映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「青くて痛くて脆い」(2020)しっかり傷つけ、傷つく自分を疑似体験したらいい!

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原作が「君の膵臓をたべたい」の住野よるさん。未読です! 吉沢亮さんと杉咲花さん主演作ということで観ることにしました。監督はテレビ演出が多い狩山俊輔さん。初めてお目にかかります。

高校時代と違って、何か意義のあること、自分のアイディテンティを求めたいという大学生活。理想と現実な狭間で、「青くて痛くて脆い」自分を丸出しで、ぶつかり合い、成長していく姿がリアル描かれた物語。この時期、しっかり傷ついたらいい、こうして大きな人物に育って欲しいと思います。

傷つくのが嫌で人との関りを避けてきた大学1年生の僕が、大した動機のなく能天気に世界平和を訴え、なりたい自分になろうという彼女のサークル活動「モアイ」部の立ち上げに参加し、なんとなくやる気がなくなって辞めて3年後。「モアイ」が就活活動の場になっていることに怒りを感じ、「モアイ」を潰そうと画策。画策するなかで彼女の本当の生き方や世間の見方を知り、己の器量の狭さや配慮のなさで相手に大きな傷を負わせたことに気付くという青春ドラマ。


『青くて痛くて脆い』予告【8月28日(金)公開】

あらすじ(ねたばれ):

大学1年生の田畑楓(吉沢亮)は人に不器用に近づかず、相手を否定しないことで、人を傷つけない、自分もそれで守られると考えていた。

「戦争は必然」と説く教授に、「この世界に暴力はいらない!皆が望めば可能です」と喰いつく秋好隅寿乃(杉咲花)。理想を目指しあまり空気の読めない、他学生から浮いている大学生。

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楓は「こんな人いるのか?」と思ったが、学食で一緒にご飯を食べることになり、「模擬国連をやりたい!」という彼女の興味をもって、1か月ほどこんなことがあって、ふたりで飯喰ってるのが噂になり、「世界を今より良くしたい」という彼女に「自分でやったらいい」と勧めた。

彼女に「秘密結社で、なりたい自分になれるよ」と言われ、嫌々だったが、楓はこのサークルに参加した。

部員の勧誘、部室の準備は全部、彼女がやった。しかし、その彼女はもうこの世界にはいない!(俺が消した!)

ここから、楓がモアイ部を辞めるまで(過去パート)と、モアイ部を廃部に追い込む(現在パート)の交互に描かれます。

3年後、

モアイ部は大きな部になり「なりたい人になれます」と部案内ビデオも出来て、活発に活動しているが、親友前川董介(岡山天音)によると「だたの、就活活動する学校の顔になっている」という。

「この部は俺ともういないやつと作った。そいつのために出来ることはないか?」とふたりで相談して、部をぶっ潰して本来のモアイに作り直すことにした。

秋好は秘密基地だと自分がペンキで部名を書いて、部がスタート。楓は「自分の力で戦争を止める」という秋好の言葉に酔った。そして、人形劇などをやって平和を訴えた。彼女は白線だけ踏んで渡ると願いが叶う!だから横断歩道を渡る度に世界は平和になっていく」という。小さなボランティア活動で出来ることをやれば救える世界はあると説いた。

楓は前川と前川のゼミの後輩でかくれ部員の本田朝美/ポン(松本穂香)をモアイ交流会の場に送り込み、その実態を調べることにした。前川は携帯電話で内部の状況を映像で伝えてくる。幹部の天野巧(清水尋也)/テンに目をつけてその行動を追うが、彼に掴まって何も得られなかった。「何してるの?」と問われ、「秋好をこの世界から追い出したやつは許せん!」と怒りを露わにした。

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秋好と青少年自立支援施設にボランティアに行き、ここでの出来事で、アモイを去ることにしたことを思い出す。

生徒と野菜作りをしたり勉強を教えたりしながら平和を説くボランティア発動。

楓は歌うことが好きで不登校になった西山瑞樹(森七菜)の勉強を見ることになったが、「あんたは暇な人、こんな活動で役に立てる人間になれるとは思えない」と言われ、傷ついた。

ここに大学院生の脇坂(柄本佑)が「研究室にいても永遠に問題は解決しない」とモアイを支援にやって来た。

施設の野外バーベキューで瑞希がみごとに「サメに喰われた娘」を唄う。これは圧巻でした!森七菜さんにこんな演技ができるとは! 彼女を学校に戻そうとやってきた担任・大橋(光石研)と激しく揉み合う。楓は何にもできなかった。楓には痛い出来事だった。

「こんなやり方が私たちが望んだものか意見を頂戴!」と秋好に求められたが、何も言えず、ただの同志で世界は変えられると思った。脇坂が「効果を上げるには組織を大きくすることだ」と言い、秋好と意気投合するのを見て、ここを去った。

大学に戻り学食で秋好に「付き合っていられない」と宣言した。秋好は「分かった!それでいいの?」と確認し、別れた。これ以来会っていない。

モアイの女性交友実態を掴もうとバーベキュー大会に楓、前川、ポンが参加。楓はバイトの後輩でモアイに入部したという川原理沙(茅島みずき)に出会った。

川島に近づく男子部員を見てポンが心配する。(笑)

テンが女性を誘って消えるのを見て、追った。テンが「お前ら最低だ!俺のことを遊び人だと思っているが、俺は好きな人でなければ付き合えないし、つき合いたくないんだ!」と突き放された。

秋好が来たから紹介する」とテンが示すむこうに秋好が白線を踏んでみんなの輪に加わっていた。楓は逃げた! 楓は「秋好は俺を紐にしただけ!モアイは世界を変えるといった大嘘つきだ!」と秋好批判ビラを部室に忍び込みばら撒いた。

このビラは整理され、部室に展覧されたが、秋好は「本当のこと!」と気にもしなかった。

文化祭に瑞希がやってきて「大学に行きたい」と秋好に漏らした。秋好はこのことを楓にメールで知らせた。

そのころ楓は、前川のアパートで、前川、ポン、川原と飲んでいた。川原は楓に「秋好は本気に世界は変えられると考える、青臭い本気の人だ!」とはっきりものをいう。これに楓が「川原さん食べてください!」と敬語で応じた。川原は「人との距離感をしっかり測って生きるのはわるくないと思います!」と言葉を投げて出ていった。この言葉は楓には痛かった!

楓は迷惑メールが最近増えるのは、モアイから個人情報が流されているからだ。こいつをつきとめる」と前川に話した。前川はこれを止めた。楓は前川も疑った。前川は「モアイはいいやつらなんだ!笑っている俺たちの方がよっぽど痛いやつだぞ!」と再考を促した。

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楓は「モアイが個人情報を横流ししている」とSNSでつぶやいた。「モアイはやばい!」という噂が一気に広がった。

このことで秋好は部員に状況説明をするための報告会を開くことにした。

楓は早めに会場にやってきて、秋好に会った。

「世界は変えられる、なりたい自分になれるは大嘘だ」から「秋好の周りにはいつも人が居て、(俺の出番はなかった)」まで、ふたりは思いの丈をぶつけた!

秋好が「ちょっと待って!私のこと好きだった?」と聞く。楓は「お前を相手にしなければよかった。サークルに入らなければよかった。君は自分のためにやっただけだ!お前なんかいなければよかった」と言い終わって会場を後にした。」

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秋好はこの言葉に泣いた!

秋好は「モアイという自体はたったふたりのものだったの!」と部の解散を宣言した。

感想:

先が読めない青春時代のエピソードをミステリアスに拾い出し、ハラハラドキドキの物語の進展。楓がモアイ部を辞めるまで(過去パート)と、モアイ部を廃部に追い込む(現在パート)の交互に描くことで、楓が何に不満で廃部に覆い込もうとしているのか、秋好がこれをどう捉えているかが分かり、最後にふたりが対決し思いの丈をぶつけ、それぞれが青くて、痛くて、脆かった青春を涙で振り返るシーンに震えます!

