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「ノクターナル・アニマルズ」(2017)これぞ世界的デザイナーの映画!

これぞ世界的デザイナーの映画!f:id:matusima745:20191019083822p:plain
元夫から暴力的な内容の小説を送られたヒロインの心の揺らぎを、現実と小説をドラマ化した映像を交差させて描かくという、“世界的デザイナー”のトム・フォードの監督2作品目の作品です。“世界的ゼザイナー“に惹かれてWOWOWで観ました。監督作品の観賞は初めてです。
美術や衣装や映像にさすがファッションデザイナーとそのセンスに唸りましたが、これに劣らないオープニングでの年増の太っちょ女性のダンスに度肝を抜かれ、元夫の小説を、離婚理由を絡めて、ヒロインがどう受け止めるかという、みごとな心理推理ドラマに驚きました。

出演者は、エイミー・アダムスジェイク・ギレンホールマイケル・シャノンアーロン・テイラー=ジョンソンらとても豪華なキャスト陣です
物語は、
アートディーラーとして成功を収めているものの、夫ハットン・モロー(マイケル・シーン)との関係がうまくいかないスーザン・モロー(エイミー・アダムス)。ある日、そんな彼女のもとに、19年前に別れた夫のエドワード(ジェイク・ギレンホール)から謎めいた小説の原稿が送られてくる。原稿を読み進めながら、スーザンはエドワードとの馴れ初めから結婚生活、そして別れを回想し、・・・・。

ノクターナル・アニマルズ」はエドワードが書き上げた小説名。「夜の野獣」という意味で、「スーザンとの別れが着想になった」という。小説「夜の野獣」の登場人物で、スーザンのモデルは誰か?スーザンはこの物語をどうとらえるか? 現在と過去、小説を映像化したドラマを絡ませながらスーザンの心理変化が、うまい脚本、演出で、サスペンシブルに描かれています。

***(ねたばれ)
冒頭の太っちょ女たちによるマット上でのいろいろな体位を見せるというアート展示作。作品を披露して、高級車で夜の高速道路を走り、高級邸宅に帰宅。この映像がとても洒落ていて美しい。

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邸宅で親しい人たちとパーティー。漏れてくる話の卑猥さ!
「胸が開いたものがいい。もっと男のエキスがいるでしょう。いつもココナッツウオーターよね。薄いのよ、でもやれるだけましなの」。(笑) 
オスカー候補女優やゲイと付き合っている女性の話など、性欲だけで生きている女性たちです。スーザンはこういう空気のなかで過ごしている。冒頭の太っちょ女たちのダンスが何をメタファーにしているか、ここでの会話を聞いていると、想像に難くない!

パーテイーの後、夫・ハットンは夜にもかかわらず、ビジネスだとNYに発つ。実は恋人を帯同している。スーザンは夫との愛に、陰りが出てきたアートビジネスに、追い詰められていた。このような状況にあるとき、エドワードから小説の原稿が送られてきた。

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スーザンはゲイの兄と親友であったエドワードをゲイではなかかと疑い、当初結婚相手とは思っていなかった。ところが大学キャンパスで出会ってデートし、エドワードが自分を好きだと聞いて付き合い、母アン・サットン(ローラ・リニー)の強い反対を無視して結婚した。
富豪家の母親は息子がゲイであることに強い嫌悪感を持っていて、「エドワードはこの家を継ぐには“弱すぎる”」と強く反対した。“弱すぎる”が意味深です!
結婚して、エドワードの“弱さ”を感じるようになり、彼の小説も読まなくなり、強さを感じたハットンと浮気して妊娠。堕胎したことがエドワーズに発覚され、スーザン自らが離婚を言い渡した。

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ハットンを送り出して、メガネを着けて原稿を読み始めた。このメガネのスーザン:エイミー・アダムスが魅力的!

小説の主人公トム・ヘイスティングスエドワード本人。妻ローラ(アイラ・フィッシャー)と娘インディア(エリー・バンバー)を伴って、マーファ(アートの町)への旅に出た。携帯電話も通じないテキサスの荒地を走っているとき、煽り運転で停止され、3人のならず者に車を取られ、妻と娘が拉致される。トムは徒歩で荒野を徘徊し、警官ボビー・アンディーズ警部補 (マイケル・シャノン)に保護された。

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ここまで読んだスーザンはNYの夫・ハットンに電話すると、薬を飲んで眠ったと返事か帰ってきた。(笑) 彼女は小説の妻ローラに自分を重ねているんではないでしょうか。

(小説)トムは事件現場にボビーを案内し、小屋のなかで殺害され赤いベッドに横たわる妻と娘の死体を見る。

ここでスーザンは娘に「会いたい!」と電話する。娘は裸でSEX中で「あとで!」と電話を切った。小説の妻と娘を自分の家族に重ねましたね。しかし、娘も母親によく似て強い。(笑) スーザンはここでエドワードと出会ったころを回想する。 

(小説)ボビー警部補からの犯人逮捕の知らせで警察署を訪ねる。犯人の確認に立ち会う。捕まったのはルー (カール・グルスマン)、首謀者のレイ・マーカス(アーロン・テイラー=ジョンソン)の所在を聞き出し、ボビー警部補はトニーを伴ってレイの逮捕に向かう。

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スーザンはここで、エドワードに「原稿を読んでいるがすばらしい」とメールを入れた。
朝、アート工房に出社。白色でとてもうつくしい壁に「復讐」という画がかかげられている。不吉!8年前だという。
会議で、デザイナーを辞めさせたいという意見に、変化だけ追ってはだめとこの意見を退けて帰宅し、小説を読み始めた。

(小説)
屋外でクソしてるレイを逮捕して(笑)、ウーも呼び尋問を始める。事前にボビー警部補から不起訴にしたくないので証拠が取れない場合には殺害する決め、トニーも拳銃を持っていた。
拳銃で脅しながら尋問を開始すると、突然、ふたりが逃げ出す。ボビーが拳銃を撃ったが、レイは逃げ切った。
トニーはレイを追い、小屋にいるレイと対峙した。「あの女の口の利き方が汚い、そして浮気をしたというからやってやった。お前が弱すぎた!」と偉そうにいうレイの言葉を聞いて、トニーはレイを拳銃で撃った。レイは手持ちのバーベルでトニーに打ってかかり、トニーは失明した。
手探りでレイの死を確認して、小屋の外に出て荒野を彷徨い、空砲を放ち泣き、心臓が停止した。

これを読んだスーザンは泣き、「エドワード」とつぶやき、火曜日の夜に会いたいと彼に電話した。時間と場所は君に任せると返事が返ってきた。

スーザンはグリーンのドレスでレストランで出掛け、エドワードを待ったが、彼は現れなかった。

小説でレイをスーザンに見立て殺し、これを書いたエドワードの強さにスーザンが惚れ直すが、スーザンに会わないというエドワードの復讐が見事でした。スーザンの愛は自分勝手でいい加減、こんなもの許されないでしょう。
冒頭の太っちょ女たちは、歳を重ねても性に拘るスーザンの化身ではないでしょうか。
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『ノクターナル・アニマルズ』予告