映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「女は二度決断する」(2018)差別のない海に還る!

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タイトル“二度の決断”とは何か?これで観ることに決めました。(WOWOW)
母親の愛に満ちた、人種差別・移民排斥運動への強い抗議というメッセージ性のある作品でした。
監督は「愛より強く」「そして、私たちは愛に帰る」「ソウル・キッチン」のファティ・アキン。主演はダイアン・クルーガー、共演はヌーマン・アチャル、デニス・モシットー ヨハネス・クリシュ サミア・ムリエル・シャンクラン。

あらすじ:
ドイツ、ハンブルグに在住。トルコ移民のヌーリと結婚したカティヤ(ダイアン・クルーガー)は幸せな家庭を築いていたが、ある日、白昼に起こった爆発事件に巻き込まれ、ヌーリ(ヌーマン・アチャル)と息子のロッコ(ラファエル・サンタナ)が犠牲になってしまう。警察は当初、トルコ人同士の抗争を疑っていたが、やがて人種差別主義者のドイツ人によるテロであることが判明。愛する家族を奪われたカティヤは、憎しみと絶望を抱えてさまよい、・・・。

〇人種差別テロに復讐する理由。家族を返せ!
冒頭、夫が刑務所でから出所し、その場での結婚式で愛を誓う。夫を如何に愛し待っていたか、この出だしにはびっくりさせられます。

サウナで友人ギルビットに見せる刺青。子供が強く育つようにと日本の“侍”を彫り込んでいる。子供のオモチャは自分で修理、これがラストの伏線に使われるという子供愛に満ちた母親。いたるところで夫と子供が遊ぶ映像を思い出すシーン。いかに妻として母親としての愛が強かったか。画面から強烈に伝わってきます。復讐する理屈はこれで十分でした!

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結婚という喜びから人生のドン底、復讐へと変化するダイアン・クルーガーの喜び、悲しみ、絶望、憎しみの表情がすばらしい!!

〇生きて復讐するが第1の決断。
夫と息子の死による孤独に耐えられず風呂で自殺を図るが、そこにかかってきた“犯人は人種差別極右テロリスト”の電話で、血液で染まった風呂水から生還する演出が衝撃的だった。

カティヤの証言で、警察が逮捕したのはネオナチのアンドレウルリッヒ・ブラントホフ)とエッダ(ハンナ・ヒルスドルフ)の若いメラー夫妻。

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裁判では、強面のメラー夫妻の弁護士(ヨハネス・クリシュ)と華奢なカティヤのダニーロ弁護士(デニス・モシット)という弁護士対決の構図から、いかにもカティヤ側が弱そう。(笑) そして検事のやる気のなさが目に付く。人種差別に対する国の感心のなさを訴えているようだ。

被告側の親の証言は有利なものであったが、爆弾製造した部屋の鍵の保管が曖昧だったこと、さらにメラー夫妻以外の指紋が遺されていて犯人を確定できない。さらに、当日ふたりが逗留していたというギリシャのホテル経営者ニコラス・マルキスの証言で窮地に立たされる。
カティヤは自分が現場で見た事実を証言するが、彼女が薬を使用していたことから、証言の信ぴょう性に欠けると取り上げられない。判決は証拠不十分で無罪となった。メラー夫妻が犯人であることに間違いなにのだが、これを受け入れてもらえないことにカティヤは怒り心頭。

カティヤは彫り物に赤色を付けて完成させて復讐を誓い、ギリシャのマルキスのホテルを訪ねる。
そこで、カティヤはメラー夫妻がキャンピングカーで海辺に滞在していることを確認し、法廷審議のなかで知った作り方で、時限爆弾をつくり殺害することにする。

早朝、メラー夫妻が楽しそうに出かけたのを確認して時限爆弾を仕掛け、夫妻の戻りを待って爆破しようとするがなかなか戻って来ない。待つうちに、「テロ行で復讐することが正義なのか。テロにテロで復讐すれば、自分がテロに追われる」と頭によぎり、爆破を中止した。

〇死して復讐するが第2の決断。
このとき、彼女にこれまで止まっていた生理が始める。赤い血に、幸せだったころの記憶が戻った。復讐は止められない!

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ダニーロ弁護士から、終身刑を喰らわすために上告しようと持ち掛けられるが、彼女は感謝して、自らの死を持って復讐することで、復讐の連鎖を断ち切ると決断した。

メラー夫妻が外出から戻り、レジャーカーの中に消えたのを確認し、自らら車に乗り込み、時限爆弾を爆発させた。
彼女には差別のない海にいる夫と息子に会いに行ったのでしょう。静かなエンデイングでしたが、強烈な印象に残る作品でした。
                                                      ***


「女は二度決断する」予告編

「シャイニング」(1980)

 

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「ドクター・スリープ」(2019)を観るための予習です。NHKBSで録画していたもの。
原作スティーブン・キング、監督スタンリー・キューブリックによる「シャイニング」(1980)は、今もなおホラー映画の傑作としてとても名高い作品。「シャイニング」と呼ばれる超能力を持つ少年ダニーと、その家族に降りかかる恐怖を描いた作品です。

主演はジャック・ニコルソン、共演はシェリー・デュヴァル、ダニー・ロイド、スキャットマン・クローザース、バリー・ネルソン、フィリップ・ストーンジョー・ターケル、トニー・バートン、アン・ジャクソン、リア・ベルダム。

あらすじ:
冬の間は豪雪で閉鎖されるホテルの管理人職を得た小説家志望のジャック・トランス(ジャック・ニコルソン)は、妻のウェンディー(シェリー・デュヴァル)と心霊能力のある息子ダニー(ダニー・ロイド)とともにホテルへやってくる。そのホテルでは、かつて精神に異常をきたした管理人のグレーディーが家族を惨殺するという事件が起きており、当初は何も気にしていなかったジャックも、次第に邪悪な意思に飲みこまれていく。(映画COMより)
             
何が怖いかって、シャックが何者なのかが分からないこと。ラストで見せる過去の事件への関り。幻覚(シャイニング)で過去の自分と会話しているようで、管理人が家族を殺したという犯人は、実はジャックではなかったのか。

ジャックの頭がおかしくなっていき、妻ウェンディーや息子ダニーとかかわるシーンにヒヤヒヤさせられ、そして狂ったジャックが妻と息子に斧で襲うシーン、ポスターで観る通りの怖さです。これに合わせる不気味な音や怪奇な死体、血液の海などの映像に怖くなる。

事件の現場となるロッキー山脈の山中にあるオーバールックホテル。山岳道を縫ってホテルへの雄大な風景や雪景色。ホテル内の部屋、整然と整えられた装飾品などが実に美しい。そして左右対称というスタンリー・キューブリック拘りの構図が不気味。

