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「母との約束、250通の手紙」(2017)原題「夜明けの約束」でなければ感動は味わえない!

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フランスの伝説的文豪ロマン・ギャリーの自伝小説「夜明けの約束」の映画化。WOWOWシネマ初公開で観ました。小説は未読です。

ロマン・ギャリーの経歴ウィキペディアによると、

1914年、リトアニアで誕生。ユダヤ系ロシア移民で、ポーランドで幼少期を過ごし、フランスに亡命、’35年に国籍を取得。’57’58年権威あるフランス文学最高峰ゴンクール賞を史上唯一2度受賞。外交官、映画監督、そしてプライベートでは「勝手にしやがれ」の女優ジーン・セバーグの夫と複数の顔を持ち、‘80年拳銃自殺を遂げた。等々・・。

物語は、

シングルマザーとして息子ロマンを育てるユダヤポーランド人移民のニーナ。息子が将来、軍人として活躍した後、作家として成功すると信じる彼女は、息子の才能を引き出すために躍起になる。ロマンは、そんな母からの過剰な愛と重圧にあえぎながらも、母の夢をかなえようと決意。成長したロマンは自由フランス軍に身を投じ、病で生死の境をさまよった時も、ニーナからの激励の手紙が届き続けた。やがてロマンはパイロットとして活躍し、執筆した小説が出版され作家デビューも果たすことになるが……。(映画.Com)

監督:エリック・バルビエ、脚本:エリック・バルビエ、マリー・エイナール。撮影:グリン・スピーカート、美術:ピエール・ランソン、衣装:カテリーン・ブシャール、編集:ジェニファー・オージェ。

出演者:ピエール・ニネ、シャルロット・ゲンズブール、ディディエ・ブルドン、

ジャン=ピエール・ダルッサン、キャサリン・マコーマック、フィネガン・オールドフィールド、他。

「男が戦うべき理由は3つ。女、名誉、フランス!」と宣う母親。息子の将来は軍人、作家、外交官と定め、息子を溺愛し叱咤激励する母親と、苦悩しながらも母親の敷いた道をひた走りしながら「自分を発見するという感動物語です!

あらすじ(ねたばれ): 

町の賑わいの中、妻レスリーキャサリン・マコーマック)がホテルで執筆中のロマンの部屋を訪ねるとロマンが倒れており「こんなところで死ねない、メキシコシティーへ行く」と言い出し、タクシーでメキシコシティーへ向かい、その車中で妻がロマンの原稿「夜明けの約束」を読み感動するというロマンの人生回想物語となります。

1924、ビリビュス(ポーランド)。降りしきる雪のなか、学校帰りの息子ロマン(10歳)は母ニーナ(シャルロット・ゲンズブール)に出会い「お前は将来自動車を手に入れる、フランスの大使になる」と抱きしめて婦人用帽子の訪問販売に出掛けた。ロマンが部屋で待っていると、そこに警官が訪ねてきて、「容疑は盗品の隠匿だ」と戻ってきたばかりの母と揉める。これをテーブルの下に隠れて見ているロマン。部屋を荒らされたニーナは悔しさの余り、ロマンを外に連れ出し、周りの家々に聞こえるように「この子が将来作家になる、勲章を貰う、フランスの大使になる。将軍になってロンドンで服を作らせる!」と叫び嘲笑された。ロマンが後に語るようにこの母親の無念さが彼を作ったシーンでした。

ニーナの“生活力”は、ユダヤと蔑まれてきただけにすさまじかった。自分は元女優だと言い、俳優崩れも男(ディディエ・ブルドン)を有名デザイナーに仕立て、“オートクチュール”開業のセレモニーを行って集客し繁盛した。そこでロマンに音楽を習わせるがその能力がないことが分かった。小室さん親子に似ていますね!(笑)ロマンが絵を習いたいというと「画家みたいに死んだ後に評価されても意味がない、生きてるうちに評価されるようになって!」と受け付けない。(笑)そこで母に生きているうちに名を挙げると小説家を志すことにした。

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移民だけにロマンには友達がいない。エスカルゴを殻ごと食べて、その数で彼女の気を誘うという遊び。ロマンは母親に負けない根性で食べる。(笑)それで彼女が出来たが、これが仇となって「売春婦の子」と虐められる。虐められたロマンに「母さんが侮辱されたら、担架に乗って帰ってきなさい!」と励ますニーナ。

ニーナの仕立屋商売も客の支払いが遅れ、遂に破産。回収に出向いて追い出される哀れな母親を見て悔しがるロマン。この辛い生活のなかで培われた母と子の物語であることを忘れてはならない。

新しい地を求めてフランス・ニースに引っ越した。

ニーナは没落したニコライ2世にゆかりの者だと偽り、アンティーク家具だと骨董屋に勧めるが、嘘だと見破られ(笑)、逆に骨董屋の物をホテルの中で売る店を任された。

こういう商売は元女優に向いていた。事業は成功し、ロマンのためにメイドを雇った。ロマンはこのメイド・マヌエットと初体験、その体位が変形69だった。(笑)これを見て怒るニーナに「人生を決められるのは嫌だ!」と抵抗した。ニーナは何も言わなかった。

年取った画家サレンバ(ジャン=ピエール・ダルッサン)がホテルに1年滞在してニーナを口説いた。ロマンは高血糖症の母には良いと思ったが、「画家は食わしてくれない」と断った。(笑) これを機に、母が生きているうちにと本気で小説を書き始めた。

ニーナはロマン(ピエール・ニネ)を小説家にするためパリの大学に入れた。駅頭での別れのシーン、集団就職を思い出しました。(笑)

ロマンは大学に入ったはいいが、車中で知合ったスウェーデン人女性に熱を挙げて一向に小説が書けない。(笑) やっと短編が認められ新聞に載り、これを見たニーナは“小説家になったと商売仲間に触れ回りその喜び方はすごかった。(笑)が、後が続かなかった!(笑)

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1938年8月、ニーナはロマンを呼び寄せ「ベルリンでヒトラーを殺す」と打ち明けた。(笑)ユダヤ人としての復讐心がこれほどに強かった。ところが「お前はひとり息子だ!」と動揺し暗殺計画は中止になった。

1938年11月4日、ロマンを空軍士官候補生学校に入った。ユダヤ人として生きるにはフランスしかない、この国を守るというニーナの心情からだった。ニーナには大きな誇りだった。

ところがロマンはユダヤ人ということで、300人の中でたった一人将校に昇進できなかった。ニーナに「校長の奥さんを口説いたからだ。彼女は美人だ」とその理由を説明するとニーナは「さすがだ!」と大喜びだった。(笑)

基地に戻った直後動員令が下った。「敗戦など許さない!」とニーナが激励にやってきた。大尉を見つけてプレゼントを渡す。このシーンに母親の気持ちがよく出ていた!

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1940年6月、ペタン元帥の演説「停戦を提案したい」を聞いて上司から「ド・ゴールがイギリスで自由フランス軍を作るから参加しないか」と誘われイギリスに飛ぶことにした。ところがニーナが血糖症で倒れたことを知り、ニースに戻り見舞った。彼が乗る戦闘機が炎上したので、ニーナの病がロマンを救った。彼はこう述懐しています。

担当医に「お前の母親だと思って診療に当たれ!」と脅迫して基地に戻ろうとするロマンに、病床のニーナが「イギリスに行け!」と声を掛けた。ロマンは単身、無断で戦闘機を持ち出して、イギリスに飛んだ。

基地のバーでポーランド兵士と喧嘩、決着は拳銃による決闘という恨み辛みの騒ぎを起こして収監された。が、ニーナの「何か月も書いてないね!」という妄想に悩まされ、小説を書くことにした。

アフリカ戦線にとばされ「白い嘘」を書き始めた。しかし書けない。女を抱いても立たない!(笑)そんな中で痴呆症の老婆に出会うと母を思い出し、部族まで送り届けた。蚊に刺されこれを拳銃で撃ったこと牢に入れられ、そこで母からの手紙を読み、焦った。牢から出て、ロンメル軍と戦うためにリビアに移動。トラックの中で小説を書いた。チフス野戦病院に入った

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母が訪ねてきて「息子はフランスを救い小説を書いてニースに戻って来ると皆に言っている。この体たらくは何よモーパッサンは梅毒でも描いた。死ぬのは許さん!」と怒る幻覚を見て、裸で病室を走り「軍に復帰させろ!」と叫んだ。

1943年8月アフリカ戦線からイギリスに戻り、母の写真を機体に貼ってフランス空爆作戦に参加していた。母の手紙に励まされ小説を書きまくった。そして長編「白い嘘」を完成し、英訳され出版されることになった。やっと成し遂げた、「自分は生まれ変わった」と思った。母からの手紙「覚えておいて、お前は大人もう私は必要ない。早く結婚しなさい!」を受け取った。しかし「「私への褒めの言葉がない!変だ!」と思った。「白い嘘」は母と私の2人の勝利だと思っていたのに。

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出撃して被弾し、出血して目が見えなくなったが、友軍機の無線誘導で、目標に爆弾を投下し基地に帰還した。「目が見えないパイロットの帰還は初めてだ」と称賛され栄誉勲章が授けられた。

パリが解放されロマンは小説「白い嘘」と栄誉勲章を持って、ニースの家に戻ったが母の姿がなかった。病院を訪ね、医者から「母親は3年前に250通の手紙を書いて亡くなった」と聞かされ、泣いた。

感想:

母親は亡命国フランスを愛しそのために息子に高い目標を課し、生きているうちに息子の出世を見たいと息子に掛けた愛情。これを何とは叶えたいという息子の苦闘。

ユダヤ人難民として蔑まれる母親を見た息子の“幼い頃の記憶”が母親の課した目標を達成させた最大の要因でした。

恵まれた環境の今を生きる人には「息子の人生を母が決めるのはおかしい、息子が可哀そう」と思うでしょう。しかしユダヤ人としての居場所を求めてフランスに亡命した背景を想うとニーナの想いも頷け、息子の課した目標が髙いだけに、ニーナはそれに見合う愛情を示したと思います。

物語は沢山のエピソードがちりばめられ、テンポよく綴られます。とてもユーモアがある。母親と息子のやることがどこか可笑しい。このユーモアこそがふたりを繋ぐ力だったかも知れない!

アフリカで幻の母に励まされて自分を取り戻し、イギリスに戻り、闘え!書け!と励ます母の手紙を見て、パイロットとして戦闘しながら小説を書くロマンの姿は母に“生かされていて”とても美しかった。そして映像が美しい!ザコンなんて姿はどこにもない!泣けた!

