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「ライムライト」(1952)人生は願望だよ!願望が人生を決めるんだ!

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チャプリンにとって米国での最後の作品。ロンドンでの本作プレミアに向かう船の中で、国外追放命令を受けるという運命的の作品です。このことが色濃く出た、チャプリンの集大成作だと思います。

ロンドンを離れ米国に渡り俳優としての地位を得た1914に立ち戻り、再びロンドンを舞台に、52歳にして描く、「華やかなライムライトの陰で老いは去り、若きが登場する、これはバレリーナと道化の物語」という美しきバレリーナによせる心を秘めて、舞台に散った道化の恋心が描かれます。

しかしこの物語には生きる意味や死とはなんぞや喜劇役者とはというチャプリンの人生訓、さらに限りないアメリカへの惜別の情が描かれているように感じます。

主題曲「ライムライト」はアカデミー歌曲賞を受賞していますが、「人生は夢を実現するためにある」というとチャプリンの考え方に貫かれたストーリー展開は表彰もので、脚本賞があってもよかったと思えるすばらしさです。

監督・脚本:チャールズ・チャップリン、撮影:カール・ストラス、音楽:チャールズ・チャップリン、ラリー・ラッセル、レイモンド・ラッシュです。
出演者はチャールズ・チャップリン、クレア・ブルーム、バスター・キートンシドニーチャップリン、ナイジェル・ブルース、ノーマン・ロイドらです。


Charlie Chaplin - Limelight (Trailer)

あらすじ:
〇1914年のロンドン、夏の午後
昔は売れたが今ではすっかり忘れられた喜劇芸人・カルヴェロ(チャールズ・チャップリン)がアパートに戻ってくると、玄関でガスの匂いがする。部屋を除くと若い女性がベットにうずくまっていた。カルヴェロは女性を2階の自室に運び込み面倒を見ることにした。異変に気付いた家主(マージョリー・ベネット)には妻だと嘘をついた。

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やがて女性が眼を覚ます。名を聞くとテレーザ(クレア・ブルーム)だという。「何故こんなことを!」と問うが泣くばかり。「なぜ泣く、“人生苦しみが大切、あとは幻想だ!”何10億年もかけて人間の意識は進歩したその奇跡を消すな!」と叱った。が、女はいびきをかいていた。(笑)
商売道具のバイオリンを質に入れ、食べ物を買って戻った。昔からやっている「フィリスとヘンリーのノミの曲芸」をやってもお客が笑わない!もう芸人はダメかと夢を見ながら眠った。(笑)

朝、テレーサは「死にたい」という。「どんな病気だ」と聞くと、「エンパイアー・バレーのダンサー、リューマチで5か月入院していた、もう生きるのが空しい!」という。「人生は願望だよ!願望が人生を決めるんだ!さっきまでは君の人生は無駄だったが、今は臨時の夫がいる。寝ていろ!」と励ます。

「人生は願望」がこのドラマのテーマです。

その夜も、もうひとつのだぶだぶのズボンにドタ靴で演じるハエタタキの演技を見せると拍手が起きるという夢を見た。(笑)

朝起きると、テレーサが泣いている。「君と舞台に出ていた夢を見た!」と陽気に話しかけた。
「脚に感覚がない麻痺している」と泣く。「死ぬなんてなんだ!今に命が惜しくなる。生きるには覚悟がいるんだ。瞬間を生きるんだ!自分と戦うんだ!幸せになるために戦うんだ!」と励ます。

すばらしいセリフなのでそのまま載せます

「私はコメレィアンだがもうダメだと思われている。人は歳をとると生き方が変わる。深刻な顔は喜劇役者には致命的だ。客を沸かせられない。それで舞台の前に酒を飲む。飲めばバカが出来る。それで心臓発作だ!」「客のひとり一人は良くても、団体になると怪物だ!」と喜劇役者の悲哀を喋った。

そこにエーゼントから舞台があるぞと電報が届いた。出かけて交渉をすると名を変えてやれと言われる。

アパートに戻ってくると、テレーサが「姉が街の女になって支えてくれていると知って足が麻痺した」という。「皆が生きるための努力をしているんだ。それが人間の定めなんだ!名声はどうでもいい!」と励まし、ちょっぴり自分を慰めて、「初恋をしたか」と聞くと・・・。

