一つの轢き逃げ事件を巡る、現場から逃走した加害者の葛藤・恐怖と突然最愛の娘を奪われた被害者家族の悲しみ・怒り。そして、その行き着く先を描くというもの。
娘さんに車を当てて、救助もせず誰も見てないと逃げる卑劣な男。こんなくそ野郎を描いてどうするんだと怒り心頭でしたが、この男が捕まってから雰囲気が一転。ラストで、加害者の真っ当な罪の償いと被害者の怒り・虚しさが決して許せないが癒しに変化していくところに、人としての温かみが感じられ、とんでもないタイトルですが、水谷監督の人柄かなと感動を覚えました。
加害者の妻を演じた小林涼子さんの演技が光っていました。小林さんの持つ透明感と強い意思がこの映画のテーマによく合っていて、小林さんの作品と言ってもいいと思います。そして、被害者の母親役の壇ふみさん。セリフが好きというのが分かる、情感の籠った演技でした!
ロケ地が、海が見え、ファッションの町神戸。美しさとともに、魔法を生むような何かを期待させる風情がよかったです!
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宗方は、大手ゼネコン城島建設の営業マンで、今日は副社長の娘・白川早苗(小林涼子)との結婚式を3日後に控え、結婚式場ホテルで待ち合わせて最終調整をするため急いでいた。森田は結婚式の司会を担当することになっている。
「間に合わない」と森田の提案で、進路変更して抜け道にスピードを上げて入ると、見た通りの住宅街ですから、バーンと娘さんを跳ねった。このとき森田はスマホを落とし前を見ていない。停止して森田がドアーから顔を出して確認?「誰も見てないから」という森田の言葉で、宗方は猛スピードで逃げた。
ニュースで轢いた相手が死亡したことを知り、いつバレるかと怯えながら過ごす。このあたりだらだらと怯えて過ごす姿が描かれ、いいかげんにしてくれという感じになります。しかし、ふたりが会えば森田は「結婚式の司会は責任を持ってやりとげる」と言う。何故か?と違和感がありました。
2日目の深夜、森田から脅迫じみた封書が届いたという電話が入り、怖いからと宗方のアパートに押しかけてくる。封書は、動物たちの絵から“その目”を切り取って張り付けたもの。
やってきた森田が、「宗方は結婚したら東京に出向で会えなくなる、あのころが懐かしい」と持ってきたCDを聞く。そして、次の日、ふたりは遊園地や海で遊んで過ごす。このふたりの関係は、どこかおかしいなという感じを持ちます。
結婚式。お祝いの電報披露で轢逃げを臭わすような「最高の最悪な日」という電文披露があり、宗方が一瞬いやな表情をする。
結婚式も終わって次の日、宗方と早苗が映画を観て外に出たところで、宗方が逮捕され、宗方の自白で森田が逮捕された。
ここまでが、結構な時間を使ってミステリアスな展開でしたが、実は仕掛けがあった。この時間帯のなかにネタが隠されており、次のストーリー展開に生かされるという、よくできた脚本だと思いました。
これを契機に、父親光央(水谷豊)は娘・望の日記を調べ、彼女がスマホを紛失していたことを知り、会社を辞めて、彼女の知合いを調べ出す。ここからは水谷さん演じる光央は「相棒」の杉下刑事となり、娘がスマホで繋がっていた男を追い詰める。(笑)
捕まえてみると意外な男でした! この男の心情も面白いものですが、伏せておきます。
時山夫婦が、事件が一段落したところで、娘・望の27歳の誕生を祝うシーン。光央が妻千鶴子(壇ふみ)に感謝の言葉を贈ると、これに嗚咽する妻の姿に、いろいろな感情が含まれていて泣けます!
ラストは、被害者の母親・千鶴子が、事故現場に献花にやってきた加害者の妻・早苗を海の見える高台に誘い、「あなたには責任はない」と慰めます。早苗は秀一からの手紙を見せ、謝罪し、「出てくるのを待ちたい」というと、千鶴子さんがそっと早苗の手を握るシーンで終わります。
「本当の気持ちで後悔して欲しい、それは加害者が人生をどう生きるかに謝罪の意味がある。幸せを感じて欲しい。2度と罪を犯すことなく生きてくれるのが救いになる」という千鶴子さんの想いではなかったかと。
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