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第27回「替わり目」

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アムステルダム五輪での水泳選手団の活躍を受け、田畑政治(阿部サダオ)は次回ロサンゼルス大会での必勝プランを練る。同じころ、現役を引退した金栗四三(中牟田勘九郎)のもとに兄・実次(中村獅童)が上京し熊本に戻るよう告げるが、後進の育成の夢を抱える四三は葛藤する。水泳大国を目指す田畑の悲願だった神宮プールが完成し、そのこけら落しとなった大会で田畑は天才少女・前畑秀子(上白萌歌)と運命の出会いを果たす。
感想:
落語「替わり目」がモチーフの回。ラストで四三が政治がつぶやく「水連はいままで陸上のこと、ずっと目の敵にしてきたけれど、金栗さんだけは認めないわけにはいかない」を恥ずかしそうに聞く。オリンピック参加意義の大きな潮目を感じさせてくれました!
四三の三度オリンピックに参加して一番の想い出は、「紅茶と甘いお菓子が美味しかった」。参加だけで精一杯だったオリンピックが勝を取りにいくオリンピックになってきました。田畑の出現は大きな潮目でした!
 
オリンピックに四三が出る幕が遠のき、引っ込む動機が兄・実次の死になりました。長い間、四三の出世を喜びながら、幾江さん(大竹しのぶ)への四三の不義理を陰で一種懸命支えたんですね!これを表には決して出さない。そして、上京し治五郎、四三に別れを告げていたとは、泣けます。獅童さんのお芝居が観れなくなるのは寂しい。
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四三の「紅茶に甘いお菓子」の味には、ストックホルムオリンピックの入場式、マラソンで意識不明となりペトロ家の人たちに救出されたことなど、日本が初めてオリンピックに参加した思い出と誇りがある。これを落語「替わり目」で締め括るという粋な演出、すばらしい脚本でした。
 
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昭和361961)年、皆が鯛焼きを食べながらTVで野球の巨人戦を観ていると五りん(神木隆之介)が「早くフルーツパッフェを食べにいこう」と知恵(川奈李奈)を誘う。これに今松(荒川良々)が「師匠が鯛焼きを買ってくるわけが分かってない」と叱りつける。長男・清が生まれたときの想い出を・・(後述)。
 
昭和21927)年、孝蔵は寄席で「替わり目」を演じていた。万朝(柄本時生)の紹介で柳家三語楼の弟子になり、柳家東三楼と名を変えていたが、遊ぶ金欲しさに師匠の羽織と着物を質入れして破門される。
長男・清が誕生したが、産婆に払う金のなく、「祝いの尾頭付きだ」と鯛焼きを産婆に渡すというありさまだった。これを見た美津子と貴美子のお腹がグーと鳴り、「食べられるわけがない」と産婆さん。()
 
体協ではアムステルダム成果、陸上はメダル2個、水上は6個、「これも田畑のお陰」と大喜び。政治はローズのママに「アムステルダムで勝った。あんたの占いは当たる。俺は、次のオリンピックまで生きられるか。あと3年しかない」と泣きついていた。
 
ある日、四三(38歳)がランニングを終え帰宅し水浴をしていると実次が訪ねてきていた。(これも見納め?) 実次が東京に来たのは、ストックホルムに出場する四三に旅費を届けに来たとき以来、17年ぶりだった。
四三が町を案内すると、実次は震災から5年を経た東京の町並みを見て「ようここまで、持ち直したばい」と感心し「そろそろ、熊本に帰ってこんね」と言い残して帰って行った。四三は人生の岐路に立たされた!
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アムステルダムオリンピックのあと、政治は次のロサンゼルス大会に向けて3つの必勝プランを立てた。先ずは「監督、コーチの早期決定」だった。水連との話し合いの結果、政治が総監督、松澤(皆川猿時)が監督を、アムステルダムオリンピックに選手として参加した野田一雄(三浦貴大)が助監督を務めることになった。「ここから日本のオリンピックが始まる。メダル・ガバガバ大作戦」と政治。高石選手は水泳界のエース、たいそう女性にもてたという。高石に斎藤工さんのキャステインはよかった。()
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2つ目は「世界標準の競技用プール建設」だ。神宮外苑にプールを作る計画を立てて、松澤(皆川猿時)とともに岸(岩松了)に資金提供を依頼した。
岸は「ポケットマネーを出す。1万人収容の競技プールを作って、おしまいじゃあるまいな」と問うと「これからは興行!生のレースを国民に見せる。日米対抗を行う」と政治。
 
3つ目は「打倒アメリカ」。「オリンピック直前に世界の覇者アメリカを招いて前哨戦をやる。これでアメリカを徹底的にたたきのめし、自信喪失に陥れる」と。
岸は力になると約束し、神宮プール建設工事が始まった。
 
