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「ミッドナイトスワン」(2020)草なぎ剛さんのトランスジェンダー演技で見せる作品でした!

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昨年、草なぎ剛さんがトランスジェンダーを演じてとても話題になった作品。見落としていて、WOWOWシネマ初放送で鑑賞。

第44回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を、最優秀主演男優賞、新人俳優賞受賞作です。

原作:内田英治さん、未読です。監督・脚本内田英治撮影:伊藤麻樹、編集:岩切裕一、音楽:渋谷慶一郎

出演者:草彅剛、服部樹咲、田中俊介吉村界人、真田怜臣、上野鈴華佐藤江梨子、平山祐介、根岸季衣水川あさみ田口トモロヲ真飛聖、他。服部樹咲さんはオーディションで抜擢され選抜された新人です。

トランスジェンダーとして日々身体と心の葛藤を抱えている凪沙(草なぎ剛)と、親から愛を注がれずに育ちながらもバレエダンサーを夢見る少女・一果(服部樹咲)の姿を通して、“現代の家族愛の形”を描く“ラブストーリー”。

家族愛をテーマとして観るとストーリーが浅すぎるように思いました。トランスジェンダーの男性が性別適合手術を施す作品は「リリーのすべて」(2015)でしか知らないので、それだけにトランスジェンダーの生き様には共感し、少女の姿を通して“凪沙の生き方・生きずらさ”にテーマを絞った方がよかったのではないかと感じました。いずれにせよ草薙さんの演技に圧倒され、服部樹咲さんの演技もすばらしかったです!😊さらに凪沙の心情を表すような映像もよかったですね!

 

あらすじ(ねたばれ):

新宿のニューハーフニューハーフクラブに勤める凪沙。「男に消費されたらお終いよ!」と仲間に声を掛けて白鳥の湖のダンスステージに立ちます。今ではこの姿が彼の生甲斐になっていました。男に騙され、男に溺れないで、美しく生活できると、稼ぎは安いが、この仕事を続けているらしい。

踊り終わって、客のテーブルにつき「海水浴で海パンだったのが悔しい」と夢ネタを披露。安いアパート部屋に帰り、金魚に餌を与えるのが唯一の楽しみ。夜は明るく振舞えても昼間に出向くことはない。こんな毎日の凪沙の生活。

そこに広島の母(根岸季衣)から「従妹が女の子の世話できないから、ちょっとの間でいいから面倒見て欲しい」と電話が入った。凪沙はめんどくさいと思ったが、お金がもらえるとこれを受けた。

女の子は中学3年の一果、母親(水川あさみ)は夜の仕事で酒乱、暴力を振るう。それに暴力男が付いていた。一果はお婆ちゃんに勧められるように新宿の凪沙の元にやってきました。

凪沙は「掃除・洗濯をきちんとやりなさい」と指示して放ったらかしていましたが、一果は学校からの帰りに見たバレエ教室に魅せられ、ここでの生活に生甲斐を見出し、片平先生(真飛聖)も一果の素質に只ならぬものを見ます。

一果の心配ごとはバレエ教室の授業料でした。母親(佐藤江梨子)がかってバレエダンサーだったリン(上野鈴華)と仲良しになり、彼女の勧めで写真教室のモデルとして資金稼ぎを始めました。が、カメラマンから無理なポーズを求められた一果が暴力を振るってしまい警察沙汰になってしまった。

凪沙は警察に呼び出され、初めて一果がバレエが好きで自分で稼いで練習していることを知りました。「もうこれでバレエはダメになる」と悲観する一果に「もっと自分を大切にしなさい」と励まし、そっと一果を抱きしめました。凪沙は自分の身の上に一果の苦しみを重ね、「助けてやりたい!」と泣きました。

凪沙は「放っておけない」と一果をニューハーフクラブに連れてきて勤務です。洋子ママ(田口トモロ)を始め皆さんが一果を可愛がってくれる。そんな中で、酔っ払い客と凪沙らが衝突し大騒ぎになった。その隙に、一果は憧れだったステージに上がって踊ってみた。これを見たお客さんが大喝采!凪沙も一果のダンスに魅入り「支援してやりたい」と強く誓うのでした。

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リンは足に骨折が見つかり踊れなくなってしまった。一果はリンの想いも背負って、バレエコンクールの練習に励んでいました。