ロマン役は三人で演じられましたが、ニーナ役はシャルロット・ゲンズブールひとで演じ、怪物母さんに恣意した演技はすばらしかった!しかし、タイトルが悪すぎました!原題の「夜明けの約束」でなければ感動は味わえないでしょう

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「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」(2021)アクションも良いが、ストーリーが面白い!

 

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岡田准一さん出演映画は見る義務があることになっております(笑)。公開初日一番で観ました。これでよかったと思います。連日のCM、「王様のブランチ」ではメイキングが入ってほぼ完全ネタバレという具合ですので・・。

アクションが凄いんですが予告編、連日のCMで観ておりますので、確認ということになりました。(笑)

原作は南勝久ザ・ファブル“宇津帆編”」、監督:江口カン、脚本:山浦雅大、江口カン。撮影:直井康志、アクション監督:横山誠、ファイトコレオグラファー:岡田純一、音楽:茂木英興、主題歌:LADY GAGA,ARIANAME「ABOUT ON ME」

出演者:岡田准一、古村文乃、堤真一、平手友理奈安藤政信山本美月、佐藤二郎、黒瀬純、他。

あらすじ:

相棒ヨウコ(木村文乃)と普通に暮らしていたアキラことファブル(岡田)はある日公園でリハビリをしていた車生活の女性と出会う。「びっくりした!見てたの、コケるまで!」とはにかむ女性に、「頑張ってるから邪魔しちゃ悪いと思って」とアキラ。

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アキラは記憶力抜群のヨウコに聞くと、女性は4年前にファブルが絡んだ売春事件で生き残りの左羽ヒナコ(平手友理奈)と分かった。

数日後バイトのデザイン会社オクトパスのタコ社長(で佐藤二郎)に配達を頼まれたアキラ。「チラシお届けにまいりました」と出向くとそこにヒナコがいた。

ヒナコは両親を何者かに殺され、慈善活動する宇津帆(堤真一)のサポートを受けながら暮らしていることを知った。ところが宇津帆は裏の顔を持っていて、かって売春の元締めをやっていてファブルに弟や仲間を殺され復讐に燃える強力な男だった。

マーフィーの法則でいずれファブルに出会う」と信じていた宇津帆。「恨みを晴らしてやる、生半可なやりかたではだめだ!」と殺し屋・鈴木(安藤政信)や元真っ黒カンパニーの井崎(黒瀬純)と手を組んで、綿密なファブル団地殺害計画を立案。

一方、アキラはヨウコが「罠だよ!」と反対するのを「責任や、普通ってのはそういうもんやろ」とヒナコを守るために宇津帆との闘いに挑むことにした。

ところが宇津帆は「お前の両親殺したのはファブルだ!」とヒナコを取り込み、ヒナコも「私にも銃貸して!」と武装して戦に参加してきた。

ヒナコを巡るアキラと宇津帆の戦さ。殺さず、最強の偽善者・宇津帆からヒナコを救出することができるか?

感想:

前作で描かれたファブルの性癖をしっかり引き継ぎ、雰囲気もまったく同じで、アクション的にも、ストーリー的にも前作を凌駕しています。なんとも言えない緩い笑いのなかで、ザ・ファブルと言えば岡田さんのアクション。さらにパワーアップしています。

堤真一さんを悪役に迎え、謎の美少女・平手友理奈さんを絡ませた因縁の大勝負。堤さん演じる宇津帆のキャラクターが善悪合わせ持つユニークなもので、最期まで結末が見えない、とても面白いドラマになっています。

冒頭の4年前の売春組織に挑むファブルの活躍。

女を連れて逃げる組織を狙うファブル。一台のエスティマを屋上駐車場に追い詰め、飛びつき中の男の首を斬り、暴走する車に、しがみつき、最後にダイブする車からヒナコを抱いて救出するという荒っぽいアクションを見せてくれます。狭い空間でのアクションだけに迫力がありました。

ファブルの殺人狂時代の戦闘スタイルを見せて本題に入り、このシーンが後にアキラがヒナコを再び救い出す伏線になるという着想がいいですね!

本作の面白さは宇津帆のキャラクター。

事故で車椅子生活となったヒナコを表に立てて、こんな事故が起きない、子供を大切にする安全な街作りを目指すNPOを立ち上げて親の関心を引き、裕福な子供をだしに金を脅し取り、抵抗すればユンボで掘った穴に埋めるという大悪党。(笑) これをにんまり微笑みをみせなからやっちゃう堤さんの演技が最高に面白い!ヒナコとの関係では車椅子を押して面倒をよく見るが、夜の相手をさせるという特別な関係を持っている。

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ヒナコが自分でリハビリを行うと公園の鉄棒にブラさがる。それをアキラに見られる。アキラは善意としてやり方を教えるのだが、彼女は不気味と捉えて鈴木の力を借りてアキラを遠ざけた。が、アキラはヨウコの記憶力でヒナコとの過去の関りを思い出し、彼女を陰ながら応援します。鈴木に殴られても手を出さないという、人の痛みが分かる男になっていた。

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アキラの真心が少しずつ伝わるようになるのですが、ファブルによって両親を殺したと宇津帆から知らされ、アキラの敵になってしまう。アキラと宇津帆が対決したとき、宇津帆は自分にとってなんだったのか、本当に自分にとって大切な人はと苦悩するヒナコの人生物語、ヒナコの対応にほろっとさせられます。

こんなヒナコに振り回される宇津帆の心の行き着くところも見どころでした。

平手友理奈さんの透明性や芯の強さ、凛とした姿が生かされてヒナコの強さがよくでた演技でした。

宇津帆とアキラの対決。

最初に会うのは会社オクトパスのタコ社長から指示されて配達物を届けた時。ヒナコがコーヒーを出され、宇津帆が「オメエさんの名前は?」と聞くが、猫舌で話を聞いていないアキラ。「一本ネジが外れているがいいやつだ!」という宇津帆の感想。こういうシーンの隠れた笑いシーンが沢山あるのが良い。タコ社長の駄洒落にうんざりする人もいると思いますが、こっちを見て欲しいです!😊

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宇津帆はファブル対決に備えて鈴木、伊崎、ヒナコとチームを組んで、ファブルの居場所を探っていた。元真っ黒カンパニーの井崎の情報で、アイドルスカウトに化けて、オクトパスの元美人アイドル・ミサキ(山本美月)をネタに密かに彼女に熱を挙げている貝沼(好井まさる)を拉致してファブルの居場所を聞き出し、鈴木がやってきた。居たのはマーボ豆腐料理中のヨウコ。拳銃を投げて「殺してみ!」と声かけると、8秒でヨウコに罠をかけられた。ヨウコが鈴木を股の間に挟んで締め上げるシーンが艶めかしい。(笑) 文乃さんのアクションにも注目です。笑えます。そこに戻ってきたアリラが縄と解いて「マーボ食うか、帰っていいよ!」。(笑)

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イケメンの殺し屋・鈴木、簡単にヨウコに絡めとられるという謎めいた行動。このインテリヤクザが同じ殺し屋ファブルの行動を見て、最後にどう動いてくるかも面白い。

鈴木からファブルの存在を掴んだ宇津帆は「頭で勝負!」と、組員と鈴木・井崎による狙撃射撃を準備した団地アパートにファブルを呼び出して、一気に勝負を決めることにした。ヨウコが「罠だ!危ない!」というが「「責任や、普通ってのは、そういうもんやろ!4年前の贖罪だ!」と宇津帆の策に乗った。

団地での決闘

めざし帽でコルト銃(改造弾丸)を持って、指定アパートを訪ねた。すると爆薬が仕掛けられて吹っ飛ばされ、ベランダにすがって、迫ってくる敵をロープにぶら下がりながら、壁を伝って戦う!

救うべきヒナコの姿がない!そのとき「子供が危ない!」の声で、アパートのベランダを見ると、少女が風船を追っている。これ、宇津帆の仕掛けた罠!だった。

ファブルは車で待機するヨウコに「隣のビルの狙撃手を頼む!」と声を掛けて、建設中の足場に飛びつき、追ってくる敵を払うために足場を壊しながら前進。アパートの住民を巻き添えにしないファブルの戦い方だった。倒れる足場にすがりつくファブルにヨウコが「ねえ、大丈夫?」「問題ない!」「どこが・・」・・。CMでお馴染みのシーンです。安全のためにロープを使ったとは言え、岡田さんの身体能力の高さに圧倒されます。よくやりました。ヨウコは屋上で狙撃銃を構えていた鈴木と伊崎を羽交い絞めにした!(笑)

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ファブルは子供の安全を確保した。鈴木が車で出て行くのを見てヨウコに追わせた。

ファブルはタコ焼きを食べながら真っ黒カンパニー社長・海老原(安田顕)に「車を貸してくれ!」と頼むと黒塩(井之脇海)が車を持ってきた。これでヨウコを追った。

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団地で敗北した宇津帆は山の中にファブルを引き寄せ、ヒナコに撃たせ、死体を鈴木がユンボで掘った穴に埋める計画だった。(笑)

山中での決闘

ヨコスカGT―Rでヨウコと山道を走っていると突然鈴木が手榴弾、実が石だったのだが、を投げてきて驚いたヨウコが車外に飛び出し、捕まって木に吊るされた。

宇津帆は吊るされたヨウコを「撃て!」と車椅子のヒナコに指示。ヒナコは宇津帆を撃った。

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当たったが防弾衣を着けていた。ヒナコは立ち上がり地雷に踏み込んで近づき撃とうとする。宇津帆が「地雷だ!動くな!」と制止した。鈴木がユンボの爪をヒナコの足元に持ってきて地雷破片の飛散防御、到着したファブルが飛び込んだ!爆発!しかし、その前にヒナコを救い出していた。(冒頭シーンと同じ)ファブルは身を挺してヒナコを救った。そのとき鈴木の拳銃が火を噴いた。宇津帆は「ヒナコには、ファブルは毒な薬ってことか!」と呟き亡くなり、鈴木のユンボで埋められた。自分で掘った穴に自分で入ったという宇津帆の恰好いい終わり方だった!😊 ヒナコが宇津帆の遺体に手を合わせた

ファブルはヒナコを鈴木に託して帰った。後日、ヒナコから「宇津帆は家出した私を売春婦にはしなかった。感謝している。私は祈るのではなく、イメージして生きることを教えてくれた貴方に感謝します」と手紙が来た。

“ストーリーのあるアクション物語”がしっかりできていました。面白かったです!