四三は「アニキトク」の電報を受け取り、急ぎ帰郷した。だが、実次の臨終には間に合わなかった。死因は急性肺炎だった。シエ(宮﨑美子)から「美次は東京から戻ったときに、嘉納先生に会ってお礼を述べてきたから、もう、いつ熊本に連れ戻してもかまわん。池部に伝えてもかまわんと言った」と聞かされる。こんな嘘をついてまで熊本に帰らせかったのかと四三は切なくなった。
そこに、スヤ(綾瀬はるか)と幾江(大竹しのぶ)がやって来た。幾江が「今晩は仏さんの側におれ!お前のために死ぬまで頭を下げて回っていた兄の側におれ」という。四三はその夜、実次のそばで寝ずの番をした。熊本を離れて東京に出るときの見送りから、ストックホルム・オリンピック参加資金を抱えて東京にやってきた美次を思い出し、「兄上、そろそろ潮時ばい」と腹が決まった。
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長い間、四三の出世を喜びながら、幾江さんへの四三の不義理を、陰で一種懸命支えた!これを表には決して出さない!泣けますよね。
 
高座に上がれない孝蔵(森山未来)は、納豆売りを始めるが、声が出ずうまくいかない。売れ残りが家族の毎朝のおかずになり、「朝も納豆、昼も納豆。わたしゃ納豆混ぜるためにあんたの女房になったのかい?」とおりん(夏帆)がいらだった。「じゃおまえ売ってみろ」と売り言葉に買い言葉、おりんが納豆を担いで飛び出していく。
孝蔵は納豆を肴に飲みながら、「みんな言っている。あんな美人の女房を泣かせちゃいけないって。出来女房ですよ」とつぶやくと、出がけたおりんがまだそこにいてこれを聞き、「私は、寄席さえ出て欲しい、高座料が欲しい。それだけなんです」と泣く。(落語「替わり目」)
 
孝蔵、おりんの涙に、バカな遊びは止めそうですね!
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関東大震災から7年がたった昭和51930)年春、帝都復興祭が盛大に行われた。10年後の昭和15年は紀元2600年にあたり東京市長の永田(イッセー尾形)は、記念行事として市は何を行うべきかと悩んでいた。すると秘書の清水照男がオリンピックはどうかと提案する。
 
その頃、政治悲願の神宮プールが完成した。9コース50mプールを持つタイル張りの見事な競技場で、こけら落しとして極東大会が開かれた。この大会で16歳の前畑(上白石萌歌)が200m平泳ぎで日本新記録を出し、注目を集めた。さらに神宮プールでの日米対抗戦の開催も決定した。
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政治は故郷浜松で14歳の宮崎康二という逸材を見つけ、対抗戦のメンバーに加える。
 
次はスポンサー探しとラジオ番組に出演して「水上座談会」を行った。司会の河西三省トータス松本)に代って司会を始める政治。この川西が32歳だというのを聞いて、政治は自分が32歳になっていることに気付いた。
 
バー「ローズ」のマリー(薬師丸ひろ子)を訪ね「騙したな占いババ、もう一度歳を占え!忙しくって歳を数えるのを忘れていた!」と迫る。さらに「次のオリンピック、日米どちらが勝つ?」と聞くと「米国」という。「これからは逆だ!」と政治。同席の緒方(リリー・フランキー)に「結婚したいので嫁探してください」とお願いをした。()
 
四三は体協を訪ね、治五郎に、熊本に帰ることを伝えた。治五郎は「東京へのオリンピック誘致の件で四三の力を借りたい」というが、「母にお返ししなければいけん!」と熊本へ帰るという決心は変わらなかった。
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「兄が亡くなった」というと、治五郎が「知ってる」という。実次は上京したおり講道館を訪ね、道場破りだと言って治五郎に勝負を挑み、治五郎は一本背負いで投げ、そのあとで四三の兄だと分かったという。() 実次が家族に話したのは、嘘ではなかったのだ。
 
四三が治五郎と話を終えて体協を去ろうとしていると、政治が現れた。政治は治五郎に呼び出されたのだがしばらく待たされ、四三とふたりきりになる。政治が「参考までに聞きたいのですが、三度オリンピックに参加して、一番の想い出は何ですか」と聞くと「そうね」とストックホルムオリンピックでの出来事、マラソンで意識を失いペテロ家から受けた恩を思い出し「紅茶と甘いお菓子が美味しかったね」と四三。
政治が「聞くんじゃなかった。が、ひとりで初めて世界と戦った。たいしたもんだ!水連はいままで陸上のこと、ずっと目の敵にしてきたけれど、金栗さんだけは認めないわけにはいかない」とつぶやくと、そこで四三が恥ずかしそうに聞いていた。(落語「替わり目」のおち)
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