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「バード」(1988)パーカーは麻薬と酒にやられているが、記憶に残る殉教者、死んだら伝説になる!

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クリント・イーストウッドが監督し“バード”の愛称を持つ革新的ジャズミュージシャン、チャーリー・パーカーの生涯を描いた伝記ドラマ。アカデミー賞音響賞を受賞しています。ジャズはよく分かりませんが、夫婦の物語として鑑賞しました。

麻薬と酒漬けで侵された胃腸の痛みに耐えながら、カウント・ベイシー楽団とのセッションで「へたくそ!」とシンバルを投げつけられた嘲りに報いるように、“命を削って”自分のジャズを追い求めるパーカーと彼の才能に惚れ、パーカーの苦しみを共有して懸命に支える妻チャンの“腹を決めた”生き方に感動しました。

クリント・イーストウッドの作品として「ハートブレイク・リッジ 勝利の戦場」「ダーティハリー5」に次ぐ作品ですが、“監督として描きたい人生観”はこの中のなかにあり、この作品が1992年許されざる者に繋がり、作品賞など4部門でアカデミー賞を獲得するという大きな評価を得たように思います。

監督:クリント・イーストウッド、脚本:ジョエル・オリアンスキー、撮影:ジャック・N・グリーン、音楽:レニー・ニーハウス、編集:ジョエル・コックス

出演者:フォレスト・ウィテカーダイアン・ヴェノーラ、マイケル・ゼルニカー、サミュエル・E・ライト、キース・デイヴィッド、マイケル・マクガイア、ジェームズ・ハンディ。


Bird (A Film by Clint Eastwood) - Trailer

あらすじ(ねたばれ):

1954、ニューヨークで人気者となったサックス奏者チャーリー・パーカーフォレスト・ウィテカー)は薬でその地位を失い、不治の病の愛娘プリーの入院費稼ぎにと家族をニューヨークに残して親友のディジー・ガレスビー(サミュエル・E・ライト)を頼りロサンゼルスで演奏していたが、突然プリーが亡くなり、その悲しみに耐えられず薬を飲みカルフォルニアで8か月入院治療することになった。

ニューヨークに戻りステージに立ったが、テイジーと一緒でなく自分の演奏が出来ないと酒を飲み、店を辞めて家に戻って妻チャン(ダイアン・ヴェノーラ)に仕事の不平を漏らし、薬のないことでいら立っていた。チャンはこんなパーカーをまともに相手にしない。絶望したパーカーはチャンの目を盗んでヨードを飲んで、再度入院となった。そんなパーカーに「作曲とチャミー・モレロとのツアー話」が来る。

チャンは医師に呼ばれ「精神病での治療が必要」と入院を勧められるが、「パーカーは才能で生きている。音楽を生み出す力に人生が掛かっている。彼に必要なのは心でなく、身体の治療です!」とこれを断り、自宅で家族とともに過ごし療養させることにした。

パーカーは1920年8月29日カンザスカンザスシティで誕生。薬物中毒死した父同様、チャーリーもすでに15歳で薬物中毒状態だった。

無名のパーカー(15)が「18クラブ」のコンテストで選ばれカウント・ベイシーとのジャム・セッションで、バードの未熟に立腹したドラマーからシンバルを投げつけられ、猛烈に回転しながら“空を飛ぶシンバル”が襲い、ベイシーから「新人じゃなく、くそのチャリーだ」と罵られた悪夢。このトラウマで一時も音楽を忘れることが出来ない。

退院しての帰り、「作曲とモレロのツアーを引き受ける」と話すパーカーに、チャンはディジーがニューヨークに戻ったことを伝えたが「今さら会えない!何時かまた!」と。これが悔やまれる!

物語はなぜチャンがこの決断をしたか、パーカーの活躍その栄光と影、結婚生活が語られ、彼の最期が描かれます。エピソードがジャズ世界の話で、素人には分かりづらいですが、大要は掴めます。(笑)

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1943、パーカーはディジーのバンドに入って芽が出た。ディジーは「バードヤードだ!」と紹介してくれた。パーカーは夜でも彼の家を訪ね、出来た曲をサックスで吹いて「譜面にしてくれ!」と依頼する仲となって行った。そんな彼にカルフォルニアツアーを誘われたが「薬が買えない!」と断った。

チャンが「バード!」と声を掛け、パーカーはクラブでよく見るチャンに「音楽に詳しいな!」と声を掛けたことでふたりは意気投合。しかし、チャンは軽口を叩くパーカーに注意した。パーカーも演奏仲間から「チャンには手を出すな!」と注意されていた。

チャンの部屋を訪ねて本音で話し合った。チャンは父親がナイトクラブの関係者、通称ブロードウエー・ベンと言われ、幼いころ誕生日に楽団を連れてきてくれたことを話した。一方、パーカーは15歳の時ひどい痛みを感じ、それが断禁症状だと知ったこと、チャンといると凄く安らぐと告げた。チャンはパーカーのパーカーの人柄が気に入ったがまだ身体は許さなかった。(笑)チャンはダンサーでシカゴ公演に出掛けた。

夜チャンがベッドに横たわっていると、仲間に演奏させて、白馬に乗ってパーカーが迎えにきた。(笑) ふたりは白馬に乗ってクラブに。そこでダンスをしてその後で結ばれた。パーカーはディジーと組んでハリウッドに行くことを告げた。チャンは前夫との間に子がいた。この結婚はまだ母親には話してなかった。これから演奏に行くというのにサックスがない。サックスを質に入れて馬を借りていたのだった。(笑)

1946、パーカーは冬をカルフォルニアで過ごしたが神経衰弱に陥った。原因は慣れない環境だった。演奏スタイル“ビバップ”が受け容れられなかった失望感。規則による麻薬入手が困難さだった。

クラブに入る前に、薬を喫っていて、そこでパーカー追ってここにやって来たというレッド・ドロニー(マイケル・ゼルニカー)と出会った。「薬はやるな!」と注意した。クラブで吹くロドニーのトランペットにパーカーが加わった。この演奏に興味を持った伯爵夫人ニカと出会った。ディジーから契約解消を言い出され、パーカーはニューヨークに戻った。

チャンの「薬は断った。ロスでは酒に走っただけ。席を満員に出きる奏者でトラブル抱えてない人がいる?チャーリーが使えるのよ!」という後押しで、パーカーはニューヨークでのライブ契約が取れた。家族は大きな家に引っ越し、パーカーにとっての自分の子・プリーに会った。「俺に似てない?」にチャンが微笑んだ。

1949ニューヨーク52丁目に「バードランド」という店を持てるようになった。オープンまで待てないとパリに資金稼ぎに出た。

パリ公演は大盛況で「残って欲しい」と誘われたが「自分の国からは逃げない。カルフォルニアも病院前も(笑)バードランドにしてやる」と薬断ちを宣言して帰国した。

帰国し、バードランドが開くまで間があって、ニューヨークにやってきたロドニーに誘われユダヤ人の結婚式パーティーで吹いた。これが大うけだった。実はチャンが仕組んだもので、ロドニーにチャーリーが薬に陥らないよう監視させていた。(笑)

まだバードランドが開くまで時間があると、ロドニーを誘ってクインテッドで10日間の予定で南部を廻ることにした。

ロドニーに黒人用の部屋を与え「黒人になって歌え」と、ブルース歌手アルビノ・レッドの名で唄わせ、これが大当たりだった。しかし、ロドニーが薬に嵌ってしまい、パーカーは悔やんだ。

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ニューヨークに戻りバーロランドのステージ。「最高のジャズだ!」と大反響だった。チャンも招かれ、ここでニカ夫人と対面、挨拶を交わした。

パーカーの酒量が増え始め、ロドニーが「40歳まで生きたいか?」と注意する。「生きる!」とパーカー。バーを出たところで麻薬捜査官のエステヴェス(キース・デイヴィッド)に捕まりロドニーの逮捕を知らされた。