凪沙は料理を作ってしっかり食べさせ、これをすることで母親のような気分に浸り、これまでになかった喜びに浸っていました。夜の公園で踊る一果を見ていると、身知らぬ老人が「お嬢さん方、御上手ですね。朝がくれば白鳥に戻ってしまう、なんとも悲しい!」と去って行く。凪沙が一果からバレエの基本を教わる関係になっていきました。

凪沙は一果のためにと、堕ちたら二度と這い上がれない夜の商売をすることにして客を取ったが、だめだった。救ってくれたのはかって一緒に働いていたみつこ(田中俊介)で「どうしたら幸せになれるの?」と泣いてくれた。

男性として稼ごうと髪を切って男性姿で朝の食卓に着くと、“一果は嫌がって大暴れ!”「迷惑を掛けたくない!」と自爆したのでしょうか?凪沙は一果を落ち着かせ、抱いて慰めました。

凪沙はニューハーフクラブを辞め就職試験を受けますが、トランスジェンダーという偏見で、名前を本名・雄二として力仕事にしか就けなかった。これはきつい仕事だった。

一果はコンクールが近付き猛練習。先生から「オデットは難しいから優しい踊りに変えたら」と忠告されたが、凪沙の憧れの姫・オデットを踊ると決めて練習。そこに母親が迎えにきたが、帰ることを拒否した。ここでの練習風景がとても美しく描かれます!

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コンクールの日。一果は凪沙と一緒に会場入り。最初の曲は見事な踊りで大拍手が起こりました。しかし、踊ることを諦めたリンが、踊りにしか興味を示さない母親に愛想尽かして、ネットで一果の踊りに合わせて踊りながらビルから投身自殺してしまいました。

2曲目、オデット姫の踊りで、リンの姿が客席に見え踊れなくなった。すると会場にいた母親が舞台に駆け上がって一果を励ます。これを見た凪沙は“私はこのままでは母になれない”と女性への転換手術を決意しました。

凪沙はタイで手術して帰国し、広島に帰った一果を迎えに実家にやってきましたが、激しい母親の抵抗、彼女の夫の力には逆らえず、胸から露出した胸部を見せながら無念な気持ちで東京に戻りました。

一果は無事中学を卒業し、片平先生とともに励んだ猛烈な練習が実を結んで、外国へのダンス留学チャンスを掴み上京してきました。「これも凪沙のお陰」とアパートを訪ねると、荒れ放題の部屋に下半身血だらけの凪沙と再会しました。

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凪沙が女性の水着で入りかった海を見たいというので、ふたりで鎌倉の海にやってきました。凪沙は「踊りを見たい!」と一果に所望し、夢の中で亡くなりました。チャプリン「ライムライト」のラストシーンのようだった!

一果はニューヨークで「見ていて!」とオデット姫で舞台に立ちました。

感想:

凪沙が孤独な一果に出会い、自分の同じ悩みを抱えてさらに自分の夢を持っていることで、心を開き、本当の母親となって、女としての喜びを持ちたいと性別適合手術を選択する物語

その心情は頭の中では理解できるのですが、どこかピンとこない。これまでトランスジェンダーとしてどう生きてきたのか。性転換手術が唐突に思え、凪沙の生き方に疑問を持ちました。

一方、一果の成長も、バレエの練習シーンがやたらと多くて、凪沙と心が通じ合うところが、草なぎさんと服部さんの演技に依存し過ぎた感じで、物語として突っ込みどころもあり、もっと深い物語が欲しいと感じました。

凪沙が海で一果のダンスを見ながら亡くなるシーン、凪沙の笑みを見たかったですね!そしてラストシーン、一果のニューユークでのダンス。一果の成長を描きたかったのでしょうが、このシーンが必要だったのかと思いました。

トランスジェンダー育児放棄、母親の愛情のあり方等とテーマが広がり過ぎたのではないでしょうか。

草なぎ剛さんが凪沙になり切り、決して美しい姿でなくどちらかと言えば醜い姿を晒して、トランスジェンダーの苦しさが自然に出ていて、演技ではない演技に酔わされました。また、服部さんのバレエシーンは、かなりの実績があるようですが、美しく、お芝居もちゃんとやれていましたね!

LGBTの生き苦しさを、結末を性別適合手術で描くという稀有な作品でした。

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