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宮﨑あおいさんを応援します

「トゥルー・クライム」(1999)死刑廃止の是非を問う作品?

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クリント・イーストウッド監督・主演作ということで、WOWOWで観賞。

主人公の記者が自らの正義を貫き真犯人を暴くと言う、監督らしい作品でしたが、ちょっと情けないキャラクターが気になる作品でした。「人である前に、男でありたい」というキャッチコピーが気になった!(笑)

 酒好き、女好きの新聞記者。有名新聞社を女で首になり地方紙に移動。同僚女性記者が急死し、その取材を引き継ぎ死刑執行を目前に控えた死刑囚の取材を行なうことに。死刑囚の無実を確信した記者は、刑が執行されるまでの残り少ない時間の中で真相を暴こうと奔走する・・・。

 原作はアンドリュー・クラバンのサスペンス小説「真夜中の死線」、未読です。監督:クリント・イーストウッド、脚本:ラリー・グロス、ポール・ブリックマン、スティーブン・シフ。撮影:ジャック・N・グリーン、音楽レニー・ニーハウス

出演者:クリント・イーストウッドジェームズ・ウッズ、イザイア・ワシントン、ダイアン・ベノーラ、リサ・ゲイ・ハミルトン

 サスペンス作品ですが、筋掻きが荒すぎて突っ込みどころが多く、そうでない。自分の“感”に絶対的な自信をもつ記者が、あまりにも女にだらしない。ということで作品の狙いが見えなくなっています。

しかし、黒人裁判、冤罪でガス処刑される死刑囚とその家族を繊細に描くなど社会派ドラマとして見る価値があると思います。我が国では描かれることのない貴重な映像ではないでしょうか。


True Crime (1999) Official Trailer - Clint Eastwood Movie HD

 あらすじ(ねたばれ):

冒頭、サン・クエンティン・カリフォルニア州刑務所で死刑囚ビーチャム(イザイア・ワシントン)の死刑執行前の診断が行われていた。

 親友アランが(ジェームズ・ウッズ)編集長の地方紙トリビューンの記者エルベット(クリント・イーストウッド)が若い同社の女性記者ミシェル(メアリー・マコーマック)と飲んで口説いていた。ミシェルはその帰り、魔のカーブといわれるところで事故、亡くなった。

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 エルベットはアランの指示でミシェルの仕事を引き継ぎ、ビーチャムの刑執行前のインタビュー記事を書くことになった。面会は午後4時予定。刑の執行は午前0時1分。

 このことに、主幹のボブ・フィンド(レイデニス・リアリー)が、エルベットには社会記事は書けないとアランに抗議、エルベットが気に入らないらしい。実はエルベットがフィンドの妻パトリシア(ライラ・ロビンス)と寝ていた。このベッドシーンを丁寧に描かれるが、あまり見たくない!(笑)

 ビーチャム事件は6年前、食料店ボーカムにステーキソースを買いに来て、バイトの大学生エイミー(マリッサ・リビシ)を拳銃で刺殺して逃走したというもの。店に入ってきたふたりの白人の証言で死刑が確定したという。白人のひとりは、ビーチャムが逃げるのを見たと証言。もう一人は会計士のポーターハウス(マイケル・ジェッター)。彼は店に入ってビーチャムが拳銃を持っているのを見たと証言していた。

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 エルベットはパソコンでビーチャム事件の細部報道をしっかり調べ、ボーカムの店を下調べして、ポーターハウスの証言がおかしいと気付いた!これはエルベットの“感“だという。

 昼過ぎ、ビーチャムの妻ボニー(リサ・ゲイ・ハミルトン)と娘ゲイル(ペニー・ビー・ブリッジス)がビーチャムを尋ね、最後の時を過ごしていた。ビーチャムが黒人女性弁護士に「刑は予定通り執行されるのか?」と聞くと「申し訳ない!」との返事が返ってきた。

 妻バーバラ(ダイアン・ベノーラ)から、「たまには娘ケイト(フランセスカ・フィッシャー=イーストウッド)を動物園に連れて行って遊んでよ」と言われ、エルベットは断れず、動物園に。事件のことが頭から離れず、油断して娘を負傷させてしまい、バーバラは怒り心頭に。(笑) ダメ男、離婚の布石として描いているが、表現が甘すぎる。

 約束していたレストランでポーターハウスに会い、「犯人の顔を見たか」と糺すが、彼はエルベットの昔の記事を持ち出し、「大嘘つき記者だ」と相手にしない。エルベットは社に戻り、ミシェルのパソコンを調べた。

 エルベットはアランに「ビーチャムは無実だ!ポーターハウスは銃を見ていない!ミシェルも矛盾に気付いていた!」と伝えた。

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 午後2時45分ごろ、フィンドがエルベットに「妻と寝たろうが!」と詰め寄ってくるが、このエピソードもいただけない。

 午後3時5分、ビーチャムの娘が面会室から出され、夫婦で記者の面接を待つ。そこにエルベットが駆けつけた。

格子越しにエルベットが聞く。「ネジが一本抜けている。神イエスなんかどうでもいい。正義もどうでもいい。憐れむべき真実を教えてくれ!」という啖呵が恰好いい。(笑)

ビーチャムは「トイレを借りているとき、“ベンダント”の声がした。撃たれて苦しむエイミーに蘇生を施した。そこに男(会計士)が来た。」と証言した。

 エルベットはかってビーチャムの裁判を担当した女性検事(フランシス・フィッシャー)を尋ね、「他に誰か見ていた者はいないか?」と質問した。「自販機でコーラを買った若い子がいたが、供述に矛盾はなかった」と言い、「なめないで!」とこれ以上は話さなかった。

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 エルベットがミシェルの叔父ジーグラーを尋ね、「特別な男性がいなかったか?」を聞くと、ウォーレン・ラッセル(ケイシー・リー)の写真を見つけてくれた。

 エルベットはウォーレンの叔母アンゼラ(ハティー・ウィンストン)を訪ねた。アンゼラは「見た人も白人。死んだ人も白人。その善良な白人の方々は女性を殺さないの?黒人で薬やる子は銃を持っているよ。無実の人がこのあたりで命を落としている」という。「処刑されるのは黒人なんだ」と言うと「孫は3年前に死んだ!」という。

 万事休す!エルベットが家に帰ると、妻バーバラから離婚を言い出された。バーで酒飲んで、TVを見ると、処刑されるビーチャムのことが報道されていて、エイミーの母親が「娘は非情な銃弾に倒れた」とインタビューに答えている。その首のペンダントはウォーレンの祖母アンゼラが着けていたものだった。

 酔払ったエルベットはアンゼラを尋ね、車に乗せて猛烈なスピードで走り、パトカーに追われ、州知事(アンソニー・ザーブ)の元に走った。

このころビーチャムは処刑室に入り、家族たちが見守るなか、1本目の薬チオペンタールが射たれ、眠りについていた。

 クリスマスの夜、エルベットは娘のクリスマスプレゼントを買っていて、家族でショッピングするビーチャムに会い、目で合図した!

 感想:

記者の“感”で、限られた時間内に、真実を追求していくエルベットの物語。平板でそれほどの魅力も迫力も感じなかった。しかし、死刑囚としてその時を待つビーチャムとその妻の姿には冤罪で何故この仕打ちを受けねばならないのかと心打たれるものがあります。

 ガス処刑は、朝診断がなされ、牧師の教戒、家族の面接、夫婦ふたりで過ごす時間があって、ガス室に送られ、厳重に管理された赤、白、黄、黒のガス弁が逐次、立会者が監視するなかで、操作される。赤弁(麻酔剤)が開かれた直後にビーチャムの死刑中止の指令が入るという緊迫したドラマ。死刑廃止の是非を問うた作品のように感じました。

 大杉漣さんの遺作教誨師」(2018)で死刑執行のシーンを見ましたが、辛いシーンでした。

                      ***

「星の子」(2020)真実を見る目

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原作は芥川賞作家・今村夏子さんの同名ベストセラー、未読です。監督は「まほろ駅前狂騒曲」「日日是好日」の大森立嗣さん。主演に芦田愛菜ちゃん。「愛菜ちゃんがいよいよ大森監督とタッグで芥川賞作家作品に出演か!」ということで楽しみにしていました。期待を裏切らないすばらしい出来でした! 