こういう体験は早い時期に済ませておくのが良い!

しかし、SNSでこんなバカなことをしてはいかん!!

楓は秋好の部解散宣言をネットで観た。彼は自分が世界を歪めたと部屋を飛び出し、脇坂の研究室に飛び込んで「秋好に謝りたい!傷つけられ、数合わせされたと思った」と自分の気持ちを正直に打ち明け、秋好の居場所を聞いた。

脇坂は「1年前に別れ、居場所は知らない」と言い、「みんなそうやって、誰かを間に合わせに使いながら生きているんじゃない?間に合わせでも、その時は必要だとされたんだから、それで十分だと考えないと」と諭した。悩める若者にはとても響く言葉ではないでしょうか。

1年後、楓は川原が立ち上げたモアイのボランティア活動に参加していた。とてもあと味の良い、青春物語でした。

吉沢さんの自分は絶対に正しいときつい目で訴える演技が凄みがありました。また、杉咲さんは「世界を変えられる」と思わせる一途さ、そして自分の配慮のなさで楓を傷つけたと思わず涙するなど、感情豊かな演技がすばらしかったです。松本さんのヘラヘラしているようですごく芯のある演技、そして森七菜ちゃんの歌。出演者の演技は、みなさんすばらしかった!

                             ****

「ミザリー」(1991)なんでこんな映画を観るの? アニーのミザリーへの偏執性。これをうまく使って、ポールが復讐を謀るという結末のカタルシス。

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スティーブン・キングの同名小説を「スタンド・バイ・ミー」のロブ・ライナー監督が映画化した傑作サイコスリラー。ということで、WOWOWで観ました!

精神的に重く追い詰めてくるところ、残酷なシーンは「シャイニング」?

ミザリー」シリーズで人気の作家が、雪道で事故に遭い瀕死の状態で、狂信的な読者である元看護師に救われる。作家が携帯していたシリーズ最終版で、ヒロイン・ミザリーが死んだことを知った彼女が逆上して、狂気で、自分好みに修正を求めてくる。作家は小説の結末を巡る駆け引きをしながら、はたして執拗な彼女の狂気から逃げることができるか。

出演はジェームズ・カーンキャシー・ベイツフランセス・スターンヘイゲン、リチャード・ファーンズワース、ローレン・バコール。主演のキャシー・ベイツがアカデミー主演女優賞を受賞しています。


Misery (1990) - Original Trailer

あらすじ(ねたばれ):

ベストセラー小説「ミザリー」シリーズの人気作家ポール・シェルダン(ジェームズ・カーン)は、ミザリーを殺さなければ一生自分の書きたい作品を書けないと、出版編集者マーシャル・シンデル(ローレン・バコール)に伝え、いつものシルバー・グリークにあるロッジで仕上げることにした。

書き終えての帰り、雪道で事故に遭い瀕死に陥ったところを、近くに住む元看護師の中年女性アニー(キャシー・ベイツ)に救われた。

2日後目が覚めると、両足骨折、右腕骨折で身動きできない状態でベットに寝せられていた。雪のため道路は通行は使用できず、電話もかけられないという陸の孤島となっていた。

アニーはにっこり笑ってとても親切そうで、2錠の薬と食事をいて、自分の部屋に戻っていく。

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編集者は6週間経ってもポールから連絡がないので、シンデルは地元警察官バスター(リチャード・ファーンズワース)に安否確認を依頼した。

アニーはポールの意識回復を待って、カバンにある新作を見せて欲しいと申し出でて、ポールはそれを許可した。

食事と薬を運んできた際、40ページまで読んだが、言葉が汚いと不満を漏らし、「愛しているポール!」と部屋を出て行った。ポールはスープをこぼされ、ギョットした。

朝、いつものように朝食と2錠の薬を持ってきたアニーが「300ページまで読んだ、神よ!完璧!」と褒め、「結婚は特別な男でないと」と思わせぶりな言葉を残して自室に戻っていた。ポールはトイレを尿瓶で済ませる状況だった。

夜になって、アニーがやってきて「何故ミザリーを殺した!」と怒り、ベットで動けないポールに椅子を投げるつける!痛がるポール。

アニーが去って、ポールが不自由な動作でイザってドアのノブを調べると鍵が掛けられていた。

ジェームズ・カーンの演技が上手くって、とにかく動作が痛々しい!!

ポールはベッドに戻れない。床に寝ていた。そこにアニーがバーベキュー鍋を持ってやってきて、釜に原稿を入れ、油をふりかける。さらにポールの身体にも油をかけ、ポールにマッチを渡して「火を点けろ!」と脅迫する。ポールがマッチを擦って釜に投げ入れた。燃え上がる炎! アニーが水で消した。

捜索ヘリでバスター保安官が捜索するが、車(マスタング)は発見されず、ポールは行方不明と報道された。

ポールは食後、2錠の薬を飲まず、ホークでベットに穴を開け、そこに隠すことにした。何を企んでいるのかと恐ろしくなる!

ポールは車椅子で動けるまでに回復し、右腕は不自由ではあるが、執筆活動ができる状態になった。アニーはテーブル、タイプライターと原稿用紙を準備して、「すばらしい作品を書いて!ミザリーの生還を!」ミザリーの最終版を新たに書くよう求めた。

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ポールは床に落ちたアニーのヘヤピンをアニーに気付かれないように、車椅子から、苦労しながら拾い上げた!

ポールが「原稿用紙の質が悪くインクが滲む」と難癖をつけた。アニーは今までの優しい態度を一転して激怒。脚に原稿用紙を投げつける。痛い!

アニーは町に原稿用紙を買いに車で出て行った。ポールはヘアピンでドアを開け、アニーの部屋や台所を調べ、睡眠薬を盗んだ。いつアニーが戻ってくるか?車椅子が思うように動かない! ドキドキハラハラの展開!

ポールは小説を書き始めた。出来た原稿をアニーがその都度点検し、読むたびに一喜一憂。いつ怒りが爆発するかとこれが怖い!

ポールは「ミザリーが生き返る」と感激するアニーに「今夜食事を一緒にしよう!」と誘った。

ポールはこれまでため込んだ睡眠薬をアニーのワイングラスに入れてたが、アニーがこれを零ししてしまう。「ミザリー(みじめだ!)」とポール。(笑)

この夜からポールは結末までを書きに書きまくった。アニーが「あんたに惹かれた!」と言い出し、「本が出来上がると別れになる!」と拳銃を見せて、弾を買いに出た。

ポールはアニーのいない間に彼女の部屋でアルバムを見て、彼女が連続幼児殺人者であることを知った。そして、台所に入り包丁を持ち出し、ベッドに戻って、回復した右手(アニーには隠していた)で刺殺する練習をして、アニーの帰りを待った。ところが大雨で雷。アニーがなかなか帰って来ない。寝てしまった!

目を覚ますとアニーが腕に注射を刺していた。これが一番怖かったシーン!

朝になり、アニーがやってきて、「あんたの行動は全部読めていた!」と両脚をハンマーで折られる。観ていられない恐ろしさ!

