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“いだてん”第44回「ぼくたちの失敗」

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1962年アジア大会。開催国インドネシアが台湾とイスラエルも参加を拒んだことが国際問題に発展。ボイコットする国もでる中、田畑(阿部サダオ)率いる日本選手団は参加を強行。帰国後に猛烈なバッシングを浴びる。川島(浅野忠信)は田畑の事務総長解任に動く。脳出血で半身まひを患った志ん生ビートたけし)は高座復帰を目指してリハビリに励む。五りん(神木隆之介)との落語二人会を企画し、それを目標とするのだが・・・。

感想:
政治フィクサーの川島正次郎には、口八丁の田畑も勝てない。田畑の繰り出す政治批判の言質を取られ、うまい具合にマスコミを操作されて「田畑が津島を代えたがっている」「参加を決めたのは田畑だ」と嵌められ、国会に喚問され、こき下ろされる。どこかで見た政治劇でした。
スポーツを愛する田畑には、こいつらは大嫌いな人物だった。田畑は汚い水には住めない男だった。大河でこのように名を遺せてよかった!!

東京オリンピック実行プログラムのレールはすでに田畑流に引き終わっていた。幸運であった「“おれたち”の失敗」と田畑の同志がうまく引き継ぎ、川島の出番はなかったのでは? 川島は池田総理の所得倍増計画を推進することで、オリンピックに口を出す必要はなかった。

田畑は妻(麻生久美子)に恵まれました。希林さんと裕也さんのような関係(笑)、黙って酒を買いに行くと何も言わないが、夫が一番つらいことが分かっている。「ぐだぐだ言わないできれいに去る。こんな政治家は放っておけ!」と品格のある辞職を望んだでしょう。
政治とスポーツの関係をドラマにしてくれたのがとてもよかった。川島を演じる浅野さんの人を小馬鹿にした演技がうまく、川島という人物が大嫌になった。(笑) 今も自民党の体質は変わっていない。

五りんが二人会の直前にいなくなった。ちゃんと身の程を心得た男だった。戦争とスポーツの物語を繋いでくれた男。東京オリンピックで役割を終えたのでしょうか。

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第4回アジア競技大会スカルノ大統領がイスラエル、台湾の参加を拒否したことで、日本はこの大会に参加すべきかどうかと大混乱。現地では川島は「どんな判断もプラスとマイナスがある。参加すれば日本はIOCから除名され東京オリンピックを取り上げられるかもしれない。不参加でもようやく払拭した反日感情が高まるだろう」といい加減な発言で混乱させるだけ。会長の津島はどちらでもと決められない。「あんたの顔を立てるのではなく、選手のために、アジア民族の祭典を心待ちにしているインドネシア人のための出る」という田畑の発言で参加することになった。選手たちは喜んだ。

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8月25日午後3時、日本の参加が開会式数分前に決まった。競技が始まると日本選手団は初日から好成績を連発した。だがその活躍が日本の新聞に載ることはなく、参加を決定したのは誰かと戦犯捜しの記事ばかり。

オリンピックが始まると帰国した川島は羽田空港の押し寄せた記者に、「参加を決めたのは津島、田畑だ」と話した。

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東京の田畑の妻・菊枝(麻生久美子)も「古巣の朝日新聞にも嫌われた」と心配のあまりオリンピック組織委員会事務所の岩田を訪ねる始末。
田畑はバー「ローズ」もママ・マリー(薬師丸ひろ子)に電話で「俺の判断が正しかったのか」と東京の評価を不安がる。
そこに居た河野(桐谷健太)が「台湾かイスラエルが出場する可能性なないのか?参加すれば大会ではなく親善大会になり、お咎めなしだ」と助言した。

この助言で田畑はインド代表のソンディとともに各国委員の先頭を立ち。大会組織委員長に大会の名称変更を迫った。
しかし、これがインドネシア国民の怒りに触れ、数千人のデモ隊がインド大使館を取り込んで火を放つ辞退を招く。群衆にインド大使館が包囲され、ソンディは国外に逃亡、田畑は現地警察の護衛がついた。
東(松重豊)は「大会が始まれば津島さんでも夢中だよ。これを証明するために選手はどうどうと戦い。私は答弁する」と大会中であるにもかかわらず、東京に帰国した。

9月4日、大会は閉幕。日本は155個のメダルを獲得、総合Ⅰ位という成果を収めた。しかし、まーちゃんの戦いはここからが本番となった。

帰国した田畑は記者会見で「スポーツは、政治や宗教から中立でなければならない。しかし、現地にいってしまえば大会をぶち壊しは出来ない」と述べた。
翌日の新聞で「開き直って終始不遜な態度」と田畑を叩く記事ばかりが載った。