未熟児で生まれた女の子・ちひろ。“金星のめぐみ”という水のお陰で健康体になったことで、家族は宗教団体に入会。貧乏ではあったが、両親に愛情一杯で育てられた“ちひろ”が中学3年になり、赴任してきたイケメン先生が好きになり、これまであまり気にしなかったが、教団の噂や友達のいうことが気になり、これまでのように教団を信じていいのかそれとも別の道があるのかと、揺れるひろみの心を描いた物語。 

世間では異様だと見られる宗教団体に置かれた主人公が、この教団を信じていいのか、自分にとって何を信じ、どう生きるかがテーマになっていますが、これは普遍的なテーマです。

私たちはとかく平々凡々と世の流れに流されながら過ごしがちですが、“ちひろ“が苦しみのなかで大きな世界を見つけていく姿は感動的です。 

愛菜ちゃんの表情のなかに、“ちひろ”の心の動きを読み取ることになりますが、時々の感情がよく出ていて、すばらしいです。彼女の将来は女優を超えた何かを為しうる人になるように思いました。 

監督・脚本:大森立嗣、撮影:槙 憲治、音楽:世武裕子

共演;永瀬正敏原田知世岡田将生蒔田彩珠、新音、大友康平高良健吾黒木華


『星の子』本編映像 

あらすじ(ねたばれ):

ちひろ芦田愛菜)は未熟児として生まれ病弱だったために、父(永瀬正敏)と母(原田知世)はいろいろと治療を試したが効果がなかった。そんなとき「金星のめぐみ」という水の出会い、以来健康体になって行った。父母がこの水をしませたタオルを頭に乗せるという奇妙な宗教団に入信し熱心な信者になった。

この役、原田知世さんがよく受けました。(笑) 

これから15年後、中学3年生になったちひろは、4の月始業式で数学担任の南先生(岡田将生)に出会い、憬れを持つようなった。

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先生の数学の時間には、ひたすら自分の病状を記した母の10年日記に、先生の似顔絵を描いた。先生はテニス部の担任だったのでテニスの練習もよく見に行った。 

先生が好きになっていくことで、人とは変わった家族のなかで育ったことが気になり出す。 

幼いころ汚いものがきれいに見えるというメガネを掛けていたこと。仲良しの“なべちゃん”(ヴォナミッセル珠良)に「あんたはイケメンが好きなだけ!」と冷やかされるが、気にならず掛けていた。(笑)

今ではなべちゃん(新音)が「(自分の彼氏)新村君(田村比呂人)を貸してあげようと思ったが、彼が断った」という。(笑) ちひろは男の子については奥手で幼いところが残っているが、聡明な子。ちひろには姉・マ~ちゃんがいたが、今は家を出ている。 

ちひろは川沿いの空き地に建てられて小さな家に住んでいる。教団活動でお金がなくなり、ここに引っ越してきたのだった。狭い家のなかに立派な祭壇があり、この祭壇で進学を目指して勉強している。この生活になんの不満もない。 

4年前、家を出た姉(蒔田彩珠)が戻ってきた。姉は水を飲んで「おいしくない、こうなったのはあんたのせい」という。でもよく話をしてくれ、「新婚旅行には連れていく」と約束した。しかし、次の朝には姿を消していた。 

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5年前、マーちゃんは母の兄・雄三おじちゃん(大友康平)と組んで、水を水道水に取り換えて2週間飲ませて、「この水はありがたい水」と飲む両親に「だたの水!」と父母の宗教を止めさそうとしたが、これが父母の宗教心をさらに煽るという結果になった。(笑) このとき母を連れ帰ろうとする雄三おじちゃんにマーちゃんがハサミを持って追い返した。父母を愛しているが、宗教が嫌いらしい。 

こんな姉の姿を思い出して、ちひろは苦悶します! 

学校の休み時間。ちひろは教団家族の“さなえ”に誘われて、保健室で過ごした。さなえから教団の若い幹部・海路さん(高良健吾)と昇子さん(黒木華)が催眠術で高いものを買わせているなどの悪い噂を聞かされる。

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幼いころ、昇子さんから自分にはピンクの花輪を、春ちゃんにはメッセージに従ってると赤の花輪が被らされたことを思い出し、ちひろは少し宗教心が薄いのかもしれないと思った。 

学校帰りに、コーヒーを飲んでみる。家では「コーヒーを飲むとパワーが落ちる」と飲まない。別に変わったことはないと感じた。 

卒業文集の作業していて、なべちゃんがちひろが飲む水を飲んで「まずい!あんた騙されているよ」と言う。この言葉にちひろは落ち込んだ!

作業で帰りが遅くなり、なべちゃんと新村君、そしてちひろの三人が南先生に車で送ってもらうことになった。 

なべちゃんと新村君が後部座席、ちひろは先生の横で、どきどきしていた。家近くの公園にきたところで緑のジャージーで頭にタオルを乗せ、水を掛け合う男女がいた。

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先生が「何にやってんだ、狂っている!」と声を上げた。ちひろは車から降ろしてもらって、「どうしよう、どうしよう」と走った。マーちゃんのところに飛んでいきたかった。 

家に帰ると「大丈夫か!」と父が水を掛けようとしたが、これを断って、ベットで泣いた!病気のふりして隠れてしまいたい気分だった。 

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次の日。登校して、廊下で南先生に出会った。先生が女生徒から「昨日のデート本当なの?」と冷やかされているので、「昨日、公園で見たのは私の親です」と告白した。先生がびっくりするので「嘘です!」と言って、その場から逃げて、泣いた。

保健室で熱を測ってもらうと38.5度あった。浅見先生(大谷麻衣)に「私は風邪をひかない。この水で!」と訴えたが、「風邪でしょう」という。水も利かなくなっている!

ちひろは林家を代表して親戚の法要に参加した。そこで雄三おじさんから「

瀬乃高校は遠い。家から通わないか」と強く勧められたが、「今のままでいい」と断った。 

南先生の似顔絵を描いた日記は、先生の絵のあるページを全部切り取った。それを整理して釜本さん(早間颯紀)にエドワード・ファーロングの似顔絵として進呈することにした。(笑) 

南先生がホームルームの先生の代行でやってきた。推薦入試が近いとしてヴィルスに注意喚起し、「水で罹らないということはない。両親に言っとけ!」とちひろに。そして「いつも似顔絵書かれて迷惑だ!」という。異常だと見られている教団より酷い!こんなことがこれからも続くかと、ちひろは呆然とした。過呼吸で苦しくなり、泣いた!

なべちゃんが「あいつは性格が悪い」とハンカチを貸してくれ、「公園の人があんたの親であることは知っていた」という。「あれで風邪ひかないの」と言うと「あんた信じるの?バカだよ」と言われた。 

父母と一緒に教団の研修会に参加した。大講堂で教会歌を唄い、交流の時間には隣の人とお話をした。その人はツダさんという男性だったが「婆ちゃんの代理で30万もらって参加している。ここはやばいよ!リンチされるよ。行方不明者がいる」という。(笑)

瞑想時間には、タオルを頭に乗せって、水を掛ける儀式にも参加した。夕食には海路さんたちが作る料理を食べた。海路さんはとてもオーラのある人だった。自分が試されているようで、ず~と母に会えないのが不安だった。 

次の日。信者代表の誓いの言葉を聞いた。そこに母が居ないのが心配だった。そのとき昇子さんが「お母さんはカフェテラスよ!迷っているのね、あなたがここにいるのは自分の意思とは関係ないの!」と言われた。

ちひろが懸命に母を探した。さなえから「一生会えないかもしれない」と聞かされ、愕然として、座り込んでしまった。

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そこに母がやってきた。父もやってきて、会場を出て、薄い雪の上にシートを敷いて夜空の流れ星を追った。三人はマ―ちゃんに子供が産まれたことを知り喜んだ。

父が「見つけた!」というが、見えなかった。ちひろが「見つかった!」というが、父母にはわからなかった。「三人で見つけなきゃ!」と見続けた。 

感想:

三人で星を眺めて、まだ結論は出ていませんが、ちひろは自分が信じる星を見つけるでしょう。 

ちひろは南先生に恋したことで、父母のこと、姉のこと、お友達のこと、教団のこと、何を信じればよいのかと心が揺れました。 

南先生に父母が儀式をしているところを見られ、逃げたが、先生に「あれは親です」と告白し、先生の本心を試した。自分から、先生は信じられるかと確認する強さをもっていた。見えないものを見ようとする勇気を持っている。 

昇子さんに会い「あなたがここにいるかは、自分の意思とは関係ない」」と試され、自分が信じるものを信じればいい、自分で道を選べばいいと気付いた。 

ちひろにはもっとすばらしい心を持っている。南先生に告白し、先生が動揺するのを見て、「あれは嘘!」と取り消した。自分が最悪の状態にありながら、先生を気遣う思い遣りがある。これに比して南先生の行動はあまりにも酷過ぎました。 

愛菜ちゃんは“ちひろ”そのもので、ずっと先を見ていると思います。すばらしい演技でした!

