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「天才作家の妻 40年目の真実」(2018)

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原題は「The Wife」。第91アカデミー賞で天才作家の妻ジョーンを演じたグレン・クローズが主演女優賞にノミネートされた作品。注目していて、やっと観ることができました。
 
アカデミー賞は残念でしたが、
本作は、ノーベル賞の発表から一連の受賞行事が終了するまでの夫婦の葛藤が、妻の表情で語られるというグレン・クローズを観る作品で、彼女の演技に痺れました。
 
監督はスエーデンで活躍のビョルン・ルンゲ。共演者は夫ジョゼフをジョナサン・プライス、夫婦の秘密を探る記者ナサニエルクリスチャン・スレイター、そしてクローズの実娘アニー・スタークが若きジョーンを演じるという母子の初共演でます。
 
あらすじ
現代文学の巨匠ジョゼフが予期もしなかったノーベル文学賞を授与されることになり、妻と息子を伴い、ノーベル賞の授賞式が行われるストックホルムを訪れる。妻にとっては大きな喜びであると思うのだがその顔は冴えない。冴えない理由が、夫婦の秘密に迫ろうとする記者や夫が見せる妻には耐えられない行為に対する回想で、逐次夫婦に何があったかの真相が明かされ、妻はいかなる決断を下すかというサスペンスフルな心理ドラマです。
 
テーマは夫婦とはなんぞや、そして夫婦の危機を呼び込んだフェミニズムです。
晩年の夫婦を襲う危機に、当初妻に「今さらそれはないだろう。生涯の宝物を失うぞ」と思った。しかし、観終わって、この考えが変わりました。「今でも遅くない!」と、おそらく夫が生きていればそう言ったと思います。 むしろ、こうなった時代を無念に思いました。フェニミズムの問題は解決していない、追い続けなければならないと、この作品はこのことを教えてくれているように思います。
 
感想:
受賞発表を気にして目が覚め「糖分が欲し!」と妻を起こし、そのまま妻に乗りかかるというエロじじいの偉い先生。これがノーベル文学賞を受ける先生のやることでしょうか。()
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朝になって突然の受賞者発表電話に大喜びの先生。ところが妻は浮かばれない表情。何故?
友人や教え子を招いた夫は、スピーチで妻に感謝の言葉を贈り、ふたりは満面の笑顔で寄り添うという理想的なおしどり夫婦。息子は売れない小説家、娘は結婚してまもなく子供が産まれるという、幸せ一杯の家族。この妻になんの不満があるのでしょうか。
 
受賞者たちが集まるホテルに着くと、待ち構える人たちから「ご主人の作品は世界の文学史に残る偉大な作品です。素晴らしい旦那さんをお持ちで」とか「奥さんの内助の功のおかげですね」と言われ、まさにその通りという顔をする夫を見て、妻は微妙な表情する。そして、「スピーチで、私の名前を出さないで欲しい。糟糠の妻は嫌よ」という。
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回想が入り、妻が大学時代の文学ゼミの先生が今も夫で、夫からの誘いで恋愛関係に。そして夫は妻と別れ一緒になった仲だと紹介される。ちょっと女癖がよくないらしい。
 
妻は夫に先生を止めて小説家になることを勧め、自分が出版社で働き生計を支える。しかし、書いた小説が売れない。夫の小説には人物にリアリテイがない、セリフが書けないと夫の原稿を直していたが、次第に自分で書くようになり、夫は主夫に成り下がる。彼は食べて女を追いかけて気を紛らわせる。このことが彼女の癪に障り、彼への怒りが言葉になり小説となっていった。
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アムステルダムに来て、夫は悪い癖が出て、ウエートレスや女性カメラマンにちょっかいを出し始める。妻は、目にするのが辛く(嫌で)ひとりで外出して、記者に出会う。
 
記者が単刀直入に「あなたはご主人のゴーストライター」と言い、「真実を明かせば、自分の小説が書けます。どうです!」と問いかけてくる。しかし、妻は「ありがとう」と言い、席を立つ。妻の心に多少の“ざわめき”を与えたかもしれません。
 
妻がホテルに戻ると、夫が妻の不在にいちゃもんを着ける。本当にエゴ丸出しの夫です!
しかし、娘さんに子供が生まれたと知らされると、いざこざを忘れたように子供のことでふたりは笑顔で盛り上がる。妻の本心は何なのかと振り回されます。
 
表彰式で、夫が選ばれた理由「人間の見方が普遍的で、人間の心理を書く天才です」を聞き、妻は耐えられない表情をする。
 
王室を招いての晩さん会。夫がスピーチに立ち「この名誉、他に値する人がいます。最愛の妻ショーンです」と話し終わると、会場から万雷の拍手。しかし、妻は「これでは糟糠の妻で終わってしまう」と怒って席を立ち、これを追う夫。ホテルに帰る車のなかで妻が「離婚したい」と言い出す。
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ホテルに帰って、ふたりは本心を吐き出し夫婦喧嘩をはじめる。「私が書いた」「俺がモデルだ」もうノーベル賞受賞夫婦ではない、我々と一緒です。() 夫を愛して一緒になった妻も、時が経ち、自我に目覚め、愛情だけでは済まない、自分の生き様を考えたとき夫への怒りが起きる。
 
夫は心臓発作で倒れる。このとき懸命に介抱する妻の表情には「愛がある」と見えました。妻の表情で理解できたのはこの表情と、ラストの夫が亡くなって帰国時の機上で、創作ノートを指でなぞる表情でした。
 
当時女性が小説を書くことはタブーで、妻は小説を書けないという悲しい社会事情があった。何故、妻の名で小説を書かせてやれなかったのか、何かを捨てれば手はあったはず。これは、自分の人生への反省でもありました。
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