***(ねたばれ)
オーバールックホテルの雪に閉ざされる11月から5月まで閉鎖する間の冬季管理人募集に、シャックはオーナーの面接を受けた。念のためにと「冬季管理人をしていたグレーディーという男が、斧で妻と二人の娘を惨殺し自らも命を絶った」と聞かされる。

その頃自宅では、予知能力があるジャックの息子ダニーが「そろそろパパから電話がくるよ」と言うとすぐに、ジャックから妻ウェンデイに「管理人に採用された」と電話が入る。一方、ダニーはエレベーターからあふれ出る大量の血や、佇む双子の女の子の姿が浮かんだ。

ホテル閉鎖の日、トランス一家はオーバールックホテルに到着。ウェンディは豪華な部屋を気に入り、ダニーは三輪車で遊んでいると双子の女の子が現れる。

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黒人の料理長ハロラン(スキャットマン・クローザース)が「自分も君と同じ能力がある」とダニーに近づき、「『シャイニング』という能力で過去や未来が見える」と言い、「ホテルにはいろいろなことがあった。237号室には入るな!」と注意する。

朝、ウェンディがジャックを起こし外でダニーと遊ぼうと誘ったが、小説を考えると断る。が、ジャックは壁にボールをぶつけて遊んでいた。その間、ウェンディとダニーはホテルの外にある遊び場“迷路”で遊んでいた。ジャックは部屋にある迷路の模型に二人の姿を投影していた。なんだこれは?

火曜日。ダニーは三輪車で、ホテル内の廊下を自由に走り回っているが、237号室が気になる。

ジャックは広間でタイプライターを打っていて、ウェンディが大雪になると知らせにやってくると、「お前は仕事の邪魔ばかりする。タイプを打っているときは来るな!」とえらい剣幕で起こる。夫婦の間に何があったのか?

土曜日。雪になった。オーバールックホテルはすっかり雪に覆われて、電話は不通となる。
ダニーがミニカーでホテル中を走り回っていて、エレバーターの前にいる双子の女の子に遭遇。瞬間、惨殺された二人の姿が浮かび「ハロランさん怖い!」と語りかけた。

月曜日。ダニーがおもちゃを取りに父の部屋に入ると、虚ろな目をしたジャックに手招きされる。ダニーが「ママとぼくをいじめないで」というと、ジャックは「どういう意味だ」と顔色を変え、「ママがそう言ったのか?」と問う。ホテルに来るまでに何があったのか?異常な父子だと怖くなる!

水曜日、ますます雪深くなってきた。ダニーが三輪車で遊んでいると、237号室のドアが開いていた。ダニーが部屋に入った。

ウェンディはボイラーの点検をして、広間の方からジャックの叫び声を聞いた。
駆けつけると、カウンターにうつ伏せになり悪夢にうなされたように興奮し「悪夢を見た。君とダニーを殺し切り刻んだ」と泣き出す。そこへ、ダニーがやって来る。ダニーの首に絞められたような痕がついていた。ウェンディは、「あなたがやったの!」とジャックをなじり、ダニーを抱いて広間を出ていった。

ジャックはクソクソと怒りながらゴールド・ルームにやってきた。バーカウンターに座り、酒が欲しいと顔をあげると、そこにはバーテンダーがいて、「ロイド」と声を掛けた。ロイド(ジョー・ターケル)はジャックに酒を出す。ジャックは、ロイドに「ダニーの痣は俺ではない。あのクソ女め!」と妻ウェンディへの悪態を露わにする。そこに、ウェンディが現れ「ダニーは237号室で、見知らぬ女に首を絞められた」と言う。ジャックは「お前、頭は大丈夫か?」と問い返し237号室へ。

ダニーは危機を感じハロランとつながっていた。ジィーと響く音に苦しむ。

ジャックは237号室にやってきてバスルームに入ると、中から美しい全裸の女(リア・ベルダム)が出てきた。誘われるように女を抱きしめキスを交わすと、鏡に映ったその姿は腐りかけた老婆だった。高笑いする老婆から逃れ、ウェンディのもとに戻ったジャックは「何もなかった」とウソをついた。
ウェンディは「ダニーを連れてホテルを出よう」と言うと、「君はいつもそうだ。俺が何かを手に入れると問題を起こす。安アパートには戻れん!」と怒って部屋を出ていった。

ジャックがゴールド・ルームにやってくると、パーティが開かれていた。ロイドが「トランス様、歓迎です!」と迎えてくれた。
ジャックはグラスを持って踊ろうとして給仕係とぶつかり飲み物が服にかかり、シミを落とすためその男と化粧室に入った。男の名はグレーディー(フィリップ・ストーン)。この化粧室がピンクで異様、幻覚の世界だ!

ジャックはグレーディーに「管理人をしていたか?」と聞くと「管理人はずっとあなただった」と言い「まもなくここに料理人の黒人がやってくる」と告げる。
「自分は娘二人と妻を厳しくしつけた。あなたも息子のダニーと妻のウィンディをしっかりしつける必要がある」と言う。

このころハロランは雪上車でホテルを目指していた。

ウェンディはダニーを部屋に残し、ジャックと話すためバットを手に広間へやってきた。そこでジャックの原稿を見た。「仕事ばかりで遊ばないジャックは今に気が狂う」と同じ文章が延々と綴られていた。
そこにジャックが現れ襲い掛かろうとしたので、ウィンディはバットでジャックを殴った。気絶したジャックを引きずって倉庫に閉じ込め鍵をかけた。開けてくれと哀願するジャックに「ダニーを連れて町に行く」と告げて車庫に走ったが、雪上車のダイナモが壊されていた。

4:00pm。倉庫の中で眠っていたジャックに、外からグレーディーが「奥さんには能力がある。問題解決には努力が必要だ」と声を掛けてきた。ジャックは「何でもやる」と約束しそこから出してもらった。グレーディーはなにものか?
ウェンディの部屋では、ダニーが「レッドラム」といいながらドアにその文字を書く。鏡に映ったその文字はMURDER、ジャックのこと。

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そこにジャックがやってきて、鍵のかかったドアを斧で破壊し中に入ってきた。ここからは、ハンマーを持って追うジャックから逃げるウェンディとダニーの逃亡劇。そんなとき、ハロランの乗った雪上車がホテルに到着したが、ジャックによりハンマーで叩き斬られた。

雪の迷路に逃げ込んだダニーを追うジャック。ダニーの仕掛けた罠で出口を見失ったジャックは凍死。ダニーとウィンディはハロランが持ってきた雪上車で町に脱出した。

そしてホテルの壁には、オーバールックホテル1921年創立記念日舞踏会の写真が飾られ、その中央にジャック(親父さん)が映っていた。
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The Shining Trailer