親分(佐藤浩市)から「誰も殺さずに“普通”に生きろ」と命じられたファブル。悪と善が共存する社会で、清く生きる生き方を見つけて来いということだったのではないでしょうか。過去の自分の事件に対峙し、贖罪の気持ちで自らの命を投げ出すことができるほどに成長しました欲のない、真っ白なファブルの物語でした!さて次作を楽しみにしています。

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「マーウェン」(2018)“Welcome To Marwen”人形劇を作って暴力トラウマから脱出できた!

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バック・トゥ・ザ・フューチャー」「フォレスト・ガンプ 一期一会」のロバート・ゼメキス監督作ということでWOWOWシネマ初公開で観ました。

“タイトル“を辞書で調べても答えがない。(笑)映画を観る以外にないという絶妙なタイトルの作品です。(笑)

ジェンダーをネタに暴行を受け心身ともに大きな傷を負ったカメラマンの主人公が、人形劇の製作を通して、現実と向き合いトラウマを克服していく、実話をもとに描いたヒューマンドラマ。

監督:ロバート・ゼメキス、脚本:ロバート・ゼメキス キャロライン・トンプソン、撮影:C・キム・マイルズ、美術:ステファン・デシャント、衣装:ジョアンナ・ジョンストン、編集:ジェレマイア・オドリスコル、音楽:アラン・シルベストリ。

出演者:スティーブ・カレルレスリー・マンダイアン・クルーガー、メリット・ウェバー、ジャネール・モネイエイザ・ゴンザレス、ウェンドリン・クリスティーレスリー・ゼメキス、ニール・ジャクソン、他。

ロバート・ゼメキス監督作ということで期待が髙かったせいか一般評はあまり良くない。(笑) が、ジェンダーに対するヘイトクライムをどうやって克服していったか。アニメのような作品に挑戦し、人形劇の世界と幻覚、実生活の堺を行き来しながら、トラウマの痛みを克服していく様がユーモラスに語られ、面白かったです。😊 しかし、ちょっと人形劇に嵌りすぎて現実での苦しみが伝わらなかったのではないでしょうか。

あらすじ(ねたばれ):

冒頭、世界第2次世界大戦の最中のベルギー。パイロットのホーギー大尉(マーク)が操縦するP-40戦闘機が敵砲火を受けて不時着。足に火がついていて機外に出てドロで消す。なんと足が木製?人形劇だったのかとびっくりでした。(笑) 

機体のトランクを開けると女性の下着、ハイヒールを履いて現場を離れようとすると、5人の独兵が現れ、「手を上げろ!」と叫び、マークの姿を見てゲラゲラ笑う。するとどこからともなく6人の女性兵士が銃でこの独兵をメッタ討ち。女性兵士ウェンディがホーギーに近づいて顔を見た。このシーンをカメラに収めて「うまく撮れた。もう3年だ!」とマーク(スティーブ・カレル)。ウェンディはマークが事件で大怪我をして放置されていたところを発見してくれた女性、今はどこかに行って会えないので、撮影後破棄フィギュア箱に収めた。女性兵士については後に語られますが、この町で彼と付き合いのある女性たちです。

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この人形劇にマークが遭遇した事件の概要、トラウマの実態が描かれるという優れものでした!

マークには6人の女性兵士フィギュアの他に、彼の守り神、ベルギー悪魔・デジャ・ソリスダイアン・クルーガー)のフィギュアがいる。マークが好きで憑りついている。トラウマの本心です。

道路を隔てた家にニコルレスリー・マン)が引っ越してきた。なかなかの美人で気になる。彼氏がカート(ニール・ジャクソン)という男でちょっと怖そう!カートを見ただけで虫唾が走る。

ホビーハウス店主のロバータ(メリット・ウェバー)が薬と郵便物を届けてくれた。彼女は兵士のロバータとして活躍。マークの写真展を企画した人物。マークの面倒をよく見ている。ジェリーに会ったときく。ジュリージャネール・モネイ)はイスラエルの元兵士でマークのリハビリ担当、マラソンレースに出るらしい。彼女の絵葉書をアルバムに貼り、自分の過去を振り返った。結婚していたらしい。

マークはマーウェンの町で拾った牛乳しぼり女の人形劇を作っていた。女性兵士たちに彼女を“おっばいで勝負できる兵士”と紹介していたとき、教会の塔から俺を狙った弾がこの女に当たって、マークが看病しようとしたらデジャが魔法で消し去った。マークにはどの女も近づきたがって、それを禁じる規則があるのにそれを無視した女としてデジャが消し去ったというストーリー。“嫉妬深いデジャ”の写真を撮った(現実に戻った)。マークは女兵士たちには強がりだか、デジャに支配されていた。

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その仕事場に弁護士のジョンソンから「裁判の証人に立て!」という電話があった。マークの手が震え、いたるところから弾が飛んでくる錯覚に陥りテーブルの下に潜り込むとそのまま人形劇の世界に入りホーギー大尉となって女性兵士とともに応戦しながら眠った!そこにデジャが「愛している!一緒に逃げよう」と囁く。マークは辛いことからはデジャのせいにして逃げていた!

マークは安心のためフィギュアたちを乗せたJeepを引いて外出する。(笑)

ダイナー「アバランチ」で働いている兵士のひとりカラーラエイザ・ゴンザレス)を訪ねて、新人をデジャが消した形劇の話をした。カラーラも「嫌なやつだ人の恋を妨害する」という。ウェンディがカリフォルニアに居ることを聞いてロバータのホビーハウスに向かった。

店で赤毛のフィギュアを買ったロバータが名前を聞くから「ニコル」だと答えておいた。SSの将軍クルト・マイヤー武装親衛隊長)のフィギュアがあるから買えと勧められ、名前を聞いて震えがきてJeepを引いて家に逃げ帰った。

デジャが現れ「信じられるのは私だけ!愛しているは私だけ」と薬を進める。

人形劇を覘くとバーにいる女性兵士のところにマイヤーが現れ「ホーギーの居場所は?」と恐喝している。格闘となりロバータが衣類を剥ぎ取られ、おっぱい丸出しで出てきた。(笑)「ブラウスは?」とカメラで撮影しようとしているところに、ロバータがマークが店に置き忘れていた赤毛のフィギュアウエッジヒールを持ってきてくれた。マークはヒール集めを趣味で大いに喜んだ。

そこにニコルがやってきて人形劇に興味を示す。第2次世界大戦下のベルギー、マーウインの町のセットを見せた。女性兵士の物語を離すと満足して帰っていくニコルの脚がやたら気になった。(笑)

早速フィギュア“ニコル”の赤い髪をしっかりといて、スティレットヒールをはかせた。そして人形劇の続きを撮った。

町を守るマーウェンの女性兵士がバーに集まっていたが、ホーギーの姿がない。

そこにニコルが入って来て「指揮官いらっしゃる!」と聞く。ロバータが「捕まって、SSと一緒に教会にいる。手が出せない!」と言えば、ニコルが「良い案がある!」と酒瓶にガソリンを詰め、拳銃を隠し持って押しかけることにした。バカSS兵士が無造作に喜んで近づいてきたから。酒をサービスする振りをして投げつけ、火災を起こして銃でこいつらを一層してホーギーを湧出した。ホーギーは喜んでニコルと戦勝祝いで踊りまくった!ここで写真を撮った(現実に戻った)。

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そこにロバータがやってきて話を聞き「デジャが黙っていないよ!」と心配をする。(笑)

マークがJeepを引いて外にでると、「部屋の整理を手伝って!」とニコルに呼び止められ、手伝った。ニコルには気が許せてヒールを履くと女性に繋がる気がする。あの日は飲み過ぎて変態といわれたことで喧嘩になった」と事件について喋った。ニコルはお茶が趣味で動物衛生看護師だということが分かった。

そこにやってきたニコルの元彼カートに、「あのナチのオモチャは何だ!」」と聞かれ、動転して家に帰った。部屋に入ると暴行時の幻覚を見た。そこに弁護士から「必ず出廷するように!」と催促の連絡があった。

法廷に立った。Jeepは無理なのでホーギーだけ連れて入廷した。裁判長から証言文するように促されたが、暴行した相手がナチに見えガンガン撃って来るので怖くなって法廷を出て逃げ帰った。裁判は27日午前10時に再開されることになった。

家に戻っても怖くて泣いた。そこにニコルが「コートのことを謝りたい」とやってきた。マーウェンをパソコンで検索したが見つからないという。「マーはマーク、ウェンはウェンディ」と教えた。(笑)そしてマーウェンの町の物語を語った。彼女は「木曜日にお茶いかが?」と言って帰って行った。マークはニコルのイメージができたと彼女を主役に人形劇を作った。

人形劇:ニコルが大丈夫だからとホーギーにキスしてくる。「人形だから無理だ!」と言うと、「キスしても大丈夫!」と。確かに大丈夫だった。これを見たデジャが「ホーギーは私のもの!タイムマインを作る」と怒り出す。

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マークはJeepを引いてロバータを訪ね、「ニコルとホーギーがラブラブなんだ!真夜中だからキスも出来る!でもデジャが・・」と相談した(笑) ロバータは「デジャに消されないこと!時間が大よ」と言い、ニコルとホーギーのラブラブ写真を写真展に出品することにした。(笑)

家に戻ったマーク、人形劇の続きを作った。ティーポット風に部屋でお茶を飲みながらニコルに「指輪の替わりだ、戦争が終わったら指輪を買う」と勲章を渡すと喜んだ。写真に撮った。

これだ!“のマークはロバータの店を訪ね、この写真を見せると、ロバータが「写真展に使える良い写真だ」という。マークは勲章を買って、ニコルを訪ね、人形劇そっくりに結婚を申し込んだ。(笑)

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ニコルは丁寧の断ったが、マークは大変なショックで、家の戻り落ち込んでいると、デジャが「タイマーがセットできたから未来へ行こう!」と誘う。

そこにニコルが「渡し物があった!」とプレゼントを持ってきたが、マークは会わなかった。ニコルが帰ってプレゼントを開けると、ロバータの店にあったクルト・マイヤーのフィギュアだった。マークは過呼吸に陥った。そこに「めそめそするな!」とホーギーが出てきた。マークはホーギーとなり人形劇の世界に。

