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「バーニング 劇場版」(2018)ミステリーだけでは終わらない、格差の闇に挑んだ作品!

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カンヌ国際映画祭コンペティション部門で国際批評家連盟賞を受賞した作品ということでWOWOWで観賞。この作品が是枝監督の「万引き家族」と競った作品とは知らなかった。
監督は名匠と讃えられるイ・チャンドン村上春樹さんの短編小説「納屋を焼く」(1983)をモチーフにした作品と聞き、これは難しいな!と覚悟して、監督作品に初挑戦です。

監督:イ・チャンドン 、脚本:オ・ジョンミ イ・チャンドン 、撮影:ホン・ギョンピョ。
出演はイ・ジョンス:ユ・アイン、ベン:スティーブン・ユァン、シン・ヘミ:チョン・ジョンソ。新人で抜擢、見事な演技でした。

アルバイトで生計を立てる小説家志望の青年と幼なじみのコンパニオン女性。彼女が旅行中に一緒になった金持ちで謎めいた男が「時々ビニールハウスを燃やしている」と青年に声を掛けた後、彼女が消えた。彼女を探す青年が行き着いた先は・・というはなし。

前段で格差社会の実態をえぐり出し、パントタイム、リトル・ハンガーとグレート・ハンガー、ビニールハウスを燃やす、井戸落ちという謎めいた言葉(メタファー)を繋いで、ミステリーだけでは終わらない、格差の闇に挑んだ作品ととらえ、とても面白く観ました。

前半と異なって後半に彼女が消えて、映像には不穏な空気が溢れ、ミステリアスに攻めてくる演出に興奮し、そしてどう解釈するかと問うてくる結末、彼は再生されると思いました!


映画『バーニング 劇場版』予告編            
あらすじ(ねたばれ):
商店街の売り込みキャンペーンをしているシン・ヘミ(チョン・ジョンソ)のところに失業中のイ・ジョンス(ユ・アイン)が現れ、彼女が「子供のころ知ってる!」と声を掛け、彼女の仕事が終わって酒屋で邂逅を喜びあった。ヘミはアフリカへ行く、そしてパントマイムを習っているという。みかんを美味しそうに食べて見せるパントマイム、「いつでもみかんが食べられるから。うまく演じるには“みかんが無いと忘れたらいい”のよ」。アフリカに行くのは「飢えた人にはリトル・ハンガー(腹が減った人)とグレート・ハンガー(人生に飢えた人)がいてグレート・ハンガーに会いに行く」という。

ヘミはパントマイムで世の中を渡ると思っています。(笑)

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ジョンスはヘミに誘われ彼女のアパートに泊まり、結ばれた。そしてアフリカに旅行すると、猫の面倒見を頼まれた。猫は餌を食べ糞の形跡はあるが観たことはなかった。

ジョンスは父親とは離れて暮らしていたが、暴行罪で拘留され、父親の牧場を世話するために町に戻って、ヘミに出会った。母親は16歳のとき父親の武力を嫌って出て行った。

牧場に来ると牛が1頭いるのみ。ビニールハウスが荒れ放題!作業室には包丁が何本も隠されている。弁護士に会って、父親のための嘆願書を書くことにした。

半月経って、ヘミから空港に来てと電話があり、農業用のハーフトラックで迎えに行くとベン(スティーブン・ユァン)という男と一緒に待っていた。ずいぶんと金持ちに見え、イケメンだった。

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焼肉屋で食事、ヘミは「アフリカの夕焼けに涙が出た」と言い、「死ぬのは怖い、最初からいなかったように消えたい!」と涙を流すと、ベンが「泣いたことがない、遊びと仕事は区分がつかない」という。ヘミがリトル・ハンガーの話をするとベンはあくびをして聞いていた。