「決算!忠臣蔵」 お金の掛かる部分を全部カットした「忠臣蔵」物語

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12月が近付くと忠臣蔵ということで、この作品を選びました。同じような考えの人が多いのでしょうか、劇場は、朝一番でしたが、満席でした。
いわゆる泣かせの松の廊下や、討ち入り、隊士の切腹などのシーンがない、吉良が全く出て来ない、これまでの忠臣蔵とは一風変わった忠臣蔵しかし、これまでのものより、納得のできる、今の時代に繋がる物語でした。すばらしいエンタテーメント作品でした!
原作は東大教授・山本博文さんによる『「忠臣蔵」の決算書』(新潮新書)。大石蔵之介が実際に残した決算書を基に、討ち入り計画の実像を記したものだという。現在のお金に換算して、隊士らの行動を説明するところに説得力があります。
おおよそ1億円の予算で邸宅に押し入り吉良を討つという計画。赤字を出すことなく達成。なぜこのことが出来たか?昼行燈の大石蔵之介に、一瞬の戦機を逃さない状況判断と決断が問われます。
銭の勘定が出来ない者に戦はできない」という赤穂藩兵学者であった山鹿素行の教えが痛いほど伝わる物語。このことは、現在の「兵站が分からない者に軍の指揮を任せられない」に繋がっています。

監督・脚本は「殿、利息でござる!」「忍びの国」の中村義洋さん。主演が堤真一岡村隆史さん、共演に濱田岳横山裕妻夫木聡荒川良々竹内結子石原さとみ・阿部サダオさんの他に、大勢の吉本喜劇の面々です。キャステインがすばらしく、堤さん、岡村さんの役は嵌り役ですが、多くの隊士のキャラクターを演じる吉本喜劇の方々の演技が凄すぎて、それぞれの想いがしっかり伝わり、分かり易い、笑いのあるドラマになっています。しかし、堀部安兵衛が何故荒川良々さんなのか?(笑)

あらすじ:
江戸・元禄年間。赤穂藩藩主の浅野内匠頭(阿部サダオ)は、江戸城内で幕府の重臣吉良上野介に斬りかかるという刃傷沙汰を起こし、幕府より即日切腹と藩のお取り潰しという厳しい裁定が下る。筆頭家老の大石内蔵助堤真一)は、幼なじみで勘定方の矢頭長助(岡村隆史)の力を借りて残務整理に追われる日々。そんな中、一部の藩士が仇討ちを口にして勝手な行動に出たり、討ち入りを期待する世間のプレッシャーも日増しに高まっていく。ところが、いざ討ち入りするにも相当のお金が必要なことが判明する一方、どうにか工面した予算800両(約9500万円)はみるみる減ってしまい、いよいよ追い詰められていく大石だったが…<allcinema>

ねたばれ(感想):
冒頭、内匠頭が火消し装束で火事を消す訓練をするシーンから始まる。訓練といっても本物の家に火をつけての訓練だからびっくりです。江戸では、赤穂藩は火消しの藩として名を知られていた。この金はどこから出ていたか?そして、後にこの訓練・火消し装束が吉良を討つことに大きくかかわってくるところが見どころ。火事シーンが実にうつくしく撮られていました!

幕府の内匠頭切腹沙汰を聞いて開かれた赤穂城での大石大評定。
藩は幕府の一方的な処置に意見するとして籠城するか、城を開け渡すかと大揉め。このとき勘定方の採った行動は金を準備するために武器を売った。これには怒る者もいるが、これから生活するためにどうするか、還賦金(退職金)が必要だというもの。籠城なら27万円。開城なら180万円。どうするかと提示。

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大石は退職金を考慮し、駆けつけた大垣・広島の親戚藩の意見を聞き、内匠頭の弟・大学を藩主として幕府に認めてもらう(再興案)として「開城」に決めた。これまでの忠臣蔵には出て来ない策です。

大石は残務整理を始める。浅野藩取り潰しと聞いて、次から次へと借金の請求書が来る。矢頭がこっそり貯めていた預金で何とか切り抜ける。そこに、江戸の藩士堀部安兵衛荒川良々)が赤穂にやってきて「吉良を討つべし!」と宣言し江戸に帰って喧伝し始める。これでは再興案がおじゃんになる、どう説得して収めるかと苦慮。
再興案の根回しにと浅野家の菩提寺遠林寺の祐海和尚を将軍綱吉が奇帰依する真言宗・護持院の隆光大僧正の元に派遣した。旅経費が270万円だった。

苦しい台所事情のなかで、矢頭が内匠頭の妻・遙泉院の化粧料を塩問屋に貸し付けた証文があるという。大石はさっそく自ら出向いて回収にかかり、20%しか回収できなかったがその額9491万円。
赤穂藩の財政は塩業でなりたっていて、吉良がこれに目をつけたと言われている。

江戸は生類憐みの法で犬がわがもの顔で闊歩していた。こんな世だから赤穂の浪人たちはいつ吉良に討ち入るのかと話題になり、再建案を推し進める大石は堀部ら江戸組を説き伏せるために原惣右衛門木村祐一)ら要人を次々と江戸に送った。各々に260~80万円。しかし、堀部らを説得できず、大石自らが大高源吾(濱田岳)を伴って上京。これに385万円を要した。それでも堀部らは納得せず、1年先送りして様子を見ることにして900万円を渡した。彼らの住む屋敷を視察すると廃屋同然の荒れた屋敷で、これに900万円払ったという。これには何か訳がありそうですね。
矢頭は「使いすぎだ!」と注意した。この時点での残高は5429万円であった。

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吉原遊郭を見学して、遙泉院を訪ねると「どのように使っているか?良からぬ処をうろついているらしいな」と窘められ、「自費で遊んでいる」と答えたため事後大石は遊びは自費ということになった。(笑)遙泉院から「とむらえ!」と言われ、用人の落合与左衛門(笹野高史)に確認すると「墓」だと言う。山を購入することにして1518万円を支払うことにした。

大石は京都に戻り、江戸組と吉良の目を欺くために自腹で遊郭に通いドンチャン騒ぎを続けた。見かねた矢頭が派手すぎると注意し、大石は妻・理玖(竹内結子)と子たちを妻の実家に帰した。駕籠も使わせなかった。

江戸組は大石が本当に討ち入りを諦めたのかと不安がるが、吉田忠左衛門(西村まさ彦)が、西村さんの熱演で(笑)、これを否定して彼らを支える。

吉良は隠居という噂を聞いた大石は「それでは沙汰がないのか?」と大垣藩主・戸田采女正(滝藤賢一)を訪ね再興のことを糺すと、「俺のところに来ないか?」と誘われた。

このようなとき、料亭で偶然江戸に送ったはずの祐海和尚に会った。和尚は「もはや手遅れ。浅野の弟・大学は広島藩に追放され、再興の望なし」だという。怒った大石は、駕籠で行けという矢頭の申し出を断り、これを知りながら言わなかったと物頭の進藤源四郎(近藤芳正)ら元に急いだ。駕籠でこれを追った矢頭が何者に襲われ瀕死の重傷を負う。

進藤らは「再興などできない。お上は赤穂を手放さない。大人しくしてほしいだけ」という。大石が「それでは武士の一分が立たん!敵は幕府」と反発しているところに瀕死の矢頭が運ばれてきた。大石が「討ち入りに銭は足りるか?」と聞くと「やるなら大事に使え!しっかり見積もり先々を考えろ。ムダに使うな!」と言い残して逝った。この言葉に皆が泣き、討ち入り決行が決まった。この物語のハイライト、堤真一さんが大石に見えました!