ニコルが街中で血だらけになり倒れていた。勲章のお陰で心臓には届いていなかった。ホーギーはJeepで教会に運び込んで介抱。女性兵士たちがナチの仕業だという。ホーギーは「どうすればいいのか?」と声を上げた。

マークは「お前は変態か!」と暴力を加えられ「ハイヒールは高い方が良いんだ!」と抵抗して殴られ蹴られた記憶を思い出し苦しんでいた。デジャが「痛みが取れるのは私だけ!」とマークが出廷を止めにかかる。「俺のせいでこうなっている!」と泣いた。

人形劇の続き:ジュリーが「愛さないと駄目!賢者は逝っている。痛みロケット燃料だ!痛みが力を呼ぶんだ!」とホーギーを叱咤激励。ホーギーが教会でニコルの回復を祈っていると背後からマイヤーがやってきて拳銃を向けた。ホーギーはハイヒールを見せるとマイヤーがびっくり!その隙に教会の塔に上って、マイヤーを待ち、ハイヒールで彼の首を刺し塔から落とした。そこにデジャがタイムマシーンでやってきて救ってくれた。マシーンから地上を見ると女性兵士たちが果敢にナチ兵士と戦っている。ホーギーは「やつらを生き返させてはいけない。ハイヒールをナチには渡せない!」とデジャの手を借りると、腕にハーケンクロイツの刺青。

ホーギーは「お前は中毒そのもの!葬ってやる!」と叫ぶとデジャの姿が消えた。ホーギーは地上に降りて教会のニコルの元に。ニコルに靴を履かせて見送った。

マークは出廷し「ヒールを履いていなかった。履くことがあると答えて激しい暴行にあった。私は逃げない、友達がいて自分の町と写真があります。私は大丈夫です」と証言した。

写真展も大盛況で、マークはJeepにフィギュアを乗せ、ハイヒールを履いて町を闊歩していた。

感想:

結構人形劇が面白いので“あらすじ”が長くなりました。おそらくゼメキス監督は人形劇の方に嵌ったのではないでしょうか。(笑)

ナチSS兵士を暴力、デジャという悪魔のフィギュアを心の葛藤のメタファーとして、SS兵士に対抗するフィギュア女性兵との恋を絡ませて、現実社会で受けたトラウマの痛みを乗り越え、法廷でジェンダーであることをカミングアウト。堂々とウエッジヒールを履きJeepを引いて町を闊歩できようになったという納得のいくメッセージでした。

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人形劇、フィギュアの顔が実名の俳優さんの顔というのが生々しいく、アニメのような動きで笑えました。もっと観ていたいぐらいです。タイムマシーンに乗ってからの行動がなんとも奇想天外で、マンガチックで面白いですが、これでトラウマの解消になったとなると分かり難い!(笑) しかし、前知識なしで観ると!傑作ですよ!

         ****

「キャラクター」(2021)漫画家の描くキャラクターで殺人を続けるサイコパスが漫画家を追い詰め、その行きつく先は!

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永井聡監督作で予告編の映像がとてもきれいだったこと、そして菅田将暉さん主演ということで観ることにしました。

画力があるが真っ正直で人の良さが災いしてか、リアリティなカルト漫画が描けない若きカルト漫画家。ある深夜、師匠に頼まれ住宅街を描いていて一家4人殺人事件に遭遇。壮絶な殺人現場で見て描いた“殺人犯のキャラクター”で一気に人気漫画家になった。ところ描く連載漫画が次々と発生する連続殺人事件にそっくり。犯人が接近してきて遂にふたりの共同製作となり、その行き着く先は・・・。事件を追う刑事が捜査活動を通して「キャラクターとは何か」を問うサスペンス作です。

原案・脚本:浦沢直樹作品に数多く携わってきた長崎尚志さんのオリジナル企画、監督・脚本:永井聡。企画:川村元気、脚本:川原杏奈、撮影:近藤哲也、美術:杉本亮、音楽:小島裕規、主題歌:ACAね)・Rin音 Prod by Yaff「Character」。

出演者:菅田将暉Fukase高畑充希中村獅童小栗旬中尾明慶松田洋治小木茂光、他。

目を覆う猟奇事件。ところが絵がとても芸術的で、“キャラクターが犯人ではない”と事件を追う刑事の目線が温かく、いい塩梅の恐怖サスペンスになっていて、永井監督作のベスト作品と言っていい。もうひとつ、俳優デビューとなるSEKAI NO OWARIFukaseさんの圧巻の演技です。観てください!

あらすじ(ねたばれ):

オカルト漫画家本庄のアシスタントを務めている山城圭吾(菅田将暉)はプロデビューしたと徹夜で描いた漫画を出版社編集者・大村誠(中尾明慶)に見て貰った。

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「絵は良いがキャラがない!売れない!」と言われて、「漫画家は辞めて仕事を探す」と同棲している川瀬夏美(高畑充希)に告げるが「援助するから続けたら」と励まされ、先生のところに顔を出すと、幸せそうな家の絵が欲しいという先生の要望で、深夜、絵を描きに住宅街に出た。描いている家主から「臨家の音楽がうるさい!止めてくれ」と言われ、人の良い山城が隣家に入ると、リビングにローブで縛られメッタ斬りされた殺人現場に遭遇、「船越一家殺害事件」。腰を抜かしていると逃げる犯人と目線があった。

所轄警察署の刑事・真壁孝大(中村獅童)と清田俊介(小栗旬)らが現場確認した。

山城は第一発見者として刑事の真壁、清田の尋問を受けた。「犯人の似顔絵描け!」に「見ていない」と返事した。山城はアパートに戻り、一気に漫画を書き上げた。

警察は事件現場近くに住む辺見敦(松田洋治)に殺人歴のあることから引っ張り出して、荒っぽい尋問で「私がやりました」と自供させ真犯人とした。(笑)これに真壁は仕方がないと言い、清田は驚いた!

山城が真犯人の顔をTVで観て「これは違う!」と。しかし、このことが「なんぼ描いてもよい!」と山城の荘作意欲を掻き立てた。

山中の一本道でキャンプ地に急いでいた4人家族が車の中でロープを巻かれ斬殺され車ごと崖下に放置されるという事件が発生した、「原一家殺人事件」

管区外だが真壁、清田刑事が駆けつけ現場確認をした。清田が車の天井を調べて凶器の包丁を発見。真壁が「どうして分かった!」と聞くと、「この漫画、“34(さんじゅうし)”だ!」と山城圭吾の人気漫画を示した。

署に戻って清田は「犯人は漫画を見た模倣犯か、作者。船越一家事件と原一家事件は同一犯。辺見は誤認逮捕だ」と推定し、山城に会うことにした。

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売れっ子漫画家になった山城はセキュリティのしっかりした豪華マンションを購入し、産まれてくる子のため家具を買い揃え、夏美を両親に合わせ結婚を報告した。母親は再婚者で連れ子の妹がいた。そんなわけで山城がこれまで親とは疎遠であった。

今では山城の担当編集者となった大村の案内で、真壁と清田が山城のマンションを訪れた。原一家事件は漫画34にそっくりで、この事件は船越一家事件によう似ている。キャラクターは同じでは?」と話を持ち出すと山城は「キャラクターは自分のオリジナルで関係ない」と言い切った。清田は「車の天井にあった包丁はどうなるんですか?」と投げ掛けると「まだ決めていない、考えておきます」と返事があった。

刑事は帰って、山城が「連載していいのかな?」と大村に話すと「家賃のこともある。売れているから、このままやりましょう」ということになった。山城は刑事があさり引いたので「まだ行ける」と判断した。

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山城が作業の疲れを癒すためよく使うガード下の居酒屋で飲んでいると、清田がやってきた。「つけているんですか?」と聞くと、「偶然だ!」という。つけていたんです!清田は「漫画34のフアンだ、しっかり描いて欲しい」と励まし電話番号を交換して一度店を出た。

清田は外に出て真壁からの電話「俺なしで行動してないか」を聞いていた。

そのとき船越事件で観た犯人が近付いてきた。怖い!「34読んでいます。両角(Fukase)です。主人公が僕に似ていますね!家族が4人、僕のために描いてくれ先生の作品を再現しています。包丁車に入れましたよね。考えてないでしょう、いいストーリー考えついたんです」と山城に耳打ちした。そしてそこにあった清田の名刺を持ち帰った。

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山城はコースターに両角の似顔絵を描いてバーテンに見せ、「何者だ!」と聞くが「知らない、それ頂戴」と言い、壁に貼り付けた。山城はマンションに戻り、警察はまだ大丈夫だと安堵して漫画を描き始めた。

両角がキャンプ場で4人家族をいつものスタイルで殺害した「松村一家殺人事件」。この事件、山城が最新版で描いたものと同じで清田は驚いた。

抑留中の辺見を釈放され、記者会見が行われた。

津田が山城に会いたいと電話するが出ない。大村に電話するとガード下の居酒屋だという。清田が居酒屋で出向くが山城はいなかった。が、バーテンが山城と話していた男の似顔絵だという絵を見て、「漫画の主人公だ!」と思った。

山城は夏美の胎児健康診断に付き添っていて、病院地下の駐車場で両角に会った。「先生!包丁の絵、リアルでした。奥さんですか、両角です。共作者です!僕のアイデアを買ってもらっています。子どもさん、幸せの象徴です。ベビーベット買ったんですね」と話しかけた。山城は「これは危ない!」と感じて、夏美を車に乗せ急発進でその場を離れた。両角は山城の態度を訝った!

