映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(2019)

f:id:matusima745:20190903052622p:plain
レオナルド・ディカプリオブラッド・ピットの初共演、“シャロン・テート殺人事件”を背景とした物語だということで、駆けつけました。とても著名なクエンティン・タランティーノ監督なんですが、あまり作品は観ていない。

感想は、とてもうまい画つくりと音楽で、当時の映画つくりに、特に昔のウエスタン映画を観ているようで、アクションあり、バイオレンスあり、大笑いして、ラスト13分のシャロン・テート殺人事件の“おち”に唸りました。なぜこの“おち”なのか?
これをつき詰めていくと、監督が映画界に変革の芽が出てきた1960年代を如何に愛し、後世に伝えたいという想いに辿りつきます。
街の風景、映画館、レストラン、スタディオ、広告、車、映画、音楽等すべてが1969年の世界で、それらすべてに映画に関わった人々の想いが詰まっていて、ここで触れら語られることはないですが、後に大輪の花となっていくエピソードに繋がっているという、すばらしい作品です。

人生に平坦な人生なんてない。最悪のなかでのふたりの生き方に、名は残らないがだれかの記憶のなかに生きていくことのすばらしさを教わります。

ヒロインのシャロン・テート役にマーゴット・ロビー、その他ダコタ・ファニングダミアン・ルイス、デイモン・ヘリマン、ラファル・ザビエルチャ、アル・パチーノらが参画しています。

テレビ俳優として人気のピークを過ぎ、映画スターへの転身を目指すリック・ダルトン(ディカプリオ)と、リックを支える付き人でスタントマンのクリス・ブース(ブラッド・ピット)。目まぐるしく変化するエンタテインメント業界で生き抜くことに神経をすり減らすリックと、対照的にいつも自分らしさを失わないクリフだったが、2人は固い友情で結ばれていた。

そんなある日、リックの暮らす家の隣に、時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と、その妻で新進女優のシャロン・テートマーゴット・ロビー)が引っ越してくる。今まさに光り輝いているポランスキー夫妻を目の当たりにしたリックは、自分も俳優として再び輝くため、イタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演することを決意する。やがて1969年8月9日、彼らの人生を巻き込み映画史を塗り替える事件が発生する。(映画COM)
                *
物語は、1969年2月8~9日のリック、クリス、シャロンの行動を交差させながら描き、リックとクリスがイタリアで仕事を終え帰国した6か月後、8月9日の事件に跳び結末ということになります。

物語の大部は、TV西部劇で活躍したリックに陰りが見え始め、マカロニ・ウエスタンで活躍してみてはというエーゼントの誘いに苦悩するリックとそれを支えるクリス、隣に住み始めたシャロンの行動描かれますが、この中に当時のハリウッドの話題がぎっしりと詰まっていて、退屈することはありません。
目につくもの、耳に入るものがすべて映画の監督や俳優の交友や活動で、楽しませてくれます。なかでも、リックの西部劇の撮影シーン、クリスがヒッピーの本拠地スパーン牧場を訪れるシーンはまさにタランティーノが作る西部劇。楽しめます。

あらすじ(ねたばれ):
冒頭にTV「賞金稼ぎの掟」で活躍するリックとクリフへのNBCインタビュー。「スタントマンとは何か」という質問があり、「俳優ができないことをする」と答えていますが、クリフはリックの役を代行するだけでなく仕事の相談に乗り精神的に支える一心同体とも言える関係。架空の人物ですが、同じような境遇にのちに大成するクリント・イーストウッドがいたということが物語を面白くしています。

リックはレストラン「ムッソー&フランク・グリル」で西部劇のエーゼント:マーヴィン・シュワーズ(アル・パチーノ)に会い、自分の演技力を売り込むために出演作を説明するなかに、ヒトラーの兵士を火炎放射器でぶっ殺すシーンがあります。このシーンが物語の最後で生かされ、実は監督作「イングロリアス・バスターズ」からの引用です。監督にはシャロン・テートを殺害したマンソン・ファミリーへの強い憎しみがあったのではないでしょうか!

シュワーズは「2年もたてば殴られ役しかない」と言い「マカロニウ・エスタンに出演してみないか」と持ち掛ける。リックはクリフに「やりたくない!」と泣きつく。この作品では、ディカプリオはよく泣く役で、これが面白い!(笑)

f:id:matusima745:20190903052738p:plain
この日、シャロンがイタリアから帰国するポランスキーを空港で出迎える。ポランスキーが「ヒッピーは大丈夫だったか?」と聞くから、彼は狙われていたのかな?

クリフの安全運転で、シュロ・ドライブに急ぐ。途中で「今日は太陽を浴びて・・」とShadee of Deep Perpleを歌いながらゴミを漁るヒッピー女性たちに遭う。この歌、マンソン・ファミリーのもの。そのひとりプッシー・キャット(マーガレット。クアリー)がウィンクを送ってくる。

ポランスキーのポスターを見て車を止め、リックがこのポスターに収まり写真を撮り、「ローズマリーの監督だよ。隣だから、俺、呼ばれるかもしれない」とつぶやく。このつぶやきがこの物語のエンドシーン。消えていった名もない俳優をポランスキーにつないでハリウッドを語るという、うまい演出だと思った。

このあと、クリフは自分の車でドライビング・シアターの跡地にあるトレーラーハウスに戻る。「セメントの女」(1968)とポスターが目に入る。帰りの激しいハンドル捌が見もの。クリフの気性の激しさが見られる。クリフ、まずビールを飲んで帰りを待っていた愛犬ブランディに餌をやる。これが本人のものより上等。(笑) このブランディがクリフと同じような気性で、ラスト13分で大活躍。(笑) 伏線を張りまくって物語が進むので目が離せない。

