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「チャーチル ノルマンディーの決断」(2018)

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原題は「CHURCHILL」
作品紹介(映画.COM)に「チャーチルはノルマンデイー作戦に反対していた」とあり、頑固者のチャーチルが「どう受け入れたのか」と興味を持ち観ることにしました。
本作は「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」(2017) から4年後のチャーチルの姿が描かれています。疲れたチャーチルでした。

ポスターには「史上最大の作戦に最後まで抵抗した男の知られざる苦悩と真実」とあり、ノルマンディー上陸に至る96時間のチャーチルの“首相としての苦悩”が描かれた作品です。邦題の「ノルマンディーの決断」とはニュアンスがちょっと違うようです。
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第一次大戦時、海軍大臣として関わった「ガリポリ上陸作戦」で50万人という死傷者をだした“上陸戦闘”へのトラウマを持つ首相が、ノルマンディー上陸作戦にどう臨むべきか、何をなすべきかと苦悩し、マイクのある放送室こそが自分の居場所、戦場であると見出す物語です。
 
ここには首相自身の新しい技術への対応能力の欠如とこれに伴う指導力の衰えさらに悪化していく夫婦関係も描かれていて、当時のチャーチル心理的に追い詰められるが、妻や秘書、常に側にいてくれるスマッツ元帥のなにげない言葉に勇気づけられ、立ち直っていくところに感動します。
 
この作品には、戦場も兵器も一切出て来ません。それは、戦場が首相の居場所でないからです。そんなものを描かなくても、名優ブライアン・コックスのすばらしい演技で、戦場の厳しさがしっかり伝わります。そして、兵器に代わるものとして、チャーチルの国民、兵士を勇気付けるすばらしい演説に出会います。
 
ラストでの、戦場の厳しさを知る、何よりも若い兵士の血の流れることを憂えるチャーチルが“でん”と首相の席に座り、彼の演説に全幅の信頼感をおく兵士、国民。国民と首相の一体感に感動しました。( ;∀;)
 
経験したことのない、先の読めない事態にあって、国を治める者がどうあるべきか、政府の東北大地震時の原発事故対応行動が重なります。
 
監督はジョナサン・テプリツキー。出演者はチャーチル   :ブライアン・コックスチャーチルの妻:クレメンティーン、ギャレット秘書:エラ・パーネル、アイゼンハワー連合軍最高司令官:ジョン・スラッテリー、 モントゴメリー陸軍総指揮官:ジュリアン・ウエイダム、英国王ジョージ6世:ジェームス・ビュアフォイ、チャーチルを支えるスマッツ元帥:リチャード・ダーデン、ほかです。
 
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D-4日(上陸4日前)最終計画案に対するチャーチルの反論
チャーチルは、アイゼンハワー(アイク)を中心に作成された「ノルマンデイー上陸計画」の承認を控え、海辺を散策。打つ寄せる波が血に染まって見える、この計画は承認できないと意思を固め、連合軍司令部に乗り込みます。そこにはアイク他主要幕僚が待機していた。
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国王ジョージ6世の到着を待って会議が始まり、アイクが「これが最終的計画である」としてブリーフィング。チャーチルが、損害が大きすぎるとしてドイツ軍配備の薄いエーゲ海正面からの上陸を提案するが、アイクは「十分に練った作戦である」と聞き入れない。これに国王が「わかった」と引き取り、チャーチルが口を挟む余地なし。チャーチルは蚊帳の外という感じ。アイクは十分に手回しをしていましたね。
チャーチルは、アイクが話したがるのを蹴って、司令部をあとにします。
 
首相官邸に戻ったチャーチルは、「エーゲ海からやる」と今朝会ったばかりのギャレット秘書に、司令部への電話を入れさせる。これにスマッツ元帥が「アメリカの強さと偉大さを尊重したらどうだ」と諭します。
 
上陸兵力20万、使用艦艇7000隻という史上最大の上陸作戦が、この時点でひっくり返ることなどないでしょう。チャーチルの“混乱ぶり”が分かります。
 
マッツ元帥は、作戦本部と調整し、再度アイクとチャーチル懇談の場を設定します。
ヤーチルは部屋に入るや「ボルドーへの上陸を話したい。明日までに私がつくる」と切り出し、「第一大戦の西部戦線を思い出せ!」と計画変更を言い出すが、「30年前の塹壕戦とは違う」と反論し「計画は変更しない。あなたには国民の士気を高めて欲しい。作戦は私がやります」と述べ、決定された上陸作戦計画を渡します。「車の中で見る!」とまたまた憤慨して官邸に戻る。()
 
官邸に戻ると、妻クレメンテイーンから「アイクはベテランよ。決定権は他の人にもあります」とやんわりと諭される。これに頭にきたチャーチルは、ウイスキーをあおる。
 
D-3日 第一線で戦況を見守りたい。
兵士を激励しようと、海岸にある上陸部隊司令部のモントゴメリー(モンテイ)を訪ねる。いやがるモンテイに部隊展開を説明させ、上陸兵団の間隔が広すぎるなど計画に文句を付ける。()
モンテイがドイツのガス攻撃対策だと説明し納得させる。そして、兵に訓示するというチャーチルに「兵士の前では、国王に話したようなことは言わないで欲しい」と釘を刺して、自らが「戦友を気遣い、よく狙って撃て!そして帰還する。一番大切なのは命だ!君らの命を私が守る」と訓示する。
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これを聞いたチャーチルは「すばらしい将軍だ」と涙をみせ、同行したスマッツ元帥に「ロンドンで戦況をみているのはつらい」と漏らす。元帥は「第一線では指揮できない仕事がある」と第一線に出たがる首相を諫めます
 
