明治8(1875)年。隆盛(鈴木亮平)は荒れる士族のために私学校をつくって1年がたった。鹿児島はもちろん、九州各地から門をたたく者たちはあとを絶たず、生徒の数は2000人を超え、さらに増え続けていた。
大久保は私学校が暴発するのを恐れて「私学校かた目を離すな!」と川路に指示する。川路は中原尚雄(田上晃吉)を私学校に送り込んだ。
隆盛は、私学校は若い人に任せて、たびたび菊次郎(今井悠貴)を連れて、開墾できる土地を求めて探し歩き、温泉につかるという、隆盛にとってはこれが最後の幸せな日々であったかもしれない。
これを見た桐野(大野拓郎)が「刀は士の魂だ。政府の言いなりになるのではない。西郷先生と私学校を守るためじゃ」と真っ先に刀を外すのだった。
しかし、廃刀令に続き、政府は士族の禄を廃止。士族の特権は全て全て奪われてしまった。
熊本、福岡、山口で不平士族たちが次々と立ち上がり、政府に反旗を翻す。政府は徴兵制で集めた力で、これらを鎮圧した。
隆盛は、新八から「熊本から文が来た。学校では騒いでいる」と呼び出される。学校では、「熊本から立って欲しいという訴えが届いている。このまま黙っていたら政府の悪政は止められない」と騒いでいる。「俺たちだけでやる」という声が挙がる。これを桐野は黙認している。
そこに隆盛がやってきて「よい世にするにはおはんの考えは誤っている。この薩摩で野を耕す。おはんらが立つことはならん!」と激怒すると、「政府は、この私学校に密偵を忍ばせている。この手紙を見て欲しい、熊本士族はこの密偵に潰された」と篠原が訴える。
「これでは政府に潰されてしまう」という声に、隆盛は笑みをもって「密偵がいて困ることがあるのか。自分たちはここで田を耕し、学問に励んでいるだけで、密偵に探られても痛くも痒くもない。これまで通り、たゆまず精進すればいい」と諫めた。
これを聞く中原、「皆がわしを追い立っておって!」と立ち去る。
電信で鹿児島の状況は政府に伝えられた。大久保は山県(村上信吾)、従道(錦戸亮)、川路を執務室に呼び「前線の熊本に出発できる態勢を取れ」と川路に指示する。従道はむっとなって「大久保さんは兄を疑っているのですか。何千万の不平士族がいきり立っても、兄は必ず押さえ込んでくれます」と反論。
これに「裏を返せば、吉之助さの覚悟ひとつで日本中の士族を奮い立たすこともできるということだ」と大久保。
従道が「偵察だけですか」と聞くと、川路が「暴発の動きがあれば身命を賭して止める。万一の場合西郷先生には死んでもらいます」と応える。「なんでそんなことを」と反論すると「下がれ!」の大久保の声。
部屋を出ると、川路が従道を呼び止め「西郷先生は立たん。大久保さんもそう信じています。薩摩を守りたい。半次郎とは戦いたくない」と声を掛けた。
大久保はひとりになった部屋で「立つな、立たないでくれ」と祈っていた。
中原のもとに「ボウズヲシサツセヨ」と文が届く。別府(田上晃吉)に酒を進め「俺に力を貸してくれ。私学校を抑えるために力を集めている。近々政府の船が入る。鹿児島の銃・弾薬を大坂に運ぶ」と頼み込むと、「お前は密偵か?」と別府は驚く。そこに、新八が現れ中原を捉え、桐野の尋問が始まる。
隆盛は温泉につかって星空を眺めながら、「何事も起こらねばいいが」と胸騒ぎがする。
そこに小兵衛((上川周作)が「私学校のもんたちが、政府の連中を襲った!」と駆け込んでくる。
政府軍の武器庫を襲い、後戻りのできない状況に陥ったのでした。
政府では大久保が「来るべき事態に備える」と迅速に指示を出す。