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アニーが町に買い物に出た。バスターはアニーの姿を見て、昔の事件を思い出し、その記録から、アニーがミザリーの狂信的な読者だと見抜き、ポールを隠していると断定した。

アニーを訪ねてきたバスターは、アニーによって射殺された。アニーは「愛するあなたを守った!死のう!」という。

ポールはアニーに「愛してる!」と伝え、「ミザリーを完璧に生き返させる!」と本を書き上げ、完結祝いにタバコとマッチ、シャンペンを求めた。

アニーが祝いの席についたところで、準備していた油を原稿にかけ、ライターで火を点け、「復讐だ!」と叫んだ。アニーが原稿の火を消そうとするところをタイプライターで殴った。ここからふたりのすざましい格闘が始まる。アニーの狂った形相が凄い。

感想:

大怪我をして密閉した部屋に閉じ込められたポール。「ミザリー」の描き方しだいで、突然感情を荒げ挑みかかるアニーのこの異常さ。ミザリー」の結末を巡り、アニーの感情が激変するのが怖かった。

両足を斧で折られる暴力は写し出されず、その恐ろしさを脳で感じることになりましたが、おそらく小説の方が怖いかもしれませんね。でも怖かった!

アニーの暴力に、不自由な身体でこれに抗するポールの辛さ、痛さに耐えられない!(笑)

なんでこんな映画を観るの? アニーのミザリーへの偏執性。これをうまく使って、ポールが復讐を謀るという結末のカタルシス。ストーリー展開はとても面白く、すばらしいミステリー作品で、キャシー・ベイツジェームズ・カーンの演技は完璧でした!

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「糸」(2020)運命に翻弄されるのではなく、自分次第だと応援してくれる歌の力「糸」

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菅田将暉さん、小松菜奈さん主演作ということで駆けつけました。菅田さんの円熟した、小松さんの成長した演技に触れ、満足のいく作品でした!

平成10年(1998)にリリースされた中島みゆきさんの「糸」をモチーフに平成元年生まれの男女がまるで糸のように、平成という時代を駆け抜け、出会いと別れを繰り返し成長していくラブストーリー。北海道、東京、沖縄、シンガポールを背景としたスケール感のある作品。

この時代を生きた人には主人公たちに自分の人生を重ね、歌のような人生だった?と懐かしみ、若い人には「こうなったらいいな!」と歌に希望を託する作品。

歌詞の具象化で、18年という長き時間のなかからエピソードを抽出しており、その足らざるは観る人が中島さんの歌で埋めことになるでしょう。

瀬々敬久監督らしく、エンデイングを壮大なものに仕上げてくれていますが(笑)、あるべき人の道を説いています。このあと、菅田さんが「糸」を熱唱します。中島さんと違って菅田さんの「糸」、それぞれの糸を編んで暖かい布にしてくださいというメッセージでしょう。

監督:瀬々敬久原案:平野隆、脚本:林民夫、音楽:亀田誠治

出演者:菅田将暉小松菜奈山本美月高杉真宙倍賞美津子二階堂ふみ成田凌斎藤工榮倉奈々


映画『糸』予告【8月21日(金)公開】

あらすじ(ねたばれ):

平成13年、富良野。お盆の花火大会。中学1年生の園田葵と後藤弓のふたりは花火を見ていると、同級生の高橋漣と竹原直樹が自転車で遅れてやってきたが、漣が自転車がこけて、腕に傷を負った。駆けつけた葵の左腕の打撲傷を見て(なんだこの傷?)「大丈夫か!」と葵より先に声を掛けた。葵が漣の傷に絆創膏(布)を貼った。この出会いがふたりの運命を決めた!

漣のサッカー試合に弁当を持ってきて応援してくれる葵。漣は「好きだ!」と告白し葵は「うれしい!」と応えた。

そんな葵が突然富良野からいなくなり、漣は札幌にいることを聞きつけ、葵の住むアパートを訪ねた。葵は左目に眼帯をしており殴られた形跡があった。葵を富良野に連れ戻し、キャンプ場のロッジで一泊。「葵は俺が守る!」と函館に出て伯父を頼り青森に行く計画だったが、朝駆けつけた警官に保護された。「北の国から」のワンシーンを思い出しました。(笑)

平成21年、漣(菅田将暉)と葵(小松菜奈)は竹原(成田浚)と後藤弓(馬場ふみか)の東京での結婚式に招かれた。葵は美しく成長した女性になっていた。漣は眩しかった!漣はずっと富良野にいて、チーズ工房で働いていることを話した。葵は「大学で経済学を勉強している」と話しパーテイを後にする。追っかけて見たのは、葵が迎えにきた男の高級車に乗り込み去っていく姿だった。蓮は話もできずくやしい気持ちだった!

実が葵は大学に行きたいと年齢を偽ってキャナレーで働いていて、そこでファイナンスマネージメント会社の社長・水島大介(斎藤工)に出会い、同棲し、大学で勉強していたのだった。水島は当時の投資ブームを映し出すようなキャラでホリエモン

一方、漣は地元のチーズ工房で富田社長(松重豊)の指導を受けながらチーズ作りに励んでいた。葵との思い出のミサンガも擦り切れて、今は身に着けていなかった。初恋の人とはうまくいかなかったと工房で働く先輩の女性・桐野香(榮倉奈々)と交際が始まっていた。

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結婚式後、水島がリーマンショックによる投資の失敗で、沖縄に逃げ出した。(笑) 葵は水島を追っかけ沖縄に渡り「今度は私が面倒みます!」と言うが、水島は「ここはお前の住む場所でない」と断ったが、ふたりで沖縄の先祖供養の踊りを踊った。(笑)

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平成22年、富良野。1年で離婚した竹原が、メガネ美人の山田利子(二階堂ふみ)と結婚し、幸せそうに「ファイト!」を唄うのを見て、漣は香と結婚した。

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漣が役場で住民移動届を出していると、そこに母親の生活保護のことでやってきた葵に出会った。かって住んでいた住宅を訪ねたが母親はいなかった。いつもの丘に来て十勝連峰、前富良野岳を仰いだ!

葵は母親の安否を尋ねて函館の叔父を訪ねると、母は亡くなっていた。葵は義父に「暴力を止められなかった母親に一度でいいから謝って欲しかった」と泣いた。

連が入舟漁港に来ていて、海を見つめる葵に「大丈夫か!」と声を掛けた。葵は「これは漣君と会ったときの最初の言葉で、漣君と一緒の時が一番楽しかった」という。漣は「守れなかって、御免!」と詫び、抱擁した。

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葵は「沖縄で男と暮らしておりこれからは世界を飛び回る」と話し、函館空港から沖縄に飛び去った。

葵が沖縄に帰ってみると、水島が大金を置いていずこかえ消えていた。

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平成23年ジャカルタ。葵はネイリスト派遣会社に就職した。そこでキャバクラ時代の親友高木玲子(山本美月)と一緒に仕事に就いた。玲子が客に殴られ警察沙汰になり、会社を首になる。「暴力に負けてはいけない、弱い人を助ける!」と玲子と共に掃除婦からトラベルガイドと懸命に働き自分で資金を作って、元会社のエリート社員・冴島良太(高杉真宙)とともにネイリスト派遣会社を立ち上げ、社長に収まった。

3月11日の三陸沖の津波災害をTVで観て驚く。

同じころの富良野。漣がこのニュースを観ながら、妊娠中の妻・香の健康診断につき合っていた。癌が発見されたが、「津波の被害は小さな町の小さな物語で、私には関係がない」と香は子供を産む決心をした。漣は母親としての強さに驚いた。一方、竹原は妻・利子が岩手の実家で震災に遭遇し落ち込む。この運命の悪戯!