マンションに戻った山城が「あいつは俺がみた犯人なんだ、連載を辞める!」と夏美に話し、清田に電話した。

清田が山城に電話で「両角という名以外のことは知らない。あいつを見て私が求めた。しかしもう耐えられない!」と話した。「俺はあの主人公は好きだ。必ず捕まえる。両角のことは後にして新作を考えて欲しい」と山城。これで清田は救われた。夏美はこれを聞いて「あなたの漫画は好きよ、才能ないなんてない」と諭した。

山城は出版社編集長に連載中止を求めると、「休載にしよう。描き切るということで事件解決をするように」と求められた。

山城が書店で漫画34を見ていて、最終編の予告を目にしているところに両角が現れ、「何で休載にするの?」と聞くから「人殺しに加担したくない!」と答えると「先生は漫画の中で人を殺して楽しんでいる先生家族いるでしょう最終回をやろう!」とけしかけてきた。

清田は山城が描いたスケッチブック(押収していた)を点検し、描かれていた配送会社の車から犯人の勤務先を訪ね、彼の履歴を入手した。

両角は自分のアパートに戻ってきた。部屋は漫画34の殺害現場拡大写しと殺害現場を自ら撮影した写真で飾られていた。両角はそこで34を読む!恐怖の部屋だった。

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真壁と清田は両角の母親を訪ねると「たまにしか帰ってこない。あの子はウンコだから足をいかれている」と言い、写真を見せると「違う!」という。両角は戸籍を買っていたことが分かった。

両角は住宅街を物色し、窓越しに中を見て幸せそうな4人家庭に包丁を持って入り縛って殺害し現場を撮影した。アパートに戻り漫画の現場写真に撮影した写真を貼りつけた。

清田は犯人像が分からなくなり「お前は誰だ!」と呟いた。原一家殺人事件現場の道端の「九条村」と書かれてある看板まで漫画とそっくりな事に気付き、山城に詳しく聞くことにした。

山城は資料記事を見せて「4人家族殺害に興味を持って調べたら、廃村になった村で、20組の4人家族が住んでいた。4人家族が幸せの象徴であると言うコニュニティーがあってこれを事故現場にした。」と話す。清田は「家族を引き裂かれた恨みか?」とこの資料を借り、「新作を楽しみにしているよ」と微笑んで帰った。

夜道、清田が真壁に「コニュニティーの話が気になる」と話しながら歩いていたところを“どん!”と辺見に刺された。ふたりは激しく争ったが、清田が動かなくなった。これを陸橋の上から両角が見ていて「もう少しなのに!」と微笑んだ!清田の死を知った山城は大きな支えを失ったと思った。

清田の葬儀後、真壁は山城を呼び止め「注意しろ!」と忠告し「上は連続犯人を辺見と見ているが、俺が見つける」と言い、「清田が暴走族で自分が面倒みていた。人のせいにしない良い奴だった、あんたの漫画を楽しみにしていた」と話す。山城が「想像できない!」と言うと「分からんよ!だから社会が恐ろしいんだ!」と。山城はこれで最終編を描く意欲が出てきた。

一気に「先生を後ろから刺す」というストーリー画を描き上げ夏美に見せると「このままでは危ない!」と“びびった”が、原稿を編集長に見せ「やらせてください」と申し出て発刊された。

両角はこの発刊本を目にして「そうきたか!」と・・・。

漫画は父母、妹と4人の幸せ家族を演じてここに両角を呼び寄せ現行犯逮捕しようというもの。山城が父母にこんな危険な役をやらせて申し訳ないと丁寧に詫びを入れて防刃衣をつけて両角を待っていた。そこに両角から「先生これは違う!幸せな家族を殺すというのを守ってよ!」と電話が入った。マンションの夏美に電話で「俺たちは4人家族か?」と聞くと「お腹にいるのは双子よ」と返事がきた。山城は慌ててマンションに戻った。

両角が待っていて、ドアーを開けさせ、その手を斬ってくる。両角が居間に飛び込み夏美を斬りつけロープを巻く。山城が“ぼけっと”見ていた!彼はまだ漫画家だった。

両角が作業室に入り「ワープロを断ち上げろ!」と指示してきた。山城が夏美に「隙を見て逃げろ!」と声を掛けワープロに近づくと、両角が包丁で刺してきて二人がもみ合い、山城が落ちた包丁を拾い興奮して漫画キャラクラーになって両角を刺そうとしたところに、真壁刑事が駆けつけ拳銃で撃って山城の行動を制止した。崩れ落ちた山城に両角が覆い被さり、漫画絵そっくりだった!

山城は病院で療養生活。両角の裁判が始まった。両角は裁判長から名前、生年月日を聞かれ「だれとして裁かれているの、“僕は誰なんだ!”」と聞き返した。

感想:

漫画家が作ったキャラクターが犯人に使われ、犯人から共作を持ち掛けられ、豪華な生活を維持するためにこれに乗る。が、共作関係がエスカレートして漫画家自身に危機が迫ってくる。犯人に自分を殺させたと思わせて決着をつけようとするが、最後には自分がキャラクラーになってしまうというストーリーの面白さテンポよい展開で、楽しめる作品でした。

観る者が漫画家として劇中に吸い込まれていくような感覚になり、サイコパスと化した殺人者に出出会うときの心理的ドッキリサイコパス殺害現場に立ち会う恐怖。画面には常に狂気が走って、よく出来ていました。美術もしっかりで、殺人現場や両角のアパートの異様さに圧倒されました。

サイコパスFukaseさんの狂気。美しくって透明感で予測不能な人物像を見せてくれます。どのシーンも圧巻の佇まいでした。ラストシーン、無表情で「私は何者だ!」と呟くシーンに震えあがりますね!

こんな環境の中で、キャラクターと人間の本性は別物と、漫画家を支援してくれる刑事の温かさにほっとします。小栗旬さんの柔らかい抑えた演技が光っていて、これが作品全般に良い雰囲気を醸し出していました。

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最期の漫画家とサイコパスの対決シーン。漫画家・山城が両角と戦ううちに殺人鬼キャラクターになっていく山城。演じる菅田将暉さんの目の色が替わって行く演技に恐怖。これから漫画家としてやっていけるのかという病院のシーン、無表情で“清田の似顔絵”を描いたことに“ほっと”しました。

CM監督として培った瞬発力のある映像、どのシーンをとってもすばらしかった。

キャラクラーは暴走する。漫画本や映画を模倣した殺人が実際に起きていて、貧富格差やSNSの社会では一層この危険性は大きくなると思うと“ぎょっと”します。

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「グレース・オブ・ゴッド告発の時」(2019)戦うことで強くなり“生きる希望”を見出し 宗教と対峙していく!


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神父による児童への性的虐待という衝撃的な事件(「プレナ神父事件」)を描いた作品。第69回ベルリン国際映画祭銀熊賞審査員グランプリ)を獲得した作品。WOWOWシネマで観賞しました。

聖職者による性的虐待を描いたものに、アカデニー賞作品賞・脚本賞を受賞した「スポットライト 世紀のスクープ」(2015)があります。この作品は大きな力に抗しながら、個々の神父を糾弾するのではなく教会という組織による隠蔽システムを暴く新聞記者たちの苦悩が描かれています。

本作はひとりの被害者が告訴に動いたことが他の被害者たち立ち上がる勇気を与え、次第にその輪が大きくなって、犯罪聖職者の処分や教会の姿勢を問う運動になっていく。彼らは沈黙を破った代償として社会や家族との軋轢とも戦うこととなるが、戦うことで強くなり“生きる希望”を見出していく様が描かれています。主役が被害者たちで、彼らが苦悩し“宗教と対峙”するところが生々しい!この闘いはまだ決着がついてない!

この作品は性被害で苦しむ人たちへのメッセージにもなっていると思います。

監督・脚本:フランソワ・オゾン、撮影:マニュエル・ダコッセ、美術:エマニュエル・デュプレ、編集:ロール・ガルデット、音楽:エフゲニー&サーシャ・ガルペリン。

出演者:メルヴィル・プポー、ドゥニ・メノーシェ、スワン・アルロー、エリック・カラバカ、フランソワ・マルトゥーレ、ベルナール・ベルレー、ジョジアーヌ・バラスコ、エレーヌ・バンサン、マルティーヌ・エレル、他。

あらすじ(ねたばれ):

冒頭の枢機卿による祈り、「主イエス・キリスト、あなたはこの神秘を受難の記念に定められた。我らが主の体と血による“神秘なる秘跡を尊び、救いの実にあずかれるよう導きたまえ。誉れと栄光は世々に至るまで!アーメン リョンの街に恵を!」から物語が始まります。秘跡性的虐待がどう結びつくか?

2014年、リョン。銀行員のアレクサンドル・ゲラン(メルビル・プポー)は妻マリー(オレリア・プティ)が教員をしているラザリスト会の学校に5人の子供たちを通わせているが、ブレナ神父(ベルナール・ベルレー)がリョンに戻っていることが気になる。彼は6歳(1983)から12歳までの間プレナ神父から性的虐待を受けていた。少年にとって神父は憧れだった。キャンプで神父から特別の声を掛けられれば名誉、“これも秘跡と疑うことなく従う。これがプレナの性癖に火を点けていた!

アレクサンドルは子供たちが自分と同じ道に陥らないよう教会にプレナが小児性愛者であることを伝えた。

協会側は神父不祥事係(この係が存在することに疑念!)レジーヌ・メール夫人(マルティーヌ・エレル)が対応することになり、“教会の災い”が癒されますようにと返信があった。アレクサンドルは直接メール夫人に会い、受けた虐待の実態を話し、その苦しみは今でも続いていると涙で訴えた。帰宅して、事実を妻と子供たちに伝え、子供たちに注意した。

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アレクサンドルはメール夫人からフィリップ・バレバラン枢機卿(フランソワ・マルトゥーレ)の指示で、プレナに会うことになった。プレナに会うことは恐怖だったが妻に背中を押された!

リョン司教館でプレナに会った。プレナは「やったことを覚えている。私の汚点だ、昔からそうなんだ!子供の惹かれる、苦痛なんだ!病気なんだ!」としゃしゃと言い謝罪はない。公にすることを親たちに襲われるのが怖いからと逃げる。聖職を去る考えなどない。立会したメール夫人は「罪が許されますように!」と神の言葉で解決したような態度をとる。そして「あなたの傷がいやさせますように」とメールを送ってくる。妻マリーが「これは教会の懐柔策だ!」とバルバラ枢機卿に会うことを勧めた。

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教会から会うが息子たちの聖信式を行いたいと知らせてきた。ノートルダム大聖堂バルバランにより執り行われた。大聖堂での華やかな式典でアレクサンドルの言い分を締め付けてくる感じ! 両親が「30年以上経ていることだから争うのを止めたら!」と諭すが「プレナの聖職剥奪を求める」と諦めなかった。

このあとバルバランは子供たちを招いて「小児性の祭司など容認しがた」と伝え、自著「神は時代遅れか?」にサインして持たせた。

アレクサンドルは「もはやプレナだけの謝罪で終わる問題でない。許したら囚われの身になる!」と強く面会を求め、実施が決まった。

バルバランは「司祭は子供とふたりになるなと教区に通達した。聖書を教える場合は第3者を立ち会わせる」と回答。「これがおかしい、なんで祭司全員がこうならねばならない!と「教会が小児性愛者を糾弾し聖職を剥奪する」ことを求めた。

こののちプレナが子供たちに聖書の教育をしている現場、さらに別の神父お監視下でプレナがミサを行っているのを見て抗議すると「教区から離任させた」と伝えてきた。

アレクサンドルは教皇に手紙を書くために教区の元秘書ジュザンヌ・クレメールに会い、プレナの小児性愛の存在、バルバランとプレナの特別な関係、前任の枢機卿が衝撃を受けたことを掌握した。

教会に「教会で解決すべき問題として教皇に訴える」と伝えた。すると教会弁護士から呼び出され「我々は犯罪者と認めない。あなたに言い分は時効だ。聖職剥奪の予定はない」と告げられた。机を叩いて帰った!(笑)

そこにクレメールから姪のディディエ(33歳)がプレナの被害者だと連絡が入った。しかし彼は頑なに証言となることを拒んだ。

アレクサンドルは告訴に踏み切り、リョン地方検察局に告訴状を提出した。

クルトー警部がフランソワ・ドゥボール宅を訪ねてきた。フランソワ(ドゥニ・メノーシェ)は彼の立ち上げたIT会社にいて不在で、父母がこれに対応した。父母はふたりの子供がプレナの犠牲にされたことを悔やんでいて、証拠資料を渡した。警部は時効前だから証言してくれと帰っていった。妻アリーヌ(ジュリー・デュクロ)もこの事を知った。

フランソワが帰宅し父母から聞かされたが、自分は無神論者だと証言者になることを断ったが、忌まわしい記憶が戻ってくる。それにアリーヌが子供たちの心配をし出す。フランソワがアレクサンドルのところに走った!

