久保が「何故隆盛を家に上げた」と隆盛に聞こえるようにおゆう(内田有紀)を叱りつける。あまりにも無礼な大久保の態度。しかし、これに怒りを見せず、隆盛はテーブルを挟んで向かい合い大久保に問う。
「おれは土俵際で岩倉様にやられた。これは、おはんが仕組んだ諮りごとか?」
「そうじゃ」
「おはんはむかしから頭のよい秀才じゃった。どうしてあそこまでずる賢く、頭を使わねばならん」
「俺には理想の国家像がある。邪魔する輩は排除する。おはんの人を信じるという政は甘い。そんな生ぬるいやりかたでは、欧米列強にやられる!」
「なんで言ってくれなかった。こんな喧嘩なら腹を割って話せばわかる。こんな周りくどいやり方は好かん!おはんも知っておろうが」
「何とでも言え、俺を憎め!みんな覚悟のうえだ」
隆盛は「無理を言うな!嫌いにはなれん。ずっとふたりでやってきた。おはんに何度も助けられた。そんなおはんをどうして憎めるか」と涙を見せる。そして「俺の負けだ。これは戦場だ。あとはおはんの思うように、一蔵どんのやり方を見ながら鹿児島で過ごす。鉄道を走らせたら、それで薩摩に遊びに来てくれ」と言葉を残し、大久保邸を後にした。
大久保は隆盛が去ったあと、目頭を押さえるのだった。ここまで喧嘩して、これは何の涙、友情? いずれも大人の対応ではない!
隆盛は鹿児島に帰る挨拶伺いで友情を確かめたかったのだろうが、叶わなかった。隆盛がつまらんことを聞き出したのも悪いが、大久保の人情を解せないこの姿勢に唖然とした。こんな男だったんですかね?
翌朝、隆盛は熊吉(塚地武雄)を伴い鹿児島に発った。信吾は「西郷の名に負けぬよう国に尽くす。ありがとうございました」と見送った。
隆盛はこれが大久保との永遠の別れになるとは思っていなかった。
感想:
会議室での隆盛朝鮮派遣の是非論議、とても面白い論争でした! 西郷は視点が小さく感情的、これに対して大久保は視点が国際的で論理的だ。恐らく大久保の勝ちでしょう。しかし、岩倉はこうはしなかった。
これで江藤、後藤(瀬川亮)、板垣(渋川清彦)も政府を去ることになるという一網打尽の反政府邪魔者退治。みごとな大久保の罠でした。
しかし、天皇を動かして政治をわが物にするという大悪弊を生みましたね! 大久保は日本国の進むべき道を敷くという大仕事をなしたが、これは大久保最大の罪でしょう。
隆盛が大久保を訪ね「この政変がおはんの謀か」と諮問するシーン。創作ドラマでしょうが、いくつもある説の中で、この説が事実であるということでしょうか。
あまりにも西郷がお人良しに、半面、大久保は人の気持ちを汲めないとんでもない悪人にみえました。(笑)