メンバーを組み替え、カーネギーホールでも公演。家族も広い家に引っ越し、子供は三人となり、穏やかな日々であった。しかし、パーカーの身体は音を上げていた。

帰宅して寝たっきりの娘・プリーを巡って、チャンと諍いを起きる。パーカーは言葉は乱暴だがチャンの気持ちを大切にし“とても繊細な人”だということが分かります。プリーの病はパーカーにとって大きな負担となっていた。

パーカーはエステヴェスに逮捕され「演奏許可書」を取り上げられた。法廷で「私には週に何度も医者に掛かる2歳の娘がいる。執行猶予でなく服役するので演奏許可書の取り上げを止めて欲しい」と訴えた。しかしこれは却下された。

パーカーは娘プリーの入院費稼ぎにロサンゼルスに行くことにした。チャンは反対したが「演奏するのは俺の仕事だ!心配するな!家族を守る!」とロスに発った。チャンが空港まで送る車で、カーラジオから流れるロドニーの歌を聞いた。まるでパーカーの死を予見し、悼むような歌だった。

ロスでディジーを訪ねた。ディジーは厳しくパーカーの薬使用を注意した。「黒人の俺がなんで頑張るか?黒人は信用ならんと思っている白人を見返すためだ!俺は改革者、お前は記憶に残る殉教者だ。お前は死んだら伝説になる!お前は逝ってから称えられるが俺は世間の一部だ。死んだら忘れられる!」と語り、励ました。パーカーはディジーに寄り掛かって泣いた!

演奏の途中で苦しくなり一時休憩としたが、そのとき娘プリーの死がつたえられた。パーカーは一晩中、薬と酒を飲みながら、チャーリーに慰めの電報を打ち続けた。パーカーは救急車で精神病院に収容され、8か月間をここで過ごした。

ここでやっと冒頭シーンに繋がりました。

パーカーはチャンに連れられて家に戻り、チャンの母親とも一緒に療養生活に入ったが、麻薬捜査官のエステヴェスがやってきて「やってるやつの名を吐け!」という。パーカーは「今年で死ぬ!」と断った。(笑)

パーカーはロドニーを訪ね、チャミー・モレロとのツアーに参加することを話すと「本気か?」と聞く。パーカーは自分のジャズスタイル“ビバップ”を生み出したのがモレロに誘われ、そこにいた歌手の歌に合わせて吹いていたとき1939年だと明かした。

パーカー一家はチャンの母親の家、ウエストチェスターに引っ越し、静かな田舎暮らしをしていたが、モレロに会いに行くことにあした。娘が「パパお一緒に!」というのを振りほどいて、チャンが「電車でいったら!」というのに車で出掛け、懐かしい「クラブ18」に立ち寄った。なんとストリップ劇場になっていた。パラマウント劇場に入るとバスター・フランクリン(キース・デイヴィッド)が踊りながら吹いている。パーカーは驚き「何だ!」と聞くとロックンロールだという。

時間を守らなかったためモレロに会えず、パーカーはどこに車を駐車したか分からないほどチャンが持たせてくれた薬を飲んで、やっとニカ夫人の邸宅に辿りついた。

パーカーがチャンに「芝生も家も手入れしないといけない」と電話を入れ、TVを観ながら亡くなった。検視官が「心臓麻痺、年齢58歳」と死因を下した。実際は34歳だった。

葬儀はディジーが話したように、ジャズ界を挙げての壮大な葬儀だった。

感想:

時代はすぐにロックの時代に移って行った。パーカーが入院して加療していたら時代に取り残されていた。パーカーの選択、生き方に間違いなかった!

演奏シーンが随所にあり、その音はジャズ通で知られるクリント・イーストウッドの拘りのすばらしいものだそうですが、わたしには分からなかった。ただただ、フォレスト・ウィテカーの演奏シーンに見惚れていました。映像もミュージシャンの演奏姿や街の風景など当時の風情をしっかり残すという凝ったものですばらしかった。

夫婦愛には泣かされました。同じ夢を共有する夫婦、夫にとっての何が大切かを、夫以上に考える妻に感動しました。黒人の妻として、夫の音楽センスに惚れた妻の生き様が、夫の生死の選択権を握って、そこで下した判断は見事でした。

物語のなかで当時の作品としては麻薬や人種差別についても的確に描写されていました。何故この作品品がアカデミー賞作品賞にならなかったかと・・。

パーカーは麻薬を痛み止めに使い、人には決して進めず、止めろと忠告する側だった。ディジーもことあるごとに薬を使うことを戒め、捜査官のエステヴェスが活躍し、物語全般として薬を使ってはならないというメッセージはよく伝わったと思います。

そして人種問題について、パーカーが白人のチャンと結婚し母親もこれを許すという物語ですから、当時としては画期的なことで物語だったと思います。ディジーが薬を止め約束を守れと諭すシーンで、黒人としての矜持がしっかり描かれよかったと思います。

この作品はクリント・イーストウッドの作った音楽映画と言われますが、パーカーを通して「人の生き様」を描き、この生き様がこれ以降の作品に大きな影響を与えていると思えてならない。

                                ****

「空気人形」(2009)人形ベ・ドゥナを観る作品!彼女は愛されたか!

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是枝裕和監督ポン・ジュノ監督作で知られるソン・ガンホペ・ドゥナを使って「ブロッカー」という仮題の韓国映画を手がけることが伝えられています。どのような作品になるのかと期待が膨らみます。そこで是枝監督がすでに撮ったことのあるペ・ドゥナ主演作を観ることにしました。

 性処理に使われる安物の空気人形。主人の好きなように抱かれていたが、あるとき雨だれを受けて「心を持つ」人形になり、「自分の心で動ける」と思ったが、周りの人は苦しむ人ばかりだった。そんななかでデンタルビデオ店で出会った男性に恋をして、本当に愛されているのかと彼に会いに行き、そこで・・・。

 みんなが他者で生かされている世界で、どう生きるかという人と人の関係”が描かれ、人として生きることは傷つけ傷付けられる切ないものだが、“そこで生きるとはどういうことか”という人生の妙を教えられる作品でした。

 この作品はベ・ドゥナ無くしては語れない、是枝監督作品の中では異色の作品。彼女の役は性処理に使われる安物の空気人形。体当たりで演じてくれます。ポン・ジュノが絡まなければペ・ドゥナの出演了解は取れないキャスト(笑)。両監督が互いを信じ、競い合っているからこそ生まれた作品だと思っています。次作を楽しみにしています!

 原作:業田良家の短編漫画「ゴーダ哲学堂 空気人形」、未読です。監督・脚本:是枝裕和、撮影:「長江愛の詩」(2017)のリー・ピンビン、音楽:world's end girlfriend

出演者:ペ・ドゥナ井浦新板尾創路、高橋昌也、貴美子、岩松了丸山智己寺島進オダギリジョー富司純子、他。


Air Doll (空気人形) Trailer

あらすじ(ねたばれ):

ファミレス従業員の秀雄(板尾創路)が疲れて帰って、風呂にも入らず、勤め先に不満を吐き出しながら、空気人形の“のぞみ”(ペ・ドゥナ)を抱く。そのあとの処理がなんともわびしい(笑) 板尾さんの怪演です。次の朝になると、のぞみを裸のままにして出勤。

 のぞみは窓から手を差し出して雨だれに触れ、「心をもつ」ことになった。顔は少し整形され人形らしく作られたスタイル抜群の色っぽいベ・ドゥナが演じるのぞみがメイド姿で外に出てみる。捨てられたゴミから人形を拾って話しかける少女(萌)、交番で警察官(寺島進)に昨日の事件のことを訪ねる未亡人(富司純子)と出会い、幼稚園の園児と一緒に遊んで過ごし、シネマ・サーカスというビデオ店で店員の純一(井浦新)に出会った。

夜、帰宅した秀雄とそろいのマフラーで、車椅子に乗せてもらって公園を散歩。ここで秀雄がキスしようとする。が、「私は心を持ってしまった!」とこのキスは嫌だった。

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 次に日、のぞみは会社を辞めさせられると不安そうな女性社員(余貴美子)の後をつけて、ビデオ店にやってきて、ここで働くことにした。店長(岩松了)が「彼氏いるの?」と聞くので、「います」と“心を持った”ので嘘をついた。店が終わり、「純一の好きなビデオはミュージカル」などと今日の出来ごとを口にして、楽しかった1日を思い出しながら帰宅した。途中でリンゴを拾った。

 このリンゴを捨てたのはOLの美希(星野真里)。部屋に篭って母親が贈ってきたリンゴをかじりまくるという過食症。このシーンの差し込み方は、萌も未亡人もそう、この時はよく分からない!

