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第25回「時代は変わる」

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“いだてん”後半の主人公がいよいよ登場!四三(中村勘九郎)がまさかの3度目のオリンピックに出場し、負けて帰ってきた報告会で「まけちゃ意味がない」と息巻く若者が現れる。田畑政治(阿部サダオ)である。「30歳で死ぬよ」と予言され、体が弱かった彼は、自分が生きている間に日本水泳を世界レベルに引き上げようと血気盛ん。朝日新聞に記者として入社し、政治家の大物・高橋是清萩原健一)にも接触。震災不況でオリンピック参加に逃げ腰の治五郎(役所広司)や金に厳しい岸清一(岩松了)も驚く多額の資金援助をとりつけてみせる。
感想:
アムステルダムオリンピック参加を巡り、水上競技連盟・陸上競技連盟が設立され、体協は力を失いオリンピックの担い手が高橋是清をはじめとする大物政治家・記者たちの手に委ねられることになる。水泳競技の台頭、勝つためのオリンピック参加、政治家から金が出るなどスポーツを取り巻く環境が大きく変化し、物語の気風も大きく変わってきました。
もっとも大きく変わったのは、“ヒヤー”の四三から、機関銃のようにしゃべる田畑への主役の変化。阿部さんの大げさで派手な演技。30歳で死ぬと信じているこの男は人の何倍もの速さで喋り、先に進んでいく。とても面白いキャラクター、阿部さんの演技が光っています!
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元号スクープの噺も面白かった!
 
高橋是清役の荻原健一さんの演技。荻原さんの前で阿部さんが震えて座っているように見え、荻原さんの持つ威圧感に圧倒されました!
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田畑が高橋是清からせしめたアムステルダムオリンピック参加経費を陸連、水連に配分する様が、落語「火炎太鼓」の“おち”「半鐘はダメ、おじゃんにされる」をネタに、孝蔵のしゃべりにダブらせて描かれる。クドカンさんはどうしても落語でこの話に決着をつけたいらしい。噺を知っている人には受けるでしょうが・・。
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今回から第2部の幕開け。
治五郎は、震災直後にもかかわらず、翌年に迫ったオリンピックの予選を開催した。すでに引退していた四三が母校の士気を煽りすぎて、背中でゴールテープを切って、選手でもないのに一着でゴ-ルしてしまい34歳で3度目のオリンピック参加が決定した。()
 
アントワープオリンピックにクロールに惨敗して、これを苦にして飛び込み浮かんでこなかった男・田畑政治。これから4年が過ぎすっかり大人になっていた。マーチャンことこの男、後にオリンピックを東京に呼ぶ男、第2部はカッパ編です。
 
大正131924)年の春、田畑政治東京帝国大学を卒業し朝日新聞の面接試験を受けていた。記者は今ではエリートですが当時は家を貸すなと言われた。
面接で好きなスポーツを尋ねられ、面接官の社長・村山龍平と政治部長緒方竹虎リリーフランキー)を前に、好きなテーマを聞いただけなのによくもまあペラペラ「温水プールがなく1年中練習できないようでは世界に勝てないよ!」と水泳の話をした。面接後、緒方が確認すると「身体が弱い家系なので泳ぐのは止めた。政治部で結構。しかし、水泳は続け、世界一になる」と言い切った。
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緒方は「台風のような男。頭が口に追いついていない。字も汚い」と記者向きでないと評価したが、村山が「顔がいいから」と政治を気に入り、採用されることになった。() 立憲政友会の担当となり、当時の党首は高橋是清だった。
 
記者となった政治は、パリオリンピック出場選手が陸上ばかりなのが気に入らないと運動部記者に詰め寄った。この運動部記者が河野一郎桐谷健太)で「あたりまえだ。陸の方が水泳より上なんだよ」と言い放つ。河野は四三の弟子にあたり、早稲田大学在学中に箱根駅伝に出場していた。
これに政治が「メダルに手も届かん陸上は止めた方がいい、30代半ばの金栗なんかが勝てるわけがない」と反論。
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四三は最後のレースだと覚悟してパリオリンピックに挑んだ。しかし、酷暑の中、32㎞地点で意識を失い、棄権という結果に終わった。
 
オリンピック後の結果報告会で、四三は「破れて悔いなし、幸せな選手生活であった」と報告した。治五郎がこれまでの金栗の功績を挙げ讃えた。次いで水泳競技では選手の紹介はなく結果のみの報告となったため、政治が「体協の陸上びいきが目に余る」と不満を爆発させ「陸上は出場選手が多いが結果が出てない」と責めた。
野口(永山絢斗)が土下座し「責任をとって辞任する」と発言。政治は「あんたじゃ話にならん。嘉納治五郎名誉会長の引責辞任を求める」と言い出す。治五郎はこの喚く男をつかみ「こいつの口がいだてんだ」と背負い投げた。() すると「ジジイ!嘉納治五郎に伝えろ!水泳が体協から独立する」と政治。()これを見た四三が「こちらが加納先生ばい!バカもん」といなした。治五郎は「よかろう、好きなようにしたまえ!」と言い捨てた。
 