ちひろのお姉ちゃん役・蒔田彩珠さんは、出番は少ないですが、とても雰囲気があるいい演技で、確実にうまくなっています。 

                                   ****

アニメ「鬼滅の刃 兄妹の絆」炭治郎と妹禰󠄀豆子の絆の強さ、キャラクターを押さえましょう

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いよいよ劇場版「鬼滅の刃 無限列車編」が10月16日に公開されます。これを記念してアニメ「鬼滅の刃」の第1話~第5話で構成された先行上映版「兄妹の絆」がTV上映されました。ここでは主人公・竈門炭治郎が鬼を退治する剣士“鬼殺隊”に入隊するまでの様が描かれています。 

炭治郎と妹禰󠄀豆子の絆の強さ、キャラクターをしっかり押さえておく必要があります。 

原作は吾峠呼世晴さんの超人気コミック。監督は外崎春雄、アニメーション制作:ufotable

声優、

竈門炭治:花江夏生、禰󠄀豆子:鬼頭明星、富岡義勇:櫻井孝宏、鱗滝左近次:大塚義忠、錆兎:木尾裕貴、真狐:加隅道衣。


TVアニメ「鬼滅の刃」第1弾PV 2019年4月放送開始

あらすじ(ねたばれ):

冒頭、竈門炭治郎は傷ついた女を背負い「何でこんなことに。兄ちゃんが絶対に助けてやる」と叫びながら、雪の中を急いでいた。 

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雪の日にもかかわらず、竈門炭次郎は体の弱い母葵枝を助けるため、小さな兄妹、竹雄、茂、六太、禰󠄀豆子、花子を残して、炭ウリに出ていた。幸せが壊れるときは血の匂いがすると不安を抱いていた。 

炭次郎は商売上手で、よう売れた。また、困った人には手をかしてやり、鼻が利くことで頼りにされていた。その日、帰りが遅くなり、夜は鬼が出ると傘屋の三郎爺さんの言いつけに従って、家に泊めてもらった。鬼神が斬ってくれるまで待つという。 

翌朝、家に帰ると血の匂いがし、禰󠄀豆子が倒れていた。他の家族たちは全員殺されていた。息がある妹禰󠄀豆子を助けようと、背負って雪の中、町に急いでいると、禰󠄀豆子が突然鬼と化して襲ってくる。驚いた炭治郎は崖から落ちたが雪の中で助かった。禰󠄀豆子と闘っていると、禰󠄀豆子の体がどんどん大きくなり、力も増して、炭治郎が危うくなってきた。炭治郎が「鬼になんかになるな、頑張れ」と励ますと、禰󠄀豆子が涙を流し始めた。そこに、一人の男が禰󠄀豆子を殺そうと襲ってきた。彼は富岡義勇だった。

炭次郎は彼の攻撃から禰󠄀豆子を守った。富岡が「鬼の血が傷口に入って、禰󠄀豆子は鬼だ。人間には戻らない」と叫ぶ。炭治郎は「禰󠄀豆子を殺すな!」と懸命に請願した。富岡は禰󠄀豆子を殺そうと思ったが、これまでの鬼と違って、炭次郎を守る禰󠄀豆子を見て、殺すのを思い留まった。富岡は、斧を使う炭治郎の技に鬼に立ち向かえるかもしれないと思った。 

炭治郎が目を覚ますと、禰󠄀豆子の口に竹の口枷が付けられていた。富岡は、狭霧山の鱗滝左近次の処に行くよう告げ、「妹を太陽の元に出すな!」と言って去った。 

 炭治郎は、殺された母と弟妹たちを埋葬し、禰󠄀豆子をともなって狭霧山を目指した。 

 炭治郎は農家から、籠と竹と藁を求め、洞穴に隠れていた禰󠄀豆子を籠に入れた。炭治郎は籠を布で背負い、昼間に移動した。

夜になって、立ち寄ったお堂で鬼に遭遇した。炭治郎は斧で立ち向かうが、鬼はすぐ傷が治り、苦戦。襲い掛かる鬼を禰󠄀豆子が蹴とばして鬼の頭を切断した。が、手と頭、胴体となって襲って来る。胴体が崖から落下して、頭と手が残った。

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炭治郎が頭に止めを刺そうとするが出来ない。そこに天狗が現れた。天狗は鱗滝と言い、炭治郎に「鬼を前にしても優しさが消えない。この子がダメだ」と判断。ところが日が昇り始め、陽が当たり鬼の頭は自然消滅した。そのとき禰󠄀豆子はお堂の中にいた。 

 鱗滝は「富岡に紹介されたものか」と確認し「鬼殺の剣士として役立つか確かめる」と言い、禰󠄀豆子を背負った炭次郎を連れて、山のふもとにある隠れ家に戻った。麟滝は自分が責任を持つと禰󠄀豆子を残し、炭治郎を山の中に連れて行き、「夜明けまでに家に帰れ」と命じた。

炭治郎は大したことはないと思ったが、数々の罠が仕掛けら、空気が薄く、苦戦した。しかし、妹を人間に戻すという炭次郎は、罠の“臭い”を嗅ぎとって回避し、鱗滝の家までたどり着いた。鱗滝は炭治郎の力を認め、その旨富岡に手紙を送り、鬼殺隊になる修行を開始した。 

 「鬼殺隊は数百名で、政府から正式に認められていない、古より存在していた。誰が率いているかは謎。鬼はいつどこから現れたか不明。身体能力が高く、傷などは立ちどころに直す。身体を変えたり、異能をもつ鬼もいる。鬼を殺すには日光に当てるか、特別な刀で斬るしかない」と教えた。 

鱗滝の元で、鬼殺隊の最終選に挑む修行が開始された。挑めるかの判断は麟滝が行う。錬成日記を書くことにした。

山の踏破、罠の回避。受け身の仕方、刀の素振り、真剣を折らない方法、呼吸法、転ばない体位、滝の中で水と一体になる修行が続いた。禰󠄀豆子はあの日から眠ったままだった。炭治郎はその身を案じた。 

1年が経ち、鱗滝はもう教える事はないと、丸い大きな岩が斬れたら最終選別に行く許可を与えると言う。炭次郎がいくら刀を振っても、岩を切れない。鱗滝さんは何も教えてくれなかった。炭治郎は毎日訓練を続けるが、半年たっても岩は斬れなかった。焦った、鍛錬が足りない!これでは禰󠄀豆子が救えない! 

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 ある日、岩の上に狐の面を被った少年錆兎が現れ、「わめくな!黙って耐えろ!」と言う。炭治郎は真剣で、木刀の錆人と戦うが、全く歯が立たない。「何も身についてない!知識として習っただけで身体が覚えてない」と罵倒し、骨の髄まで叩き込め!と襲ってきた。炭治郎は気を失った。錆兎は少女真菰に任せて去っていった。錆兎と真菰は兄妹で鱗滝が育てたという。真菰に心臓を強くする呼吸法を教わり、鍛錬を積んだ。 

半年後、錆兎と炭治郎は真剣で戦い、炭治郎の一撃が先に錆人に届き狐面を割った。錆人は微笑み、真菰は「勝ってね!あいつに」と言い残し、二人は消えた。狐面を斬ったはずが、あの岩が斬り裂いていた。 

 炭治郎が勝った理由。隙の糸の臭いが分かるようになり、誰かと戦っているときその匂いに気付くと糸が見える。糸は相手の刃に繋がっていて、見えた瞬間ぴんと張る。俺の刃は強く引かれて、隙を切り込む。 

鱗滝が来て、「最終戦別に行かせたくるつもりはなかった。子が死ぬのを見たくなかった。この岩は斬れないと思った。凄い奴だ!」と褒めてくれた。鱗滝は修業を終えた祝いにと馳走を振舞った。鱗滝は「鬼の強さは人を食った数だ」と教え、厄除の面と言う狐の面を与えた。炭次郎は眠ったままの禰󠄀豆子に「必ず帰る」と言い残して、最終選別に向かった。錆兎と真菰は鱗滝の弟子で二人とも死んでいたのだった。 

炭治郎が最終選別場所の藤襲山の麓にやって来ると、そこに沢山の少年少女がいた。中腹まで藤の花に囲まれた場所で、山に鬼を閉じ込めているという。最終餞別は七日間ここで生き残ることだった。 

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 炭治郎は2匹の鬼に襲われた。呼吸を整え、隙の糸を見て、見事鬼を倒す。鱗滝から授かった剣、日輪刀は骨をも残さない切味だった。