平成28年富良野。香が病床で「漣に出会ったのは必然だった。幸せだった!」という。漣は「運命の糸はあると思う。でもその糸はたまに解ける」と話した。この話を聞いて香は「子供を頼みます!」と言って逝ってしまった。香は「泣いている人がいたら抱きしめてあげて!」という言葉を子供・結(稲垣来泉)に託していた。

漣は香の生き方から、一本筋の通った生き方を学んだように思います。香を演じた榮倉奈々さんの凛とした演技が光っていました。

漣はチーズの世界選手権を目指して、日々頑張る毎日だった。一方、葵もネイリスト派遣事業に精を出していた。

竹原は利子が見つかり、「ファイト!」を唄って再スタートを切った。漣も一緒に「ファイト!」を唄った。

平成30年、シンガポール。葵は会社創立7周年を盛大に祝ったが、玲子が不動産投資で失敗し、倒産に置き込まれた。水島にもらった金を大切に保管していたがこれで始末し、冴島にも礼金を渡して、無一文になった葵は日本食堂でまずいかつ丼ではあったが、泣きながらよく味わって食べた。

こんな美人の女優さんが大口を開けて食べさせるシーンはそうあるまい。しっかり小松さんが演じています。(笑)

 平成31年東京。葵は東京に戻り、VEDAというネイリスト派遣会社で働き、東京の街を彷徨していた。

一方の漣は自分の作ったチーズが三つ星店に採用され、東京に出てきて、彷徨していた。ふたりは近くにいながら、その存在に気付くことはなかった。

 葵はシンガポールからやってきた冴島から「ネイリスト派遣会社を再建したから来ないか?」と航空券を渡された。が、かってお世話になった子供食堂を訪ね、おばちゃん(倍賞美津子)の「かつ丼を食べ涙を出しているところに「泣いている人は抱きしめてあげなさいとお母さんに言われている」と漣の娘・結が寄ってきた。「いいお母さんね!」と葵がハグした。昔、漣と青森に行くはずだったフェリーに乗ろうと函館港に向かった。

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漣は結から話を聞き、食堂のおばちゃんに確認し、函館港に急いだ。漣は運を信じることにしていた。

 感想:

漣と葵の紡ぐ糸だけでなく、香との糸、そして竹原と利子の糸も一緒に紡がれ、さらに玲子や冴島との糸が混ざりながら織られていく物語。運命の翻弄されているようで、出会いで学び、お互いに影響し合いながら、苦難を乗り越えていく人生。決して運命に翻弄されるのではなく、自分次第だと思わせてくれる物語で、これを応援してくれるのが歌の力「糸」だと思います。

 「なぜ巡り遭うのかを、私たちは知らない」という歌詞のなかで、故郷、かつ丼、花火で結ばれていく糸。「弱いものに寄り添う」という漣と葵の想いが結ばれるという結末。今の時代に最も大切なことで、これを軸に描かれてた「糸」の物語、よかったと思います。

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菅田将暉&小松菜奈 映画『糸』MUSIC VIDEO( 中島みゆき「糸」フル )【8月21日(金)公開】

「2分の1の魔法」(2020)吹替版 あとの2分の1は俺の中にいる!

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本作の主演イアンの声優を勤める志尊淳さんが「徹子の部屋」に出演して母への想い、感謝ばかり喋る。そういう作品かと、もうすこし深いものがあるかもしれないとこの作品を選びました。ピクサー作品は「リメンバー・ミー」しか観ていません。

天国の父を復活させるため、内気な少年と自由奔放な兄が冒険に乗り出し、数々の試練を絆の力で挑戦。はたして父を蘇らせることができるのか? 大冒険の果てにたどり着いた“答え”とはというファンタジーアドベンチャー

 

ぶっとんだ作画だと思いましたが、「兄弟愛」「家庭愛」を説いたもので、ストーリーは平凡という感じ。でも、なんでもスマホで済ませる今という時代には、自分で決心して挑戦する勇気や人と人が直接触れ合って感じる絆を確認する作業は大切で、本作は今という時代に合った作品原題ONWARDはこのことを示しているのだと思います。

 

監督は「モンスターズ・ユニバーシティ」のダン・スキャンロン。未見です。原案・脚本:ダン・スキャンロン、キース・ブーニン、ジェイソン・ヘッドリー、音楽:マイケル・ダナ ジェフ・ダナ、日本版エンドソング:スキマスイッチ

 

声優(字幕版):トム・ホランドクリス・プラットジュリア・ルイス=ドレイファス、オクタビア・スペンサーらです。


ディズニー/ピクサー映画『2分の1の魔法』予告編 

あらすじ(ねたばれ):

遠い昔は不思議が溢れていた。なかでもドキドキ、ワクワクして最高なのが魔法でこれが生活に役立ったが、今では電気やガスなどの科学技術で、人は楽な道に走り魔法が消えていったという。今どきのSNS社会を見るとまさにそう思える設定。人が本来もっている能力が消えていくようで大きなテーアだと思いました。これを観ようと思っていましたが、小さなテーマになっていて残念でした。

ライトウッド家。父親のウィルデンは16年前(17回忌)に病死。母ローレルがシングルマザーで二人の息子、イアン16歳とバーリー19歳を育ててきました。

イアンが優しい性格で、引っ込み思案で自信が持てない子。父親がいないことがこの性格を作ったかもしれません。彼は強く父親に憧れ「お父さんとやることリスト」を作っていた。これが本作のテーマかもしれません。

バーリーは自由奔放な子で、空想の冒険や歴史が好きで、ボードゲームに熱中し、この町の魔法の歴史に詳しかった。彼には3歳時の父親の記憶があった。

イアンの誕生日。イアンには魔法の力が残っていて、父から16歳になったら渡すようにと魔法の杖と不死鳥の石と1日だけ父を呼び戻すことができる復活の呪文が書かれた手紙が母に託されていた。

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これを受け取ったイアンは早速父を蘇らそうとして失敗。父親は下半身しか蘇がえらなかった。石は飛び散ってしまっていた。何故父親は半身なのか?これが本作のテーマのひとつです。父親は半身ですが、脳がなくても、足で十分に意思表示できます。

兄バーリーが不死鳥の石を探すための地図を手にいれようと、愛車のバン(グウィネヴィア)に父親とイアンを乗せ、かって冒険家たちが集まったマンティコアの店に急いだ。彼女の身体の一部はライオン、一部がコウモリ、一部がサソリというもの。これには笑った! 今ではファミリーレストランとなった店でウエートレス。

勇敢に魔法の冒険に出ると聞いたマンティコアが、昔の自分を取り戻したように、大暴れして店が崩壊し大火事に。このときイアンは咄嗟の判断で浮遊の呪文を唱え、落下する焼材から父親を庇った。イアンにすこし自信が出てきた。しかし、地図は焼けてしまい店で販売しているオモチャの地図を手に入れた。これには行き先のカラス岩が描かれていた。

このころ母親ローレルは、付き合っているコルト・ブロンコ巡査から、息子たちがマンティコアの店にいることを聞かされ、店に向かった。コルトは上半身が人間で下半身が馬のケンタウロス族。(笑)

さて、イアンたち。カラス岩に“おそろしの道”と高速道のどの道でいくかと論争。イアンが時間を節約するために高速道を主張し、これに決まった。ところがこれには大きな落とし穴があった。安易な道を選ぶと決してよいことはないという教訓!

ガス欠。成長の呪文でガソリンタンクを大きくしようとして失敗し、逆に兄を小さくしてしまった。(笑)

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さらに、スタンドに屯する暴走族・鳥族のピクシー・ダスターズとひと悶着を起こす。

イアンが運転でこれを振り切って逃げた。今度はスピード違反でスペクター巡査に掴まった。(笑)

イアンとバーリーは変身の呪文でコルト巡査に化けた。スペクターがバーリーの悪口を言うのでイアンがこれを庇うと変身が解けた。嘘をつくと解ける呪文だった。(笑)

これにバーリーが「本心は俺を厄介者だと思っているだろう!」と兄弟喧嘩が始まった。このセリフがぴたりと合うバーリーの風貌が良い。(笑)

これを見た父親がバーリーの足を踏んで、「一緒に踊れ!」と促し、三人が踊りで絆を取り戻した。

母親はマンティコアと“呪いクラッシャー”(斧)を手に入れってイアンらの後を追っていた。

イアンらはおそろしの道を進み、底なしの地獄谷に出会う。バーリーの指導と励ましでこの地獄谷を渡り、カラス岩に到着。ここで象形文字の石板を手に入れ、水が流れる洞窟へと入って行った。

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狭い洞窟で急速な増水によりあわやと思われたが、水の上部にマンホールがある。ここから出るとそこは自分たちが住んでいる町だった。もう時間がない!