リックは、台本を抱えて、プールに浮かびセリフの暗証。スペイン語のセリフ?この地位を保ちたいということが分かる贅沢な生活と懸命な努力です。

f:id:matusima745:20190903052823p:plain
隣のシャロン・テートポランスキーとMG-TDをぶっ飛ばしてプレイボーイ・マンションに出向く。有名なワインセラー付きルーム、プレイメイトとセレブのパーティが映しだされます。「シャロンには元婚約者がいた。いまにポランスキーとくっつく」とスタイリストのジェイ・シブリン(エミール・ハーシュ)がこの噂を耳にする。シブリンはステーブ・マックイーンのスタイリストで、ブルース・リー(マイク・モー)とも知己の仲。プレイボーイ誌を向こうで買って、羽田に戻って機内に捨てるという記憶が戻てきます。(笑)

クリフがオーデイションでブルース・リーに会い、ブルースの大口が頭にきて、ぶっ飛ばし、そこに駐車していたシブリンの車を破損させ、大目玉を喰らう。(笑)  
ここでのふたりのアクションは見ものですが、人と人の繋がり、ハリウッドはひとつだと思わせるこれらのシーン。これが、監督の伝えたいことだと思います。暗い「シャロン・テート事件」で、余りにも大きなハリウッドの夢が消されたと、怒ったのがこの作品のテーマではないでしょうか。

次の日、新作撮影現場に着いたリック。「今日は出番がない」とクリフに「TVアンテナを修理してくれ!」と追い返す。
しかし、リックは監督にクリフを使ってくれるよう懇願するが「あれは女房を殺した男、雇えない」と断られる。

クリフは屋根に上り、ブラッド自慢の裸を見せてアンテナ修理。(笑) 隣の屋敷で音楽を聞くシャロンを目にする。ポランスキーが戻ってきたところに男・チャールズ・マンソン(デイモン・ヘリマン)が訪ねてきて、「どうも!」と挨拶して帰っていった。マンソンは何しにやってきたのか?

リックは西部劇「対決ランサー牧場の決闘」の撮影中。昼休みにセットの街を歩いていて子役トルーディ(ジュリア・パターズ)に会う。ジュリアが可愛いし、しっかりした演技をします。きっと大女優に育っていくでしょう。
ジュリアに「なぜ昼飯をたべない?」と聞くと「役の感情が鈍る。役名で呼んで!」と言われ、リックはジュリアに役者魂を教えられ、泣くんです!(笑)

リックがシェームス・ステイシー(ティモシイ・アリファント)、ウエイン・モウンダー(クール・ペリー)と共演、劇中で8杯も酒を飲みセリフを忘れ大恥をかき、もう酒は飲まんと悔やむシーン。笑えます。

f:id:matusima745:20190903052929p:plain
このころシャロンは、白いミニに白いブーツで映画鑑賞に出かける。演じるマーゴット・ロビーシャロンにそっくりというところが面白い。
本屋でポランスキーのためにとトーマスハーディの「ダーバヴィル家のテス」を買い求める。のちにこの本でポランスキーが映画を作ったことを知ると、「この女優をなぜ殺害した」という監督の怒りが分かります。

彼女は「この映画に出演してる女優よ」の無料パスで入場。「哀愁の花びら」を見る。この映画、彼女にはブルース・リーから教わったカンフーで立ち向かうシーンがあり、観客と一緒にこのシーンを大笑いする。

f:id:matusima745:20190903053021p:plain
クリフは、リックの迎えにハリウッド通を走り、途中でヒッピーのキャットに出会い、車に乗せ、彼女が求めるセックスを断って、スパーン牧場に送る。牧場持主でかっての仲間ジョージ・スパン(ブルース・ダン)に会うためだった。
ここはマンソン・ファミリーの屯する場所。荒野の決闘に立ったガンマンといった感じ。とにかく不気味で何が起きるかとヒヤヒヤです。ジョージの女スクィーキー・フロム(ダコタ・ファニング)の許しを得て、ジョージに会う。盲目で姿を見てもらえなかったが会えてよかったと帰ろうとすると車がパンク状態。怒ったクリフの暴力。ここが見どころ。(笑)

ここからは、前段のディカプリオに代わって、ブラッド・ビットが主役に躍り出て、監督の怒りの全部が込めた、激しいアクションをたっぷりと見せてくれます。(笑)

この日、リックとクリフは帰宅し「FBI」のビデオを見ているところに、偶然この映画をバーで見ていたマイケル監督から誘いがありイタリアに渡り、ふたりで4本のマカロニ・ウエスタンを撮って、6か月後、帰国。

そして8月8日夜。シャロンポランスキーは「エル・コヨーテ」で。リックとクリフは「カサ・ヴェガ」でそれぞれメキシコ料理を食べた。リックの家に戻ったクリフは酔っぱらったうえに、薬を吸ってラリっていたところに男と3人の女(マンソン・ファミリー)が侵入してきた。
わけの分からないクリフと愛犬のブランディの大暴れ、さらに火炎放射器で立ち向かったリックで、賊を完膚なきまでに叩き潰すという壮絶なアクション。(笑)

この働きで、リックはシャロンから自宅への招待を受けた。
                
名の無い俳優たちを通して、当時のハリウッドのすばらしさを唄いあげ、その未来を潰そうとしたマンソンへの怒りが描かれ、とても面白い、深い作品でした。
                                                    ****


映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』予告 8月30日(金)公開