 秀雄が帰宅して、一緒に入浴した。100円高いというシャンプーで洗ってもらってベッドイン。おっぱいに一杯空気を入れられ抱かれた。(笑) のぞみは「私は空気人形、性処理の代用品!」と呟いた。秀雄は「ずっと側にいてくれ!」という。私は心を持っているのに!

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 次に日、美容院で化粧して、可愛い服装で出勤。純一と気軽に話ができるようになり、海に連れて行ってもらった。砂浜を歩いながら、「年を取るとはどういうことか」を聞いた。「命を失うこと」と教えてくれた。

帰りにレストランで食事。隣で萌ちゃん一家が食事。萌ちゃんの誕生会だった。「誕生会というもの」を始めて知った。のぞみは“人には誕生と死がある”ことを知った。

帰り道でタンポポを見つけ、純一が「枯れている!」という。のぞみが「かわいそう!」と口にすると「世界は生き物で溢れているがいつかは枯れるんだ!」と教えてくれた。彼は死に憑りつかれているように、純一の話は死にまつわるものが多くい。

 バスのなかで眠る純一を見て「もっとあなたのことを知りたい」と思った。

 帰宅して秀雄引き出しのなかに空気人形のぞみの空き箱を見つけた。「私は5800円の安物空気人形だった。

 朝、空気を一杯体に入れて店に出勤。“のぞみ”をのぞき見して「髪を梳かす女を」とビデオを借りて行った浪人の学生(柄本拓)。交番のお廻りさんが「悪い警察官のビデオはないか?」と借りにやってきた。(笑) お客さんの探し物にうまく対応できず、「役に立たず!」と悲しくなって店を出て公園で休んでいた。そこでふしぎな老人(高橋昌也)に出会った。

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 「カゲロウは1~2日で死ぬ。卵だけを産んで死ぬだけの生物だ」と話しかけてきた。のぞみは「私も空っぽなの!」というと「みんなそうなんだ!」と命の話をしてくれた。

命は自分自身だけでは完結できないように作られている。花も雄蕊と雌蕊だけでは不十分で虫や風がきて雄蕊と雌蕊を仲立ちする。生命はすべてそのなかに欠如を抱きそれを他者から満たしてもらうのだ。世間は多分他者の総和。しかし互いに欠如を満たすなどとは知りもせず知らされもせず、ばらまかれている者同士、無関心でいられる間柄」。

 のぞみは老人の話を聞いて、店に戻った。純一と話ながらビデオを探していて転び、釘が刺さって空気が抜け始めた。「見ないで!」と叫んだが、純一が傷口にテープを貼って、御臍から口で空気を送ってくれて助かった。のぞみは准一に縋り付いた!

 朝、のぞみは秀雄が出勤したのを見届けて、空気入れをゴミ捨て場に捨てた。そして部屋で蝶のように舞った。町に出てゲームセンターでプリクラで遊んだ。河船にも乗った。オモチャ屋で指輪を買った。公園のベンチで弁当を食べてる女性社員に「私、歳をとるのよ!」と教えた!

 店で純一に「空気が漏れたときびっくりしたでしょう」と聞くと「俺も同じようなものだ」というので、それなら“私と同じ”だと思った。純一のバイクに乗せてもらい映画を観た。その後、純一のアパートを訪ね、そこで彼が彼女と撮った写真を見た。帰り道、「心をもつことは切ないことだ」と思った。

 女性社員が「会社を首になったただの派遣社員になった」と話しているのを聞いた。お廻りさんが未亡人に「事件は解決したから安心しろ」と宥めていた。萌ちゃんは人形と遊んでいた。浪人の学生はビデオ見ながら手淫していた。(笑)OLの美希は焼きそばをやけ喰いして吐いていた。(笑)

 秀雄が店にやってきてビデオを借りていった。のぞみが店員で働いていることに気付かなかった。これを見た店長が「代理はいくらでもいる」と脅し「純一とやったか?今来た男と一緒のところを公園で見た」とトイレに連れ出されレイプされた。「私は空気人形。性欲処理の代表品!」と泣いた。

その夜、二階で寝ている秀雄の様子がおかしいので覘くと、新しい空気人形の誕生日をしていた。「私のどこが好きなの?」と聞くと、「元のただの人形に戻ってくれ!心を持つと面倒だ!」という。これはひどいと家を出た。

 老人を訪ね、そこにあった写真で元国語の教師だと知った。老人は代用教員あったが「寂しかった」と言った。「「ちょっとあそこ触ってくれ」というから、「あそこだ」と思ったら頭だという。頭を触ると「気持ちが良い、冷たい手の人は暖かい人だ」と言われ、うれしくなった。このあと私を作った人形師(オダギリジョー)を訪ねた。

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 おかえり!」と迎えてくれた。新しい人形が作られていたが、古い捨てられた人形が戻っていた。戻ってきた人形を見て彼は「元は同じでも帰って来たときはみんな違う顔をしている。愛されたかどうかの表情が出る。残念だが燃えないゴミだ。君が見た世界は悲しいものだったか?美しいものだったか?」と聞かれ。のぞみは人形師に口紅をつけてもらい、純一を訪ねることにした。

 純一が「君は誰の代わりでもない、何をしてもよいか」というので「何にを?」と問うたら「空気を抜きたい!」という。何度も何度も抜いて口で空気を送ってくれた。今度はのぞみが純一の臍をナイフで切って空気を抜き、口で空気を送ろうとしたが血液が噴き出して出来ない。のぞみは純一の口から空気を送り続けたが、彼は出血多量で亡くなった。

 のぞみは純一を燃えるゴミをして捨て、自分が燃えないゴミの中で空気を抜いた。これまでに出会った人々が「誕生日おめでとう!」と歌って送ってくれた。萌ちゃんが指輪と人形を交換していった。朝、窓を開けて燃えないゴミ場を観た美希が「きれい!」と言ってくれた。

 感想:

とても大きなテーマでどこまで理解できたか?

 監督はいろいろな人と人の関係を描いてきましたが、ここでは人形と人の関係を描き、人と人の根本的な関係と問うとしたのだと思います。その答えは「老人の言葉」にあると思いますが、これが難解でした!

 のぞみと純一の最後はとても悲しいシーンに思えますが、ゴミ捨となったのぞみの表情は美しいものでした。純一の心にあったものは何だったのか? のぞみが純一に愛されたと思えばそれが正解ということ。人と人の関係は、自分の心次第だと思います。

 のぞみは全く気付いてないまわりの人々、未亡人や女性会社員、萌、美希などの苦しみが描かれ、ラストで萌と美希がのぞみに救われ、出会った皆と繋がっていて、これが老人が語った「人と人の関係」をぴたり暗示しており、人の心はどこかで結ばれているという不思議な縁を感じます。

 ペ・ドゥナの演技が作品テーマすべての鍵を握っていました。全てが人形でしたね!たどたどしい日本語「ワタシハ クウキニンギョウ」がよく合っていて、人形のような裸身の美しさが圧巻でした。人形から人としての感情を持つにつれて変化していく表情もすばらしかった。

 物憂い東京の佇まい。撮ったのがリー・ピンビン。人恋しくなるような映像で、ペ・ドゥナが美しく撮ってあり見事でした。

 是枝監督とポン・ジュノ監督の絆はこの映画のテーマかもしれない。ペ・ドゥナその蝶だったかもしれませんね!