イアンは「兄に任せたのが失敗だった」と悔いた。

父とふたりで大きな夕日を眺め、兄と半身の父と過ごした時間をチェックして分かったことは「今、ここに居れるのは誰の力か!」ということだった。兄も父も自分の力になっていた!

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バーリーは「ボードゲームのとおりだ!」と噴水塔に走った。そこで不死鳥の石を見つけた。それを手にすると、真っ赤な魔法の煙が町を覆い、建物が破壊され、そのガラクタで巨大竜が舞い上がった!

これをイアンがこれまで使った呪文で、また母オーレルが持ってきた劔で退治した。崩れたガレキの中から全身の父親が夕日の中でバーリーを抱擁し去って行く姿を眺めていた。バーリーから「父は立派なお前を誇りに思うよと言った!」を聞いて、父は自分の中にいると感じた。イアンはもう引っ込み思案で自信の持てない子でなく、魔法を信じる子になっていた。

感想:

どこかで観たことのあるエピソードが多いですが、テンポよく展開し、よく繋がって飽きさせません。兄弟が行き違ったり助けあったり、父親が足で愛情を示したりと、感情移入できるよう工夫がなされています。が、やはり物語は平板で、アニメとしての作画で楽しめる作品だと思います。

ぶっとんだキャラクター像作り。とても親しみを感じます。マンティコアにはびっくりでした。特に小さなお子さんは喜ぶかもしれませんね!

原題はONWARD。困難にぶち当たるとお兄ちゃんのバーリーが内気な弟イアンに挑戦だ!やれ!前に進め!勇気を出せ!と魔法をかけるよう喚き促すが、イアンがラストで自分の判断で魔法をかけるよう成長しますので、この原題がすっきりする感じです。

しかし、バーリーのどうでもいい駄洒落についていけなかった。(笑)

なんといっても年齢、19歳の兄と16歳の弟という設定に頭を傾げました。この年頃なら彼女がいてもいいし、そっちのことの方が大問題でしょう。(笑)

この年齢のふたりをお母さんが終始追っかけて見守るというのにも違和感あり。

 私は3歳で父を失くしていて、16歳、19歳のころの自分を重ねてみて、この兄弟はちょっと幼稚すぎます。父親が居ないと他の子より成長が早い。作品をどの年齢層に観せるか。主として小中学生以下でしょう。年齢を下げたほうがしっくりしたと思います。

***

声優(吹替版):

イアン:志尊淳

バーリー:城田優

ローレル:近藤春菜

マンティコア浦嶋りんこ

グレックリン:新谷真弓

ガクストン:丸山壮史

フェンウィック:立木文彦

***

「ミリオンダラー・ベイビー」(2004)“愛”を尊厳死で描く結末に泣かされます。

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クリント・イーストウッド監督作。第77回アカデミー賞において作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞の主要4部門を制した作品。

初老のトレーナーが極貧出の女性ボクサーをわが娘のように育て上げて、タイトルマッチ戦に挑戦するが、再起不能の重傷を負う。死を請うボクサーに寄せるトレーナーの愛?という、イーストウッド監督74歳にして、“愛”を尊厳死の問題で問うてくるアウトローの監督らしい結末に泣かされました。

この作品で尊厳死が大きな話題になったと聞き、大方の人はこの結末に“No”だと思いますので、ハリウッドがこの作品に賞を与えたというのは大きな意識改革だと思います。

原作:F・X・トゥール、脚本:ポール・ハギス、撮影:トム・スターン。

出演者:クリント・イーストウッドヒラリー・スワンクモーガン・フリーマンジェイ・バルチェル、マイク・コルター、ルシア・ライカ、ブライアン・オバーンらです。

作品は、ボクシングを描きながらも、終始“静謐な雰囲気”のなかで、モーガン・フリーマンのナレーションで展開されます。


映画「ミリオンダラー・ベイビー」日本版劇場予告

あらすじ(ねたばれ):

相手に打たれ、目の下を切ってコーナーに戻ったビッグ・ウィリー(マイク・コルター)。「あいつとは試合をしたくない!」と試合を投げ出しそう。「あと1ラウンド、行ける!」と入念は止血を施すセコンドのフランキー・ダン(クリント・イーストウッド)。彼は1960年代に〝出血止めの名人“と言われ、ボクシングは尊厳のためのスポーツだと思っている。

ダンの止血で、息を吹き返したウイリーは相手をノックダウン。この試合を見ていたマギー・フィッツジェラルドヒラリー・スワンク)が試合後、「トレーナーになって欲しい」とダンに申し込むが、「女は断る!」と寄せ付けなかった。

ダンはボクサーの生活によく気を配り、試合選びは慎重だった。そのためジム唯一のプロ選手ウィリーのタイトルマッチ挑戦を渋ったことで、彼を他のマネージャーに引き抜かれてしまう。

ジムの清掃や選手の相談に応じているもうひとりのトレーナー、エディ・デュプリス(モーガン・フリーマン)が「ウイリーには2年前にタイトルマッチ戦をやらせるべきであった」と意見する。これでふたりが言い争うが、これがいつものふたりの関係だ。

ダンはセコンドとして止血でエディの試合を支えてきた仲。109目の試合で引退したボクサーで、ボクサーの気持ちがよく分かっている。このふたりの関係が男らしくて魅力的だ!

ジムはこんな状況のとき、マギーが半年分の経費(実はエデイが与えたもの)を払ってジムに入会。ひとりで練習をしていた。「素質あり」と見たエデイがサンドバックの打ち方を教え、ダンが使っていたスピードバッグを貸し与えた。

マギーは貧民窟出で、ここには帰りたくないとレストランでバイトしながらジムで練習。食事は客が食べ残したものを持ち帰って食べるという頑張り屋さん。

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エディから話を聞いたダンはマギーに「トレーナーを付けてやる」と言うと「あなたがトレーナーならチャンピオンになれる!」と返す。ダンは「すべて俺の言うとおりにする」を条件に31歳の彼女のトレーナーを引き受けた。ダンには便りをするがいつも返信される娘がいた。

足の運び方、呼吸の仕方など基本から徹底的に鍛え直しは始めた。マギーもバイト中でも教えられたことを反復演練。身体に叩き込んでいった。

ヒラリー・スワンクが可愛くって、すばしこい!しっかり訓練しての演技だと分かります!

最初の試合はマネージャーに任せていたが、マギーが打たれるのが見ておれずダンがしゃしゃり出て「左が死んでいる!」とアドバイス。これでマネージャーは席を外した。マギーはノックアウトで勝利した。ダンは「左が甘い、自分を守れ!」と強く指導した。

これ以降、マギーの試合は初回ノックアウトで終わり、ダンの出番がない。(笑)「4ラウンド以上の試合をしろ!」と注文するが「6ラウンド以上は持たない」とマギーが受付ない。

マギーは試合相手に敬遠され、ダンは相手のマネージャーに袖の下を渡したが、これも駄目になった。そこでワンランク上げての試合に賭けた。

最初の試合で、鼻をへし折られた。マギーが「ギブアップしない」というので、ダンは鼻を応急的にくっ付け、止血して「20秒以内に倒せ!」と指示。マギーはみごとノックアウトで相手を倒した。ダンは「モ・クシュラ!」と叫んだ。

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いいオファーが続き、ウエルター級タイトルを賭けた“青い熊”ことビリーが指名してきた。彼女は東ベルリンの元娼婦で、相手を殺しかねない反則技を使ってくる。ダンが断った。

エディが「タイトルの望むなら気に入ったマネージャーを選べ!」とマギーに勧めたが「私にはダンがいる」と断った。

 

ダンが「稼いだ金は貯金して自分の家を現金で買え!」注意し、「英国チャンピオンを狙え!」と励ました。マギーは喜んだ!

