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「ジュディ 虹の彼方に」(2019) 決して悲観する人生ではなかった!!

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ミュージカル女優ジュディ・ガーランドの晩年を描き、アカデミー賞主演女優賞受賞作品ということで観賞です。ジュディを演じるレネー・ゼルウィガーの演技がすばらしいですが、ストーリーもよかった!ラストでの「虹の彼方に」を唄うシーンは、号泣で、彼女の人生は辛い不運な人生のように見えてそうではない、歌に燃え尽きた人生であったと“どう生きるか“を教えられたように思いました。

原作はピーター・ギルターの舞台劇「End Of The Rainbow」。監督はルパート・グールド。
主演はレネー・ゼルウィガー、共演はジェシー・バックリー、フィン・ウィットロック、ルーファス・シーウェルマイケル・ガンボンらです。

あらすじ:
1968年。かつてミュージカル映画オズの魔法使」に17歳で抜擢され、一躍大スターとなったジュディ・ガーランドレネー・ゼルウィガー)だったが、30年後の今は若いころからの薬漬けがたたって心身ともにボロボロ。映画出演のオファーもなく、巡業ショーで生計を立てるも借金は膨らむばかり。愛する子どもたちと一緒に暮らすこともままならず、やむなく彼らを元夫に預けることに。そして自らは、いまだ根強い人気の残るロンドンに活路を見出し、再起をかけて単身渡英するジュディだったが…。


【公式】『ジュディ 虹の彼方に』3.6公開/本予告
ふたりの子供を元シド・ラフト(ルーファス・シーウェル)に預けるシーンから始まり、渡英し、初演が大成功に終わるが、習慣になっている薬と酒で舞台に穴を開けるようになり、子供を想い、結婚に新しい人生を賭けるが、遂に解雇されてしまう。その夜のステージで歌う「オーバー・ザ・レインボー/虹の彼方」にはジュディの人生すべてが詰まっているという涙と感動の物語、この脚本がすばらしいです。

ジュディを演じるレネー・ゼルウィガー、歌手としてまるでジュディに恣意しているようで凄いという以外に言葉がない。母として子供に寄せる深い愛情やまた恋人に見せる喜びの表情、いたるところで見せる微笑みに複雑な感情が隠されているようで、魅せられました!

****(ねたばれ)
冒頭、「オズの魔法使い」の撮影現場。「休みが欲しい」というジュディ。MGMのルイズ・B・メイヤーに「君よりきれいな子は一杯いる。しかし誰にも負けない声を持っている。そんなことしたらボロボロの生活になるぞ!それでもいいなら出て行け!」と言われ、「私は撮影所に残りたい!」と歌い出すジュディ。ジュディは生涯この記憶(トラウマ)にしばられた。歌い続けるために薬漬けになり、不眠症や不安神経症に悩まされ、働き場を失っていくが、歌うことを諦めることはなかった。こんな生活のなかで、47歳の若さで亡くなった彼女の生涯をどう評価しますか?これがテーマです。

眠そうなふたりの子、長男ジョーと娘ローナを起こして一緒に舞台に上がるジュディ。しかし、ホテルに戻るが宿泊費滞納で追い出され、前夫のシンに預ける。ここでのやつれたジュディのメイクに驚きました。

出発前に、バーでLAに遊びに来ていたミッキー・ディーンズ(フィン・ウィットロック)に出会い、彼の部屋で一夜を過ごした。

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衣装タンスの中にふたりの子を招き入れ「狭い部屋でいい、お金稼いでくる!」とロンドンへ発つのは辛かったでしょう。子供への優しい顔を見せます。

ロンドンのナイトクラブ(トーク・オブ・ザ・タウン)に着くと支配人のデルフォント(マイケル・ガンボン)と世話係とのロザリン(ジェシー・バックリー)が手厚く迎え、ロンドンでの人気はまだ衰えていたかった。

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リハーサルもせず、初舞台を迎えようとして、眠れない!いつものように薬と酒を飲み、遅刻しそうになる。慌ててメイクして会場に。久しぶりの大舞台に恐怖を感じる。しかし、舞台に立てばほろ酔い気分で「愛しているよ!」と軽妙なトークで「バイ・マイセルフ」を唄う。レネーの唄いっぷりが圧巻で、「自分の道をひとりで歩いてゆく。これが恋が終りなの、自分の道をひとりで歩いてゆく・・」とまさにジュディの人生そのもののような歌詞に聞き入りました。

この作品でのジュディの歌には、すべて彼女の人生が投影されているように思いました!

大成功でショーは引けたが、ホテルに戻ると薬を飲み、眠れないと不安に陥る。
薬づけにされるはしりとなった「オズの魔法使」撮影時のエピソードが紹介される。ある時は「泳ぎたい!」とセットの水槽で泳いだことでメイヤーに怒鳴られ、ハンバーガーを口にするのが見つかり太らないようにと薬を飲まされる。この生活習慣が続き、薬がないと生きて行けない身体になっていた。初演は成功したが、この調子では不安がつきまとう。

ある日、舞台が引けたあとでサインを求める男性ふたりに、“ゲイである”と知ったジュディは彼らのアパートを訪れ、男の引くピアノに合わせて「叫ぼう、ハレルヤ!」と「ゲット・ハッピー」を唄う。ジュディの優しさが溢れるシーンだった。

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ジュディはゲイたちに愛される存在であったらしく、彼女も彼らに優しく接していたエピソードでした。

そんなときにミッキーがロンドンに訪ねてきた。ジュディはミッキーの愛を求めた。ふたりは結婚し、ミッキーはジュディが子供と一緒に住めるようにと特別企画を立てるがうまくいかない。

TVインタビューに出演して母親になれないと揶揄され落ち込む。こんななかでの公演、酔っぱらってロレツが回らない。客からブーイング。舞台を降りたジュディはさらに落ち込む。

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シンが訪ねてきて子供たちを渡せと勧める。ジュディは泣いて断ったが、子供たちの希望を聞いてシンに任せることにした。

遂に解雇される日がやってきた。ロザリンがお別れにと誕生会を開いてくれた。ジュディは人生で初めてケーキを口にして「美味しい!」と声を上げ、最期にトーク・オブ・ザ・タウンで歌いたいと言い出す。人気のロニー・ドネガンに頼み、舞台に上げてもらった。

「帰ってきました!」とステージに立ち、「降っても晴れても、誰にも負けないほど、あなたを愛しています」と「カム・レイン・オア・シャイン」を唄った。

鳴りやまぬ拍手に、「ゴールに達することがすべてではない、歩いて行くことが大切!多分、歩いて、人生の道をコツコツ歩いて、それで十分だった。希望が必要だった」と話し、「オーバー・ザ・レインボー」を唄い出す。

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観客は彼女の壮絶な人生を想い静まっていたが、やがて彼女の歌が途絶え絶句する。すると、観客の中にいたあのゲイカップルが登場して歌い出す。観客がこれに和して「オーバー・ザ・レインボー」を歌い上げた。このシーンでは観客と同じように歌い泣きました!!

ジュディはこの半年後になくなりましたが、彼女は「オーバー・ザ・レインボー」という曲を持ったことで、多くの人に希望を与えることができ、決して悲観する人生ではなかったように思います。人生は短かったが、多くの人に愛され、永遠にこの歌は希望の歌として歌い継がれるでしょう。とても感動的な作品でした。
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Renée Zellweger - Over The Rainbow (From 'Judy' / Lyric Video)