このあと、チャーチルは海岸にあるアイクの前進指令部に車を走らせ、「Dデイ(上陸作戦開始日)には、兵を安心させるために巡洋艦に乗艦する。国内では指揮できない」と訴える。アイフは、
「危険だ!」
「兵が死ぬ」
「それは兵の仕事だ。私に任せて欲しい。ロンドンでのんびり戦況を見ていてください」
チャーチルはまたもや葉巻を投げ捨て、怒って帰る。()
 
官邸に戻ると国王が待っていた。国王は「船に乗って命を落とされては困る。私もエリザベスが幼いので乗艦をやめる。爆弾が飛んでくるところへ出て行くのは邪魔なんだ。家にいることだ!存在することだ。それからもうひとつ、アイクとうまくやれ!フランスへは渡るな。どうだ」と、吃音で、時に涙ぐみ、こんこんと諭します。
「おっしゃる通りです」とこの忠告を受け入れます。「君を失うことはできない。皆、感謝している」と声をかけ、国王は帰っていきました。
 
この言葉にチャーチルはハンケチで涙を拭きます。ここにクレメンテイーンが出てきて「これはアイクが陛下にお願いしたもの。あなたは人の話を聞かない。今では、私と話すこともない。アイクは奥様に毎週手紙を書いています」と不満をぶつける。これにチャーチルは「俺はおいぼれだ・・・」と妻の忠告を無視する態度。クレメンテイーンが「英雄のようにふるまっていればまた尊敬される」と言えば「みんな俺はいらんと思っている」と返事。ついにクレメンテイーンは頭にきて、チャーチルの頬をピシャリとやります。
 
D-2日 「嵐よ、吹け」と神に祈る(精神的不安定)
   連合軍司令部では、D日(6月6日)の上陸が可能かどうかの検討会議が開かれる。チャーチルは傍聴者として席につき、結果を見守る。
この上陸作戦の最大の問題点は気象。担当幕僚が波浪と視程をブリーフィング。航空攻撃、上陸作戦担当幕僚から作戦実行の可否が報告される。「難しい」という見通しに、チャーチルはにんまりする。アイクが「結論は明日!」と決定を明日に伸ばすとチャーチルはアイクに駆け寄り「いい判断だ」と褒める。()
 
チャーチルは官邸に戻り、イタリア正面の戦況報告を読みながら、「部隊の安全、物資補給からノルマンデイーは無理だ」と不安を爆発させ、秘書のギャレットに辛く当たっている。これを見たクレメンテイが「あなたはアイクを妨害している」と注意すると「おれは陸軍大臣だ!」と喚く。「バカ!」と言葉を投げて自室にこもる。
 
チャーチルはひとり寝室で、暴風雨が荒れ狂うことを神に祈るのでした。
 
D-1日 我を取り戻す
連合軍司令部では、決定を延ばしたD日の検討に入る。チャーチルは傍聴者として、検討結果を見守ります。
気象担当幕僚から「4時半には天候は回復する。雲高は620m」と報告される。アイクは幕僚の意見を聞き、「リスクは大きいがいつまでも待てない」と決行を決める。
これを聞くチャーチルは「明日は大勢死ぬ」と涙をみせる。
 
官邸に戻って妻と食事。身体の震えが止まらない。「間違っている。これは殺人だ!明日起きたときは2万人が死んでいる」とウイスキーを呷る。
これを見たクレメンテイは「自分を恥じなさい」と言い捨て、自室へ。そして、田舎に帰る準備を始める。
 
スマッツ元帥がギャレットを伴いチャーチルの部屋に入り、Dデイの首相声明を「書きましょう」と促す。
チャーチルが「この作戦は何万人もの死者がでる無謀な作戦だ」となじる。これを聞いたギャレットが「恋人がこの戦闘に参加している、そんなことを言わないで欲しい」と抗議する。
この声でチャーチルはやっと目が覚める。出て行こうとするクレメンテイーンに、これまでの態度を謝り「助けて欲しい」と援助を求めます。
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クレメンテイの「兵士に死の意義を知らせないと、そして生きる希望を与えないと」という助言をもとに、声明原稿を書き上げる。
 
D日 ノルマンデイー上陸作戦開始にあたっての首相声明
1944年6月6日午前6時。「すばらしい連合作戦です。フランスを開放します。損害は僅かです。アイクの勇敢さが効を奏するでしょう。この戦は自由への戦です!・・・」とチャーチルが国民を勇気づける演説が始める。
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「歴史に残る最も偉大なイギリス人」であるウィンストン・チャーチルに、このような“精神的に不安定な瞬間”があったとは想像出来ませんでした。その要因は我々にも存在するというもので、大変興味深く観ることができました。
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