大石は丸山で決起大会。予算上、決行日は三周忌(翌年の3月14日)、江戸につれていけるのは29人と決め、同志のリストラを開始する。説得に大高源吾と貝賀弥左衛門(小松利昌)があたり、大石がこれまでやってきた女遊びの悪行を使い忠義意欲を失わせることでバッサバッサ切っていくところがみごと。(笑)

この時点での残高1638万円。

江戸に出て、900万円で買った屋敷に急ぐが、焼けた!という。長屋14軒を3月までの約束で借り490万円。
密偵のための屋形舟代16000円、刀など武具購入費14万円・・・と準備しなければならないものがでてくる。“もう金がない”

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12月2日、全員揃って討ち入りのリハーサル。采配を振るうのは軍師・菅谷半之亟(妻夫木聡)。Ⅰ回で勝負!と計画を詰める。討ち入りは午前4時、屋敷前で二手に。梯子がいる、トラを打つ14万円、かけやが6個で9万円、カスガイ、松明、弓矢と計算。衣装は夜間で目立つもので1262万円と試算、火消し衣装で間に合うとほっとした。3人一組で行動、そのうちの一人はくさりかたびたが必要として15人分823万円。すでに予算を287万円オーバー。さらに笛が必要だ。
大石は呆然としているところに、吉良の動向を探っていた源吾が「吉良は14日に在宅している」と伝えた。
殿の命日は3月14日。この日でなければという意見もあったが、それでは必勝のための資材が整わない。3月分の生活費が浮かせて完全装備で討ち入りできると12月14日を討ち入り日と決めた。

大石は決行の前日、遙泉院を訪ねたが会えず、側人・落合与左衛門に決算書を渡して帰った。
遙泉院と落合が決算書を調べると貸した金は全部使い切っていて、遙泉院は「でくの棒!」と決算書を投げたが、別に100両の金貨があった。

この金貨は、決行後家族の子供たちを救うための金だった。この人情噺に泣けます!
どうやって大石が100両もの金貨を作ったかは、ラストシーンで示されます。世に伝わる大石の遊びは大嘘だった!

お金の掛かる「忠臣蔵」を金の掛かる部分を全部カットして、こんな面白い物語を作ったスタッフ、キャストのみなさん。すばらしかった。

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映画『決算!忠臣蔵』予告90秒 11月22日(金)全国ロードショー

「アナと雪の女王2」(2019) 

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原題はFrozen2。タイトルとしては「アナと雪の女王2」という邦題が圧倒的に優れています。アナとエルザの物語でなく、エルザが雪の女王でなければならない理由が明かされるからです。アナとエルザが、見た目にもしっかり大人になっていて、前作のような青臭い物語ではなく、自分を見つけ、女性としての生き方を描くというしっかりしたテーマ性のある物語になっている。これに大感激でした。

物語は前作に比して複雑。吹替版で観て、字幕版で観賞というのが良いかもしれません。長いエンデイングクレジットが終わって、オラフがエルザとオラフの顛末を語ってくれます。聞き逃さないように!

そして、「水の記憶を探せ」というテーマ(自然回帰)にふさわしく、ビジュアルのクオリティが圧倒的で、特に水や風といった自然表現の美しさに圧倒されます。

監督は引き続きクリス・バックジェニファー・リーが担当。前作でアカデミー賞の主題歌賞に輝いたロバート・ロペスとクリステン・アンダーソン=ロペスが本作でも楽曲を手がけています。

あらすじ:
雪と氷を操る力を持ったアレンデール王国の女王エルサは、深い絆で結ばれた妹アナと共に、王国を治めながら平穏で幸せな日々を過ごしていた。しかしある日、エルサにだけ不思議な歌声が聞こえ、王国に危機が訪れる。歌声の正体を探すため、アナとエルサは仲間のクリストフやオラフと共に旅に出るが、それは、エルサの魔法の力に隠された秘密を解き明かす驚きの冒険の始まりに過ぎなかった。<allcinema>

 とてもパワフルなミュージカルで歌曲数も多く前作の主題歌「Let It Go」ほどにヒットするかどうかわからませんが、「Into the Unknown」もすばらしく、心地よく物語に引き込んでくれます。

****(ねたばれ)
タイトルが出るまでの、アグナル国王とイドゥナ王妃が幼いアナとエルザに語るお伽ばなしが伏線となり物語が展開する。とても大切なオープニングです。

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国王は「はるか昔から森があり、そこには霧、風、火、地の精霊が住んでいた。ノーサルドの森だ。友好的な関係にあったが友愛のダムを作ったことで予期しないことが起こった。魔法の世界だ、そのとき異変に襲われ父ルナードが殺された。その力は我々に向かった。不思議な声が聞こえた。その後、精霊たちは消えた。アレンデール王として気になる」話して聞かせる。
アナが眠ってしまい、この後をイドゥナ王妃が「川に記憶が残っている」とエルザに語る。母親がエルザに語ったということが大きな意味を持ってきます。

両親の事故から6年経った、前作から3年後が舞台。アナ21歳、エルサ24歳で二人ともうつくしく成人し、平穏で平和な毎日を過ごしていた。ところが、エルザが不思議な歌声が聞こえると言い、「川で全てが分かる」という母の言葉を「もう自分の力を抑えきれない。ここは自分の住む場所でない。未知の世界を見たい」と気にしだす。

ある夜、エルザが「風、火、地、水」と呪文を唱えると、町中に異変が起きる。水は枯れ、大風が吹き、人々が町から駆け出していく。ハビー(トロールたちの長老)が「王国が安全でない!」と忠告。怒る精霊を鎮めるためと、エルサ、アナ、クリフトフ、スヴェン、オラフは北方の地へ旅に出た。

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一向は霧の壁に行き当たった。まさにそこは魔法の森だった。エルザが魔法で開き、中に入った。エルザの魔法が霧の魔法に勝っている。風、火、水とエルザの魔法の力が試される。とても美しい絵と歌で語られていく。

美しい森の中を歩いていると、突然風の精霊ゲイルが現れ、みんな上空に巻き上げられた。エルザが果敢に氷の魔力で挑みかかると、そこに少女に抱かれたアグナル王子(幼い頃の国王)が現れる。少女が何者かはもうすぐ明かされます!