この年の10月、政治は日本泳法の達人で東京帝大水泳部のコーチ・松澤一鶴らと「大日本水上競技連盟(水連)」を発足させた。
水連の事務所は帝大工学部の倉庫。「治五郎にぶん殴られてはくがついた」とマーチャン。夏以外は選手は泳ぐことが出来ずもんもんとマージャンなどしながら過ごす状態。勝っちゃんに「温水プールぐらいないと勝てん」と政治が話すと、倉庫の床を開き地下に下りて巨大な船舶実験用水槽を見せる。
 
一方、水連に続いて河野らが「全日本陸上競技連盟(陸連)」を発足させ、水泳と陸上競技の代表選手は、各連盟が選考することになった。体協の業務は総括ということになった。
 
普通選挙法が改正され原文を手に入れ号外を出すことになり、第5条を政治が担当することになったが字が汚く読めない。緒方が政治をこの仕事から降ろすという、本業の記者としての仕事は振るわなかった。() 
 
しかし、どういうわけか上司の緒方には可愛がられた。緒方に連れていかれたのが切っ掛けで、政治は日本橋のバー「ローズ」に通うようになる。 
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大正151927)年12月、政治は「ローズ」のママのマリー(薬師丸ひろ子)の店にいた。ママから「緒方さんはこの席で三浦吾楼に出会い、それが縁で車に乗せてもらい、次の年号が大正という大スクープをとった」という話を聞く。政治もスクープを狙ってママから次の年号を聞き出すと「光文」。急ぎ帰ろうとすると「手相を見てあげる」という。年号のスクープの話など知らなかった。()
政治の手相を見て「30歳で死ぬ」とママが涙を流す。政治が「知っている。田畑の家は代々30歳で死ぬ」とこの占いを信じ込んでしまった。こんなわけで、生きる時間が短いだけに何倍ものスピードで喋りまくるんですね!()
 
大正天皇崩御宮内省から発表された。政治は「あと2年しかない」と走り出した。
政治が出社すると日日新聞の号外を前に、緒方が「何で間に合わないのか!」と次の年号のスクープがないことに腹を立てていた。政治が「光文」と口にしようとしたとき、河野が「光文」とすっぱ抜いていた?しかし緒方は裏付けがないとこれを押さえた。年号は昭和で、光文は誤報になっていた。マーチャンはこの件にも関係なかった。(笑)
 
元号が昭和へと変わり、震災復興事業で東京の景色は日々変わっていった。孝蔵はこの頃、おりん(夏帆)と長女の美津子、次女の貴美子と相変わらずの貧乏暮らしだった。
ある日、孝蔵が高座で「火炎太鼓」を演じていると、客のひとりの男が「あんた朝太か!」と声を上げた。この男が政治だった。「俺だよ!勝鬨亭のまーちゃんだよ。あんた財布盗ったろう弁天橋で、返せ!」と政治。ここでの孝蔵と田畑が「火炎太鼓」ネタでやりあうシーンは面白い。
ここから落語「火炎太鼓」の“おち”「半鐘はダメ、おじゃんにされる」をネタに、アムステルダムオリンピック参加経費準備のからくりが描かれる。クドカンさんはどうしても落語でこの話に決着をつけたいらしい。噺を知っている人には受けるでしょうね!
 
昭和21027)、国際オリンピック委員会IOC)から体協にアムステルダムオリンピックへの招待状が届く。
治五郎はアムステルダムには60人の選手を出場させるつもりだが、その経費のめどが立っていない。
 
その頃、水連の地下プールが完成していた。政治は自分が言い出したことを忘れていてびっくりすると、「政治が作れというから医学部病棟のステームを引き込んで作った」という。皆が真冬にばんばん泳いでいた!
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体協本部で河野ら陸運幹部と政治ら水連幹部が鉢合わせし、各競技のオリンピック出場者をめぐって言い争いが始まった。
体協会長の岸清一(岩松了)は、勝手な主張を繰り返す政治たちには業を煮やし「渡航費を集めてっきたら何人でも連れて行く」とどなりつけた。
 
高橋是清から緒方に「お前のところの若いのが来ている」と確認の連絡が入る。緒方の「聞いてやってください」で是清から金が出ることになった。
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治五郎」や野口、可児(古舘寛治)らが体協本部に集まり、オリンピックの渡航経費工面に頭を悩ませた。やけになった治五郎が参加を止めようと言い出したところに政治が現れ「国から水連に補助金が出た。いただき過ぎたのでお裾分け」とやって来た。実は、岸に怒鳴られたあと、政治は大蔵大臣高橋是清に直談判に行き、6万円ものオリンピック特別予算を手にいれていた。
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記事 20190702
「いだてん」が視聴率を盲信する時代に終止符を打つ傑作であることが浸透しつつあるようだ。原理主義的な大河ファンに敬遠されても、今を照射するテーマを笑いで包む本作は、戦中戦後をどう描くのか。「この作り方を最後まで貫いてほしい」というNHK放送総局長の言葉は心強い。清水 節
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