炭治郎が鼻をつく強烈な臭いを感じ、そこに大きな異形の鬼(異形鬼)が現れた。仲間が次々と異形鬼に食われていく。腕を切ってもすぐに再生してしまう。異形鬼は47年前に鱗滝に生け捕りにされ、強い恨みを持っていた。

今まで50人を食い、そのうち13人が鱗滝の弟子で、錆人や真菰もその中にいたのだった。厄除の面を着けているやつは全部喰ったという。錆兎や真菰の霊がこの闘いを見ていた。

炭治郎は異形鬼の反撃をくらい、気を失った。炭治郎は妹禰󠄀豆子の声で起き上がり、異形鬼を攻撃し、日輪刀の一撃で、首を切り落とした。 

異形鬼は絶命する寸前に、兄を噛み殺した悲しい記憶を取り戻し、炭治郎に手を差し出した。炭治郎は異形鬼の手を握り、今度生まれてくる時は鬼にはならないよう祈ってやった。そして、異形鬼に殺された多くの子供や錆兎や真菰の霊を狭霧山に送った。 

 「どうやって鬼を人間に戻す!」と鬼を倒しながら、藤の花が咲き乱れる最初の場所に辿りついた。炭次郎は七日間生き残り、最終戦別に合格。生き残った者は炭治郎を含めわずか四人だった。 

生き残った四人は鬼殺隊の一番下の階級の隊士隊服と連絡用のカラスが与えられた。鬼殺隊の剣士の刀である日輪刀を作るための弾鋼が与えられた。富岡は炭治郎が鬼殺隊に選ばれ、どんなやつに育つかと期待を膨らませていた。 

戦いで負傷した炭次郎は「鬼を人間に戻す方法を聞けなかった」と後悔しながら、鱗滝の家に夜帰り着くと、竹口枷の禰󠄀豆子が元気に炭治郎に抱きついてきた。炭治郎は声を上げて泣いた。鱗滝も炭次郎を良く帰ったと労った。そして「いくつか種類がある。血鬼術という異能の鬼がいる。これからはそう鬼と戦うことになる。困難を伴うぞ!お前ならやれる!」と声を掛けられた。「禰󠄀豆子はあんな鬼とはちがう。眠ることで体力を回復している」と言われ、ほっとし、守ることを誓った。 

15日後、鍛治師の鋼鐵塚が日輪刀を持って来た。持主によって色が変わると言われる日輪刀、炭治郎が鞘を抜くと漆黒の色に変わった。あまり見ない色だという。突然連絡カラスが「北西の町に向かえ。少女が毎夜消えている。鬼を見つけて殺せ!」と炭次郎に初めての指令が下った。

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「望み」(2020)日々の互いの想いを大切にすることがいかに尊いか!

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原作は雫井脩介さんの同名ベストセラー小説、未読です。監督が「人魚の眠る家」の堤幸彦さん。出演者に清原果耶ちゃんの顔がある。深く人間心理を問い詰める作品だろうと挑戦してみました。

 とても洒落た邸宅に住む1級建築士の夫と小説の校正に勤しむ妻、高校1年生の男の子と中学3年の長女。ある日、長男がサッカー試合で負傷し、その後部活を辞め不可思議な行動をとる。そんなとき、長男の親友が殺害され、本人が所在不明となる。事件が報道やネットで話題になるなかで、長男は犯罪者なのか、そうでないのか。生きているのか死んでいるのか。父親は決して犯罪者でなないと念じ、妻はただ生きてさえいてくればと願う、長男に寄せる家族の“望み“をサスペンシフルに描いた物語。

 殺人という特異な事件になっていますが、今の世の中、交通事故でも、この物語のような家族が崩壊しかねない家族問題が起こります。他人ごとではない物語と、この夫婦の想いに自分を重ね、どういう結論になるかと魅入りました。

 家族の絆を試される究極の場に立たされると、「家族の絆もなんと脆いものか」と思いましたが、映画を観たあとで、もう一度思い起こすと、見えていなかった家族の想いが見えてきて、感動します。ラストで妻が吐く「長男に救われました」の言葉に、この家族が紡いできた絆を見ることができました。エンディングで見せてくれる家族写真に、映画「浅田家!」(2020)を連想し、「日々の互いの想いを大切にすること」がいかに尊いかと痛感しました。

 脚本:奥寺佐渡子、撮影:相馬大輔、音楽:山内達哉、主題歌「落日」:森山直太朗

出演者:堤真一石田ゆり子、岡田健史、清原果耶、加藤雅也市毛良枝松田翔太竜雷太

 あらすじ(ねたばれ)

冒頭、広く空撮で捉え、静寂な住宅街である洒落た石川邸。1級建築士の夫・石川一登(堤真一)が設計して建てたもので、本宅に事務所を連接した洒落た建物。

家を建てようと訪れた客に、「本宅をモデルハウス」といて見せる。1階は吹き抜けのリビングとキッチンが一体化。妻・貴代美(石田ゆり子)の小説校正のための書斎室もある。2階がそれぞれの部屋になっている。この建物でどんな家族の絆が出来上がったかという物語上の大切な設定です。

 12月17日、クリスマスのデコレーションで飾られる石川邸。

一登は訪れた客に子供たちの部屋に案内。子供たちのプライバシーはどうなるのと違和感を感じましたが、実はこのことが物語の大きな伏線でした。

長女の雅(清原果耶)はニコリと客に挨拶しとても快適ですと言わんばかりの笑顔を見せます。この笑顔に、社交的で自己顕示欲の強いキャラクターが全部含まれているという天才的な演技でした!

長男の規士(岡田健史)は寝そべっていて、父親の「サッカーで怪我をしていまして」の言葉に、不愛想な態度で応じた。

 その夜の食事で一登が「お客の時は愛想よくしてくれ!」と言えば「無理!」と規士。貴代美が「分かってくれるわ!」と言い、雅が「仕事がなくなりお父さんは儲けがなくなる」という。(笑)この際どい会話、家族の人間関係がよく出ています。

何もしないと何も出来ない男になる。何かして見ろ!未来は変わるぞ!」と言うと、規士は突然2階に駆け上がってしまった!

 12月19日、貴代美が規士の部屋を掃除していて小刀のパッケージを拾う、心配して一登に見せると規士の引き出しを調べ、小刀を発見。事務所で保管することにして、規士にはそのことを伝えた。このとき規士の顔の痣に「何があった?」と問うが「いろいろある」という規士。

 1月4日、規士は狭山神社に初もうでに出かけた。

 1月5日、貴代美が小説の校正をしていると規士からラインで「悪いけど帰らない」というメールが入った。

雅がゼミを終えて帰り、3人で夕食を食べているとことに、貴代美の母親扶美子(市毛良枝)から「近所で事件よ。男性が遺体で発見。TV観て!」と心配の電話があった。遺体は10代の男性でビニールが被されており、暴行されているというものだった。一登は「規士は何故帰らない」と心配し警察に聞き合わせをした。

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 1月6日、野田刑事(女性)と寺沼刑事(加藤雅也)が訪ねてきて、規士の所在と死亡した石倉与志彦の関係、携帯機種と電話番号を聞き、この事件に規士が関わっていることを話し、行方不明届を出すことを勧めた。

 一登は雅を学校に送り、自分の設計した建物の建築現場に向かった。一登が出かけたのを見計らったように週刊ジャパン誌の記者・内藤(松田翔太)が石田邸を訪れ、貴代美に記事に協力して欲しいと申し出て、「3人が関り、2人は逃げたが、もうひとりいる」と教えてきれた。

 雅はクラスで事件が話題になり、気分が悪くなる。一登が建設現場で建設会社の社長・高山(竜雷太)から「亡くなった石倉与志彦は左官の下請け花塚の孫だ。刺し傷が一杯だ!」と昨夜の事件を話す。一登は居たたまれなかった!規士が加害者でないことを祈るしかなかった。

 マスコミが石川邸前に集まり、大変なことになりだした。そこに一登が戻り、カーテンを引き、これまで明るかった石川邸は一気に暗い世界に。うずくまった貴代美から「関係者が3人いて、その一人は殺していない!」と聞かされた一登は、高山の話もあり、規士は加害者でないとこの話を信じた。

 隣家からの苦情で外に出てマスコミに攻められるが、うまくこれを交わし、家を訪ねてきていた女生徒・飯塚さんから「規士がサッカーの試合で先輩から生意気だと怪我させられた。その先輩はその後脚を折られた」と聞かされる。一登は夜間、車で街の中を走り規士を探したが、見つからなかった。