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そこにノーサルドラとアレンデールの兵たちが姿を現した。彼らは昔、森に閉じ込められた人たちだった。エルザの魔力で相手はひるんだが、突然火炎が襲ってくる。これもエルザの魔力に負かされ、火の妖精は小さなサラマンダーで、エルザの手のひらに載って来る。

彼らと打ち解けキャンプを張った。エルザがアナにかけてやったショールを見てノーサルドラの指導者・イエレナが「ノーサルドウの母のものだ」という。あの少女はエルザとアナの母だったのだ。なるほどそうだったのかと驚きです。アナには魔力がないが、父譲りということで。
イエレナが「アレンデールの暮らしが永遠に続くと思ってはだめ」と言い、「風、火、水、土」と4つの精霊を説明し、さらに北にあとひとつ精霊・アートハランがあるこという。エルサは「この川が母の言う川だ」とアートハランの謎を解くため先を急ぐことにする。

クリストフの出番がない。(笑) ここで出会ったノーサルドラの若者・ライダーからノーサルドラ流恋の打ち明け方を聞いて、歌いながら、アンに試すが受け入れてもらえない。アンはエルザに夢中でクリストフは放っておかれている。(笑)
北へ向かったアナとエルサ、そしてオラフは難破船を発見した。母と父が載っていた船だった。中に入るとエルザの魔法の謎を解くために行こうとしたアートハランへの地図があった。エルザは「私のせいで父母は死んだ」と泣いた。そして、「ここに行くために生まれてきた」とアナとオラフを安全なところにとボートに乗せて川に流した。

アナとオラフは大きな滝に落ち、洞窟にたどり着く。

一方、エルサは走りに走って海辺に。ここで海を越えるために波を凍らせるが、荒れ狂う波には効き目がない。そこに馬の姿をした水の妖精・ノックが現れた。エルサは激しいバトルの末、ノックを負かし、これに乗ってアートハランに急いだ。

エルサは母イドゥナの声に導かれアートハランの奥まで行くと、広い洞窟の氷の壁にイドゥナの記憶が映る。水の記憶により、過去の出来事が氷像を作る。
ノーサルドラたちは「ダムは役に立たない。平和の贈り物ではない」とルナード祖父を斬ったのだった。これを知ったエルサは次第に凍り付き、動けなくなった。エルサは雪を飛ばしてその事をアナに伝えようとする。

洞窟のアナのもとに、風がどこからか雪を運んできた。雪は見る間に氷の像を作り、過去に魔法の森で起きた事実を告げるのだった。アナはエルザが居なくなったことを嘆いたが、「決めるのは自分だ。やるしかない」とダムを壊すことに決めて走りだす。

土の妖精アース・ジャイアントを眼覚めさせ、彼らの怒りの力を借りて、ダムを壊す。オラフはエルザの力が弱り身体がバラバラになりついて来れない。応援にクリストフが駆けつけた。

ダムが決壊し、洪水が町に押しかける。洪水で凍り付いたエルザの身体が解かされ、ノックに乗って駆けつけ、これを凍らせ町を救った。もはやエルザは、かってのエルザではなく、第5の妖精になっていた。

クリストフとアナは結婚し、エルサは「これから冒険!」と野を、海を走っていきました。

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「水に記憶がある」というテーマ。海には46憶年の記憶が眠っている。水というテーマは天皇陛下の研究に、陛下の即位を祝う「奉祝曲」や芦田愛菜さんの祝辞にもつながっています!今世紀の大きなテーマーかもしれません。日本にとって格別な作品になったようで、うれしい気持ちになりました!
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『アナと雪の女王2』- 予告編

松たか子さんの「Into the Unknown」


「アナと雪の女王2」松たか子が歌う「イントゥ・ジ・アンノウン」MVが公開!

“いだてん”第44回「ぼくたちの失敗」

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1962年アジア大会。開催国インドネシアが台湾とイスラエルも参加を拒んだことが国際問題に発展。ボイコットする国もでる中、田畑(阿部サダオ)率いる日本選手団は参加を強行。帰国後に猛烈なバッシングを浴びる。川島(浅野忠信)は田畑の事務総長解任に動く。脳出血で半身まひを患った志ん生ビートたけし)は高座復帰を目指してリハビリに励む。五りん(神木隆之介)との落語二人会を企画し、それを目標とするのだが・・・。

感想:
政治フィクサーの川島正次郎には、口八丁の田畑も勝てない。田畑の繰り出す政治批判の言質を取られ、うまい具合にマスコミを操作されて「田畑が津島を代えたがっている」「参加を決めたのは田畑だ」と嵌められ、国会に喚問され、こき下ろされる。どこかで見た政治劇でした。
スポーツを愛する田畑には、こいつらは大嫌いな人物だった。田畑は汚い水には住めない男だった。大河でこのように名を遺せてよかった!!

東京オリンピック実行プログラムのレールはすでに田畑流に引き終わっていた。幸運であった「“おれたち”の失敗」と田畑の同志がうまく引き継ぎ、川島の出番はなかったのでは? 川島は池田総理の所得倍増計画を推進することで、オリンピックに口を出す必要はなかった。

田畑は妻(麻生久美子)に恵まれました。希林さんと裕也さんのような関係(笑)、黙って酒を買いに行くと何も言わないが、夫が一番つらいことが分かっている。「ぐだぐだ言わないできれいに去る。こんな政治家は放っておけ!」と品格のある辞職を望んだでしょう。
政治とスポーツの関係をドラマにしてくれたのがとてもよかった。川島を演じる浅野さんの人を小馬鹿にした演技がうまく、川島という人物が大嫌になった。(笑) 今も自民党の体質は変わっていない。

五りんが二人会の直前にいなくなった。ちゃんと身の程を心得た男だった。戦争とスポーツの物語を繋いでくれた男。東京オリンピックで役割を終えたのでしょうか。

***
第4回アジア競技大会スカルノ大統領がイスラエル、台湾の参加を拒否したことで、日本はこの大会に参加すべきかどうかと大混乱。現地では川島は「どんな判断もプラスとマイナスがある。参加すれば日本はIOCから除名され東京オリンピックを取り上げられるかもしれない。不参加でもようやく払拭した反日感情が高まるだろう」といい加減な発言で混乱させるだけ。会長の津島はどちらでもと決められない。「あんたの顔を立てるのではなく、選手のために、アジア民族の祭典を心待ちにしているインドネシア人のための出る」という田畑の発言で参加することになった。選手たちは喜んだ。

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8月25日午後3時、日本の参加が開会式数分前に決まった。競技が始まると日本選手団は初日から好成績を連発した。だがその活躍が日本の新聞に載ることはなく、参加を決定したのは誰かと戦犯捜しの記事ばかり。

オリンピックが始まると帰国した川島は羽田空港の押し寄せた記者に、「参加を決めたのは津島、田畑だ」と話した。

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東京の田畑の妻・菊枝(麻生久美子)も「古巣の朝日新聞にも嫌われた」と心配のあまりオリンピック組織委員会事務所の岩田を訪ねる始末。
田畑はバー「ローズ」もママ・マリー(薬師丸ひろ子)に電話で「俺の判断が正しかったのか」と東京の評価を不安がる。
そこに居た河野(桐谷健太)が「台湾かイスラエルが出場する可能性なないのか?参加すれば大会ではなく親善大会になり、お咎めなしだ」と助言した。