「モ・クシュラ」の刺繍を入れた新しいグリーンのガウンでリングに登場した試合。

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派手なノックダウンで勝利した。この名前が定着して、ふたりでヨーロッパの各地を転戦し、帰国したときは立派なプロ選手になっていた。

国内戦でもオファーが続き、いずれも勝利。マギーは金を手に入れ、「故郷に家を買ったから見て欲しい」とダンに報告。

ダンはマギーの案内で家を見た。マギーの母親は「この家に住んだら生活保護が貰えなくなる」と生活費をねだり、ダンを見て「良い男を見つけて、まともに暮らせ!」という。ダンはマギーの悲しみを知った!

帰りに、マギーが「頼れるのはパパだけだった。パパは飼犬が動けなくなったときそっと森に埋めてくるような人だった。いまはあなただけ!」と言い、「ロードサイド食堂」に立ちより、かって父親と一緒に食べたというレモンパイを食べた。ダンには忘れられない味となった。

マギーとビリーのタイトル戦が決まった。ダンはエディをセコンドに誘ったが、エディは(ダンがマギーにかかりっきりで)ジムの若い連中の面倒を見るためとこれを断った。ところが、大変なことが起こった!

第1ラウンド。ビリーの汚いやり方でマギーはダウンを取られ、顔に血を流しながらコーナーに戻り、「どうやったら・・」とダンに聞く。「あいつの尻を突け!座骨だ!」と指示し、目の治療をした。

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マギーは指示どおり徹底的に座骨を狙った。ビリーがダウンし、ゴングが鳴ったと思いコーナーに戻るところを、背後からビリーの反撃を喰らった!マギーはそのまま気を失った。

マギーの意識ははっきりしていた。気道に人口呼吸器を着けていた。第1頸椎と第2頸椎が損傷で一生全身麻痺という。マギーは「守りが甘かった!」と詫びる。

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ダンは米国のあらゆる病院を調べたが、マギーを治療できる病院はなかった。リハビリ施設で、ダンが付きっ切りで面倒を見た。ダンは小さな小屋を持つ夢を語った。そこにマギーも住みたいという。

マギーは母親の見舞いをとても楽しみにしていたが、ディズニーランドを見物してやってきた母親と家族は弁護士を伴い、マギーの財産を母親名義に変更することを求めた。マギーはこれを拒否した。

マギーは片足を切断した。「お願いがある」、「ボクシングで体験したことは夢にも思わなかった。十分に生きたから死にたい!」と漏らした。ダンは出来ない」と断った。

マギーは舌を噛み切ったが一命を取り留めた。自殺を防ぐために鎮痛剤を使って眠らせていた。

ダンはホーヴァク神父(ブライアン・オバーン)に相談した。答えは「絶対にダメ!」というのみ。ダンは泣いた!

ダンがバックに何かを詰めるのを見たエディが「マギーが1年半で世界タイトルに挑戦できたのはあんたの力だ!マギーに悔いはない!最後に思うことは良い人生だったということだ!」と自分の人生にマギーの人生を重ねて語って聞かせた。

ダンは決心し、バッグに注射器を2本入れ、マギーの病室に入った。ダンは「モ・クシュラは愛する人よ、お前は私の血という意味だ」と伝え、キスした。マギーの目から感謝の涙が流れた。呼吸器を外し、数回殺せる量のアドレナミンを注射した。モニターからバイタルデーターが消え、ダンが病室から去っていった。

感想:

ふたりがボクシングの練習・試合を通じて結ばれていく絆が美しかった!この絆がマギーの死に手を貸すことになる結末。マギーが“クシュラ”の意味を知って涙するシーンには泣けます。

ダンの行為は殺人と捉えられるかもしれない!「尊厳死”など誰も決められない、自分が決めればよい」とあえてこれを結論にもってくるところがイーストウッド監督らしい!しかし、モニターからバイタルデーターが消えたとき、生と死の溝の無限の深さを知ったはずです。ここから・・・。

            ****

「激動の昭和史 沖縄決戦」 (1971)今、観るべき戦争映画です!

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WOWOW、戦後75年東宝8.15シリーズのなかで放送されたもの。監督が岡本喜八さんで、脚本が新藤兼人さん。撮影が村井博さん。出演者は小林桂樹仲代達矢丹波哲郎さんのほかそうそうたる面々です。

沖縄防衛軍として創設された32方面軍。戦い方で大本営との確執の中、島民の協力を得て洞窟を利用した強靭な陣地を準備し、6倍以上の圧倒的な米軍兵力を迎え粘り強く戦ったが、遂に南部山岳地に追い詰められ軍としての戦を放棄する。軍は幾さを放棄しても米軍は攻めてくる、残された島民の運命は?と問いかける作品です。

戦に翻弄される島民の姿が生々しく描かれ、見方を変えれば島民が主役の作品。戦に苦しむ島民の姿がしっかり描かれ、戦争映画のなかで特筆すべき映画ではないでしょうか。

32軍と大本営の確執は、まさに今のコロナウイルス感染症対策における政府と都道府県との確執。この確執のなかで苦しむ!健気に頑張る!国民の姿がかっての沖縄の人々に重なります。大本営が現地を知らず、上目線で、恰好良く、自分の保身のためとしか言えない案を押し付けてくるこの官僚体質にうんざり。

高級将校たちの責任が厳しく追及されています。牛島司令官、長参謀長の自害。作戦を立案・指導した八原高級参謀の最後(米国に留学し米軍の捕虜扱いを知っていた?)。彼が仮装して捕虜になったこと。言葉がない!

戦争シーンや自決、病院治療活動など、CGのなかった時代でありながらとてもリアルで、カメラワークに工夫がなされ戦争の残酷さを余すところなく描き出しています。

クリント・イーストウッドの「硫黄島からの手紙」(2006)がとても評判のよい作品ですが、これを数段超えていると思われる作品が30年前に出来ていたことに驚きです。今、観るべき戦争映画だと思います!


BATTLE OF OKINAWA 激動の昭和史 沖縄決戦 - Original Trailer

あらすじ(感想):

昭和17年8月7日、がダルカナルで敗北。以降米軍の北上作戦が開始され、昭和19年7月7日、サイパンが玉砕。いよいよ本土への攻撃が予想されるなかで沖縄防衛強化が叫ばれ、7月以降、29師団、24師団、さらに44独立旅団を基幹とした第32軍が創設された。8月、軍司令官として牛島中将(小林桂樹が着任、長参謀長(丹波哲郎)、八原高級参謀(仲代達也)とともに軍の指揮を執ることになった。

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八原は、大本営の沖縄を浮沈空母として航空決戦構想はすでに破綻していると、首里を中核として師団を重畳に配置し、敵を陣地に乗せて戦うマナ板戦法を採った。牛島はこれを聞いて、第2次攻撃にどう対処するかと問うと、八原は摩文仁の自然洞窟で戦うと答え、これにぎょっとした表情を見せる牛島の表情。

この作戦のために学童の疎開を推進。8月、トカラ列島沖で米潜水艦に沈められるという対馬丸の悲劇に見舞われ、以後島民の疎開は島内となった。

9月に大本営は32軍が航空基地を放棄していることに反発し釜井航空参謀(玉川伊佐男)を派遣し基地整備を進め、その機能を回復した。どこまで本気で大本営が航空決戦を考えていたか?真夏の中で作業に当たる兵士には耐えらなかったと思う。

10月米軍の、空襲が始まる。残った建物が県庁だけという有様。11月、砲兵火力演習で威力を確認。青ガエル作戦として特殊艇の配備を完了。

ところが、ここにきて、大本営はレイテ決戦を企図し、沖縄から9師団を取り上げた。これが沖縄作戦に大きな影響を与えた。

9師団が抜けた後を埋める陣地の再配備。人の掘った穴で死ぬ気で戦えますか?机で物を考える人には分からない!