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フランソワが新聞社に訴えようと提案したが、アレクサンドルがこれを断った。彼は警察に駆け込みプレナだけでなくバルバランも絡んでいると教会を新聞社に訴えたい主張したが、警察の捜査が困難になると断られた。フランソワは陽気な男で単純なところがあり、彼の性格が作品を明るくしてくれます。

バルバランからフランソワに接触してきた。フランソワがマスコミで小児性愛者を糾弾する声明を出そうと提案すると一方的に電話を切られた。ところがバルバランが単独で記者会見して「教会は当該職から牧師を外して子供たちを守る」と声明を出した。フランソワはこれで目的は果たせたと安堵したところに、ニュースが「プレナは修道院に移され、20人の被害者がいる」と報じた。

フランソワはTV出演し「もう隠れない!」と被害者としての顔を晒した。これを観た医者のジル・ペレ(エリック・カラバカ)が9歳のとき犯されたとフランソワの協力者になった。

これにはジルの妻ドミニク(ジャンヌ・ロザ)がセラピストで「人に喋って聞いてもらえば心の平静を取り戻す」というアドバイした。

「活動を全国規模でやろう」と、最初に告訴したアレクサンドルに声を掛けたが公になることを拒む。ジルが「信者はみんな小児性愛者には反対なんだ」と説得し、3人で入会金10ユーロの「被害者の会」を立ち上げ、ファイスブックで呼びかけた。しかしフランソワの兄が激しい怒りを示した。兄弟にはプレナ神父を巡る確執があった。家族の中に我々には気付かない大きな葛藤があった!

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2016年1月、被害者の会立ち上げの記者会見を行い、「バルバラ枢機卿はいつプレナが小児性愛者だと知ったか?多くの訴えがありながら教会裁判所で裁かなかったか?バチカンはいつプレナが小児性愛者だと知ったか?全世界が答えを待っている」とメッセージを送った。

これを見たエマニエル・トリスタン(スワン・アルロー)の母が、彼に新聞記事を見せた。母親はこの日がくるのを待っていた。新聞を見て気絶するほどにエマニエルはまだ苦しんでいた。ファイスブックにアクセスしたが話せなかった。

エマニエルがフランソワを訪ね「IQ140以上なのにプレナの暴力で人生を棒に振った!TV局で働いたことがあるので協力したい」と申し出てた。

エマニエルは妻に警察に告白することを話すが、いい返事をしない。彼はクルトー警部にプレナーの性愛で性器が変形していることを訴え、プレナと面会した。プレナが「あんなことして悪かった」と謝罪したが、「聖職の尊さをぶち壊した!」と許さなかった。エマニエルは記者に「私のセクシュアリティに影響を与えた。性的能力や性自認ではなく愛が分からなくなった。IQが髙かったがその恩恵にはあずかれなかった。教会や法律一般を刷新し、時効をなくすことだ!」と喋った。マニュエルが弁護士の勧めで医者の診断受けたが、「ベロニー症」と診断され彼の言い分は認められなかった。弁護士はこの結果に驚いたようだった。

エマニエルは「被害者の会」に出席した。そこでは教会をどう説得するかでフランソワが「大聖堂の上に航空機で性器を描く」という案も出されたが、皆の反対で却下された。(笑)

会が終わってエマニエルはアレクサンドルの家を訪ね、アレクサンドルの妻マリーに「貴方は何故強い?」と尋ねると「私も近所の男にレイプされた。これは私の戦いよ!」と。エマニエルは妻とは別れることにした。

いよいよ裁判が始まった。

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2016年のクリスマス。「被害者の会」のメンバーが集まった。そこでエマニエルが挨拶した。「プレナを裁き有罪に持っていける。教会のバルバランも。心から感謝したい!皆さんの努力で俺の人生が変わった。生きる意味を見つけた。苦しんだ過去が報いられた」と。

ジルが「夫婦の時間が欲しい」と言い出し、マリーも「私も人生が変わった、距離を置きたい!」と。ジルが「ここからは弁護士や裁判官の仕事だ」と脱会を示唆した。メンバーそれぞれがこれからの教会との関りを述べた。アレクサンドルは「娘には秘跡を受けさせたくない!大事なのは礼節と信仰だ」。フランソワは「信仰を撤回する」、エマニエルは「カトリック信仰を破棄する」という想いを語り、それぞれが信仰との関りを模索することになった。

感想:

「汝姦淫するなかれ!」と説く牧師さんがこれを犯す。これを訴えると、逆に「そんなことするな」と責められる。そんなバカなことはない、神父は神ではない。犯す人もいる。だから辞めさせればいいのだ。しかし、それをすればカトリック教に疑いがもたれる。組織疲労

プレナ神父が訴えられ、のうのうと罪を認める。「神(教会)が助けてくれる」と確信を持っているから。教会がこの悪弊を断ち切るため小児性愛罪の絶滅を図る必要がある。しかし未だに問題は解決されていない

ラストシーンでアレクサンドルは息子に「お父さんは神を信じますか?」と聞かれ、その答えは観る人に任されたが、「神を信じるが、改革が必要だ!」。

アレクサンドルが「あくまでも教会の中で解決する問題だ」と教会側と交渉するが受け入れられず告訴。その告訴がフランソワに引き継がれ「社会に訴えるべきだ」と活動が広がり、エマニエルが参加し「活動に参加することで生きる意味を見つけた」と活動を総括するという3人を繋いで紡いだ物語、とてもうまい脚本でした!

性被害を告白し、同じ傷をもつ者たちが繋がって、大きな輪となって、大きな力と対立する。「戦うことで自らが救われる」ところに感動的でした。

この物語は小さな訴えが輪になって広がっていくMeTooの流れ。勇気をもって訴えることであなたが救われる、新しい希望を見出せると訴えています。

難しい問題提起の作品でしたが、夫婦や家族の心情表現が細やかで感情移入しやすい。これがすばらしかった!

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「るろうに剣心 最終章The Beginning」(2021)剣心と巴、愛と平和への願いを込めて、剣心の頬に刻んだ傷の物語

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最終章は“The Final”と“The Beginning”の2編からなり、すでに“The Final”は鑑賞済み。“The Final”は亡き妻・巴の弟縁の剣心に対する仇討ち劇で、剣劇をエモーショナルなものにするためには仇討ちの動機がしっかり語られなければならない。が、この部分の大部を“The Beginning”で委ねられ、私的には不満でした。それだけにThe Beginning”を剣心と巴の愛の物語と予想、動乱の中で育んだ愛が戦の絶えない今の世界にどんなメッセージをくれるかと“The Beginning”を早く観たいと期待していました。 

公開初日、2回目で観ました。なんと早朝にもかかわらず、このコロナ禍のなかで、大変な入りでした。女性が多いことにも驚きました!

幕末の動乱期、すべての人々が平和に暮らせる新時代を創るためになぜ剣心は最強の刺殺者として恐れられていたが、ある夜見回り組の若い侍を斬ったが頬に傷を負った。その侍の妻となるはずだった女性・巴と出会い、ともに過ごす時間の中で、殺人者・剣心にはなかった人としての幸せを知る。そんなある日、剣心が幕府の暗殺集団に襲われるが巴によって救われる。その時に剣心の頬に傷が・・。剣心の十字傷の謎が解き明かされ「不殺の誓い」の謎に迫るという物語。

原作は和月伸宏さんの人気コミックス「るろうに剣心明治剣客浪漫譚―」の「追憶編」、未読です。

監督・脚本:督大友啓史、アクション監督:谷垣健治、撮影監督:督石坂拓郎、美術:橋本創、編集:今井剛、音楽:佐藤直紀、主題歌:ONE OK ROCK「Broken Hearts of Gold」、他。

出演者:佐藤健有村架純高橋一生村上虹郎安藤政信北村一輝江口洋介、他。

鑑賞所見は今までの“るろ剣”シリーズとは作り方が全く違っていて、歴史的背景をしっかり踏まえ、剣心の正義が明確に位置付けられ、動乱の中でしか描かれない切ないラブスリーリーで、ふたりの手で剣心の頬に傷をつけるシーンにふたりの想い、平和への願いが込められ、“るろ剣“シリーズ全作を貫くテーマを見せつけてくれ、すばらしい作品でした。時代劇における金字塔とも言える作品だと思います。

あらすじ(ねたばれ):

物語は1864年(元治元年)、黒船来航から11年、1月16日、剣心(佐藤健)は捕らわれ対馬藩で手を縛られて尋問されていた。これは邸内侵入の奇策、頃合いを見て相手を蹴とばし落とした刀を口に加えて縄を解き大暴れ、ひとり残さず斬り捨てた。

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現場を視察にきた新選組斎藤一江口洋介)、たぶんタバコをくわえていた(笑)、と沖田総司村上虹郎)。沖田が「人斬り抜刀斎」と見抜き、斎藤は初めて抜刀斎の力を知った。

4月5日、雨の夜。剣心は見回り組のふたりを斬った。斬った後、新奸状を残して去ろうとすると一人の侍(清里明良:窪田正孝)が「俺には大事な人がいる」と立ち上がって何度も斬りかかり剣心の左頬に傷をつけた。最期の止めを刺して宿に戻ったが、これまでにない感情が胸に残った!

