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宮﨑あおいさんを応援します

「女王陛下のお気に入り」(2018)

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91アカデミー賞2019)の9部門にノミネートされている作品です。
監督はヨルゴス・ランテイモス。とても人気のある監督のようですが、始めてお目にかかります。
主演はオリヴィア・コールマン。共演にエマ・ストーン、レイチェル・ワイズニコラス・ホルト、ジョー・アルウインらで、とても楽しみな俳優陣です。
 
18世紀初頭、舞台はルイ14が統治するフランスを戦っていたイングランド。揺れる国家と女王のアン(オリヴィア・コールマン)を彼女の幼馴染で女官長のレデイ・サラ(レイチェル・ワイズ)が支えていた。そこにサラの従妹で上流階級から没落したアビゲイルエマ・ストーン)がやってきて、飯使いとして働くことになる。やがて侍女に昇格したアルゲイルだったが、彼女のなかに生き残りをかけた野望が芽生え始め、王国を揺るがし歴史すら変えたかも知れない女三人のプライドと命を賭けた闘いに発展、その結末はというはなしです。
 
王女とサラの愛欲現場を見たアビゲイルが自分もと女王に取り入る“美しい”スカートの中の愛憎劇。類似の話として我が国には大奥のはなしがありますが、ここで描かれる反吐が出るような悪態をつく野獣のごとき女たちの愛憎劇を知りません。なにか意図があるのでしょうか。() 
実際の戦争は、戦場ではなく、女のスカートのなかで行われていたという皮肉な話でした!

愛情が嫉妬に、嫉妬が陰謀へとエスカレートし、三人の関係が破滅していくプロセスをオリヴィア・コールマンエマ・ストーンレイチェル・ワイズの三人が見事な大戦争を演じてくれます。
ラスト近くのアン女王の自我と孤独、エンデイングのあとの女王の漏らすため息、鳥たちのざわめきに、女王としての自覚が見え安堵しました。( ^)o(^ )
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アン女王は、女王としての絶大なる権限力をもっているが政治に疎く戦を好まない。17人もの子供を失い悲嘆にくれ不安や通風に悩まされて、わがままで子供っぽい一方で権力を振りかざすところがあります。体形がすべてを表しているような人。サラとは性的関係にある。醜女で、サラに政務は任せっきり。
 
これに対してサラは聡明で美人、政治力・武術に優れ、女王の財布を握り遠慮なく物を言い必要に応じ女王を恐喝する。夫はモールバラ卿(マーク・ゲイテイス)で戦争推進派。
 
アビゲイルは、若く美人で頭の回転が速い。苦労してきただけに出世欲が強い。見た目とても魅力的。
 
物語は、女王アンが長いケープを着けてもらいながら「私の舌はもつれる。サラ!子供(17匹のうさぎ)に気負付けて」というふたりの関係を見せつけるシーンから始まります。サラに目隠しして「戦勝の祝いにお城あげる」という女王。
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そこに、サラが呼び寄せたアビゲイルが泥だらけの顔でやってくる。理由を聞くと、まあどんでもないものでした。() クドカンさんの作品が上品に見えます!  
 
女王が足の痛みに苦しむのを知ったアビゲイルは、薬草の知見を活かして女王に取り入ろうとするが、サラに功績を持って行かれむち打ち刑になる。家康に取り上げられた万千代(政次)と同じで、この子は機転が利く! 
 
戦争遂行中で、サラは議会対策に大忙し。女王は寂しさに耐え兼ね、サラを想って喚き散らす。ふたりが関係しているところをアビゲイルに感づかれる。
 
アビゲイルの又従兄で戦争反対のトーリー党員・ハーリー(ニコラス・ホット)に、このスキャンダルでサラを脅せと勧められるが、アビゲイルはこれを断り、正直にサラに伝えると「あなたは両又かけてる」と空砲で脅されるという始末。二人のいがみ合いが激化していきます。
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遂にアビゲイルは、サラの不在時を狙って、女王に近づきウサギを手なずけ、サラと同じように女王と性的関係を結ぶにいたります。
これを知ったサラに叱責されたアビゲイルは、頭を石で叩いて出血させ女王に届けとばかりに大声で泣く。エマの演技が凄すぎます! 
 
これを契機に、アビゲイルは「陛下は美しい。私が男だったらあなたを奪ってしまう」とどう見ても美しいとは思えない女王に甘いことばで取り入っていく。()
 
サラは、女王にアビゲイルを首にするよう進言をし、アビゲイルには「出て行かないなら蹴り飛ばす!」と脅す。しかし、女王は「彼女を寝室付女官にする。あれがあんたよりも上手い」と言い放つ。強烈な一発でした。()
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女王はふたりを連れて温泉旅行に出かけ、サラと風呂に入りアビゲイルを挑発するなど、ふたりのお気に入りの嫉妬心を煽って楽しむ毎日。
 
遂に、アビゲイルは、ハーリーに頑張れと煽られて、女王とサラが戦費について協議中にサラの紅茶カップに眠り薬をいれる。
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サラはうまく女王を言い含めたと意気揚々と馬で帰宅中に落馬し、顔に大きな傷を負い、娼家に匿われ静養することになる。
 
ここからの三人のかけ引きが凄い。
 
宮殿は真っ裸の男にトマトを投げて戯れるという池酒林肉の様相。() 
 
アビゲイルはハーリーの紹介で、女王の信認を受けてマシュマ大佐(ジョー・アルウイン)と結婚、「私は闇を抜けた!」とさらに上級貴族を目指す。しかし、彼女は女王のためにと、とんでもない初夜を過ごす。()
この物語に出てくる男たちは、みんな女の慰みもの。女の嫉妬のはけ口は“男を蹴とばす”こと、花瓶に唾を吐くこと。これで、宮殿の花瓶は美しいものには見えなくなりました。()
 
女王は必至にサラの行方を捜索し、ラブレターを書いて自らを慰める。
 
傷が癒え宮殿に戻ったサラは「あんたに潰されない」とアビゲイルを張り倒し、女王に会い「アビゲイルを辞めさせて!」と進言。そこに「戦費が必要だ」という知らせが入ると、「私が指示します」というサラに、女王が「命令するな!近寄るな!」と一喝する。サラは女王の手紙を逆手にとって脅し、アビゲイルの解雇を要求する。
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女王はサラが持つ部屋の鍵を取り上げ、一切の関係を断つ。部屋の前で女王に謝罪し泣くサラ・レイチェルの演技が凄い!
 
サラが宮殿を去ったことで、アビゲイルはワインで酔い、女王を補佐しうる状態でなくなる。
女王は、議会で戦争中止を宣言する。これに議会は大きな拍手で応えた。
 
女王はアビゲイルの差し出す文書を読もうともしない。それでも「サラの夫モールバラ卿に7000ポンドの金が流れている」という文書に、「それはない!下がれ!」と激怒する。“クソクソ”と泣いて廊下を走るサラ・エマの演技に笑った!
 
モールバラ卿に金が流れていることが事実であることが分かり、女王はサラを国外追放するよう命じる。
 
アビゲイルは女王がベットから転げおちても手を貸さない。うさぎを足であしらう。
女王は、「脚を揉め!」とアビゲイルに揉ませて涙します。ここでの女王・オリヴィア・コールマン見せる表情がアカデミー賞ものです!

エンデイングの後、女王のため息、鳥の声、羽ばたき。どんな映像が出てくるかと待っていましたが、なにもなし。女王の自立でしょうか。
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