 夜、ゼミから帰ってきた雅が「ネットで、もうひとりは死んでいると書かれている」という。一登はネットの書き込みを調べた。

 1月7日、一登がリビングに降りてくると、貴代美がソワーでうたた寝していた。そっと毛布を被せた。外に出ると、壁や車にペンキで落書き。女生徒から缶を投げられる。一登はこの女生徒を携帯で撮った。

 野田、寺沼刑事がやってきて、「ナイフを持っていなかったか?」と聞く。「20日ほど前に、見たことある」と答えた。

 雅が「兄が悪く言われるから、学校に行きたくない。」と言い出し、貴代美が「殺されていると思っているの!」と叱責した。

一登と雅は車で出掛けた。雅が「兄が犯人なら人生終わり。犯人でないほうが良い」と言う。「雅は雅、責任は父さんにある」と言い聞かせた。貴代美の母・扶美子がやってきた。貴代美が「規士は殺されているかもしれない。一登は規士は被害者で、死んでいると思っている。私は生きていて欲しい」と訴えた。

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 一登は建設現場に顔を刺すと、高山社長から「花塚の孫はお前の息子に悪い仲間に引き入れられた!もうあんたとはつき合えない」と言われる。

 一登が家に帰り「規士を信じている」と言うと、貴代美が「どうして規士が死んでいると思えるの!仕事なんかどうでもいい。違う人生を生きます!」と食って掛かった。これで夫婦の関係は終わりになると思った!

 雅が「何でお兄ちゃんの犠牲にならなければならないの!お母さんがお兄ちゃんを可愛がるのは昔からよ」と貴代美に毒づき、二階に上がってしまった。一登が話そうと雅を追った。

 内藤記者から貴代美に情報を与えるので「母親のインタビューをさせてくれ」と申し入れてきた。貴代美はこれを受け入れた。「主犯は庄山。遺体は彼が運んだ。逃げたひとりはいまだ分からず、規士に似ているので警察が困惑している。自分の印象では被害者というより加害者!」と伝えた。

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 1月8日、塀に人殺しの落書き。車にも。マスコミから激しい言葉が投げ掛けられる。一登が小刀の保管箱を調べると小刀が消えていた。従業員の梅本に聞くと4日前に規士が持ち出したという。一登は顔色を失くした。

 TVニュースで「もうひとりの犯人が捕まった」が流れる。貴代美が留置場に差し入れをするためにと買い物に出かけた。一登は外に出てゴミを掃除し、空を見上げた。

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 夜、夕焼け。ニュースで石倉与志彦の葬儀予定と祖父のインタビュー、逮捕された庄山の映像が流れた。

1月9日、雅が学校に行かなくなった。一登が規士の部屋に入り、置いて行ったバックを調べるとリハビリの教本が出てくる。一登が喋った「何も出来ない大人になるぞ」というメモがそれに挟まっていた。机の引き出しを開くと、小刀がある。

 一登は正装して「あいつはやっていない!」と貴代美に告げ、石倉の葬儀に駆け出した。寺沼が「着ているものから規士らしい」と貴代美を署に連れ出した。

葬儀場の一登は葬儀場に入れてもらえない。そこに貴代美の知らせて警察署に急いだ。

規士が棺に納められていた。警察から事件のあらましが語られ、規士は逃げた生徒のひとりに刺されたという。

 規士の葬儀が、多くの生徒たちが参列するなかで盛大に執り行われた。

  内藤記者がインタビューを止めると言ってきた。貴代美は「もし規士が加害者だとして生きていたら、その後の苦しさで押しつぶされていた。私たちは規士に救われた」と語った。

 一登がリハビリ教範を、センターに返しにいくと先生が「したいことが見つかったというので、この本を貸しました未来は変えられると言っていました」という。一登は何を見ても規士を思い出しますと言い添えた。

感想:

夫・一登が自分の努力で創った会社を守りたいと、規士の無罪を強く信じることに疑念はなかったが、報道やネットによる規士犯罪説にこの想いをぶつけ、真実が見えなくなり、妻喜代美の想いとぶつかるシーンには痛みを感じました。しかし、真相が明かされ、規士が正義の子であって、亡くなったことに号泣するシーンに決して規士の死など望んでいなかったと思います。もし規士が犯罪者であってもこの姿は変わらなかったと、ここでの堤さんの演技が見せ処でした。

 一方の妻清美の「規士が犯罪者でもあっても生きていて欲しい」という想いにも母親らしい想いで、疑念を持たなかった。

一登の規士が亡くなっているのではないかという態度に、時に、怒りをあらわにするのは当たり前。娘の雅に「お母さんはお兄ちゃんを可愛がりすぎで私をほったらかして」と言われ、これに怒りをあらわにするのも当たり前。むしろ、もっと激しく対応しないことに不満でした。が、

 一登となぜ激しく衝突しなかったのか。徹夜で規士が帰ってくるのではないかと待ち、ソファーにうたた寝したところに、一登がそっと毛布を掛けるシーン。日頃、何気なにところで、お互いを思い遣る夫婦であったのだと思いました。

2人目の犯人が見つかった際、それを規士であると受け入れ、警察への差し入れものを買いに出るシーンにも、母親は強い!と思いました。石田ゆりさんが事件当初、事件に巻き込まれ動揺しましたが、母親扶美子が訪れてからは腹の座ったお母さん役を見事に演じていました。母・扶美子の「何があっても受け入れること!覚悟しなさい!恐れる物はなにもない」と石川邸に泊まり続けた態度がとても心強かった!

 ラストで「規士に救われました」という述懐に、最初違和感がありましたが、貴代子が小説の校正という仕事で沢山の家族の物語を目にし、冷静な判断が出来たのではと思えた。沢山の映画を観ておくことが必要ですね!(笑)

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 雅がこれからの高校生活に希望を持ち、お兄ちゃんの行動に疑念をもつのは当たり前。これをはっきり口にするのも当たり前。これがあって父一登は「結果がどうであれ自分が責任をもつ」と言い、貴代子との関係も崩れなかったと思います。お兄ちゃんが無実で亡くなり、貰った高校受験合格祈願のお守りは生涯の大切なものになりました。

清原さんが明るく、はっきりと意思を表す中学生雅を、まったく違和感なく演じていて、これはひときわ光った演技でした。

 高校生の事件を取り扱う記者、TV、マスコミのあまりの報道の酷さ、そしてネットの無責任なつぶやきに怒りを覚えました。そして落書き。高校生たちが、ボタンのかけ間違いで起こした殺傷事件で、慎重に扱うべきです。このことがこの物語のなかで一番恐ろしいと感じました。

 離婚という悲劇に終わってもいい物語が、規士の家族を想う気持ちで、家族が救われるという結末に、美しい家族の物語であったと思います。

 洒落た石川邸の作り、夕日の陰りや雨など自然を一杯取り入れてその時々の家族の想いや感情を表現する映像が美しかった。そして、冷静に家族を見つめるよう配慮された自然な音響が見事でした。

                                            ***

「評決のとき」(1996)目と頭でなく、ハートで陪審員の心を掴め!

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裁判を目前に控えていまして、裁判劇を観たいと思っているところに、WOWOWでの放送。

原作はジョン・グリシャムの処女作。彼の新米弁護士時代の体験に基づく作品。

新米弁護士が、街を荒らす無法者の白人ふたりが黒人少女を強姦。これに復讐した黒人の父親を弁護し、数々の脅迫、妨害のなかで、如何にして無罪を勝ち得るかと苦悩するサスペンス・タッチで描くヒューマン・ドラマ。

初々しい弁護士が大きく育つ瞬間に立ち会える映画。大義のため、法を超えてもと、徹底的に弁護依頼者に尽くす新米弁護士に喝采でした。弁護士を演じたマシュー・マコノヒー出世作です!

弁護士はいかなる人物が望ましいか?この映画はその回答を与えてくれています!