兵力増強のために2万人の県民が2等兵になり、中学1年生以上の男子学童500名の女子が看護婦として徴用された。

昭和20年1月、大坂府内政部長から島田叡(神山繁が知事として着任。県民の島内北方地区疎開が開始されるが、その大半が軍の後方なら安全と南部に疎開、その数30万人。これがのちに大きな悲劇となった。

3月24日より米軍の艦砲射撃が始まった。32軍司令部、県庁が首里地下壕に移動。298名の一高女子生が看護婦として陸軍病院に勤務することになった。

3月25日、師範生285人に卒業し、同時に召集令状が渡された。特攻機9機(武剋隊)に神航空参謀から出撃命令が下令され、軍司令官監視のなかで実行された。

米軍の一部が慶良間列島渡嘉敷に上陸。守備部隊は全滅。この際、隊長?から村民に「全員自害せよ」の命令が下され、1発の手榴弾に2~30人が集まり爆破、あるいは互いがこん棒で殴り合い、またカミソリで自害し、394人が亡くなった。この出来事を監督は自信を持って事実として描いている。むごい映像です!

4月1日未明、米軍の上陸開始。嘉手納手面に配備されていた加賀谷支隊長(高橋悦史)が本部に「米艇のため海の色が見えない!艇が7分で海が3分だ」と報告。熾烈な艦砲下の敵との闘いは加賀谷支隊の戦闘経過で描いている。

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配属されていた一中鉄血勤皇隊古波生徒(藤田漸)が爆薬を背負い敵戦車に体当たりする、また夜間攻撃で奇襲するなど壮絶な戦闘が続く。

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米軍の上陸に合わせ、連合艦隊がこの作戦に加入するため飛行場使用の可否を大本営に確認する。

32軍では飛行場を確保するため攻撃に出るか否かが論ぜられ、八原は反対、長が賛成し、軍司令官の決を仰いだ。牛島の決心は「実施する!」だった。

4月5日から九州鹿屋基地の第5航空隊による菊水作戦(特攻)が開始され、「ここで決戦しなければ勝つ機会はない」と戦艦大和が6日出撃した。

32軍は7日総攻撃を実施すると決めたが、米軍にさらなる増援があることが分かり中止した。この時点での賀谷支隊の戦死者は将校11人、下士官232名で、すでに支隊としての能力を失っていた。

大本営本部長が「32軍が陣地を出るのは容易でない」と「4月8日攻撃せよ」と電文で攻撃を催促した。八原が「無理」とこれに反対。長も「9Dを取り上げたせいだ」と八原に同意した。

西岡少尉(樋浦勉)の率いる切り込み隊で神山島を襲撃。重砲2門、重機2丁を破壊したが帰還したのは西岡以下5人だった。98式臼砲で敵第一線を叩き上げ、嘉数配置部隊の善戦が続く。

4月12日、長参謀長が「海軍が必殺の攻撃をかけている」と夜間攻撃を言い出した。八原は反対したが強行された。2個大隊が全滅した。

この夜襲で南風原陸軍病院は泣き叫ぶ負傷兵で溢れた。医者も医療器具、薬不足。目軍医(岸田森)はひめゆり隊員に足を押さえ、鋸でその足を切り落す。壮絶な医療現場が写し出される。

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菊水作戦は続いていた。特攻隊員の遺書が空しい!

4月29日、天長節長参謀長が24師団、44独立旅団はまだ無傷だ。決戦をやらうと提案。八原は勝ち目がないと反対。

このとき司令部に敵砲弾が落下し、大騒ぎになった。長は八原に「ここで一緒に死なんか!」と浪花節で八原を泣き落とし、5月4日決行と決まった。

この攻撃に小禄海軍陸戦隊司令官大田実少将(池部良)を誘ったが、武器が不足していると参加を断られた。

5月4日、総攻撃開始。200門の火砲の集中弾で順調に攻撃前進。八原は「この後が問題だ!」と呟いた。

インターミッション:

感想:

5月5日、敵戦車の進出で被害続出。負傷兵を同行できず薬の代わりに手榴弾を与える始末。62師団の伊藤大隊では550人中252人が戦死という状況。もはや大隊は壊滅と言ってよい。夜、男子師範斬込隊が出陣してゆく。生き残りはたったの5名だった。

大本営は義烈空挺隊を送ることで沖縄戦に見切りをつけた。

これからの32軍の戦い方は? 八原の「米兵を沖縄に釘づけにする」として南部に転進する」案に決まった。44旅団の京僧参謀(平松慎吾)が「作戦を教えて欲しい」と質問する。旅団の参謀がこの時点でこの質問、この作戦が成功するとは思えない。62師団参謀長上田大佐(中谷一郎)は「ここで玉砕したい」と訴えた。

島田知事は「30万の県民を脱出させて欲しい」に訴え、牛島司令官の答えは「軍人はあらゆる努力をしなければならない。分かってください」というものだった。

ここから厳しい南部洞窟陣地への転進(後退)。

病院では重傷者を残置し、雨のぬかるみのなか移動開始した。残された兵はカミソリで首を斬り、毒を飲み死んでいった。南風原陸軍病院では2000名が自決したという。

片足を失った兵が「生きたい!」と泥濘の道を居ざる。一旦橋付近で敵戦車に襲われ蹂躙される。出会った婦人は子供の脚を抱えていた。キャベツにむしゃぼりつくひめゆりの乙女たち。

摩文仁司令壕に着いた八原は「到着した兵力は約3万、その実力は1コ中隊並み」と聞かされ、呆然とした。

真栄平の轟壕では海軍陸戦隊の大田司令官が「戦闘に巻き込む、非戦闘員と一緒に行動したくない!」と32軍に同行することを拒み、沖縄戦における県民の協力を伝えるべく報告文「県民は終始一貫して勤労奉仕や物資節約を強要されたにもかかわらずよく戦い抜いた。県民に対し、後程、特別のご配慮を頂きたくお願いする」を書いていた。6月13にはこの壕にも敵が現れ、軍属の女子たちが応戦。

32軍は隷下部隊に「悠久の大義に生きるべし」と軍解散命令を下令した。これにもとづき波平の第1外科、伊原の第2外科は「思い通りに生きよ!」と現地解散。とまどうひめゆり隊員たち。参謀たちにはそれぞれ任務を与えて脱出させたが敵に遭遇し命を落とす。

6月23日牛島司令官、長参謀長の自害を確認して八原高級参謀は変装して洞窟を出て、捕虜となった。

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「軍人は死ねばすむ、だが俺たちはそうはいかない。この島は俺たちの郷土だ」と商業勤皇隊、二中勤皇隊、一中勤皇隊、工業勤皇隊が突撃出陣して消えていった。

「死ぬな!」と軍刀で脅され、逃げ惑う乙女たち。逃げ惑う島民に容赦なく銃撃を加える米軍。

迫りくる敵戦車に、亀甲墓の前で、神に願って踊り狂う老女。浜辺に漂う数限りない死体。恐ろしいほどに迫力のある映像だった!

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沖縄県民の死者は15万人。人口の1/3が亡くなったという。

よくぞここまで沢山のエピソーゾを描いたと感嘆します。なかでも島民の小さなエピソードを丁寧に拾い上げて積み上げ、見事に沖縄の悲劇が描かれています。「軍は何を守ろうとしたのか?」を問うた作品だと思います。

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「思い、思われ、ふり、ふられ」(2020)自分を重ね、自分に向かい合う青春!