                              *****

「ズーム/見えない参加者」(2020)原題:HOST 

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コロナ禍で観る劇場上映映画がない!コロナ対策にはこれが良いんでしょうが寂しいですね。ということで、最高傑作というキャッチコピーに誘われて本作を選びました。(笑)

Zoomだけで全編を撮影した異色のホラー・サスペンス。ロックダウン中のイギリスを舞台に、ロックダウン中も週に1度はZoomで飲み会を開く男女6人の仲良しグループ。ある日、その中の一人が霊媒師をゲストに招き、みんなで“Zoom交霊会”なるものを始める。最初は軽いノリだったが、交霊の儀式を進めていくうちに、それぞれの部屋で不可解な現象が起こり始める。霊媒師が慌てて除霊を試みようとするのだったが…。<allcinema引用>


ズーム/見えない参加者:予告編

監督は、これが長編2作目となる新鋭ロブ・サヴェッジ、脚本:ジェド・シェパード、ジェマ・ハーレイ ロブ・サベッジ。

出演者:ビショップ・ヘイリー、ムーア、ルイーズ・ウェッブ、ドランドヴァ、ウォード、リナード

コロナ禍でロックダウン。それでも6人で交霊会をやりたい、ならばZoomによるしかないというイデア勝負の作品。パソコンで部屋の灯を消してひとりで観る作品だと入り込める作品ではないでしょうか。劇場で観客とともに観る環境では凄く怖いという宣伝文句がぴんとこなかった。

ストーリーは明かせないですが、前出引用文で十分です。あとは何も考えずにしっかり映像の中に入っていったら良いでしょう。邦題は?結末を見届けてください。

面白さは“精神的な怖さ”、Zoomを使ったドラマですから、他人の部屋の異変を観ながら次は自分の部屋で何か起こるかという怖さを、異様な音響のなかで追うことになります。特に音響はよかったと思います。

この作品にはご丁寧にメイキングシーンが付いていて、この遊びはかなり嵌るらしい。本編終了後開示されますが、う~ん、「カメ止め」(2018)に近いアイデアですね。これがなくても途中で分かってしまいます。(笑)

           ***

「許されざる者」 (1992) クリント・イーストウッドの監督としての気概を知る作品でした!

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コロナ禍の今、劇場観賞もままならず、NHKBSプレミアムで撮り貯めていた作品を引っ張りだして楽しんでいます。

本作は第65回アカデミー賞で9部門にノミネートされ、4部門(作品賞・監督賞・助演男優賞編集賞)の受賞作品。クリント・イーストウッドにとっては、アカデミー賞での初めての作品賞・監督賞受賞ということで、記念すべき作品だったでしょう。

女神のような女性に出会って結婚し過去を全部捨て牧夫となって真っ当な人生を送っていた大悪党の男が、妻を亡くし、生活苦の中で子供を育てるために、かっての腕を買われ非道なカウボーイに掛けられた懸賞金狙いに加わる。亡き妻の想い出の中で、この償金狙いは許されるかと苦闘するなかで、彼なりの正義を見つけていくはなし。

西部劇であっていわゆる西部劇でない。初めて観たとき何を言いたいのかよく分からなかった。

この作品が恩師ドン・シーゲルセルジオ・レオーネに捧げた「最後の西部劇」だと聞き、納得! 両監督作品のキャラクターを演じることで「体得した正義を継承する」と宣言しているようで、クリント・イーストウッド“監督としての気概”を表明しているのではないかと思いました。

この年、クリント・イーストウッドの本作とアル・パチーノ主演作「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」が、いずれも「老いた人がどう人生を生きるか」を問う作品でアケデミー賞を争いましたが、この点からも楽しみな作品でした。

監督:クリント・イーストウッド脚本:デヴィッド・ウェッブ・ピープルズ、   音楽:レニー・ニーハウス、撮影:ジャック・N・グリーン、編集:ジョエル・コックス

出演者:クリント・イーストウッドジーン・ハックマンモーガン・フリーマンリチャード・ハリスジェームス・ウールヴェット、他。

あらすじ:

冒頭、カンザスの大平原に沈む夕陽の中で眠る娘・クローディアに「なぜあんな人殺しで酒飲みの残忍な札付き男・マニーと結婚したのか分からない」という母親の嘆きの言葉から物語が始まる。マニーの妻は一度も姿を現さないが、神々しい光景からマニーにとって妻は神のような存在ではなかったかと思われる。マニーはかって列車強盗や保安官殺しで名を馳せた悪党だったが、結婚して真っ当な男になったらしい。ところが妻が亡くなって3年、わずかな羊を飼う牧場に疫病が襲ってきた。2人の子供を養うことに四苦八苦していた。・・・

ワイオミング州ビッグ・ウィスキーという町。ビッグウイスキーという酒場兼売春宿でカウボーイのマイク(デヴィッド・マッチ)とボーイ(ロブ・キャンベル)のふたりが娼婦・デライラ(アンナ・トムソン)の顔に大傷を負わせ、酒場の店主スキニー(アンソニー・ジェームズ)に取り押さえられ、保安官のリトル・ビル(ジーン・ハックマン)に突き出された。ビルは店主スキニーに馬7頭を与えることで事件を決着した。が、当の娼婦デライラの姉御・アリス(フランシス・フィッシャー)が納得せず「カウボーイふたりには死を!」と1000ドルの懸賞金で殺し屋を雇うことにした。

これを聞きつけたスコフィールド・キッド(ジェームズ・ウールヴェット)が、マニーの居場所を聞きつけて、「償金は1000ドルだ、山分けでやろう」と誘う。マニーはそれを断ったが、生活が立ち行かないとキッドの誘いに乗ることにしたが、拳銃も乗馬の腕も衰えてあてにならない。そこでかっての仲間ネッド・ローガン(モーガン・フリーマン)を誘って、ふたりでキッドの後を追った。旅に出る時、ローガンの妻(原住民)の厳しい目は痛かった!

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マニーは妻との約束を守りこういう仕事はしたくなかった。だから殺しはキッドかネッドにやってもらうという気持ちがあった。キッドを追う旅の中で、万度も妻との約束を思い出し苦しんだ。

保安官のビルは、いくつものならず者の射殺事件に関わったが、今ではこの町に家を建て余生を過ごそうとしている男。だから無法者が町にやってくるのを嫌がった。

「国王は殺せないがここなら大統領でも殺せるという英国人で伝説の殺屋イングリッシュ・ボブが自分の伝記を書かせると物書屋のブーシャンプ(ソウル・ルビネック)を連れて乗り込んできた。

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ビルは「町では銃保持禁止(保安官事務所に保管)」とボブを逮捕して牢に入れ、銃を与えて自分を襲わせ正当防衛で射殺しようと画策するがボブが乗ってこない。ビルは正当防衛ということに強いこだわりを持っていた。遂にボブひとり縄をかけて馬車に載せ、町への無法者の侵入を許さない見せしめとして追放した。娼婦たちはこれに激しい怒りを持った。

マニーとネッドがキッドを追ってビッグ・ウィスキーに急いでいて、途中で銃撃を受けた。射撃弾が散らばって、狙っているようでない。射手はキッドだった。ネッドが「お前、目が悪い!50m先が見えてない!」と指摘するが、キッドは「俺は5人殺している!」と言い張る。ネッドとマニーには彼の腕前は分かったが、賞金は三等分ということに決めて出発。

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雨の降る夜、マンーら三人が町に入り、酒場に入った。ネッドとキッドは償金の交渉を兼ねて娼婦たちのいる2階に上がってよろしくやっていた。マニーは亡き妻に義理立てするように1階で、酒ものまず、2人が戻って来るのを待っていた。

そこに「銃を持ってないか調べる」とビルが助手の保安官を連れてやってきた。マニーが拳銃を持っていたことで、「拳銃保持が認められない!」と激しく殴り、雨の降る店外に放り出した。

