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「ボルグ/マッケンロー 氷の男と炎の男」(2018)

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テニスのウインブルドン大会の季節(201971日から714日)。松岡修三さんが「すべてのテニス選手に見てほしい!現在のテニスの舞台を作り上げたこの2人のこの試合を!」という作品。
1980年のウィンブルドン勝戦5連覇に挑んだビヨン・ボルグとジョン・マッケンロー3時間55分に及ぶ死闘を中心に、ふたりの壮絶なテニス人生を描いたもの。
この試合は知りませんでしたが、ふたりの心理状態が分かるように描かれており、試合に引き込まれ、最後はどちらが勝者というよりふたりの戦う姿に拍手したくなります。
試合は激しい性格者同士の壮烈なものとなり、結果はボルグの勝ちでしたが、翌年にはマッケンローがボルグを下し、ボルグはこれを契機に28歳で引退するが、ふたりはこの試合を通じて“真の友人”となったという。ふたりの間に何があったか?
将棋界の映画「聖の青春」(2016における村山聖八段と羽生名人との対戦で描かれた状況と同じように、お互いに敬意を払い勝負を超えた世界の試合だったとのではないでしょうか。
 
スウェーデンデンマークフィンランド合作作品。監督は「アルマジオ」のヤヌス・メッツ
ビヨン・ボルグ役は「ドラゴン・タトゥーの女」シリーズ出演で注目されているスベリル・グドナソン。ジョン・マッケンロー役は「トランスフォーマー」シリーズのシャイア・ラブーフ。ふたりは相当にトレーニングを積んでの参加だったようで、迫力のある試合描写になっています。
 
ボルグは、とても気性の激しい子で、ボールの判定に激怒し試合を放棄して6か月の試合停止を喰らった。レナートがコーチを引き受け、何度もわざときわどいホルトボールを打ち審判に食ってかからないよう躾ける。感情が高まると「その怒りを11打に込めろ」とアドバイスしキレない性格に躾けた。
 
その結果、1974年の全英オープンでの優勝。1976年のウィンブルドンで、史上最年少の優勝など輝かしい実績を築き、以後4連覇を成し遂げて国民的英雄となる。しかし、勝続ける試合のなかで、負けることの恐怖に悩まされ、自らに就寝前にガットをカチカチに張り直したラケット50本全てをチェックする事をルーティーンとして課す。そしてコートでも同じイスにタオルは2枚数と全て同じ事にこだわるというこの厳しい姿勢に与えられた称号が「氷の男」だった。
 
ウィンブルドンに到着したボルグは、乗り込む車や宿泊するホテル、寝る前にいつものルーテイーンを課す。「負けると忘れ去られる」とコーチのレナートに漏らすほどに神経質になっていた。南アフリカでの試合契約のこともマリアナとの結婚式のことも耳に入らない。
 
一方、ボルグのライバルとして注目されている世界ランク2位のジョン・マッケンローは、弁護士の父親を持ち厳格な家庭で育ち、ボルグを目指して練習。テニスが秀でていることのみが両親に対して自慢できる。自尊心・気性の激しさから、審判や観客に暴言を吐く事から「アル・カポネ以来の最悪のアメリカの顔」と言われ、ボルグの「冷静沈着」に対して「恥を知れ悪ガキ」と呼ばれ、激しいバッシングを受けていた。
ウインブルドンに来てテレビ出演したマッケンローは、テニスではなくボルグの事ばかりを質問され、ふて腐れていた。
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ウィンブルドン男子シングルス1回戦エル=シャフェイ戦。調子が上がらないボルグは、ノーシードの選手に苦戦を強いられるなかで1回戦を突破。
この試合をテレビ観戦したマッケンローは「何度も彼のようにクールになろうとした」と呟く。
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次の日の2回戦。ボルグはテレビでマッケンローの試合を観戦。「鳩をどけろ!」と審判に、ブーイングの観客に暴言を吐くマッケンローに、かっての自分を重ねる。
ボルグは2回戦を勝ち抜き、3回戦フローリー戦に挑むが、試合途中で雨が降り試合が中断。
ボルグは苛立ち、試合を中止するようレナートに求める。しかし雨が止んだ為、試合の続行となるも辛うじて勝利。これで遂にボルグのストレスが爆発。レナートの解雇を言い出す。「マッケンロー有利」のニュースを見て帯同していた妻マリアナと言い合いになり、マリアナも差ってボルグは孤独にあえぐ。レナートの「ブチ切れるな!怒れ!その怒りを11打に込め。5セットと巌が得るな!短気が出たら終わりだ」を思い出す。
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勝戦。試合前、ボルグは控室でレナードに「観衆を黙らせろ!」と苛立つ。マッケンローが先にコートに入場、激しく野次られる。ちょっとこれには驚きましたね!次いでボルグ、スウエーデンからの応援団も駆けつけ、大声援が送られるなかでの入場。
 
ボルグとマッケンローは、一進一退の攻防を繰り広げ、審判の誤審に、いつもとは違って、マッケンローは一言も文句を言わず試合に集中。ボルグもマッケンローの想いに応えるようベストを尽くす。遂に、タイブレークに突入。しかし勝負はつかない、心と心の闘が続く。まるでふたりは試合を楽しんでいるように見える。
遂にボルグが勝利し5連覇達成という成果で終わるが、ギャラリーはふたりをスタンデイングオベーイションで讃える。
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この時、ふたりは会話を交すことはなかったが、次の日、モナコへ戻る為に空港を訪れたボルグはマッケンローと再会。マッケンローは「次は勝つ」と宣言して、お互いにハグを交わし別れた。「氷の男と炎の男」と正反対の人間と思われた2人の間に、友情が芽生えた瞬間でした。
 
大坂選手の苦戦を眼にする今、彼女の苦しみが分かるような作品でした。勝負がついた時の勝者と敗者が相手を想う心がさわやかで、頂点に達したもののみが味わえる世界なのではないでしょうか。
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キャスト

スベリル・グドナソンビヨン:ボルグ

シャイア・ラブーフジョン:マッケンロー

ステラン・スカルスガルド:レナート

ツバ・ノボトニー:マリアナ

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