長州藩士の隠れ宿“小萩屋”に戻って、血を洗い落としていると「なんでお前が!」と受けた傷が話題になる。これまでに100人を斬っており幕府から目をつけられそろそろ危ないと思うが、桂小五郎高橋一生)が「まだまだ期待しているぞ!注意しろ」と。

桂と剣心の関係。1963年奇兵隊の旗揚げに「安心する新時代を作るなら」と参加し、そこで高杉晋作安藤政信)に剣術の腕を見込まれ、桂のために血まみれになる男として桂の側近に加えられた。桂は「あんなに人を殺めても穢れがない。人殺しとして迷いのない男だ」と評価されるほどに、桂のために斬りまくった。

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ある夜、居酒屋“なぐら”でひとり酒を飲んでいると、ひとりの清々しいいで立ちの女性が入ってきて酒を注文する。それを見た男たちが冷やかす。剣心が男たちを恫喝して外に出ると、闇の男・村上(奥野瑛太)が鎖鎌で突然襲ってきた。口をふさいで斬り裂くと血が吹っ飛び、その血を剣心に礼をしようと出てきた女が受け「あなたは本当に血の雨を降らせる」と呟いて気絶した。(笑)剣心は女を小萩屋に連れ戻った。気絶は女の騙しだった!(笑) 

女は雪代巴と名乗り行先がないと“小萩屋”の女中となり甲斐甲斐しく働き、女将(渡辺真紀子)のお気に入りとなっていく。そして剣心の身近につねにいる。仲間から「剣心に女が出来た!」と噂される。(笑) 巴が「何故人を斬るか?」と問うから「刀で新しい時代をつくる」と言うと「刀を持たない人でも斬るの?」と聞いてくる謎めいた女だった。藩では「待伏せ被害がでている、隠密がいるのではないか?」と片貝(池内万作)らが言い出す。

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剣心が人斬りで帰って来ると、巴が待っていて「人を殺し続けるんですか」と手ぬぐいを渡す。そのうちに部屋に花を活けるようになった。しかし人前ではよそよそしい態度だった。

刀鍛冶の新井赤空(中村達也)が“人間らしくなった”という剣心のために「新時代に変える魂のこもったものだ」と巴のところに刀を届けて来た。剣心は桂から「吉田松陰先生の言う“狂いたまえ”の先鋒を緋村が務めよ!」と指示され、この刀を手入れしているところに巴がやってきてつき合ってくれという。

祇園祭りの夜、ふたりで見物に出て、巴が山車の稚児を指して「あの子たちを見守る親たちがいるんです。平和の戦いが本当にあるのですか? 高い志や大きな目的のためなら小さな犠牲は許されるのですか。もし勝たなければあなたも犠牲者?」と問うてきた。剣心は「時代を進めるために誰かがやらねばならぬ!」と答えて宿に戻った。しかし「俺の剣は人を幸せにするか」とこの言葉が“どしん”と胸に刺さった。

「帝を長州に移す」という情報が新選組に漏れ、志士が集まっていた池田屋を襲う池田屋事件。飯塚(大西信満)から桂が危ない危ないと聞かされ剣心は池田屋に奔った。池田屋には近藤勇藤本隆宏)、土方歳三和田聰宏)、沖田、斎藤らが斬り込んだ。剣心が池田屋に着いた時、沖田は逃げる志士を追っていた。剣心と沖田が激しく戦ったが決着がつかない。そのとき沖田が血を吐き、剣心は斬ることを諦めた。そこに土方、斎藤が駆けつけてきて、桂は難を逃れたことを知りその場を引いた。

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7月19日の禁門の変に敗れ、小萩屋が新選組に襲われ、剣心は「あなたは絶対に斬らない、守る」と巴を伴って逃げた。桂に会い「隠れるには都合がいいから、巴と形だけの夫婦になって京を外れた田舎で暮らす」よう指示された。剣心は「できれば形だけでなく」と巴の同意を得た。こうして京の外れの隠れ家での生活が始まった。

ふたりで田を耕し、山菜を収穫し、台所に立ち、景色を眺め、お茶を飲みむという生活の中で、ふたりの心は寄り添っていった。巴は清里のことを思い出して、辛い思いのなかで誠実な剣心に惹かれていった。剣心は「多くの人の幸せのために剣を振るったが幸せが何かが分かってなかった」と笑顔が戻ってきた。

桂と剣心の連絡に当たっている飯塚が訪ねてきて「まるで夫婦だ!状況はよくない、待つだけだ!薬屋になって暮らすのが安全」と言って帰って行った。帰る途中で飯塚が幕府直属の暗殺集団“闇之武”のアジトにより「やるなら今だ」と伝えた。そんなことを剣心たちは何も知らなかった。

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ある日、巴の弟・縁(荒木飛羽)が「姉さんとの連絡係をしている」とやってきた。そこに商売から帰った剣心が縁を認めたが、去って行った。

その夜、巴は“闇之武”の手が回っていると知り、これまでの身の上を剣心に語った。「生まれは江戸で父は御家人。許嫁は京の見回り組に志願し、祝言も前に亡くなった。あのとき止めておけば!」と泣いた。剣心は優しく巴を抱いた!

そして「あなたが平和の戦いがあるかと問うたが、新しい時代がくるまで斬るその時が来たら人を斬るのではなく人を守る道を探す。この世界を守り、罪を償い、一度失った希望を守り抜いてみせる」と巴に誓った!

雪が降り積もった日、巴は日記を残し、白装束で小刀を持って“闇之武”のアジトに向かった。

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剣心が目覚めて巴がいないことに気付いた。そこに飯塚が「巴は隠密だ!証拠があるか調べてろ!」と駆け込んできた。剣心は日記を見つけ、読んで「必ず守ってやる」と飯塚のいう“闇之武”のアジトに向かった。

剣心は“闇之武”の罠に嵌った。準備された仕掛けに引っかかり、闇の団員から矢を受け、爆破で耳や目をやられながらアジトに急いだ。

一方、巴は“闇之武”のリーダー・辰巳(北村一輝)に「剣心の見張に落ち度があったか?」と問うた。辰巳は「もう終わりだ。男が惚れれば本来の力は発揮できん!清里は命を賭けてお前を幸せにしたかった。家を村を徳川家を守り個々の幸せなどない。徳川に反抗するいかなる小さな芽でも潰す。命を賭けて!俺が止めを刺す」いう。巴が「殺してはならぬ」と辰巳の脚に絡み着いたが蹴とばされ動けなくなった。

目・耳の感覚を失いながら近づいてくる剣心。剣を振り回すが辰巳に剣に翻弄される。上段の構えから剣心を斬ろうとするところに、巴がこれを防ごうと駆け寄ったその瞬間、剣心は横一文字に剣を振った!ふたりを斬り倒していた。

剣心が倒れている巴に抱き起こすと「ごめん!」と小刀を頬に当てて来た。剣心は巴のその手に自分の手を添えて頬を斬った。

剣心は巴の遺体を小屋に運び、日記を読んだ。そこには「この男は人を斬るが斬った人より多くの人を助ける。決して殺してはならない!私が命を賭けて守る」とあった。剣心は巴に不殺の誓いをして小屋を焼き払い、動乱の世に出て行った。

1868年鳥羽伏見の戦。剣心はこの戦に参加し、斬って斬りまくった。錦の旗を見て「新しい時代がやってきた」と剣心は刀を捨てた。斎藤がタバコを吸いながら「これで終わりだと思うなよ!おかしなやつだ」と声を投げ掛けた。

感想:

十文字の傷の謎が解き明かされる展開が見事で、大満足でした。剣心が倒れている巴に抱き起こし巴が差しだす小刀に手を添え自分の頬を斬ったシーン。剣心の巴への贖罪、感謝、愛、そして「不殺の誓い」への印だった。巴は愛の記録を残したかった。

ストーリーが過去作に比して断トツに良い。背景の幕末歴史がしっかり描かれて、長州の桂を登場させて緋村剣心の“精神的支柱”を明確にし、新選組や幕府直属の暗殺集団「闇之武」と対決する構図は時代劇としてリアリティを与え、これまでのシリーズ作品と異なって、まるで緋村が歴史の中で“生きていた”と思えるところがよかった。特に桂や高杉、辰巳が吐くセリフ、決して多くはないが、活きていた。大河「龍馬伝」の監督が作った作品だと思いました!

アクションもこれまでのシリーズ作品とは違って、回転、壁走り、ロープ使用などのエンタメチャンバラではなく、正真正銘の剣術アクション佐藤健さんは最強の殺人鬼たる剣心の姿をまざまざと見せてくれました!シリーズ最後にふさわしい出来でした。また、どこか寂しそうで堅固な意思力を偲ばせた殺人鬼から、巴に出会い、「すこしずつ心が溶かされていく表情の変化がとてもよかった。

剣心を作ったのは巴、巴の作品でもあるわけで、有村架純さんの存在が大きかったと思います。許嫁を失い今にも消えてしまいそうな儚さと、凛とした佇まいで剣心に近づく巴。剣心への憎しみと愛情の狭間に苦しみながら、「新しい時代がくる」という剣心を穏やかに包み込んでいく巴。強い決意で“闇之武”のリーダーに立ち向かう姿など、有村さんならではの演技でした。

このシリーズで忘れてならないのがロケ地と音楽。時代を感じる壮大な物語にふさわしいものでした。

                            *****

「明日の食卓 」(2021)親子が目をそらさずに向かい合えるには?

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監督が瀬々敬久さんに出演者が10年ぶりの映画主演になるという菅野美穂さん、さらに高畑充希さん、尾野真千子さん出演ということで観ることにしました。😊

原作は椰月美智子さんの同名ベストセラー。監督:瀬々敬久、脚本:小川智子、撮影:花村也寸志、編集:今井俊祐、音楽:入江陽。

出演者:菅野美穂高畑充希尾野真千子、柴崎楓雅、外川燎、阿久津慶人和田聰宏大東駿介、山口沙也加、大島優子、藤原季節、他。

石橋ユウ、10歳。同じ名前の子を持つ3人の母親たちがそれぞれ子育てに奮闘しながらも、息子を心から愛している幸せな家族のはずだったが、仔細なことがきっかけでその生活が崩れていく。どこで歯車が狂ってしまったのか。「ユウ」の命を奪った犯人は誰か、そして3つの石橋家がたどり着く運命はという緊張感のあるミステリー群像劇です。

群像劇で何が繋がっていくか。3人の母親の物語を交互に描きなから、三人の母親が子育ての苦しさというひとつの渦の中に巻き込まれ、足掻き、ラストで同じ空の下で希望、生きる力を見出すという絶妙な繋がりが感動的でした。脚本、演出、編集がすばらしい!