マニーが騒ぎで逃げ出したネッドとキッドに救い出され、娼婦たちが準備してくれた隠れ屋で3日間安静にしていた。食事を運んでくれる娼婦・デライラに「ふたりは宿で遊んでいるからここで私と遊んでいい」と声を掛けられたがマニーは断った。「顔が醜いから?」と問うので「俺はあんたと同じ傷持ちだ!しかし、あんたの顔は美しい。俺の心の傷は醜い」と、自分のやろうとしていることに痛さを感じた。

マニーの傷が癒えて、三人は屯する小屋付近でカウボーイに出会い、ネッドがボーイを撃ったが撃ち漏らした。ネッドは止めのライフル銃の引き金を引けなかった。彼はもはや人を殺すことが出来なくなっていた。おそらくマニーへの友情だけで参加したのでは。マニーがそのライフル銃でボーイを撃った。ボーイは苦しみながら絶命した。

この日はボーイだけで終わりにした。ネッドは「償金はいらない!」と妻の元に帰って行った。

カウボーイ仲間の届け出で、保安官ビルは協力者を集め、3人を追って山狩りしネッドを捕えた。ネッドは拷問で2人の素性を聞かれたが、口を開かなかった。

マニーとキッドは再度カウボーイ小屋を監視し、出てくるマイクを待っていた。糞に出て来た男をマニーの援護下にキッドが射撃に走った。キッドは震えながら便所の中のマイクに何発も撃ち込んだ

懸賞金を届けにきたデライラから、「『必ずマニーが殺しに来る!』と毒づいてネッドが殺され、磔で晒し者になっている」と聞かされた。キッドは「5人を殺したというのは嘘でひとりも殺していない。償金はいらない」と去ろうとする。マニーは金を「ネッドと自分の子供に渡してくれ」と頼み、ここで別れることにした。マニーはキッドに悪いことをさせたなという渋い顔を見せた。

ネッドが晒し者にされたことが、マニーの殺し屋魂に火を点けた。マニーはひとりで酒場にライフルを持って忍び込んだ。そのとき酒場ではビルが「ふたりを見つけて縛り首する」と息巻いているところだった。

マニーはいきなりスキニ―に「ネッドを磔にする前に銃を持たせるべきであった」と射殺した。そしてビルと銃激戦を繰り返し、彼を射殺した。

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二度と女たちを傷つけるな!もしやったら、お前らも家族も、この町を焼きに来る!」と言い残し、町を去った。

このあとマニーの住むカンザスの家にはマニーと子供の姿はなく、サンフランシスコで商売を始めたという。母親は「何で娘がこの男が好きになったのか分からない」という。

感想:

西部劇とはいえ、へたれの3人が娼婦の顔を傷つけたカウボーイの殺人に出掛けるという、ラストで恰好いいドスの利いたセリフと射撃を見せてくれますが、なんとも恰好わるく西部劇らしくない。(笑)

このドラマに出てくる人たち、保安官、カウボーイ、娼婦、へたれの3人、みんな相手の立場に立てば「許されない人」です。これがタイトルの意味だろうと思います。「みんな許されない人」なんです。じゃだれが正義なのか?自分で決めればいいということ。この“覚悟”を描いた作品だと思います。

二度と罪を犯さないと誓ったマニーは、当初ネッドとキッドがいれば亡き妻への言い訳は立つと思っていたが、ビルの激しい暴力を受け、ネッドが晒し首になったことで下した決断が許されざる者になる」こと、「自分の正義を通す」ことだった。

こんな決断はそう簡単にはできない。製作構想があったが、自分がマニーの年になるまで製作を待つことにしたというクリント・イーストウッドの言葉に、人生経験を得ての「覚悟のある作品」だったんだと思います。

         ****

「おとなの事情 スマホをのぞいたら」(2020)岡田脚本と演者の顔色を見る作品

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今週は作品選びに苦労しました!そこで選んだのが脚本:岡田恵和さんで、常盤貴子さん出演作ということで、「間違いないだろう」とこの作品を選びました。大正解でした。😊

7人の男女がホームパーティのテーブルで、互いに秘密がないことを証明するため、スマホを公開するゲームをスタートしたことから、それぞれが誰にも言えない大人の事情を抱えていて、7人がつながりながら、その行き先を追うというはなし。みごとな脚本でした!

結婚とはなにか、大人の事情ではなく大人の選択、ものの見方を描いた作品で岡田脚本と演者の顔色を見る作品でした。ワンシチュエイションの密室劇だけど大きな世界を見せてくれ、“笑って”“感動する”物語でした。

監督:光野道夫、脚本:岡田恵和、撮影:須藤康夫、音楽:真鍋昭大。

出演者:東山紀之鈴木保奈美常盤貴子益岡徹田口浩正木南晴夏淵上泰史、他。

出演者のみなさん、これまでの作品では見られない役を演じていますが、これがうまく嵌っています。キャステイングが見どころです!(笑)

原作は世界で18作ものリメイク作があるとうイタリア映画「おとなの事情」、未見です。日本版リメイク作とは言え、この作品のテイストは岡田脚本そのもので、オリジナルと言っていいと思いました!


『おとなの事情 スマホをのぞいたら』予告編 2021年1月8日(金)全国ロードショー

あらすじ(ねたばれ):

物語は雨の中でひとりの男がコンビーフを開けるところから始まります。これが何を意味するのか皆目見当がつきませんが、最後に、これがテーマであったとは驚きでした。

カフェレストランの雇われ店長・向井幸治(淵上泰史)35歳を、動物病院の獣医として働く妻・杏(木南晴夏)顔を見せ、ウキウキしている夫の顔をみて去ろうとすると「待て!」とキスをする。そこに携帯の着信が・・、浮気相手の女か?

高級マンションで暮らすセレブな夫婦。夫・六甲 隆(益岡徹)は叩き上げの美容外科医、60歳。妻・恵理(鈴木保奈美)はテレビ出演もする売れっ子精神科医50歳。隆がネクタイをつけ始めると「これはわけありだな先生、おしゃれ!」と声を掛ける恵理。「もてるけど奥さんが一番だ!」と隆。そこに携帯の着信音。ひとり娘の智慧は「先に」と声を掛け、「ママとは無理!」と連絡してきた!この夫婦が一番危ない夫婦にみえましたが・・・。

安アパートで暮らす法律事務所で勤務のパラリーガル・園山零士(田口浩正)50歳。妻・薫(常盤貴子)は家計を助けるためにパート勤務。夫の母親と3人の子と暮らしている。母とは折り合いがよくない。(笑)子供たちは部屋でTVゲームに熱中。零士の携帯に着信、トイレに入ってにやにやと眺めている。ふたりはこれからパーティに出掛けるのだが、薫がパンティを脱いで出掛ける。なんで脱ぐねん? このふたりはかなりの訳ありのように思えました。(笑)

公園でメールする元教師の塾講師・小山三平(東山紀之)48歳、独身。誰にメールしているのか?手土産の一升瓶を落としてパーにするというダサイ男です。(笑)48までなんで独身なの?