監督:ジョエル・シュマッカー、脚本:アキヴァ・ゴールズマン、撮影:ピーター・メンジーズ・ジュニア。

主演はマシュー・マコノヒー、共演にサミュエル・L・ジャクソンサンドラ・ブロックケヴィン・スペイシードナルド・サザーランドキーファー・サザーランドオリヴァー・プラットアシュレイ・ジャッドら多彩と多彩です。


A Time To Kill Trailer

あらすじ(ねたばれ):

材木業の労務者カール・リー(サミュエル・L・ジャクソン)の長女トーニャ(10歳)が町の嫌われ者の白人ビリーとテイラーのふたりに強姦され木に吊るされるが、一命を取り留めるという事件が発生。

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カールは新米弁護士ブリガンスに、かってブリガンスの兄が世話になった縁を頼って擁護を要請。強姦者ふたりが裁判所に出頭したところを、軽機でぶち殺し、保安官ルーニークリス・クーパー)に右脚切断という重傷を負わせた。

ブリガンスは事務所の同僚弁護士ハリー(オリバー・プラット)と秘書のエセル(ブレンダ・フリッカー)、妻カーラ(アシュレイ・ジャッド)の反対されるがが、町を汚すならず者は許されないと、またカールの娘を自分の娘ハンナに重ねて、幼い子がレイプされた親がレイプ相手を殺す気持ちは理解できると、カールの殺人事件裁判の弁護士を引き受けた。カールは白人なら無罪、だから黒人の自分も無罪だと主張した。

担当検事は地方首席検事のバクリー(ケビン・スペイシー)で、ブリガンスは勝ったためしがない、陪審委員さえしっかり押さえておけばカールは死刑だと資金準備をする。裁判官は次期州知事を狙うヌース判事で黒人が勝利など受け入れられない。

レイプ犯ビリーの弟フレディ(キーファー・サザーランド)は、KKK団本部に頼み込み、自らが支部長となり町にKKK団を立ち上げ、ブリガンスや黒人たちの裁判活動を妨害する活動を開始した。

第1回の裁判。ブリガンスは「心身喪失で無罪」を主張。バクリー検事は「死刑」を主張し、精神科医は検察側にと強く主張した。ブリガンスは裁判地の変更を申請したが却下された。ところが密かに法廷に紛れ込んでいた司法生のロアーク(サンドラ・ブロック)が「裁判地変更却下は認められないという最高裁判例」をブリガンスに渡す。ブリガンスがこのことをヌース判事に訴えるが再び却下された。

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ロアークは高名な弁護士の娘で、死刑制度廃止を志す司法生。ブリガンスの手助けをしたいというが、ブリガンスは断った。

ブリガンスの事務所は電気経費も払えない状況。カールもその資金はない。幸い黒人牧師のエイジー(トーマス・メルディス)が寄付を募り裁判資金を作ったが、NAACP(黒人地位向上委員会)という組織を通じて白人弁護団がカールの裁判をやりたいとやってきた。カールとブリガンスはうまく連携して弁護団の不正を見ぬき、ことなきを得た。

ブリガンスは裁判に勝にかためには、黒人に有利な裁判地への変更とカールが心身喪失状態にあったと証言できる精神科医を確保すること、さらにカールが保安官ルーニーに謝罪しておくことだった。

KKK団によるブリガンス家族への攻撃が始まった。ハンナは黒人弁護士の子と虐められ、夜中ブリガンスの家の周りで十字架を燃やしで脅す!遂に時限爆弾が仕掛けられる。妻のカーラは、この仕打ちに耐えられず、裁判を続ける夫をなじって、娘ハンナを連れて実家に帰ってしまった。

ブリガンスはヌース判事の自宅を尋ね、再度裁判地の変更を求めたが「傷害致死で懲役20年でどうだ」と言い、裁判地変更は断られた。

残るは精神科医をどうするか?だった。恩師のウィルバンクス(ドナルド・サザーランド)弁護士からウィラード(ダグ・ハッチソン)精神医を紹介された。

ここにきて、ブリガンスはトーニャが犯された写真がいると、ロアークを弁護団に加えた。

ブース判の召喚状で集まった150人の陪審員のうち拒否権を使う人が何人いるかチェックした。ダメだった!

裁判所の外ではエイジー牧師の率いるカール支持者のデモが始まった。KKK団が裁判所に押しかけ、陪審員に圧力をかける。

黒人、KKK団、これに警官隊が加わり、いたるところで火炎があがるという、不気味な夜が続く。

ブリガンスはこの裁判の勝ち目は検察側の精神科医ロードヒーバー博士(アンソニー・ヒールド)のマイナス材料を見つけることだとロアークの資料集めに託した。

KKK団は裁判所にブリガンスの自宅に火をかけ、秘書のエセルの夫に危害を食われるなど一層激化し、軍隊が出動する騒ぎとなっていった。

裁判が始まった。重症を負った保安官のカールを擁護した。弁護側の精神科医ウィラードは「カールは心身喪失にあった」と証言した。一方、建設側の精神医ロードヒーバーは「正常だった」と証言した。

ロアークの情報が欲しいと思っていたところに、ドアークが精神医の勤める刑務所病院から資料を盗み出し、これまでロードヒーバーが関わった殺人事件証言11件のなかに1件も精神喪失者はないが、現実には刑務所病院に匿われていることが分かった。

これで勝てたとこの日の裁判を終え、法廷を出たところでKKK団に襲われ、警護の保安官が撃たれた。またロアークも襲われ、レイプされた。ブリガンスはロアークの入院する病院を尋ね、謝った。

翌日の裁判で、バクリー検事が弁護側の精神科医ウィラードに過去に強姦罪があったことが明かされた。もはやブリガンスに勝ち目がない! このとき恩師のウィルバンクスから「自分で乗り切れ!俺を超えろ!」と励まされた。

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カールに「あとは取引だ!第2種殺人を認めれば終身刑だ」と話し合った。カールは「あんたは白人だから、それを逆に利用して、陪審員を動かせる」と暗示した。

最終答弁でブリガンスは正義のため法の前で平等な裁判が受けられねばならないと黒人に対する偏見を戒め、目と頭は怖れと憎しみでしばしば偏見に毒されるとしてハートで感じとれるものが純粋だと説き、陪審員・傍聴人に目をつぶって聞いて欲しいと促し、少女が強姦された状況を詳細に明かし少女は白人の子だったと語って、判決を仰いだ!

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陪審員の判定は、ブリガンスの勝となった。カールの無罪を祝う黒人たちのパーティにブリガンスは家族を伴ってやってきた。

感想:

作品の背景が何時の時代、場所はどこかが明示されないが、現在の黒人騒動を見るとおり、同じことがアメリカでは今でも起こっています。

平等な黒人裁判には偏見を取り去ることだが必要だと「アラバマ物語」(1962)で説かれ、その精神はこのドラマでも描かれ、最新作「黒い司法0%からの司法」(2019)に引き継がれています。

いまだ解決の糸口さえ見えないこの大問題に、新米弁護士はどう取り組んだか?

裁判官、検察官、弁護士、陪審員さらに群衆、KKK団を絡ませながらサスペンス風に描いた弁護士物語はこれが初めて。この状況を打破するために正義や偏見だけを説いていいのかという現場弁護士の葛藤が描かれています。

KKK団の不気味な動向、黒人たちとKKK団が衝突など暴動の発生する事態がリアルで、このような状態のなかで、家族や同僚を失いながら、嘘をついてでも大義に向かって進む弁護士の姿に感動です。柔らかそうで、芯のある熱血弁護士を演じるマシュー・マコノヒーがとても魅力的で、これに絡むスーパー美人のサンドラ・ブロックにハラハラさせられます。(笑)

映像が美しく独特のカメラワークでスリリングに描いてくれます。

ブリガンスがすべての攻め手を失って気付いたのが、徹底的にカールの心情を汲み、正義のために敵を騙してでも黒人を擁護することだった。このことが歴史を変えるここにこの作品の意義があります。

弁護士は依頼人の心情を汲み、法を超えたところにまで踏み込む勇気がなければならないことを教えてくれます。弁護士さんにはこうあって欲しいと思います!

                                                        ***

「浅田家!」(2019)パンフレットでより深く味わえる作品です!