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「胸キュン映画三巨匠」のひとりと称される三木孝浩監督作、楽しみにしていました。

青春のど真ん中、「4人の高校生は実在の誰かに当てはまるぞ!」とリアルに迫ってくる、青春胸キュン作品でありながら、もっと大きな夢のある悩める青春物語。“振られて人生が始まる”という「青春をかく過ごせ!」とエールを送りたくなる作品でした。( ^)o(^ )

原作は「ストロボ・エッジ」「アオハライド」の咲坂伊緒さん、未読です。監督は「アオハライド」の三木孝浩さん、脚本:米内山陽子 三木孝浩さん、撮影:柳田裕男(新)さん、主題歌:Official髭男dismです。

出演は「君スイ」の浜辺美波、北村拓海に福本莉子赤楚衛二さんらです。


映画『思い、思われ、ふり、ふられ』予告【8月14日(金)公開】

あらすじ(ねたばれ)

英語を勉強中の朱里(浜辺美波)。そこに「4時公園に来て!」のメール。雨が激しく窓辺を濡らしている。雨が運命の予兆を表現していて、とても印象深く描かれます。さてこの雨は吉兆か凶兆か? 

「みんなが幸せになる方法があればいい」「誰だって傷つきたくない」「なるべく笑って過ごしたい」「いつだってその選択をしている」と字幕が流れます。

この字幕が物語のテーマです。

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同じマンションに住み同じ学校に通う高校生の4人。山本朱里と山本理夫、市原由奈(福本莉子)、乾和臣(赤楚衛二)。

山本朱里(浜辺美波)と理夫(北村拓海)は親同士の再婚で姉弟の関係になった。朱里はこの家族をなんと続けて幸せな家族になりたいという考えを持っている。一方、理夫は真っすぐで不器用な男。朱里に淡い恋心を抱き、これを吐き出せない悩みを抱えている。

朱里が中学生のとき電車の切符を失くして困っているときに都合してくれたときに由奈と知合い、今では何でも話せる仲。和臣は由奈の幼ともだちで、由奈の紹介で朱里と理夫と付き合うようになった。

由奈は「見ているだけで十分なの」と好きな人がいるけど言い出せない、内向的な女。朱里は「見てるだけでは始まらない。落ちてるものではないよ!」と由奈に忠告する積極的で明るい女。

由奈は数学が苦手で理夫から教えてもらっていた。理夫が「好きな人はいなにの?」と由奈に聞くと「振られるのが分かっているから告白できない」という。理夫は「出来ないとしないでは違う!俺は言えないだ!」と明かす。由奈は「きっと朱里を!」と思うわけ。

和臣は爽やかで天然系。しかし、家庭のことで闇を抱えていた。朱里が「母の二度の再婚で逃げたくなる」というのを聞いて、和臣は朱里に特別な感情を持つようになった。神戸の街を見晴らせる公園に誘って「街のどこに行っても同じ。現実は変わらない。親の事情に振回されるなどと言って欲しくない!」と忠告した。朱里はこの答えに惹かれた。

図書館で由奈が理夫から勉強を教わっての帰り、理夫から「好きなら好きといった方が良い。振られたらまた次の人を好きになったら良い」と言われ、「ちゃんと振られると本当に好きになれるのかな?」と漏らした。すると「その時は俺が全力で支えてやる」と応えがあった。

雨が上がり(笑)、由奈は「理夫君が好き、だから私をふって!理夫君が本当に苦しんでいるとき友達になれる」と告白した。(笑) 理夫は戸惑って「由奈の気持ちを知らないで話した!」と謝った。振られたことで由奈は「振られることが怖くない!」という大きな勇気を手に入れた。

学校で熱中症で朱里が倒れた。健康室に運びポカリを渡す和臣を見た理夫は大きな決断を下した。

大雨の中、帰校する朱里を傘を持って迎えに行き、「和臣が好きなのか?俺が好きなにか?」とクスをした。これに「兄弟だからやめよう!」と朱里が怒った。これ以降しばらく口をきかなくなった。このとき、和臣がこの光景を土砂降りの雨の中で見ていた。

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朱里と理夫のキス事件から、恋に後ろ向きであったストーリーが、朱里と理夫の鬱陶しい関係が解消されたように、大きく変化をしていきます。

理夫は由奈に「朱里から振られた!」とこれまでのふたりの経緯をしゃべった。

和臣は「本当の姉弟ではない!」と理夫と朱里の関係を揶揄するクラスメイトに「小学生のようなこと言うな!」とふたりを庇った。これを見た由奈が「理夫君は自分のことしか考えてない。朱里はお母さんのことをしっかり考えている」とふたりの今の関係を明かした。

理夫は由奈から朱里の気持ちを聞かされ、謝罪をした。朱里に振られたことで、自分本位に物事を考えがちだと悟って、大きく変わっていく。しかし、朱里はそっと泣いていた。

理夫は由奈に「君のお陰で朱里との関係が整理できた」と感謝した。今度は由奈が泣いた。「なんでお前が泣くんだ!」と理夫。(笑)

和臣は朱里に好きなDVDを見て貰おうと「アバウト・タイム」を貸すことにした。

夏祭り。ユカタ姿の朱里と由奈。理夫は由奈に熊のマスコット人形をプレゼントした。ひとりぼっちの朱里に和臣がアドレス交換を申し出た。朱里が「付き合ってみないですか!私を好きになれませんか」と言い出す。これに和臣は「俺の気持ちは好きとかではなくて・・」と戸惑った。

学園祭理夫は由奈に「好きだ!」と告白。由奈がこれを受け入れた。一方、朱里のところには元カレの亮介(三船海斗)が訪ねてきた。なんでここに出てくると思いましたが(笑) 亮介が変わらない朱里の態度を見て、「大事なときに言わず、過ぎて言うのは自分と同じ気持ちを返してもらいたいと言うことだ。自分が恰好悪くならない、上目線でないと言わない!中身は空っぽだ」と貶して帰って行った。(笑)

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朱里には素直に理夫を受け入れる由奈の姿が眩しかった。写真展に出品された和臣の写真のなかに自分が写されていたことを知り和臣の気持ちを考えた。

ここからは朱里と和臣の話になります。「好きだ!」ということのもっと先にある将来の夢に絡む友情についてです。

進学路調査が始まった。和臣は兄(古川雄輝)が大学中退で劇団員となって家を出てしまった。映画関係に進みたいが父親に言い出せない。朱里の家でも父親の米国転勤で父と母が揉めていた。

朱里が自分と和臣の家庭環境は似た者同士と和臣をあの町の見える高台に誘い出し「やりたいことを口にしたらいい」と大きな声で「映画を撮る仕事をしたい」と声を上げさせた。これで和臣の進路が決まり、朱里へ「どこにいても同じだと思っていたが、ここでないどこかにあることを教えてくれた」と感謝し「好きだ!」の言葉を贈った。朱里は由奈の助けで母親との関係がうまくゆき、和臣の言葉を受け入れるまでに成長していた。

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感想:

思い、思われ、ふり、ふられ」と悩みながら成長していく“4人の高校生”の物語。4人の誰かに集中して観るとより深く楽しめます。4回観たくなるほどの「繊細な好きだ!の感情が繋がった物語」です。

おそらく漫画を読んだ人は作中の誰かに自分を重ね、この好きだの行方は?と楽しみ、自分もきっとこんな恋ができると夢を持ったのではないでしょうか!(笑) それほどに自分を重ね、自分に向かい合う物語だと思います。

この感情を役者さんの演技やセルフだけでなく、雨や空、光と陰で、監督特有の美しい映像で、魅せてくれます。

4人の演技がとても良い。浜辺さんの人を気遣う繊細で切ない演技。福本さんの頼りないようでとても芯のある演技。とてもよかったですね。なによりもふたりを美しく撮ってしまう三木監督がよかった。

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