向井夫婦が準備してくれたカフェレストランでのパーティ。

六甲夫婦と園田夫婦が手土産を持って訪れ、夫婦仲がとてもよさそうで、杏が「羨ましい!」と涙を見せる。

三平がまだ顔を見せない。毎年開いているこのパーティ。今年は三平が夫婦でやって来るものと期待していたが、今年もひとりでやってきた。皆が残念がった。

メインデッシュがコンビーフということでパーティが始まった。三平がやたらハイピッチで飲む。結婚してよかったのかという話になり、杏が「私は結婚に向いてない。夫婦ってなんですか?夫婦の間に秘密ごとがあるんですか?」と言い出した。「そんなものはあっても小さな秘密だ!」と皆が同意したので、携帯をテーブルに出して、着信があるとお互いに見せ合うことになった。

ところが最後まで携帯を出すことを渋ったのが三平と零士だった。三平の出し渋りは意外だった。

何も秘密はないと言いながら、着信音が鳴るとピクリとする面々。なかなかスリリングです。こんなゲームを思いついたことこそが、この作品の面白さです。

三平に「就職先が決まった!」という知らせ、次いで零士に母親から「嫁が作った夕飯が拙い!」という苦情が来た。(笑)薫が苦笑い。

零士は緊張感に耐えるためにと三平をベランダに連れ出し「俺には彼女がいる!もうすぐメールが来るんだ!」と携帯電話の交換を言い出した。零士は嫌がったが無理強いした。ふたりがベランダに居たところを薫が見ていた。

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三平の前の携帯に着信。女の子からだった。これにうまく三平が返事し、零士は安堵したが、次に零士のまえの携帯に着信。「裏切者!」という女装男性からの動画だった。(笑) これを見た薫が「あんたゲイなの?」と怒って席を外した。(笑)三平は「ゲイでも誰でも好きというのではないから」とシランプリ。(笑)

席に戻った薫が「3人も子供がいて私ともしている。あんたがゲイ?」と三平を疑った。(笑)

そこに薫に着信。見ると「ちゃんと穿いて過ごしているか?猫ちゃん」と会った」!(笑) 「お前穿いてないのか?」と零士が疑う。仕方がない、薫は皆の前でスカートを上げた!(笑) 「私は誘われたとおり会っておけばよかった!あの人は若い女と寝てるくせに!」と悔しがる。(笑) これはもう離婚話になるのかなと。恵理がしっかり薫を慰めていた。

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薫は調理室で杏に「夫婦には夢も希望もないよね!しかし、六甲さんのところには希望がある」という。杏が「どうかな?」と懐疑的になっていた。

そこに着信音。隆の携帯だった。「パパ妊娠してなかった。パパに話しておいてよかった!」というもの。

これに恵理が「私を無視して!私が傷つくことを気付かないの。ひどい人だ!」と声を荒げた。隆が「性格が強い君から逃れるためだった」と告白した。理恵は娘が妊娠してなくてよかったと安堵した。

そこに隆の携帯に遠山メンタルクリニックから次回診察予定を連絡してきた。

同じ精神科で敵愾心のある遠山クリニックに隆が相談に行っている、もう理恵の怒りは止まらない。「妻には話せない!」という隆に、零士が同情した。

幸治の携帯に着信音。杏が携帯を見て悲鳴を上げた。「幸治君、彼女からご懐妊の連絡よ!」と読み上げた。杏は「幸治に不妊検査に行こうと誘って断られた。そういうことか!私に原因があったんだ!」と幸治を睨みつけた。幸治は「俺は杏を幸せにする!」と言うが、これを杏は受け入れられるか?この状態を見ていた恵理が化粧室に入ると、幸治も化粧室に入った。

恵理が化粧室から戻ってきたところに、杏の携帯が鳴った!杏が幸治の調査を依頼した興信所からのものだった。幸治と恵理が一緒に写ってる写真だった。皆がふたりを見た。幸治は泣きっ面、恵理は怒り顔だった。

恵理は「私は謝らない!」という。杏は「そんな!」と怒る。続けて恵理は「私はほっとしている。あなたが優位になって。あなたはずっと劣等感があった。金持ちに、母子家庭であることに、父から金を借りたことに。娘の理解者になって、私に対して優位に立ちたかった。こんな夫婦は止めにして!浮気がバレて、負けてよかった」と隆の手を握った。隆は「勝ちたくはない!俺は君を尊敬しているんだ!」と応じた。恵理のやったことは悪いが、隆への“人生の同志だ”という気持ちがよく伝わり、これに対する隆の「尊敬している」という言葉にもこの感じがある。60歳の大人の選択にはこのくらいの思慮がなければならないと思った!

このふたりのやりとりに、薫が泣いた!恵理は「私たちの夫婦を踏台にしないで!」と駄目出しした。

隆と恵理のやり取りがあって、場の雰囲気が一変した。

三平が携帯を零士と交換していることを白状した。これに薫は「携帯を取り換えようと強いたのは零士。浮気するなら妻が“う~ん”と思うほどやりなさい!人に罪を押し付けるなど最低だ!」と零士をこき下ろし、三平のことを心配した。

三平は「ヒデを連れてくるのを今日になって断った。彼は怒った。あんたたちが心配だったから」と告白。皆が「三平ちゃんが好きな人ならいいよ」と言う。「俺が臆病で、彼が傷つくのを見たくなかったんだ」と。「そんな寂しいこと言わないで!」と薫。三平は「ありがとう」と泣いた。三平が不安を口にすることで仲間から癒されていった。

皆でテラスに出て、月を見た。杏が「どうなるのかな?」と不安を漏らす。

大型台風の中、コンビーフを食べて、皆で励まし合って耐えた3日間のことを思い出した。恵理はしっかり娘の智慧を守り、これを見た薫はこんな親子になりたいと子供を作ったという。隆は歌えないのに皆のために歌った。杏はこの時幸治に恋した。「この気持ちを忘れないように集まっているんだ。あの時見た月は何事もなかったように元に戻ってくる」と隆。「夫婦にはいろんな気持ちがある。困ったり、失敗したり、最低なことがある。それが生きていることかな!」と三平。

感想:

スマホを覘くと、何が出てくるかとドキドキ。とんでもないものが出てきて、どう対処するかと、驚きました!なんでこんなに懐の大きな夫婦になっていくのか。それには隠されたシチュエイション、台風で3日間塩っ辛いコンビーフを食べながら身体に綱を巻き付けて頑張った7人であったということ。これは東北大地震につながるもので、死の淵で見た絆をこんな不倫?ごときの雑念で人生を失ってならないと、大人の判断を見せてくれる作品でした。😊 

年の差のある夫婦。子供の出来ない若い夫婦、倦怠期の夫婦、ゲイ男の悩みがみごとに描かれました!隠していたことがバレて傷つくのは辛いことだったが、これによって生まれ変わることができるというすばらしい脚本でした。

 当初オロオロしながら強いゲイ男に変身していく東山さん。大股を拡げ旦那を小者と罵りながら、旦那を受け入れていく太っ腹母さんの常盤さん。さらに不倫?が発覚しても堂々と旦那と張り合う妻を演じる鈴木保奈美さん、みごとでした。

           ***

「羊たちの沈黙」(1991)“恐怖のトラウマ”からの脱却!

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ホラーミステリー金字塔と言われる作品、NHKプレミアムで観賞。第64回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、主演女優賞、監督賞、脚色賞受賞作。

女性を殺害しその皮を剥ぐという猟奇事件が続発。捜査に行きづまったFBIは、元精神科医の殺人鬼ハンニバル・レクターの示唆を得ようと女性訓練生クラリスを彼に接触させ、彼が吐く言葉に翻弄されながら犯人を追うという物語。

レクターの吐く言葉に意味がある。それを解釈する面白さ。レクターを演じるアンソニー・ホプキンスクラリスを演じるジョディ・フォスターの表情で言葉を追う心理ミステリー”

レクターの目的は何か?FBIは利用したのか、されたのか?ミステリアスで、明らかになっていく猟奇事件の犯人像に身の毛は立つ思いでした。こんなやつが本当に存在するのかという性倒錯者の行動が怖い!

そして、レクターとクラリスの間に見られる、なんとも言えない愛情のようなものがあったのではないかと信じたくなる思いでした。

監督:ジョナサン・デミ、原作:トマス・ハリス、脚本:テッド・タリー、撮影:タク・フジモト、音楽:ハワード・ショア

出演者:ジョディ・フォスターアンソニー・ホプキンス、スコット・グレン、テッド・レヴィン、アンソニー・ヒールド、ケイシー・レモンズ、他。 


The Silence of the Lambs (1991) - Official Trailer

あらすじ(ねたばれ):

冒頭、バージニア州タウンティユ近くの森。FBI訓練施設。朝早く障害コースで女性訓練生クラリスジョディ・フォスター)がひとり訓練している。通常、こんなことをする訓練生はいない。何故彼女は走らねばならないのか?この時代、まだまだ女性FBIはめずらしい存在です!