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「湯を沸かすほどの熱い愛」「長いお別れ」の中野量太監督作ということで期待していました。家族の絆の物語、しっかり描かれていて、監督らしい作品でした。

さいころから写真好きで、家族の応援のなかで撮ったユニークな家族写真で世に知られ、東北大地震発生時瓦礫のなかに埋もれた家族写真の洗浄作業を行うボランティア活動を通じて、家族の絆と人生における写真の力を知るという写真家としての成長、家族の絆を問う、ユーモアと涙溢れる物語です。

写真集「浅田家!」「アルバムの力」の写真家、浅田政志さんをモデルにした作品。なぜ彼は家族写真家で世に出ることができたか、そして家族写真の力とは何かを問う作品です。

この映画にはすこし高価なパンフレットが準備されています。何故このような贅沢なパンフレットと思いましたが、理由があるんです!写真家浅田さんが出演者をモデルに撮った十数枚の家族写真が掲載されています。この写真を見たら一目瞭然、作品のテーマが全て解き明かされます!劇中の個展シーンで、来客が微笑む意味が分かります。

脚本:菅野友恵 中野量太、撮影:山崎裕典、音楽:渡邊崇。主題歌:「S.Wonderfull」歌THE SKA FLAMES

主演:二宮和也、共演に妻夫木聡平田満風吹ジュン黒木華菅田将暉


映画「浅田家!」予告【2020年10月2日(金)公開】

あらすじ(ねたばれ)):

浅田家の当主浅田章(平田満)の葬儀で、亡き父親に家族が声を掛けるシーンから物語が始まります。この映像には、作品の大きなテーマが隠されています。この映像を観て、私にはこういう写真を持っていないことに、大きな失敗をしでかしたなと思っています。

この席で長男の幸弘(妻夫木聡)は弟政志(二宮和也)が家族を巻き込んでなりたい写真家になったと言います。

1989年、政志10歳。父・章は看護師の妻・順子(風吹ジュン)に代わって、主夫として、家族を支えていた。ケーキを作っていて包丁を落とし、脚に大怪我。そこに遊びから戻った政志が巻き込まれ、二階にいた幸弘が転げて駆けつけ、いずれも父親を思うばかりに怪我を負い、母の勤める整形外科で治療。治療が終わって、息子たちに送った順子の言葉が“あっぱれ”だった。(笑) 

政志12歳の時、父親が年賀状に添えるため専修寺で家族写真を撮って、そのカメラ、ニコンFeが政志の手に渡った。

記念に撮った写真は家族の写真と幼なじみの川上若菜だった。若菜には忘れられない宝物の写真となった。

政志は19歳で写真専門学校に入って、以来音沙汰なかったが、22歳のとき突然家に帰ってきた。父章がタコ焼きで祝った。この作品は料理で人の絆を描くので、なにを食べたかが大切なんです!(笑)

政志は、担任の先生に「一生であと一枚撮るとしたら何を撮るか?」という卒業課題に応えようと“あの日”の写真を撮りに戻ったのです。しかし、政志のカラフルな井出たち(刺青)に驚いた! (笑)

撮った写真は、皆でコスプレして、父が包丁で怪我して母の病院で治療したときのもの「怪我」。これで政志は最高賞を貰った。

その後、24歳で実家に戻って、パチプロ暮らし。そんななかで父が話した「俺はなれなかったが、なりたい自分になれ!」の言葉に発奮、父親の「消防士」、母親の「極道」、兄貴の「レーサー」等、成りたい自分の写真をコスプレして家族で撮りまくった。兄幸弘が恥ずかしい思いをしながら、全面的に支援した。

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政志は撮ることに自信ができ、この写真を持って東京に出てきて、若菜のアパートに同居させてもらい、プロの写真家を目指した。

幾つもの写真出版社に応募するが「オリジナリティはあるが家族写真は売れない!」と断わられ、路面に這いつくばって亀の動きを撮っていた。これを見た若菜が、自腹を切って、政志のために浅田家の家族写真をテーマにした個展を開いた。訪れる人は、みなさん笑いながら観て帰っていく。その中で小さな出版社「赤々舎」の代表・姫野希美(池谷のぶえ)に目を付けられ、出版した。このとき政志と若菜は鍋料理で祝い、ふたりで泣いた。

しかし、売れなかった。ところがこの作品が写真の芥川賞と言われる木村伊兵衛写真賞を受賞した。ことのほか若菜が喜んだ!

授賞式には家族が出席し、父・章」が「カメラを教えたのは私。受賞は私の手柄。70年の人生で自慢できるのは息子と生甲斐のある家族です」と挨拶した。

これを機に政志には各地から家族写真を撮って欲しいという依頼が入るようになった。最初に撮ったのは三陸海岸、野津町に住む高原さんの家族写真だった。しっかり家族の願いを聞いて、感情を込めて、桜の満開のなかで微笑む家族の写真を撮った。

次いで白血症の子供をもつ佐伯家の写真を撮った。子供が虹が好きというので家族で虹になってもらった。この写真を撮るとき、この家族の運命に政志はレンズを通して大粒の涙を見せた。

2011年4月、富山で仕事中、東北で地震があったことを知り、高原さん安否が心配で、震災地にやってきた。そこで大学院生小野陽介(菅田将暉)が津波で泥だらけの写真を洗浄するのを見て、外川美智子(渡辺真紀子)とともにボランティアとして参加。沢山の写真を洗浄し、写真を見て喜び元気になっていく人々を目にした。そして避難所となっている小学校の中に写真保管所を立ち上げた。

写真保管所に自分で作った家族のアルバムを持って訪れる内海莉子(後藤由依)がいた。なかなか父親が見つからない。ある日、政志が家族写真家と知って家族写真を撮って欲しいと言い出す。政志は多くの方が亡くなっているなかで撮ることはできないと断った。

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父・章の72歳の誕生祝いに実家に戻った。楽しい誕生会であったが父が脳卒中で倒れた。見舞いにきた若菜が「浅田家の写真に入れて!」と言うので、加わってもらうことにした。(笑)

父の早い回復をと兄・幸弘と専修寺を尋ね、ここで父が写真を撮ってくれた家族写真を思い出し、写真保管所に戻った。

莉子に家族写真を撮ると伝え、莉子と母親、妹の希望で、父の思い出のある海水浴の写真を撮ることにした。冬の海岸での撮影。莉子の父親が見つからないわけが分かったといつも莉子が身に着けている腕時計を自分の腕につけ、ポーズをつけて写真を撮った。莉子が泣いた! 自分が家族写真を撮ること自体に意味があることを知った。

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政志は幸いに高原家が安全であったことを掲示板で確かめることができた。

2011年9月、写真保管所を閉所し、仕事は外川さんが引き継ぐことになった。8万枚の写真を集め、6万枚が引き取られた。写真は記憶を大切にしてくれるものであるが、今を生きる力になることを知った! 政志はある日、父・章の生前葬家族写真「お葬式」を撮った。

感想:

前段、家族写真で家族の絆、政志の写真家としての成長を描く。後段、東北地震での写真洗浄作業を通じて、多くの死者に出会いそれが家族と結ばれていく姿に、写真の真の力を知るという2段構えの描き方。ふたつの話がうまく続くうまい脚本でした。パンフレットの家族写真を見れば、家族の絆や政志の成長は分かると、ストーリーを描かないパンフレットも粋なものでした。

忘れかけている津波震災の被害状況や支援活動が生々しく伝わってくる、見事なセット撮影でした。

出演者、皆さんの演技、すばらしいです。二宮さんのカラフルな井出達から立派なプロカメラマンまでの変化のある演技。その都度美しい涙を見せるという演技に酔わされます。

小野さんの無口で、黙々と写真を洗浄する姿。こんな平凡な人が、これほどの大きな仕事を成し遂げたことに、物語の本筋ではないが、感動しましました。菅田さんが演じているとは思いませんでした。分かってびっくり。作品のなかで、決して表にでない菅田さんの押さえた演技もよかったと思います。

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一番のお気に入りは父・親章です。木村伊兵衛写真賞受賞式での挨拶にみるように、家族を愛してやまない父親の姿を見ることになります。この父があっての浅田家。演じる平田さんが自然な演技ですばらしく、立派な家長さんでした。

                                        ***

「ザ・シークレット・サービス」(1993)ケネディ暗殺事件をモチーフに、ただの犯人追跡のエーゼント物語ではない!

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米大統領選が目前に迫っています。大統領を身を投げ出して守る護衛官の話ということで、NHKBSプレミアムで観賞。

第66回アカデミー賞(1994)で助演男優賞編集賞脚本賞にノミネートされた作品。物語は抜群に面白いです!

ケネディ大統領付き護衛官として、ダラスでの暗殺を防げなかったことを後悔するホリガンの元に、「大統領を暗殺する!」と挑発する謎の男が現れる。二度とこのような事件を起こさせないと再び大統領付護衛官となったホリガンと謎の男との対決を描くというもの。

ケネディ暗殺事件をモチーフにした作品。犯人が元CIAの男でジム・ギャリソン判事(ケネディ暗殺事件での唯一の裁判)が新犯人と推論する人物像に近いだけに、ダラス事件を思い出させてくれ、ただの犯人追跡の刑事物語ではない、アメリカの闇を思い出す作品だと思います。

エンターメント作品として、華やかな大統領選挙遊説の現場、シークレットサービスの勤務実態を知るとともに、恋あり、大アクションありで、楽しめる作品になっています。

ホリガンはプロの警護官と、いかなることがあっても“己の目”で相手を発見し、相手が撃った銃弾を身をもって受け止めるという信念の男(原題:In the Line of Fire)。ホリガンを演じるクリント・イーストウッドには大満足の役だったでしょう!