ヘミに「どっちの車で帰るか」と聞くと、ベンの車というからそうかと別れた。ベンは仲間に電話してポルシェを持ってこさせていた。

ベンの豪華なマンションに招待された。ベンが「ヘミの心には何かがあり苦しめている。それで100%楽しめない」とジョンスの出方を伺っている。
ジョンスが洗面所を借りると、そこにメイク用具と指輪やネックレス、ペンダント、イヤリングなどがあるのを見た。ジョンスは「こいつはギャツピーだ。なぜお前が必要なんだ」とヘミに聞くと「田舎ものがいいと言った」という。

そしてある日、ジョンスのいる牧場にベンがポルシェでヘミを連れてやってきた。

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ベンが「あの音?」と聞く。「北朝鮮からの放送だ」と説明した。
ヘミが「ここに井戸があって、7歳のとき落ちて、ジョンスが助けてくれた」という。ジョンスには記憶がない!

夕日を眺めながら、酒を飲み、薬を喫った。ヘミが上半身裸でアフリカ人のリトル・ハンガーの踊りを舞って、泣いた。ジョンスがベットに運んで寝させた。

ジョンスが「父を憎んでいる。父の爆発で家を出た、衣類を全部燃やして!」と話すと、ベンが「時々ビニールハウスを燃やしている。そんな趣味があるんだ。犯罪だが捕まらない。警察は気にもしない!」「この近くで近々やる!」という。
ジョンスが「ヘミを愛している」と伝えると「チクショウ、そうか!」と叫んだ。

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この日を境にして、ヘミとの連絡が途絶えた。ジョンスは付近のビニールハウスを見て回った。どこにも焼かれた痕跡はなかった。ヘミのアパートを調べると、きれいに経理されていた。コンパニオンの仲間や劇団、教会も調べたが誰も見た者はいなかった。ベンも「あれから連絡はなく、消えた」という。

ジョンスはヘミが言った井戸の話を思い出し、ヘミのこの記憶が正しいのかと調べ始めた。
付近の人やヘミの家族は「無かった」という。16年ぶりに母親が金を無心に来た。井戸のことを聞くと「ジョンスがヘミを助けたかは分からないが、古い水のない井戸があった」という。

ジョンスがベンをストーカーしていて、彼に掴まり、「寄っていけ!」とマンションの部屋に通された。

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洗面所に、ヘミが持っていたと同じ腕時計があった。ベンには新しい女性が出来ていた。「ボイル」と呼ぶと猫が寄ってきた。

ベンが「まだヘミを探すのか」と聞くと「もういい」と返事した。

父親に懲役1年6か月の判定が下され、ジョンスは牛を売り払った。その金でヘミが住んでいたアパートを借り、小説を書き始めた。

ベンが新しい彼女にメイクをしてところに、ジョンスから連絡があり、約束したビニールハウスのある所で待っていた。ジョンスがやってきて「ヘミはどこ?」と聞くと「来ていない」とベン。ジョンスはベンを刺し、追いかけてさらに刺し、ガソリンをかけ、身に着けているものを脱いでベンと一緒に火を点け、その場を去った・・。
               
感想:

ジョンスは何故ベンを“焼き”殺したか?

ジョンスはヘミを愛していた。本当に愛されていたかの確証を探したが見つからなかった。しかし、井戸の話は薬を喫う前にヘミから言い出したこと、このころのヘミは踊りや言動から、グレート・ハンガーの夢に破れベンとの関係は崩れかかっていたから、ヘミも自分を愛していると思っている。

ベンがヘミを殺したという確証はないが、ジョンスはビニールハウスが女性を暗示していると分かり、贈った腕時計、猫などの物件が見つかり、ベンがヘミを殺した可能性は高いとみていた。ヘミの生き方はパントマイムだし、不信電話もあり、生きている可能性もある。

ジョンスはヘミの記憶の中で小説を書き始めている。ベンに復讐することを考えていた。
最初に刺したのはヘミのための復讐、追いかけて、2度目に刺し服を焼いたのはギャツピーなベンに翻弄される自分が嫌で、自分を消すためだった。

ベンのような男は好きになれません。スティーブン・ユァンさんではりません(笑)うまく演じてくれました!
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