この助言で田畑はインド代表のソンディとともに各国委員の先頭を立ち。大会組織委員長に大会の名称変更を迫った。
しかし、これがインドネシア国民の怒りに触れ、数千人のデモ隊がインド大使館を取り込んで火を放つ辞退を招く。群衆にインド大使館が包囲され、ソンディは国外に逃亡、田畑は現地警察の護衛がついた。
東(松重豊)は「大会が始まれば津島さんでも夢中だよ。これを証明するために選手はどうどうと戦い。私は答弁する」と大会中であるにもかかわらず、東京に帰国した。

9月4日、大会は閉幕。日本は155個のメダルを獲得、総合Ⅰ位という成果を収めた。しかし、まーちゃんの戦いはここからが本番となった。

帰国した田畑は記者会見で「スポーツは、政治や宗教から中立でなければならない。しかし、現地にいってしまえば大会をぶち壊しは出来ない」と述べた。
翌日の新聞で「開き直って終始不遜な態度」と田畑を叩く記事ばかりが載った。

岩田(松坂桃季)は「マスコミは問題のある大会に選手を参加させた戦犯は誰かと騒ぎ立て、誰かを犯人に仕立て上げねばならない雰囲気になっている」、さらに「国際陸上競技連盟から日本は何故参加したかと説明を求められている」という。田畑は「親善試合として参加したと主張するしかない。誰にも言うな!」と指示した。
ところが記者に取り囲まれ田畑は、「陸上だけは親善競技だった」と苦し紛れに喋った。しかし、翌日にはこの発言を撤回するという迷走ぶり。

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国内外からも田畑の発言は批判された。「組織がおかしい」と川島は記者会見で国民への説明する場を早急にもうけると発言。田畑は参考人として、国会に召喚されることになった。
国会のオリンピック準備委員会での質問。川島の息のかかった議員が質問し、田畑はどこで間違えたかとオリンピックを利用せよと高橋是清に喋ったこと、金も口も出ししっかり管理するとオリンピック大臣に就任したときの川島の言葉を思い出し、強い政治の力で追い込まれていることを感じた。

島津は数日後川島に会い「会長を辞職するが田畑も辞めさせてくれ」と伝えた。

10月2日、国際陸上競技連盟から東京オリンピック組織委員会ジャカルタ問題に関する制裁はインドネシアに対してのみ行い、日本を含め参加国には責任がないと回答が届いた。
田畑は「これで問題なしだ!」と五輪音頭の歌詞「オリンピックの顔と顔。トトント顔と顔。顔だよ、白い、赤い、青い」と“俺のオリンピック”を進められると喜んだ。

しかし、組織委員会の懇談会で東から「津島と田畑の責任問題を審議するので退室してくれ!と辞任を突き付けられた。田畑が「俺が辞めたらオリンピックはどうなるんだ!」と叫び、岩田は「今頃、何を言い出すんだ!」と東に噛みついた。東の「事務総長としての最後のしてくれ」で、すべてが川島のシナリオ通りに、田畑の事務総長解任が決まった。田畑の机の上には治五郎から託されたストップウォッチが遺されていた。

田畑は辞任会見で「私は辞めたくないんだ。私の経験と情熱をオリンピックに役立てたい!最後まで!やっとレールを敷いたところなんだ。私が敷いたレールを最後まで走れないのが残念でしかたがない」と懸命に訴えた。これを観る妻・菊枝が泣いた。「無念だったろうな!」と阿部さんの演技に涙しました。

田畑が事務総長を解任されると、五りんのオリンピック宣伝部長の仕事も途絶えた。
代わりに五りんは、志ん生と二人会に備えて落語の稽古に励むようになった。

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テレビ寄席の特別版として開かれる二人会で、志ん生が高座に復帰することになった。しかし、二人会当日、五りんは美津子から贈られた衣装を質に入れ、“足袋”に出ると書き置きを残して姿を消した。美津子が慌てたが、当の志ん生は「2度やりゃあいいんだろう」と高座に上がると満員の客席から拍手と声援に迎えられた。「地獄の閻魔に呼び止められて、もうちょっと喋ってこいてぇんで、三途の川を引き返して参りました・・」。
ここからは、志ん生と田畑が妻への想いを語る姿を重ねて描くという、ユニークな演出。志ん生は再び高座に立てることで、田畑は職を失ったことで、妻の有難さを知った。

田畑はバー「ローズ」でやけ酒を飲んでいた。テレビからは「東京五輪音頭」の公開録画の風景が流れ、三波春夫(浜野謙太)の歌声が響いている。浜野さんが三波春夫によく似ていた!
クダを巻く田畑はマリーに追い返され、家に帰っても妻の菊枝に酒を出せと絡んで、つまみのおでんを買いに行かせた。

一人になると田畑は菊枝(麻生久美子)への想いをしみじみと語り出す。「すまないと思っているよ。ばかのひとつ覚えみたいに、オリンピックオリンピックって、家族を一切顧みない、新婚旅行も行ってない、子供の運動会にも行ってない。ダメ亭主だ、畜生め。こうなったら、思いっきり女房孝行してやろうじゃんね」と、その時、玄関に誰かが立っている。見れば「俺のオリンピック」を持ってきて、岩田、松澤(皆川猿時)、森西(角田晃広)が笑顔で立っていた。「まーちゃん忘れ物ですよ。ちゃんと完成させないと」という。この言葉に、田畑は泣いた。
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「菊とギロチン」(2018)

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とても評判が良い作品ということで、WOWOWで観ました。瀬々敬久監督作品で「楽園」(2019)に繋がる社会派作品でした。
関東大震災前後を背景に、アナキストたちを絡ませ、女相撲取りの生き様を描いた物語。

あらすじ:
舞台は大正末期、不穏な空気が漂う関東大震災直後の日本。物語の軸となるのは、かつて実際に日本全国で興行されていた女相撲の一座「玉岩興行」と、実在したアナキスト・グループ「ギロチン社」の青年たち。力自慢の女力士のほかにも、元遊女や家出娘が集った「玉岩興行」、失敗を繰り返しながらも信念を貫こうとする「ギロチン社」が、ともに抱く「差別のない世界で自由に生きたい」という純粋な願いによって、性別や年齢を越え、強く結びついていくさまを描き出す。出演は新人の木竜麻生さん、東出昌大寛一郎韓英恵さんらが出演。
細部:https://ja.wikipedia.org/wiki/菊とギロチン
                *
女相撲が存在していたなど知らないでびっくりでしたが、女相撲は「女が土俵で相撲を取ると神の怒りに触れ、雨が降る」と、旱魃を恐れて田舎では引っ張りだこで、雨ごい事業ではあるが、男にとってはエロいところもあって、いたるところで興行が立ったという。しかし、これ女性蔑視でしょう。これが昭和30年まで続いたというから驚きです。
しかし、女相撲社会は朝鮮人として追われているもの、夫の暴力から逃げてきたもの、遊郭から逃げたものなど社会の弱者といわれる人たちの逃げ場でもあり、この時代の暗い雰囲気をよく表していた。