岩田(松坂桃季)は「マスコミは問題のある大会に選手を参加させた戦犯は誰かと騒ぎ立て、誰かを犯人に仕立て上げねばならない雰囲気になっている」、さらに「国際陸上競技連盟から日本は何故参加したかと説明を求められている」という。田畑は「親善試合として参加したと主張するしかない。誰にも言うな!」と指示した。
ところが記者に取り囲まれ田畑は、「陸上だけは親善競技だった」と苦し紛れに喋った。しかし、翌日にはこの発言を撤回するという迷走ぶり。

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国内外からも田畑の発言は批判された。「組織がおかしい」と川島は記者会見で国民への説明する場を早急にもうけると発言。田畑は参考人として、国会に召喚されることになった。
国会のオリンピック準備委員会での質問。川島の息のかかった議員が質問し、田畑はどこで間違えたかとオリンピックを利用せよと高橋是清に喋ったこと、金も口も出ししっかり管理するとオリンピック大臣に就任したときの川島の言葉を思い出し、強い政治の力で追い込まれていることを感じた。

島津は数日後川島に会い「会長を辞職するが田畑も辞めさせてくれ」と伝えた。

10月2日、国際陸上競技連盟から東京オリンピック組織委員会ジャカルタ問題に関する制裁はインドネシアに対してのみ行い、日本を含め参加国には責任がないと回答が届いた。
田畑は「これで問題なしだ!」と五輪音頭の歌詞「オリンピックの顔と顔。トトント顔と顔。顔だよ、白い、赤い、青い」と“俺のオリンピック”を進められると喜んだ。

しかし、組織委員会の懇談会で東から「津島と田畑の責任問題を審議するので退室してくれ!と辞任を突き付けられた。田畑が「俺が辞めたらオリンピックはどうなるんだ!」と叫び、岩田は「今頃、何を言い出すんだ!」と東に噛みついた。東の「事務総長としての最後のしてくれ」で、すべてが川島のシナリオ通りに、田畑の事務総長解任が決まった。田畑の机の上には治五郎から託されたストップウォッチが遺されていた。

田畑は辞任会見で「私は辞めたくないんだ。私の経験と情熱をオリンピックに役立てたい!最後まで!やっとレールを敷いたところなんだ。私が敷いたレールを最後まで走れないのが残念でしかたがない」と懸命に訴えた。これを観る妻・菊枝が泣いた。「無念だったろうな!」と阿部さんの演技に涙しました。

田畑が事務総長を解任されると、五りんのオリンピック宣伝部長の仕事も途絶えた。
代わりに五りんは、志ん生と二人会に備えて落語の稽古に励むようになった。

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テレビ寄席の特別版として開かれる二人会で、志ん生が高座に復帰することになった。しかし、二人会当日、五りんは美津子から贈られた衣装を質に入れ、“足袋”に出ると書き置きを残して姿を消した。美津子が慌てたが、当の志ん生は「2度やりゃあいいんだろう」と高座に上がると満員の客席から拍手と声援に迎えられた。「地獄の閻魔に呼び止められて、もうちょっと喋ってこいてぇんで、三途の川を引き返して参りました・・」。
ここからは、志ん生と田畑が妻への想いを語る姿を重ねて描くという、ユニークな演出。志ん生は再び高座に立てることで、田畑は職を失ったことで、妻の有難さを知った。

田畑はバー「ローズ」でやけ酒を飲んでいた。テレビからは「東京五輪音頭」の公開録画の風景が流れ、三波春夫(浜野謙太)の歌声が響いている。浜野さんが三波春夫によく似ていた!
クダを巻く田畑はマリーに追い返され、家に帰っても妻の菊枝に酒を出せと絡んで、つまみのおでんを買いに行かせた。

一人になると田畑は菊枝(麻生久美子)への想いをしみじみと語り出す。「すまないと思っているよ。ばかのひとつ覚えみたいに、オリンピックオリンピックって、家族を一切顧みない、新婚旅行も行ってない、子供の運動会にも行ってない。ダメ亭主だ、畜生め。こうなったら、思いっきり女房孝行してやろうじゃんね」と、その時、玄関に誰かが立っている。見れば「俺のオリンピック」を持ってきて、岩田、松澤(皆川猿時)、森西(角田晃広)が笑顔で立っていた。「まーちゃん忘れ物ですよ。ちゃんと完成させないと」という。この言葉に、田畑は泣いた。
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