「文房具屋で働いていたとき、よく五線紙を買いにくる貧しい内気な作曲家におまけの五線紙とお釣りを多く渡した。その作家がアルパートホールの演奏会で大成功した。しかし私は主人に見つかって首よ」と話す。
カルヴェロはその話を継いで「その青年に出会うよ!」と話し、「人生を恐れるな!必要なのは勇気と創造力だ、そして少々の金だ!」と付け加えた。
なぜ死ぬことばかり考える?死と同じように生も避けられん!それが人生なんだ、命なんだ!」。

そしてリハビリが始めた。そこにカルヴェロに舞台出演が決まった知らせが入ってきた。出演したが客に受けてもらえず失意でアパートに戻ると、テレーサから逆に「一回の失敗で引退!貴方は偉大な芸人よ!」と逆に励まされるはめに。

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テレーサはカルヴェロとテムズ河畔を散歩できるまでにすっかり健康を取り戻していた。テレーサが結婚したいと告げた!

〇6か月後
テレーサはバレー劇団の一員として踊っていた。歌劇の練習に訪れると作曲家はあの五線紙の男ネヴィル(シドニーチャップリン)だった。歌劇の楽曲は「テリーのために(ライムライト)」。ネヴィルには文具屋にいた娘だということを伝えなかった。

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カルヴェロは飲んだくれとなり、街芸人とバイオリンを弾いていた。テレーサは座長ボダリンク(ノーマン・ロイド)に呼ばれ、「君が主役だ、道化を連れて来い」といわれ、嫌がるカルヴェロを出演させることにした。
監督ポスタント(ナイジェル・ブルース)から芝居の説明があった。第1場で、テレーサがベットで死を迎えるところをカルヴェロが道化の演技で見送る。そして第2場で、テレーサが恋人の踊りで生き返りソロで踊るというもの。

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このシナリオが現実となるというラストシーンに、唸ります。

幕が開くと第1場で大喝采。第2場へ舞台装置の展開を天井から見せる映像に驚いた!気合を入れて第2場に出なければならないテレーサが「脚が動かない!」と泣き出す。カルヴェロはいやがるテレーサをぶん殴って舞台に上げた。テレーサは完璧に踊り、何回もアンコールを受ける。

この芝居の成功で、テレーサはネヴィルから求婚されるが私には決めた人がいると断り、改めてカルヴェロに結婚を迫った。しかし、カルヴェロは「歳が違い過ぎる、もっと幸せになれ」と突き放し、身を隠した。

ヨーロッパ巡業をするまでのバレリーナになったテレーサがバーでバイオリンを弾いて稼いでいるカルヴェロを見つけ、座長ボダリンクに頼み込み「カルヴェロ記念公演」を企画してもらい、沢山の拍手がもらえるようサクラも準備して、舞台に上げた。

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アンコールに応え、「音楽で風刺コメディーをやりたい」という願望を、かってのパートナー(バスター・キートン)と演じた。何度も何度もアンコールを受けた。余りの興奮で突然の心臓発作を起こした。心配するテレーサに「大丈夫だ!君のバレーと俺の喜劇で世界を回ろう」と彼女を舞台に送り、彼女のバレーを見たいと幕間に運んでもらっている間に、息を引き取った。テレーサはそれを知らず「ライムライト」の曲に舞っていた!
              *
感想:
山高帽に窮屈な上着、だぶだぶのズボンにドタ靴、ちょび髭にステッキという姿はここにはない。ここでは初老の喜劇俳優として、脚本家としての登場です。

夢が現実へと変化していく伏線のつながりで、テーマ「人生は願望で生きる」が見事に描かれました。観る人への人生の応援と、喜劇人へのメッセージがすばらしいです。

テレーサがアメリカのメタファーに思われ、涙が止まらない!

夢の中で曲「ライムライト」を耳にして息を引き取るカルヴェロの死様は羨ましい限りです。

アメリカ最後の作品で、「街の灯」(1931)で花売り娘に恋心を伝えられなかった伏線が、ここでやっと回収してされました。チャプリンにとってアメリカは自由な理想の国であったんだ。 


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