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「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」(2019) 妊活は愛の記録!

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ひと回り以上も若い妻と結婚生活を送るアラフィフ作家が、妻の気持ちに応えて突如妊活に目覚めて悪戦苦闘する物語。49歳男性の不妊、それも加齢が原因ですべて夫に責任があるというもの。このような映画が出来たことに驚きです。(笑)
上映劇場、回数は多くないですが、思いのほか観る人が多いのにびっくり。現在日本では5.5組に1組が不妊治療を受けて、18人に1人が対外受精で生まれていると言います。観る人が多いのも納得です。

原作はヒキタクニオさんが自らの実体験を綴った同名エッセイ。監督は「オケ老人!」の細川徹さん。主演は松重豊さんと北川景子さん。松重の初主演作とのこと、驚きました! 共演は山中崇濱田岳伊東四朗さんらです。

不妊治療がテーマですが、一回り以上年の離れた夫婦の愛が深まっていく物語になっていて、不妊が克服できるかどうかなど、どうてもいいという感情になり、泣いたり、笑ったりと、とても感動的な物語です。
受精に失敗する度に、「もういい、十分努力した!」と慰めたくなります。そして、受精に成功することが“奇跡”であると実感できます。この命はしっかり育てられるべきだし、粗末にしてはいけないと思わせてくれます。沢山の人に観て欲しい作品です。

なぜ子供が欲しいのか?テーマの前提としてこれが一番大切です。その理由を、べたべたと鏡やTVに絆創膏を張ってアートを作る子や携帯で笑い顔を作って遊ぶ子たちの映像で、子供が持つ不思議な能力を見せてくれると納得です。

松重さんと北川さんが夫婦に見えるか? 違和感なしでした!
夫役の松重さん(小説家)の真面目さとちょっとやんちゃな面を出しての若作り。これに、仕事仲間(出版社編集者)に濱田岳さんを配したキャステイングが利いています。この人、勢力絶倫ですから、若々しく話が面白い。(笑) 
妻役の北川さん、出来る妻としての佇まいがしっかり出ていて、美人度を落としての演技、この夫にふさわしい妻に見えました。不妊治療が進むにつれて、辛いことが一杯でてくるときの、北川さんの声が救いになります。

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不妊治療をどう夫婦の物語に組み込むか? 全くSEXを描かないで、不妊治療に必要な基本的な知識がきちんと伝わるように出来ています。
物語は、自己タイミング法、人工授精、顕微授精と不妊治療の段階を踏まえて展開されます。きちんと科学的な根拠が説明され、主人公の行動をユーモラスに描き、笑いを誘い、嫌味がない。

問題の核心はこれです!人工授精で、夫がどう精子を扱わなければならないか? 
加齢がどう精子に影響しているのか、その克服法は? 精子の運動量が20%しかない。そこで、桃缶をしっかり食べる、墓参り、妊婦さんが握ってくれるおにぎりを食べることなどと笑いを取りながら、体力の維持、禁煙、禁酒、金玉冷やしをしっかり勧めてくれます(笑)。

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また、何故病院で採取しなければならないかの理由が描かれて、これはもう男性必見です。妻にしてやれることはこれしかないんですから!

顕微授精では妻の負担が大きい。さらに経費の問題があり、何度もこの治療には挑戦できない。不妊夫としての責任を感じるシーンはとても印象的で、妻を思いやる心が深くなっていきます。

いまだにある、試験管ベビーという人工授精に対する偏見を本人たちが強い気持ちで立ち向かっていきますが、この作品を観ると、きっと協力したくなると思います。

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なんども失敗を繰り返しながら、どこで止めるか? このとき夫婦にはもっと大切な人生を手にしていると思います。このような描き方がすばらしい。

日本の少子化を如何にくい止めるか?大きなテーマです。非常にタイムリーな作品で、エンターテイメント作品としても、すばらしい作品だと思います。
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『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』予告編