日露戦争からシベリア出兵を得て軍国化と関東大震災で裨益し、民は食うものもなく、仕事もない。この時代の不平不満、生き辛さのなかで、女性力士たちがギロチン戦士たちと交わり、自由な世界があると夢を見出し、強く生きていく様が描かれている。
女性は男性以上に忍耐力があり、「楽園」を求めて生きていくところに、決して女性を悲しませてはならないと感動させられます。

作品のテーマは、彼女たちの生き方の背景にある人権特に女性蔑視、官憲による自由思想の抑圧、軍の腐敗による略奪・暴行など時代の暗部が抉り出し、物言わぬ国民になってはならと訴えている。
なかでも、シベリア出兵帰還兵たちによる在郷軍人会が、民に天皇国家思想を押し付け、朝鮮人を目の上の敵として探し出し処刑しようとする行為はあまりにも悲しくへきへきでした。この思想の流れのなかで、第二次世界戦争へと突入していくわけで、この時代の体験を忘れてはいけない。女相撲の興行には警官が立ち会い目を光らせるという警察の監視の目。今の時代にその片鱗はないのか?このことを訴えているところにこの映画の意義があると思う。

色彩や風物、美術品でしっかり時代が表現されており、大正という時代に入り込めること。これは見事です!

相撲シーンは長い。女相撲ということで、どうなるのかと思っていましたが、しっかり練習されたようで違和感はない。

力士・花菊を演じる木竜麻生さんは、感情をこめて相撲から濡れ場までしっかり演じ、とても映画初出演とは思えない演技でした。

****(ねたばれ)
ギロチン社。中浜鉄(東出昌大)、古田大次郎(筧一郎)らによって結成されたテロリストの結社。中浜は詩人で、やってることは富豪家から金を巻き上げて酒を飲み女を抱き革命を叫ぶだけ。古田は性格が弱いが、無口で実行派。
大杉栄が暗殺されたことで、彼らは一気にテロリストと化す。しかし、全てが失敗、古田は小粕を刺し殺人者となる。中浜が「自由!自由!」と気勢を挙げるなかで女相撲と出会う。

巡業相撲の「玉岩興行」。花菊(木竜麻生)は夫のDVを逃れて、大関十勝川韓英恵)は遊郭にいたが朝鮮人狩りを恐れ、また小桜(山田真歩)は夫が嫌で家出して相撲をとっていた。花菊はまだ新米で飯焚を兼務し、十勝川に目をかけてもらっていた。

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ギロチン社の面々が相撲を見物し、勧進元の力士招待酒宴に紛れ込んだことで中浜と古田に親しみを覚えたことから力士と彼らの交流が始まった。相撲の触れ太鼓を利用して、中浜の書いた「無産階級とともに戦う女相撲」という宣伝文を、古田が配って歩いた。
ひと時の自由を求め、浜辺で「俺たちの夢は満州だ」と“楽園”を夢見て踊る女力士とギロチンたちの踊りは秀逸だ。

招待宴席に正力松太郎(大森立飼)がいたことを思い出した古田は、朝鮮人殺しの張本人と、十勝川を庇う気持ちで、中浜とともに正力を乗せて村を離れる列車に乗り込み、襲うが寸でのところでやり損じ、追われることになった。とても面白い設定でした!

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しかし、このあと悲劇が襲う。十勝川在郷軍人会(大西信満)に捕らわれ、「天皇万歳を唱えない」と壮烈なリンチが加えられた。花菊の知らせで駆けつけた長浜と古田。「女をひとりを助けられないでなにが革命か」と挑むが捕らえられ、中浜の首に刃を。十勝川天皇万歳を唱え、在郷軍人たちも長浜と古田も万歳を泣きながら何度も何度も唱えた。そして中浜が十勝川を抱いてやった。
抵抗する限界を超えた彼らの行動は、実は多くの国民の姿だった。どうしてこうなったのか?

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この出来事で花菊は精神的に成長し、相撲で大関内無双技で倒すほどに成長した。中浜と古田は在郷軍人の計らいで、船により、この地を追われた。花菊が悲しみのなかで、海につかりながら彼らの船が消えるまで見送った。

大正13年。中浜と古田は朝鮮に渡ったが、匿われるはずが朝鮮義勇軍に裏切られ、日本に帰還。中浜は大坂実業同士会に金を無心に入り逮捕された。

村では小学生に在郷軍人会が柔剣道を教えている。この結末がどうなったかを問うています。

古田は花菊と再会した。花菊が強くなっているのを喜んだが、このとき花菊の暴力夫・定生(篠原篤)が出現。抵抗したが犯されて泣いた。古田は夫をバクダンでふっ飛ばし、花菊に相撲を続けると促し、傷ついた夫を病院に運ぶ途中で警官に逮捕された。革命家として彼ができたことはこれくらい。なんともむなしい人生だったと思う。後に古田は処刑された。

警官の女相撲での監視がきつくなり、興行を続けるには古田を警察に渡すしかないと主張する三次(嶺豪一)と花菊を守ろうとする親方が衝突。三次はお気に入りの力士・勝虎(大西礼芳)を連れて逃亡。しかし、勝虎は一次の遊びで三次を好きだはなかったと逃げるが、三次の身勝手な激しい暴行で亡くなった。勝虎の遺体が相撲小屋に戻ったときには硬直したままで、棺に入れるのに困難を極めた。全員が泣いた。

そこに警官が「女相撲を禁止する!」と進入してきたが、「神聖な土俵を警官には踏ませない」と女力士たちは武器を使うことなく住棒わざで追い返してしまう。ギロチンたちが無し得なかったことをなした。女相撲が昭和30年まで続いたという。

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二度とあってはならない歴史が、みごとなエンターテイメント作品として描かれていました。
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『菊とギロチン』予告編|Guillotine - Trailer HD

「オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁」(2019)

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中合作作品に役所広司さん出演ということで観ることにしました。役所さんのこんな激しいアクション作品を知りません。ご本人はもうやらないと仰っておられるようですが、よくぞ怪我がなくてよかったと思います。(笑)

標高8,848メートルを誇る世界最高峰のエベレストを舞台に、救助隊チーム・ウイングが墜落した飛行機からの機密文書回収に挑むというスペクタクルエンタテイメント作品。エベレストを背景にした愛とアクションの物語が、中国風に味付けされ、それは壮大です!!