コースに「痛み、苦悩、苦痛を愛せ」という立て看板がある。彼女は毎日この標語を見て走っていた。実はこれがテーマで彼女の成長物語でもあるんです。

捜査課長のクロフォード(スコット・グレン)は、かって彼が大学教授時代の教え子クラリスを呼び連続殺人事件のプロファイルを作成中だか、大物が非協力だから、「お前、会って来い!」と指示した。大物は元精神科医のレクター(アンソニー・ホプキンス)。

レクターが収監されているボルティモア州立法廷病院に出向き、院長チルトン医師(アンソニー・ヒールド)から「女性の面会者は初めて。面会遮断ガラスには近づくな!1981年に看護師を襲って喰った」と注意されて、厳しい監視付の地下室に入って行った。もうこれだけでゾッとする雰囲気!

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レクターは直立不動で礼儀正しくクラリスを迎えた。クラリスは緊張していた。いきなり「バッファロー・ビルの捜査か?なぜ皮膚を剥ぐと思うか?」と聞いて来る。レクターは新聞を読んで、すでに彼流のプロファイルを持っているようだ。新聞は「バッファロー・ビル、5人目の皮膚を剥ぐ!」と報じていた。

クラリスが「興奮?勲章?」と答えると「違う!」と言って、「あんたの訛りでウエスバージニア出の白人貧乏、そこから逃げるためにFBIに入ったか?」と挑発する。クラリスは「お見通し!」と面談を終えて、質問状を渡して帰ろうとすると、「答えは自分自身の中にある。ミス・モフェットを探せ、私の元患者だ」と。クラリスは保安官だった父親を思い出し、悔しさで涙が出た。

クラリスはミス・モフェットの病院カルテはすでに処分されており探せないと思ったが、レクターの言葉「自分自身の中にある」を思い出し、電話帳を調べるとユアセルフ倉庫の借主になっていた。倉庫を調べると、マネキンとアルコール漬けされた女装の首だけの死体があった。

クラリスはレクターを再訪。「ミス・モフェットは文字を並べ替えると“私の残り”という意味!あなたが借主でした」と切り出す。「バッファロー・ビルの話をしろ!」というレクターにミス・モフェットの情報を求めた。「本名はラスパイル、恋愛面で風変わりなやつだった」。

「性倒錯者?」と問うと「うつ病だ。変身願望があり未熟な殺人者だ。彼に何を感じた」という、「怖かった、刺激的だった!」。「変身の意味は?」「バッファロー・ビルを分析したまでだ。逮捕に手を貸そう!“ここから出せ!”ビルはもう次の目標を探しているぞ!」と要求してきた。クラシスは堂々とレスターと張り合っているが、いつ取り込まれるかとひやひやしながらふたりのやり取りを聞くことになります。

テネシー州メンフィス。夜間、暗視眼鏡を着けた男が少女を誘拐する映像。

ビルによる6人目の事件が起こった。ウエスバージニア州クレイ郡の現場に、クロフォードはクラシスと伴って飛んだ。航空機の中で、クロフォードがこれまでの事件概要を説明した。「ビルは犠牲者を3日間生かす。レイプや虐待の痕跡はない。切断は死後だ、殺して皮膚を剥ぐ。そして河に捨てる。最初の犠牲者ビメルは重しを付けられて捨てられ3人目として発見された。死体が上がったのはエルク河だ

現地では、クラリスは地元警官にいやな目で見られる。解剖に立会した。これまでの遺体と異なるのが、“喉に異物”が詰め込まれていた。

クラリスは友人のいる考古博物館で調べてもらった。メンガタスズメ、別名ガイコツ蛾、生息しているなはアジアでのみと知った。

メンフィスの事件。誘拐されたのはテネシー出身の上院議員の娘キャサリン25歳。ブラウスの背中が切られていると報道された。

クラリスはレクターに会い「キャサリンを救えたら軍人病院“プロムアイランド”に移動される」と伝え、バッファロー・ビルの資料を渡した。レスターは「クラシスの幼いころの記憶を知りたい」と要求してきた。「父は保安官。10歳のとき犯人に撃たれ亡くなった。母は早く亡くなっていた」。

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6番目の事件を聞いてくるのが無視して、「公表されてない異物・蝶があり、ラスペイルの頭部にもあった。何の意味か?」と問うた。「変身だ!ビルも変身したいんだ」。

「性転換と暴力は結びつかない!」というと「逮捕まで間近だと気付いているか?父の死のあと孤児となったあとを喋れ!」と要求してきた。「母の従兄のところにいて2か月で逃げた。次は私の質問に答えて!」と逮捕まで間近の意味を聞いた。「性倒錯者ではないが願望があり、手術を申請したが拒否されている。暴力と関係した少児障害を調べろ!生来の殺人者ではないが長年にわたる虐待でビルは自分の存在を憎んでいる」と明かした。レクターは何故クラシスの幼児のころのことに執着しているのか?

ビルはキャサリンを井戸に閉じ込めていた。キャサリンは「母は偉い人、家に帰りたい!」と訴えている。

ふたりの会話を密にチルトン博士が録音していた。博士はマーティン(ブルック・スミス)上院議員に取り入ろうとレクターを牢から出して、レクターに口輪を着けさせ、テネシー州刑務所への移送を条件に犯人の本名を聞き出そうとしていた。レクターは「下の名はルイス、残りはマーティン上院議員にあってから明かす」と交換条件を出した。

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レクターはメンフィス国際空港に移送され、ここでマーティン上院議員に会い「本名はルイス・フレンド。会ったのは1度だけだ。悪者のラスペイルと一緒に来た。2人は変人だ。ルイスはラスベイルを殺した!」と明かし、「自分で娘に授乳したことがあるか!乳首が勃起したか!」と議員を侮辱した。これはレクターが警察に賭けた罠?

ニュースがマーティン上院議員とレクターの面会でレクター博士が捜査協力に同意しバッファロー・ビルの逮捕は近いと報じた。

レクターはシェルゼー郡裁判所内の檻に収容された。そこにクラシスがキャサリンに危機感を感じてやってきた。

「ルイス・フレンドは文字を並び帰ると“偽者”という意味、誰なの?」と問うと「渡してもらった資料にある。第1は、本質はなんかだ?探している男は何をするかだ」。「キャサリンは殺されているの?」「ちがう、それは結果だ!彼は何を満たしている?」。「怒り?社会的容認?」「違う、切望だ!切望するものを探せ!毎日見るものから切望は高まる!」。

レクターは話を変えて「母の従兄のところにいて2か月で逃げた。何故逃げたかを話せ!」と迫った。クラシスが「奇妙な子供のような声を聞いて、納屋に入ると羊を殺しているとこだった。その一頭を抱えて逃げたが、捕まり、その羊は殺された」と話すと「時々目が覚めて、闇の中で羊たちの声が聞こえるか?」と聞いてきた。「そうだ」と答えるとありがとう」と言い、「キャサリンを救えばその悲鳴は消えるかな?(発見してみろ!)犯人は資料にある」と答えた。彼の手に触れたが引っ張り込まれることはなかった。ここは怖いシーンだった!