隆盛が学校に来ると、桐野は「大久保が送り込んだ密偵です」と中原を吊るし上げている。隆盛は「下ろせ!」と指示し、「なんちゅうこつをしでかした!銃や弾薬を(陸軍省の管轄する火薬庫から)盗み出せば、もはや国賊として討伐されるかもしれんぞ」と桐野、新八らをぶん殴る。
桐野が「お言葉ですが、先生はわかってない。これが大久保の本心です」と訴え、中原から奪った紙を差し出す。そこには「ボウズヲ“シサツセヨ”」と書いてある。
「先生を刺し殺すつもりだったと白状した」と桐野。
カタカナ文字は錯誤を生みますね。
隆盛は、「中原、刺殺というのは本当か?」と、血まみれの中原に問うが、返事はない、返事できる状態でない。これに、西郷は落胆し涙を見せる
桐野が「新しい日本をつくるという先生の夢を信じ、政府に刀を奪われ禄を奪われても、歯を食いしばって耐えている。先生、大久保はあんまりじゃ。このままでは、俺たち士族の居場所はない」と懇々と隆盛に訴える。
しばらくおいて、西郷は「わかった!みんなで東京に行け。全国の士族の思い、新しき世を見ずに去った先輩の思いを政府に訴える。そして皆で薩摩に帰る」と決意を示す。
菊次郎には、この時の父隆盛がどんな思いをしていたかは分からなかったという。
出立前夜、隆盛は、この時の想いを大きな紙に「啓天愛人」の文字で表した。
家に戻り、家族に「私学校の若いもんとまた東京に行かねばならん」と伝える。雪蓬が「これは戦に行くんだ」という。菊次郎が連れていって欲しいという。糸(黒木華)が反対したが、菊次郎が自分で決めたことと、連れていくことになった。
昨夜が糸に「踏みとどまることはできないのですか。菊次郎や私たちに必ず新しい国を見せてくれますか。それをかなえるために行くのですか。必ず新しい国を見せてくれるのですか。答えてください!答えてください」と聞かれたが、隆盛は答えられなかった。
隆盛と大山は私学校の面々と軍議。隆盛が「政府に政を正すだけだ」と上京の目的を示すと、大山が「『政府に尋問の筋これあり』という文書を政府や各県に送っておく」と提案する。これで軍議はお終い。(笑)
2月17日。鹿児島は50年ぶりの大雪であった。
海江田(高橋光臣)が「会いたかったら、必ず帰って来い」という久光のことばを伝える。
菊草の歌に送られ、菊次郎、小兵衛、宗介(前川優希)、熊吉、桂久武とともに出立。
糸に
「留守を頼んだぞ!」
「お武運をお祈りしています」
こうして、隆盛は政府の政を正すという大義で東京に発った。
大久保に「西郷立つ」の知らせが入る。大久保は「俺が会いに行く」と動き出すが、岩倉(鶴瓶)の「お前は国家の要だ」に思い留まった。
感想:
桐野の隆盛説得、隆盛の苦渋の決心のシーンなど、胸に迫るものがありました。
しかし、西郷が「立つ」動機は、政府管理下の弾薬庫を襲うという反逆行為、密偵中原が持っていた西郷刺殺(視察)指令文と桐野の大久保に抱く不信感によるもの。西郷最後の大決断が、状況分析はほとんどなく、桐野らに同情したような結末に愕然としました。
確たる目的、目標もなく「政府に尋問の筋これあり」と兵を率いて上京するという。“切ない”回でした。
暴動に政府軍が出動しているという状況にあって、政府から攻撃された場合など考えなかったのですかね。あまりにも楽天的、まるでピクニックに出かける感じです。一万の軍が動くのに、これはちょっとひどいですね。(戦略が書けない?)
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記事 20181203
「西郷どん」第45話視聴率は11・5%…前回から0・9ポイント減