映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「アラバマ物語」(1962)To Kill a Mockingbird

f:id:matusima745:20200328212303p:plain

黒人の冤罪と戦うブライアン・スティーブンソン弁護士の実話物語「黒い司法 0からの奇跡」(2019)を観て、同じように戦った弁護士物語があることを知り、偶然にもNHkBSシネマで放映され、これで観賞しました。
驚きました!まさにスティーブンソン弁護士はこの作品を観て弁護士を志したではないかというほどに考え方が同じ(セリフが同じ)、それほどにこの作品の中で描かれる裁判シーンには感動させられます。

テーマは「黒人はすべて嘘つきで、根っから不品行、黒人男は女に危険な存在であるという白人の優越感を糺せ!」というもの。

原題は“To Kill a Mockingbird(ものまね鳥を殺すには)”。なんのことだか分かりませんが、本作はこの物語以降に出てくる黒人差別に関する作品全てがこの作品に繋がっているような作品で、邦題を「アラバマ物語」としたのはすばらしく、卓見でしたね!ということで、この作品は必見でしょう!!

原作はピューリッツア賞を獲得したハーパー・リーの小説「ものまね鳥を殺すには」。監督:ロバート・マリガン、脚本:ホートン・フート、撮影:ラッセル・ハーラン、美術:オリーバー・エマート。
主演はグレゴリー・ペック、共演にメアリー・バーダム、フィリップ・アルフォード、ジョン・メグナ、フランク・オバートン、ブロック・ピーターズ、ロバート・デュヴァルなどです。

62年度アカデミー賞で主演男優賞、脚色賞、美術賞を受賞しています。


To Kill a Mockingbird Official Trailer #1 - Gregory Peck Movie (1962) HD

あらすじ:
1936年当時、アラバマ州メイコムという小さな町の弁護士アティカス・フィンチ (グレゴリー・ペック)の娘スカウト(メアリー・バーダム)が、成人して、6歳のころ父と過ごしたひと夏の出来事として語る物語です。「子供でも分かる正義が、なぜ大人が分からないの」とこの町の偏見を語るところがこの物語のポイントです。

f:id:matusima745:20200328212601p:plain

スカウトは父をパパと言わず4年前に亡くなった母が呼んでいた「アティカス」と呼んでいた。(笑)夫婦仲がよかったんですね。彼女には10歳の兄ジェム (フィリップ・アルフォード)がいました。

f:id:matusima745:20200328212458p:plain

スカウトはジェムと夏休みで叔母さんとこに来ていたディル・ハリス (ジョン・メグナ)と3人で遊ぶ毎日でした。そんななか思い出すのは「近くに危険だから近寄るな!」という家があったことです。「危険だから近寄るな!」と言われれば探検したくなる。これが子供心で、恐るおそる覘きに行き、ある日大きな男に出会い恐ろしくて逃げ出したが、それからはどういうわけか男は木の幹にプレゼントを置いてくれるんです。後に、このプレゼントがスカウトの一生の宝物になるんです。彼をブー(ロバート・デュヴァル)という呼び名をつけました。

同級生のウエルター・カニンガムのことを思い出します。この子の家は農家で、とても不作の年で、貧しくて先生からお金が支給されるのに断るという偏屈な子で「受け取りなさい!」と喧嘩した。仲直りに夕食に呼んだのですが、その食べ方が「下品!」と貶したことで父から説教されました。「友達とは仲良くすること。妥協が必要だ!」と教わりましたが、そのころ「妥協」などという言葉を知らなかった。そして「その人の中に入って歩き廻りなさい」と言われ、またウエルターが銃で狩りをするというので「青カケスなら撃ってもいいが、マネシツグミを撃つのは罪だ!歌を唄い楽しませてくれるのだから」と話してくれました。

父アティカスは白人の娘を暴行した容疑で起訴された黒人トム・ロビンソン (ブロック・ピーターズ)の弁護を引き受け、スカウトたち子供も白人から嫌がらせを受けるようになった。だから、裁判がある日、兄ジェムと一緒にこっそり見に行き、黒人の神父さんの隣で、父の弁護士という仕事を見ました。

f:id:matusima745:20200328212747p:plain
父は「他に犯人がいる。トムを家に帰して欲しい」と訴え、これは正しいと思ったけれど、トムは有罪になりました。このとき、白人たちが建物に居なくなっても黒人たちは残り起立して父を送り出しました。兄が残念そうで泣いていました。

このあとトムは刑務所に護送される途中で脱走し保安官に撃たれなくなりました。

10月になって学校で行われるハローウイン祭に兄と一緒に参加して、その帰り、夜でしたが、男に襲われジェムが大怪我を負いましたがブ=が男と戦ったことで救われました。保安官がやってきて男は父に恨みをもっていた原告の父親でナイフが刺さって亡くなったと言いました。
父は「ジェムが刺した」と思ったようですが、保安官が「男は自分でナイフの上に転んだ」と言い、「裁判所に届ける必要はない。これは自分の仕事だ!」と父が裁判所に報告するのを止めました。
スカウトも「マネツグミを撃つのと同じことでしょう!」と父に告げた。

f:id:matusima745:20200328212838p:plain

この記憶が今でも思い出されるのです。ブーがくれたのは人形、時計とナイフ、それに命だったんです。
               *
子供たちの話が結構長いのですが、正義や人の差別をしないことの大切さを知識だけでなく、裁判などを通して実体験で認識するために必要な時間だったと思います。この時代の子供の元気さとスリルがあって少しばかりホラーっぽいところがあり楽しめました。子役の演技がとても自然で見事でした。

裁判シーンは、「これは犯罪ではなく社会の掟を破ったに過ぎない。原告はその証拠隠滅を図った。その罪の証拠がロビンソンだった」とロビンソンの無罪を明確にし、暴行の犯人は別にいることを訴えた。グレゴリー・ペックの長いセリフが見事でした。また、ロビンソンを演じたブロック・ピーターズの演技が、黒人の悲しみをよく表現していました。

感動シーンは裁判が終わり、弁護士フィンチが去るとき、傍聴席の全黒人たちが起立し無言で見送ったことです。これは判決がどうこうというものでなく、唯一白人として黒人に慈愛を示してくれたことへの感謝でした。この無言がのちの暴力に姿を変えるのが分かるような怒りのエネルギーが溜まったシーンでした。

兄ジェムが負傷した事件で、保安官の採った行動は「ブーは精神障害があるが決して悪いことをする男でなくこの行為は正当防衛」と判断、しかしブーを表に晒すことなく解決するのが彼のためによいという弱者への配慮だった。スカウトはこれを見ていて「マネツグミを撃つのと同じことでしょう!」と言えたことが、父親が裁判で見せた正義と同じように、誇らしい出来事であったと思い出しているのではないでしょうか。
               ****