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レクターは夕食を運んできたふたりの警官を襲い、鍵を奪ってエレベーターに逃げ、警備隊をエレベーターに引きつけ、撃たれ、救急車で空港に運ばれ、ここで観光客を殺して服と現金を奪い姿を消した。

クラシスはこのレクターのこの脱出劇を知り「彼なりの礼儀があった。もう彼は救えない!」」と資料の中のヒント探し始めた。

遺体の発見場所はランダムだが、発見された順番は犯行順であるにも関わらず、最初のビメルだけが3番目に発見された。重しが付けてあったからで、この遺体に重要な情報が隠されてると、オハイオ州ベルベデーレに飛び再調査を始めた。レクターに示唆された「切望!」を見つけるために。ビメルの部屋を綿密に調べた。デブのビメルの写真とクローゼットに切り取り部のあるワンピースを発見した。シカゴの友達に面会してビメルは裁縫が趣味で、リップマン夫人の仕立てを手伝っていたことを知った。

クロフォードは病院のブラックリストから犯人をジュイミー・ガム、別名ジョン・グラントと確認し、ガム逮捕のためイリノイ州キャメットシティに向かっていた。「ジュイミー・ガム」とはガイコツ蛾の名。この情報をクラシスに送り、引き続き情報を収集するよう命じた。

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クラシスはビメルの友人から「ジュイミー・ガムという名は聞いたことはあるがジョン・グラントという名は聞かなかった」と聞き、リップマン夫人宅を訪ね確認することにした。一方、クロフォードはジョン・グラント宅に向かっていた。

ビルは「やつの時間だ!」とキャサリンを閉じ込めている井戸を覘いていた。人皮を縫い付けたガウンを羽織り、女装して真っ裸で蛾のように舞い、興奮状態だ。

クロフォードはグランド宅に突入したが、空き家だった。クラシスがリップマン夫人宅を訪ねるとジャック・ゴードンと名乗る男が出て来た。“部屋に蛾がいる”ことでこの男がビルと断定し拳銃を向けるが、暗い部屋に逃げられた。蛾が一杯いた。真っ暗で見えないが、ビルが暗視眼鏡を着けてクラシスに襲い掛かる。その瞬間、“クラシスは拳銃の引き金を引いた!”クラシスがFBIとして生きるために求められる“恐怖のトラウマ”から解き放された瞬間だった。

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クラシスは自信を持って、FBI訓練課程を終えることが出来た。祝いの席にレクターから電話が入ってきた。「羊の悲鳴は消えたか?私にもクロフォード同様に敬意を払ってくれ!もっと喋りたいが古い友人と夕食だ!」と会話を切った。その時、レクターは空港から降りて来たチルトン博士を見つめていた。

感想:

猟奇犯人ビルを逮捕したが、それをうわまわる知的殺人鬼レクターを逃がすという結末、とても知的な推理ゲームだった!

全てがレクラターの作文通りで上手くやられたと思うのですが?そして、クラシスに対する彼の態度は彼女を利用しただけなのか、愛情だったのか?

ふたりの対峙は圧巻。レクターがクラシスのトラウマ“羊の叫び”を引っ張り出すシーンはドキドキでした。ふたりの最後の別れがレクターの「ありがとう」だった。何に対するありがとうだったのか?

事件解決後に、レクターからクラシスへの電話「君がいた方が世界は楽しいよ」。憎めない悪党でした!

レクター脱出劇は、のちの作品の参考例になっているそうですが、圧巻でした。エレベーターの屋根から血液をたらし、自分を殺すことはないと知っていて、警備兵をおびき寄せて脚を撃たせ、キャスターで空港に運ばせ脱出する。あまりにも見事でした。

殺人鬼ビル、次第にその性癖が明らかになり、素っ裸で蛾のように踊り狂う姿。暗視眼鏡を着けてクラシスに迫る。怖かったですね!

冒頭のFBI訓練コースにあった精神徳目「痛み、苦悩、苦痛を愛せ」を、クラシスがトラウマ克服し成長した姿で見せるラストシーン、すばらしい作品でした。

         *****

「岩合光明の世界ネコ歩き 讃岐・香川」(2021)

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「ネコは人間とともに世界に広まった。だからその土地のネコはその土地の人間に似る!」と言う岩合さんのネコ巡り旅。さあ讃岐でどんなネコに出会うか?楽しみでした!

早朝、金刀比羅宮の石段で、かわいい子ネコたちに出会う。讃岐といえばうどん。岩合さん、ぜひうどんを食べるネコを撮りたいと、看板ネコがいるうどん店を訪ねた。次に屋島弘法大師ゆかりの屋島寺や伝統工芸士の工房、最後におむすび山のネコを訪ねて、ひとつの物語を作った。さてその物語は?

偶然出会ったネコたちをカメラに収めて物語にしちゃうから凄い!岩合さんに撮られたネコたちを見て“なるほど”とネットは大騒ぎ。(笑) 今回は“お接待で繋がる人とネコの物語”でした!

ナレーションは岩合さんと宮﨑あおいさん。岩合さんは劇場版 岩合光昭 の 世界ネコ歩き あるがままに、水と大地のネコ家族」の公開前で、緊急事態宣言?と心を静かならざる状況でこの日を迎えたようです。(笑)

宮﨑さんはこのシリーズの常連ナレーターです。ネコとの関係は、アフラックの「まねきねこダック編」、「セカネコ」と相性はいいようです。作品でお馴染みの天璋院もネコ好き、西加奈子さんもネコ好きです。(笑) 宮﨑さんのナレーションが暖かくて、親しみのある声で、癒されます! 

あらすじ(感想):

金毘羅宮

秋、朝6時、金毘羅宮まで785段の参道。まだ明けやらぬ石段に3匹のネコがうろついています。朝焼けが美しい。

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太鼓の音で参道が活気づく!店戸が開き3匹のネコが飛び込んでお婆ちゃんのコタツに潜り込む。「可愛い子猫たち」です。目がラムネ色の親のラムネは参拝者と一緒に案金毘羅宮の境内に。沢山のネコが屯しています。「讃岐では、旅の祈願にネコを思い出して参拝すると言われ、ここのネコは可愛い」と岩合さん。この時間帯の風景は珍しい!子猫の遊ぶ様を撮って下山。

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うどん店:

讃岐はうどん文化の地。丸亀市郊外、50軒店が味を競っているそうです。7時には味が立ち込め、ネコの花子がお出ましです。生まれてからずっとこの店に通っていうとか。(笑) 9時開店、すでに大勢のお客さんが、畑でネギを採って!並んでいます。朝からうどん、これが讃岐流です。

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花子はお客さんの後ろで接待、岩合さんも大喜びでした。終ってうどんを食べて、昼寝!(笑) 讃岐のうどんの味は日本一ですね!うどんを食べたくなります!

屋島

高松市の東方、四国遍路の通路、屋根のような形の屋島台に。面構えに良いトラネコ、屋島のボスネコに案内されて、84番寺屋島寺に。

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境内にゴロンゴロンしているネコたちに出会った。納経所にいるネコ・スモモがしっかり参拝者を見つめています。もう一匹のネコ・花と一緒にごはん。器は柄杓を利用したもので、お寺さんらしい。お腹が一杯になったら遊びの時間。スモモは鐘楼に。花は木登り。広い境内は2匹の遊び場。

瓦工房:

伝統工芸師さんの工房を訪ねた。置物・鬼瓦に似てるネコ・さんちゃん。屋根瓦の職人さんですが置物も作っている。工房が好きな“さんちゃん”はいつもここにやってくるらしい。置物がさんちゃんに似ている。(笑) 粘土のうわ水を飲むさんちゃん、これではさんちゃん、鬼瓦になるはずだ!

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さんちゃんはここで生まれて9年、御主人の仕事を見守っているという。窯出し。さんちゃんは埃のなかで、出てくる作品を待っていた。

讃岐富士:

瀬戸大橋を香川に向かって走っていると、いくつかの三角形の山を見えます。そのうちのひとつ飯野山。四季を通しての人気の山とか。ここにおむすび山の親分がいる「名前ぴったりだね」のナレーションに「梅宮さんだ」とネットで声が上がる。(笑) 尻尾が立派だ!岩合さんお気に入りのネコだった。

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登り道をちゃんと知っていて、岩合さんは親分について行く。頂上でゴロンゴロンと転がり、ここは瀬戸内海が見える素敵なところだった。

岩合さん、御主人にもネコにも親切にしてもらって、「ここにはやさしさ、御接待文化根付いている。通る人に声を掛ける御主人の接待がネコにも根付いている。豊かな文化が路上のネコたちにある」と締めくくりました。

ゆったりと時の流れるなかで、讃岐の御接待文化がしっかり伝わる作品でした。

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