監督がゲーム会社Gameloft社の元中国グラーバル副総裁、中国支社の創立者、エベレストに登頂しているという異色の監督ユー・フェイ。初監督作品で、監督の経歴がよく出た作品だと思います。

プロデューサーは「レッドクリフ」のテレンス・チャン。このあたりに役所さんの出演理由があるようです。

共演は、チャン・ジンチュー、リン・ボーホン、ビクター・ウエブスター、ノア・ダンビー、グラハム・シールズ、ババック・ハーキー、ブブツニン。

あらすじ:
ヒマラヤ周辺国家が地域の平和のためのカトマンズサミット。サミット開催前に機密文書搭載の飛行機がエベレスト南部に墜落。その文書はヒマラヤ地区の平和的局面を脅かす可能性のあるもの。インド軍側は特別捜査官を自称する2人の男を緊急に派遣し、ヒマラヤ救助隊「チーム・ウイング」に機密文書回収を依頼する。回収に与えられた時間は48時間。隊長のジアン(役訴広司)は隊が深刻的な財政難であるという現実を前にガイドの依頼を引き受け、標高8848m、氷点下50度という苛烈な雪山の頂・デスゾーンに挑む背後で、世界規模の陰謀が動き始めていた。ジアンと新たにテームに加わったシャオタイズ(チャン・ジンチュー)はこの山で大切な人を失っていた。

物語は非常にシンプル。機密文書の回収を巡るチーム・ウイングと特別捜査官の戦いにシャオタイズの亡き恋人探しを絡め、アクションと結構な泣ける愛の物語になっています。
嘘みたい話しだと思いましたがそうでない!
この脚本は、テロリストが登山客を標的に自分たちの権威を示してパキスタン政府に圧力をかけたというナンガ・バルバット登山家襲撃事件(2013)、エレベストで多いデス・ゾーンでの死亡事故、ここでの危機に直面したパーティの決断、イギリスの登山家ジョージ・マロリーの逸話(映画「エヴェレスト神々の山嶺」)を加えて出来上がっています。 

しかし、8000mのエレベストでこのアクションが可能なのか?監督が出来るというのであれば出来るんです。(笑)

主役は役所さんになっていますが、大半のアクションを担当し元恋を探し求めるシャオタイズ役のチャン・ジンチューが実の主役。登山技術、格闘技をしっかり見せてくれますが、登山装備が一番のお気に入りで、特にスカルパの靴。(笑)
チーム・ウイングの隊長・ジアンを演じる役所さん。64才にしてこのアクションは大変でしたでしょう。日中合作で“特にということ”でテレンス・チャンからのオファーは断れなかったでしょうね。
日中友好のために、若い監督、諸外国の俳優さん、若い人と一緒になりリーダーシップを執ったのが良い! 役名はジアンでなく日本名にして欲しかった!

**(ねたばれ)
冒頭、チーム・ウイングが、ジアン隊長指揮のもと、岩壁で動けなくなった登山者の救出時、突然の雪流れが起こる。この状況でジアン自らがヘリから飛び降り救助に・・。

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この事故から3日後、チームウイングのクラブバーに、自称インドの捜査官、ヴィクター(ビクター・ウエブスター)とマーカス(グラハム・シールズ)のふたりがやってきて、「インドの航空機がネパール側、デッドゾーンに墜落。機には平和の鍵を握る重要文書が載せてあるとして、この文書を探して欲しい」という。

ジアンは乗り気ではなかったが、会計担当のスヤ(ババック・ハーキー)の金がないという意見で、行うことにした。

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メンバーを強化したいと思っていたところに5年前に恋人を失ってチーム・ウイングを離れていたシャオタイズが一緒に連れていってくれという。ジアンは名アルピニストといわれた亡き娘を見る思いでこれを受け入れた。出動チームはカナダ人のジェームス(ノア・ダンビー)、山岳医師のタシ(ブブツニン)、パイロットのハン(リン・ボーホン)、これにシャオタイズが加わった。

まずはパイロット・ハンの操縦するヘリで、5900mの第1キャンプに降り立った。深いクレパスにロープを張って渡るシーンは迫力がある。ロープで繋がっての雪中行進でここから7300mの第3キャンプへ移動。ヘリは5300mのベースキャンプで待機。

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ここから秘密文書回収に隊長のジアンと依頼人のヴィクターが出発。ジェームスとシャオタイズ、マーカスがここで待機。

シャオタイズが、クラブバーで留守番しているスヤから、ふたりは怪しいという情報を聞き終えたところにマーカスがテントに入って来る。スヤは金に目が眩んだようで顧客選びに失敗したらしい。

シャオタイズは逃げたが、谷に突き落とされ気を失い、翌朝目覚めキャンプに戻って来る。

無線機を巡ってマーカスとシャオタイズの格闘。氷壁に逃げるシャオタイズ。負うマーカス。氷壁でロープにぶら下りながらの格闘。シャオタイズのアクションが見せ場です。

無線機を手にしたシャオタイズがマーカスニに気付かれないようモールス信号でベースキャンプのハンに連絡。ハンがヘリで現場に。しかし、そこにマーカスがいて、拳銃で後部回転翼を撃たれ、ヘリが激しい回転しながら地表に激突炎上、ハンが危機一発で脱出したが負傷。
シャオタイズとマーカスがアイスハンマーで激しく戦うが、ハンの投げたライターでマーカスの登山衣が炎上、火ダルマになって谷底へと消えた。

一方、ジアンは第3キャンプとの通信が途絶えたことで、「文書回収より大切なものがある」と下山しようとすると、ヴィクターが正体を表しジャンに墜落機への誘導を強要する。

通信が途絶え負傷したハンはシャオタイズに「自分を置いて降りろ!」と勧めるが、シャオタイズは亡くした恋人のことを想い諦めなかった。ジアンの位置(GPS)を知ったシャオタイズはハンに「待っていて!」と声を掛け、氷壁を登り始めた。

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遂にジアンとヴィクターが取っ組み合いの格闘となった。ヴィクターのピッケルがジアンの腹に刺さる。ジアンは「あいつには追い付けん!」とシャオタイズが先に墜落機に着くと期待して倒れ込んだ。

シャオタイズは氷壁を登り切り、墜落機にたどり着き、機密文書を手に入れた。そこにヴィクターが現れたが、目の前で文章を焼き、遅れてたどり着いたジアンとパラグライダーで、追いすがるヴィクターを振り切って脱出。唖然!! この手があったか。(笑) しかし、失速しシャオタイズはクレパスに落下。ジアンは行方不明に。

物語には終わりがあれば始まりがあると、(笑)シャオタイズがクレパスのなかで氷詰めになっていた恋人と再会を果たすという恋物語

誰が要請したかは分からないがというヘリで救出されたハンが、かってのチーム・ウイングのクラブバーを訪ね、亡きメンバーを追悼するシーンで終わります。
突っ込みどころが沢山ありますが、役所さんの熱演を観て、満足でした。
***


映画「オーバー・エベレスト 陰謀の氷壁」本予告(60秒)11/15全国公開!