現在社会の子育てが如何に難しい問題を抱えているかと子育ての現状をあぶりだすだけでなく、そこにある社会の問題をも提示するというまさに今、求められる社会派ドラマです。

この頃の母親を思い、自分の子育てを振り返りながら、改めて母親や家内に感謝したい!

子育は不安で分からないことが一杯あるが、“抱きしめてやる“ことの大切さを教えてくれます。若い人にはぜひ観て欲しい作品です!

あらすじ(ねたばれ):

冒頭、母親と息子が口論し、なんで!なんで!と泣く母親。息子がぐったりとしている。どの母親が殺したか?それは“あなた“というミステリアスなテーマの提示です!

神奈川に住む石橋留美子の場合:

42歳の留美子(菅野美穂)はライターで二児の母親。夫豊(和田聰宏)はカメラマン。次男が発達障害のため在宅で仕事。長男の悠宇(外川燎)は母親の関心が次男に行くせいか、なにかと次男を虐め、留美子とのトラブルが絶えない。子どもたちがガチパパが遊んでくれるから好きという。子どもたちとのトラブりをブログ「鬼ハハ&アホ男児Diary」で発信して、鬱憤ばらしをしている。(笑) 

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そんな生活も夫豊が失職して生活が一変した。お金が必要と先輩の成田依子(渡辺真紀子)を頼って仕事を増やし、夜遅くまで仕事で夫に応じることもままならず、遂に夫は酒に溺れ、浮気を始め、夫婦関係が壊れていく。悠宇に当たることも多くなっていく。仕事で外に出ていて、次男が熱だしてもほっておく夫が「ライターは替わりがいるが母親の替わりはない」と言い、悠宇は「誰の責任か!オカンに言われることが増えていく」と宣う。「もうたまらん!」と留美子。(笑)

悠宇が「お母さんの目が恐ろしい」と感じ出した。

そんなある日、目を覚まして子供たちの部屋を見ると居ない。自分の作業室にビニールプールを作り、夫がビールを飲みながら「レジャーだ!」と遊んでいた。留美子が怒りで悠宇を掴めば夫が殴り掛かり、仕事部屋は修羅場と化した!

留美子は・・・・。

大坂に住む石橋加奈の場合:

30歳のシングルマザーの加奈(高畑充希)は朝食と弁当を息子の勇(阿久津慶人)に作って化粧もせず仕事に出掛ける。仕事はスーパーとクリーニング工場の掛け持ちで日夜働き、時間があればボール遊ぶ勇を見るのが楽しみだった。たまに留美子のブログを覘く。こんな母親を勇は「よう働くかあちゃんだ!ひとりでいるときは疲れている」と心配していた。加奈は「息子が生甲斐、強い絆で結ばれている」と自負し、加奈は勇が6年になったらサッカークラブに入れて、何としても大学に行かせたいとお金を貯めていた。

そんな生活の中で、フウテンの弟・正樹(藤原季節)が訪ねてきて金をせびり、加奈が渡すのを勇が見た!なんで俺に喰えないのと勇が学校で盗みをし、加奈は「給食費が払われてない」と学校に呼び出され先生から「ちょっと勇君に無理し過ぎていませんか」と注意された。スーパーでは「あんたの息子にうちの子が給食費用を盗まれた」と言いがかりをつけられる。勇を疑い家に戻って貯金通帳を調べるようになった。勇が「オカンが口を開かんようになった。僕を産んだことを後悔している!」と思うようになった。

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加奈がウリーニング店を首になった。働き過ぎで周りの反感を買ったものらしい。

ある日、貯金通帳がなくなっていた。加奈は「なにやった?」と勇に聞くと。勇は「正樹だ!」と思ったが返事しなかった。加奈は「怒らんから言うってみ」・・・・。

静岡に引っ越してきた石橋あすみの場合:

36歳の専業主婦のあすみ(尾野真千子)。夫・太一(大東駿介)の地元で親に立派な家を建ててもらい、義母・雪絵(真行寺君江)はひとり別棟で生活。夫とひとり息子・優(柴崎楓雅)と住み、東京で働く夫を車で新幹線駅まで送り、書道教室に通うという恵まれた生活を送っていた。

夫はマザコンでお家第一と近所の目を気にし、優を育てることには関心がない。あすみは近所、義母の目を気にしてすべてうまく行っているよう虚勢を張って生きていた。こんなあすみに習宇教室仲間の菜々(山口沙也加)が家に来て「御主人とはどうなの?」と馴れ馴れしく近付く。これを目にした優は母親に嫌悪を抱いた!

先生の家庭訪問で「成績は優秀だが虐められてないか」と聞かれる。「そんなことはない」と答えたが、後日呼び出されて優が指示してやらせたと聞き、虐めた父兄からサイコパスと罵られた。あすみにはとても辛いことだった。

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夫に相談すると「お前が悪い!」と取り合わない。優に問いかけると「試しただけ、人は人を支配できるか。母さんはお父さんのロボットで、言われたことをやっているだけ!」と返事し、夫と取っ組み会いになった。夫は「こんなこと恥だ!近所に知られたら母に恥かけることになるぞ」と。優は「母さんは何も気づいてない」とがっかりした。

あすみは菜々に相談すると「信愛の会」教団に入るよう勧められた。彼女は教会の人だった。家に帰ると庭に小便をしたと優が義母を蹴とばし馬乗りに、それを見た夫が優に掴みかかり大騒動になった。あすみは・・・。

こうして3人の母親。

璃子は息子・悠宇が「俺たちが嫌いで捨てるか!」というのを聞いて悠宇の首に手を当て、泣いた!激しく泣いた!

加奈は息子・勇が「正樹だ、オカンは僕のことが嫌いか!僕は良い子ではないお母さんもよくない、全部よくない!」と言うのを聞いて、勇を首に手を掛けて泣いた!激しく抱きしめた。

あすみは息子・優が「くそババア!」と義母を殴るのを「止めて!」と首に手を掛けて泣いた。

その後の留美子、

どうしても会いたいという収監されている女性・石橋燿子大島優子)を訪ねた。「同じユウという名の子を持ってすいません、あなたに話を聞いて欲しかった!ユウに会って抱きしめたい!私を殺してもらいたい」と泣いた。留美子は「その姿は私だ!」、いや誰にでも起こり得ると思った。

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夫と別れることにした。子供たちが止めたが夫は出ていた。悠宇が「子供を産むな!結婚するなら俺たちは生まれて来なければよかった」と叫ぶ。留美子は「こんなことになるとは分からなかった。確かなことはパパがいなければあなたたちは生まれなかった。パパには感謝している。ママはひとりでは生きていけない!見守らせて欲しい、お願いします」と話すと悠宇が抱きついてきた。

もの書きをしていると、夫のところに行っている悠宇から携帯で「ママ空を見て飛行機だ!」と言ってきた。外に出て空を見ると・・・

その後の加奈、

加奈から金を盗んだと知った母親よしえ(烏丸えつこ)が訪ねてきて「悪かった!」と金を返済した。そこにしょんぼりして帰ってきた勇を「ごめんね!」と抱いた。

「あんたならいける!」と風俗に誘われたが「バカにしないで!」とピシャリと断った。(笑) 勇が見たいという海に連れてきた。そこで空を見ると・・・。

その後のあすみ、

駆けつけた警官に「息子は母は庭におしっこするのを止めて、何もしてない」と説明してことを収めた。夫・太一が母を部屋に連れて行って、部屋が食べ物のゴミの山であることに泣いた。

あすみは勇に「お兄ちゃんになるよ}と母子手帳を見せると、「お母さんには合いたくない、可哀そうだ!」と家を出て行った。菜々の車で病院に送ってもらっていて優に出会った。車を停めてもらい、歩道橋を駆けあがったところで転び傷を負いながら優を懸命に追った。追いついて「聞きたいことがある!人を使って実験してみて何が分かった?教えてよ!」と言って、痛みに耐えられずしゃがみ込んだ。優が手を出すので「もう治った!」と笑った。泣く優をしっかり抱いた。そして上を見ると・・・

青い空に飛行機が飛んでいた!

感想:

どこにでもいる三人三様の母親が抱える子供との葛藤。この時期特有の子供のあやふやな心理を絡めながら、仔細なことで信頼感が崩れ遂に手を上げ、親子の絆が破滅していく過程が繊細でリアルに描かれています。仕事の忙しさや見栄など自分のことに一杯で、子どものサインが読み取れない!誰も責められないが誰かに相談できたらと母親の苦しさが分かります。

冒頭の殺したのは誰か、ここでは石橋留美子が会いに行った受刑囚の石橋燿子でしたが、あなたであっても可笑しくないというメッセージが重い。

父親になれない留美子の夫、母親に依存するあすみの夫を描いて家族や家庭での男性の役割を問うたのもよかったと思います。悪すぎる夫ではあったが。(笑)

虐待、認知症発達障害、いじめ、ママ友トラブル、貧困、ダメ亭主などの多様な要因を絡めながら描かれ、家族だけでは解決できない社会問題として問うているのが良い。

なによりも3人の母親を演じの菅野美穂高畑充希尾野真千子さんの悩み悲鳴を上げる演技に圧倒されました。

菅野さん演じる留美が母親再生を期して「お父さんがいてあなたたちがいる感謝している。世話をさせて!」という子供が持てたことへの感謝の気持ち。これが母親の気持でしょう。こんな母親を追い詰めた夫がなんとも府外なかった。(笑)男として申し訳ない思いです!

高畑さんが演じる大坂弁で子供が生甲斐に強く生きる加奈。カフェで風俗に誘われ、バカにするなと席を立ってコーヒー代を払いかけ、後戻りしてコーヒーを飲み干して、「私はしない!」と断るド根性母親。(笑) 誰かに繋がりたい孤独な母親、これも見逃せない。

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尾野さん演じる理想の家庭でロボットのように生活している主婦。自分を隠して生きているから、困ったとき子供にどう接してよいか分からない、ただ謝る母親が一歩踏み出す勇気。

これに応じる子供たちの熱演が凄かった!

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