映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「轢き逃げ 最高の最悪な日」(2019)

イメージ 2
NHKごごナマ」(513日)に檀ふみさんが出演。「この作品でのセリフが好き」を耳にして、観ることにしました。監督・脚本は長編第2作目という水谷豊さん。
一つの轢き逃げ事件を巡る、現場から逃走した加害者の葛藤・恐怖と突然最愛の娘を奪われた被害者家族の悲しみ・怒り。そして、その行き着く先を描くというもの。
娘さんに車を当てて、救助もせず誰も見てないと逃げる卑劣な男。こんなくそ野郎を描いてどうするんだと怒り心頭でしたが、この男が捕まってから雰囲気が一転。ラストで、加害者の真っ当な罪の償いと被害者の怒り・虚しさが決して許せないが癒しに変化していくところに、人としての温かみが感じられ、とんでもないタイトルですが、水谷監督の人柄かなと感動を覚えました。
 
主演は中山麻聖さん、共演に石田法嗣小林涼子檀ふみ岸部一徳さんらです。また監督自身も被害者の父親役で出演です。
加害者の妻を演じた小林涼子さんの演技が光っていました。小林さんの持つ透明感と強い意思がこの映画のテーマによく合っていて、小林さんの作品と言ってもいいと思います。そして、被害者の母親役の壇ふみさん。セリフが好きというのが分かる、情感の籠った演技でした!
 
ロケ地が、海が見え、ファッションの町神戸。美しさとともに、魔法を生むような何かを期待させる風情がよかったです!
 
***
物語は上空からマッチ箱のように並んでいる住宅街のなかを走っている男・森田輝(石田法嗣)をカメラが追い、急に見えなくなるが、主人公宗方秀一(中山麻聖)の車にピックアップされるところから始まります。
宗方は、大手ゼネコン城島建設の営業マンで、今日は副社長の娘・白川早苗(小林涼子)との結婚式を3日後に控え、結婚式場ホテルで待ち合わせて最終調整をするため急いでいた。森田は結婚式の司会を担当することになっている。
イメージ 1
「間に合わない」と森田の提案で、進路変更して抜け道にスピードを上げて入ると、見た通りの住宅街ですから、バーンと娘さんを跳ねった。このとき森田はスマホを落とし前を見ていない。停止して森田がドアーから顔を出して確認?「誰も見てないから」という森田の言葉で、宗方は猛スピードで逃げた。
ニュースで轢いた相手が死亡したことを知り、いつバレるかと怯えながら過ごす。このあたりだらだらと怯えて過ごす姿が描かれ、いいかげんにしてくれという感じになります。しかし、ふたりが会えば森田は「結婚式の司会は責任を持ってやりとげる」と言う。何故か?と違和感がありました。
 
2日目の深夜、森田から脅迫じみた封書が届いたという電話が入り、怖いからと宗方のアパートに押しかけてくる。封書は、動物たちの絵から“その目”を切り取って張り付けたもの。
やってきた森田が、「宗方は結婚したら東京に出向で会えなくなる、あのころが懐かしい」と持ってきたCDを聞く。そして、次の日、ふたりは遊園地や海で遊んで過ごす。このふたりの関係は、どこかおかしいなという感じを持ちます。
イメージ 3
結婚式。お祝いの電報披露で轢逃げを臭わすような「最高の最悪な日」という電文披露があり、宗方が一瞬いやな表情をする。
 
結婚式も終わって次の日、宗方と早苗が映画を観て外に出たところで、宗方が逮捕され、宗方の自白で森田が逮捕された。
イメージ 4
ここまでが、結構な時間を使ってミステリアスな展開でしたが、実は仕掛けがあった。この時間帯のなかにネタが隠されており、次のストーリー展開に生かされるという、よくできた脚本だと思いました。
 
刑事・柳公三郎(岸辺一徳)、前田俊(毎熊克哉)が、被害者の時山夫婦を訪ねて悔やみを述べ、遺品を渡し、遺品にスマホがないが?と尋ねる。
これを契機に、父親光央(水谷豊)は娘・望の日記を調べ、彼女がスマホを紛失していたことを知り、会社を辞めて、彼女の知合いを調べ出す。ここからは水谷さん演じる光央は「相棒」の杉下刑事となり、娘がスマホで繋がっていた男を追い詰める。()
 
捕まえてみると意外な男でした! この男の心情も面白いものですが、伏せておきます。
時山夫婦が、事件が一段落したところで、娘・望の27歳の誕生を祝うシーン。光央が妻千鶴子(壇ふみ)に感謝の言葉を贈ると、これに嗚咽する妻の姿に、いろいろな感情が含まれていて泣けます!
イメージ 5
ラストは、被害者の母親・千鶴子が、事故現場に献花にやってきた加害者の妻・早苗を海の見える高台に誘い、「あなたには責任はない」と慰めます。早苗は秀一からの手紙を見せ、謝罪し、「出てくるのを待ちたい」というと、千鶴子さんがそっと早苗の手を握るシーンで終わります。
 
「本当の気持ちで後悔して欲しい、それは加害者が人生をどう生きるかに謝罪の意味がある。幸せを感じて欲しい。2度と罪を犯すことなく生きてくれるのが救いになる」という千鶴子さんの想いではなかったかと。
                                            ***