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宮﨑あおいさんを応援します

「菊とギロチン」(2018)

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とても評判が良い作品ということで、WOWOWで観ました。瀬々敬久監督作品で「楽園」(2019)に繋がる社会派作品でした。
関東大震災前後を背景に、アナキストたちを絡ませ、女相撲取りの生き様を描いた物語。

あらすじ:
舞台は大正末期、不穏な空気が漂う関東大震災直後の日本。物語の軸となるのは、かつて実際に日本全国で興行されていた女相撲の一座「玉岩興行」と、実在したアナキスト・グループ「ギロチン社」の青年たち。力自慢の女力士のほかにも、元遊女や家出娘が集った「玉岩興行」、失敗を繰り返しながらも信念を貫こうとする「ギロチン社」が、ともに抱く「差別のない世界で自由に生きたい」という純粋な願いによって、性別や年齢を越え、強く結びついていくさまを描き出す。出演は新人の木竜麻生さん、東出昌大寛一郎韓英恵さんらが出演。
細部:https://ja.wikipedia.org/wiki/菊とギロチン
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女相撲が存在していたなど知らないでびっくりでしたが、女相撲は「女が土俵で相撲を取ると神の怒りに触れ、雨が降る」と、旱魃を恐れて田舎では引っ張りだこで、雨ごい事業ではあるが、男にとってはエロいところもあって、いたるところで興行が立ったという。しかし、これ女性蔑視でしょう。これが昭和30年まで続いたというから驚きです。
しかし、女相撲社会は朝鮮人として追われているもの、夫の暴力から逃げてきたもの、遊郭から逃げたものなど社会の弱者といわれる人たちの逃げ場でもあり、この時代の暗い雰囲気をよく表していた。

日露戦争からシベリア出兵を得て軍国化と関東大震災で裨益し、民は食うものもなく、仕事もない。この時代の不平不満、生き辛さのなかで、女性力士たちがギロチン戦士たちと交わり、自由な世界があると夢を見出し、強く生きていく様が描かれている。
女性は男性以上に忍耐力があり、「楽園」を求めて生きていくところに、決して女性を悲しませてはならないと感動させられます。

作品のテーマは、彼女たちの生き方の背景にある人権特に女性蔑視、官憲による自由思想の抑圧、軍の腐敗による略奪・暴行など時代の暗部が抉り出し、物言わぬ国民になってはならと訴えている。
なかでも、シベリア出兵帰還兵たちによる在郷軍人会が、民に天皇国家思想を押し付け、朝鮮人を目の上の敵として探し出し処刑しようとする行為はあまりにも悲しくへきへきでした。この思想の流れのなかで、第二次世界戦争へと突入していくわけで、この時代の体験を忘れてはいけない。女相撲の興行には警官が立ち会い目を光らせるという警察の監視の目。今の時代にその片鱗はないのか?このことを訴えているところにこの映画の意義があると思う。

色彩や風物、美術品でしっかり時代が表現されており、大正という時代に入り込めること。これは見事です!

相撲シーンは長い。女相撲ということで、どうなるのかと思っていましたが、しっかり練習されたようで違和感はない。

力士・花菊を演じる木竜麻生さんは、感情をこめて相撲から濡れ場までしっかり演じ、とても映画初出演とは思えない演技でした。

****(ねたばれ)
ギロチン社。中浜鉄(東出昌大)、古田大次郎(筧一郎)らによって結成されたテロリストの結社。中浜は詩人で、やってることは富豪家から金を巻き上げて酒を飲み女を抱き革命を叫ぶだけ。古田は性格が弱いが、無口で実行派。
大杉栄が暗殺されたことで、彼らは一気にテロリストと化す。しかし、全てが失敗、古田は小粕を刺し殺人者となる。中浜が「自由!自由!」と気勢を挙げるなかで女相撲と出会う。

巡業相撲の「玉岩興行」。花菊(木竜麻生)は夫のDVを逃れて、大関十勝川韓英恵)は遊郭にいたが朝鮮人狩りを恐れ、また小桜(山田真歩)は夫が嫌で家出して相撲をとっていた。花菊はまだ新米で飯焚を兼務し、十勝川に目をかけてもらっていた。

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ギロチン社の面々が相撲を見物し、勧進元の力士招待酒宴に紛れ込んだことで中浜と古田に親しみを覚えたことから力士と彼らの交流が始まった。相撲の触れ太鼓を利用して、中浜の書いた「無産階級とともに戦う女相撲」という宣伝文を、古田が配って歩いた。
ひと時の自由を求め、浜辺で「俺たちの夢は満州だ」と“楽園”を夢見て踊る女力士とギロチンたちの踊りは秀逸だ。

招待宴席に正力松太郎(大森立飼)がいたことを思い出した古田は、朝鮮人殺しの張本人と、十勝川を庇う気持ちで、中浜とともに正力を乗せて村を離れる列車に乗り込み、襲うが寸でのところでやり損じ、追われることになった。とても面白い設定でした!

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しかし、このあと悲劇が襲う。十勝川在郷軍人会(大西信満)に捕らわれ、「天皇万歳を唱えない」と壮烈なリンチが加えられた。花菊の知らせで駆けつけた長浜と古田。「女をひとりを助けられないでなにが革命か」と挑むが捕らえられ、中浜の首に刃を。十勝川天皇万歳を唱え、在郷軍人たちも長浜と古田も万歳を泣きながら何度も何度も唱えた。そして中浜が十勝川を抱いてやった。
抵抗する限界を超えた彼らの行動は、実は多くの国民の姿だった。どうしてこうなったのか?

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この出来事で花菊は精神的に成長し、相撲で大関内無双技で倒すほどに成長した。中浜と古田は在郷軍人の計らいで、船により、この地を追われた。花菊が悲しみのなかで、海につかりながら彼らの船が消えるまで見送った。

大正13年。中浜と古田は朝鮮に渡ったが、匿われるはずが朝鮮義勇軍に裏切られ、日本に帰還。中浜は大坂実業同士会に金を無心に入り逮捕された。

村では小学生に在郷軍人会が柔剣道を教えている。この結末がどうなったかを問うています。

古田は花菊と再会した。花菊が強くなっているのを喜んだが、このとき花菊の暴力夫・定生(篠原篤)が出現。抵抗したが犯されて泣いた。古田は夫をバクダンでふっ飛ばし、花菊に相撲を続けると促し、傷ついた夫を病院に運ぶ途中で警官に逮捕された。革命家として彼ができたことはこれくらい。なんともむなしい人生だったと思う。後に古田は処刑された。

警官の女相撲での監視がきつくなり、興行を続けるには古田を警察に渡すしかないと主張する三次(嶺豪一)と花菊を守ろうとする親方が衝突。三次はお気に入りの力士・勝虎(大西礼芳)を連れて逃亡。しかし、勝虎は一次の遊びで三次を好きだはなかったと逃げるが、三次の身勝手な激しい暴行で亡くなった。勝虎の遺体が相撲小屋に戻ったときには硬直したままで、棺に入れるのに困難を極めた。全員が泣いた。

そこに警官が「女相撲を禁止する!」と進入してきたが、「神聖な土俵を警官には踏ませない」と女力士たちは武器を使うことなく住棒わざで追い返してしまう。ギロチンたちが無し得なかったことをなした。女相撲が昭和30年まで続いたという。

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二度とあってはならない歴史が、みごとなエンターテイメント作品として描かれていました。
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『菊とギロチン』予告編|Guillotine - Trailer HD