監督:ウォルフガング・ペーターゼン、脚本:ジェフ・マグワイア、撮影:ジョン・ベイリー、音楽エンニオ・モリコーネ

出演者:クリント・イーストウッドジョン・マルコヴィッチレネ・ルッソディラン・マクダーモット、ゲイリー・コール、フレッド・ダルトン・トンプソン、ジョン・マホーニ、クライド草津ジョン・ハードトビン・ベル


映画CM 「ザ・シークレット・サービス」テレビスポット

あらすじ(ねたばれ):

偽札犯罪捜査で“シークレット・エーゼント”と見破られ捕まったアリ(ディラン・マクダーモット)を素早い拳銃さばきでいとも簡単に救出するホリガン(クリント・イーストウッド)。アリは狂言回し役で、ホリガンを支えます。

ホリガンは伝説の大統領付警護官。ダラスでケネディ大統領を狙った弾を受け止められなかったことに大きな後悔を持っていた。これで妻子と別れ、今は孤独でバーでピアノを弾いて慰めるのが唯一の安らぎ。

アパートの管理人から男(J・マクローリー)が部屋に奇妙な物を残して消えたという通報で駆け付けると、ケネディ暗殺事件の報道記事・写真記事、模型フアン誌などを発見。調べるとマクローリーは31年前に死亡していたことが分かった。

引っ越し先のアパートは空になっていて、ケネディ大統領暗殺時の写真が貼られ、警護についていたホリガンの顔に丸印がついていた。

夜アパートに帰ったホリガンにマクローリーから電話が入る。「辞めずにシークレットにいたか!大統領を殺す!あんたも敵だ!」と怪電話があった。

翌日、ホワイトハウスシークレットサービス室に出向き、主任のワッツ(ゲイリー・コール)に自分への電話の傍受と大統領付護衛官に戻してくれることを訴えた。

早速、大統領の街頭パレードの警護に付いた。しかし、若いエーゼントと一緒に走るのはきつかった!

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勤務を終えてアルの車でアパートに帰る途中で、“模型フアン誌”を買ってアルに調べるよう頼んだ。

夜、またマクローリーから電話。「あのとき銃声に反応したのはあんたが一人だった。しかし、教科書倉庫をちょっと見上げればいいのにそれをせず、あの惨事。なんでせんかった?恐怖か?」と言ってきた(ヴォーレン・レポート)。これにホリガンが激怒した。逆探知は成功したがその場所にはマクローリーはいなかった。

仏大統領とのディナーを止めるよう首席補佐官に具申したが、拒否された。ディナーの警備に、女性シークレット・エイジェント:リリー(レネ・ルッソ)と共についた。

クローリージョン・マルコヴィッチ)は、プラスティックで銃を作り、サウスウエスト銀行に「マイクロ・スタンリーコーポレーション」名義で口座を作っていた。口座を作る際、おしゃべりな女性行員と会話して、素性がばれると彼女を殺害した。

シークレットサービス室にマクローリーから電話が掛かってきた。「こんども大統領のために命を捨てるのか?ヴォーレン・レポートで警護官に落ち度があったと書かれているぞ!やめとけ!ケネディには死の願望があったんだ。自分勝手なケネディだったんだ!」。電話の傍聴に成功し、駆け出したが、逃げられた。この際マクローリーは車に当たり指紋を残した。

指紋はFBIで解析したが、「これは機密だ!」とホリガンには「解析不能!」としか知らされなかった。

6日間で12州を巡る大統領の遊説に同行することになった。アルに模型フアン誌の分析を依頼した。

大統領がエアーフォースに乗り込み、大パレードを繰り広げる映像がうつくしい。ホリガンは警護に立ち続けた。カリフォルニアが決戦地と報じられていた。

一方、マクローリーはカルフォリニア勝利寄付金5万ドルを大統領に送金していた。

エアーフォースで移動中、リリーが「立ち番のとき何故サングラスをしないか?」と問うと「異常者を見た時、目で威圧感を与えるためだ!」という。ふたりはすかりいい関係になっていった。(笑)

急遽アトランタに会場が変更。雨の中で任務に就いた。風邪をひいた。次にシカゴ、雨の中での演説だった。「テロ!」と声を上げ、大統領が防護体制をとったが、これが風船の音を銃射撃音と間違えたことが分かった。「大統領が臆病に見える!」とホリガンは任務を解かれた。リリーからは「ケネディの愛人が訪ねてきたとき俺のだ!と言って停職になったでしょう。同じよ!」と慰められた。(笑)

夜、マクローリーから「風船が割れてパニクったか?なんであんな男に命を投げる!変わった仕事だ!バカだよ。俺は憂さ晴らしで殺す!」と電話があった。

アルから模型フアン誌を呼んで模型製作工場を尋ねると、政治に執着を持ち復讐するといっていた男がいたという情報を得た。似顔絵から身元は「ミッチ・リアリー」だと割れた。

彼の居場所を襲うと、そこでCIAと出くわした。CIAは「工作員で非公式任務、暗殺要員だった。不要になり解雇した」という。リアリーはプラスチックの拳銃の試射を終えていた。

ホリガンはリアリーの色々な変装写真を作らせ、警護官に持たせた。

リアリーが長電話を寄こした。「この国は美しい国だと思ったが無理だった。俺は身の毛がよだつような仕事をしていた。やつら(CIA)にそんな男に仕立てられ、俺を殺しにきた。一緒にやらんか!大統領を箱に入れて返すよ、カリフォルニアだ!」。

この長電話を傍聴し、リアリーの居るホテルに駆けつけた。彼はビルを伝って逃げる、これを追うホリガンとアル。ホリガンが捕らえられ危機に陥ったが逃げ切ったが、アルが射殺された。アルが死の直前に「この仕事を降りたい」と言っていただけに、ホリガンは「目をしっかり見たから息を止めてやる」と復讐を誓った。

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リアリーに「ダラスで任務を果たしたか?選択したか?本当に弾を喰うガッツがあったか?」と問われたのを思い出した。再び大統領付護衛官を懇願した。

リアリーのいたホテルの部屋に“SW・スケラムLA”の紙切れが遺されていた。電話番号をエーゼントスタッフに調べさせた。

ロスの「ザ・ウェスティン・ボナベンチャーホテル」。大統領到着前のホテルの安全確認でベルボーイを異常者と誤認したことで大統領付護衛官を外され、サンディエゴに先行して準備を命じられた。

空港で、エアーフォースワンの到着を見て思い出し、リアリーの部屋にあった紙切れの住所に電話すると銀行に繋がり、口座を作った当時の行員が殺されたと聞いた。

ホリガンは急遽ホテルに引き返し、寄付者名後、参加者名簿と調べていく。リアリーは変装して支持者グループに紛れ込み、密かにプラスチック銃を組み立て、装填を終えた。

大統領がリアリーに近づく。リアリーが銃の引き金を引き、ホリガンがその先に飛び込んだ!

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大統領暗殺に失敗したリアリーはホリガンを人質にエレベーターに逃げ込んだ。ホリガンの機転でリリーにエレベーター上部を撃てと指示。狙撃隊が射撃し、その隙に逃れたホリガンがリアリーを追い詰め、彼はエレバーターから投身自殺した。

感想:

前半は見えないマクローリー(リアリー)の影に、ホリガンが警護中になにが起きるのかとハラハラさせられる。後半はリアリーが姿を現し、ホリガンとリアリーが交互に描かれ、預金口座、宿に残したメモ、プラスチック拳銃などの伏線がよく繋がり、どういう形で対決することになるかとひやひやで、よく出来た脚本でした。

ラストの“ザ.ウェスティン.ボナベンチャーホテル”のパーティで大統領にリアリーが近づき発砲すると同時にホリガンが飛び込み、大会場の混乱。このあとホテルのエレベーターでのふたりの格闘と息つく間のない展開でした。

 イーストウッドのラブシーンはサービスでしたね!(笑)

 リアリーのキャラクターが圧巻で、ジョン・マルコヴィッチが凄みを出しています。CIAに恨みをもつ殺人偏執者。いったいCIAは当時如何なる動きをしていたのかという大きな疑念を抱かせ、CIAがケネディ暗殺に関わったことを暗示しているようでとても面白い。実際にこういう人物がいたかもしれないことに驚きです。

オリバーストーン監督の「JFK」(1991)が参考になります。

クリント・イーストウッドはこの年、自らが監督俳優(兼)でパーフェクトワールド」(1993)を撮っていて、ケネディ暗殺事件によほどの思い入れがあったのでしょうか、ここでもこの事件を背景にしています。

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