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「星を追う子ども」(2011)これまでの作品とは異質ですが、これ以降の作品に繋がる“作品

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WOWOWシネマ、新海監督の世界特集で観ました。「雲の向こう、約束の場所」(2004)から始まって、「天気の子」(2019)までの6作品。一連の作品として観ると、本作は「秒速5センチメートルから5年おいての作品ですが、迷いのあるような、これまでの作品とは異質ですが、これ以降の作品に繋がる“作品だと感じました。

 父を亡くして孤独な毎日を送る少女。ある日、秘密基地に向かう途中で怪獣に襲われ、地底から来たという少年に助けられる。その少年が突然亡くなったことで黄泉の世界に興味を持ち、亡き妻に探し出し蘇生させたいと地底の国に向かう先生と共に旅する少女のファンタステイックな物語。

 監督・脚本・編集 :新海誠作画監督・キャラクターデザイン :西村貴世、美術監督:丹治匠、音楽:天門、主題歌:「Hello Goodbye & Hello」:熊木杏里


新海誠『星を追う子ども』予告編映像

 あらすじ(ねたばれ):

父を亡くした渡瀬明日菜(アスナ)は、看護師の母とふたり暮らし。母は仕事で家を空けがちで、アスナは自分で食事を作ってひとりで食べ、猫のミミーと一緒に母の帰りを待つ毎日。山に作った秘密基地を持っていて、そこで父からの贈り物鉱石ラジオを聞くのを楽しみにしていた。

 ある日、秘密基地に向かう途中、鉄橋の上に猪のような動物いた。後方から電車が来て、危ないと思っていたところに不思議な少年が現れ救ってくれた。動物は川に落ちた。

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 アスナは少年を秘密霧に案内すると、少年はどうしても会いたい人がいると言う。夕方になったので別れて家に帰った。

 翌日学校に行くと、熊が鉄橋から落ちて死んでいたという噂を聞く。授業後に秘密基地に来ると少年がいた。持ってきた弁当を食べ、鉱石ラジオを聞いた。 

少年は名をシュンと言い、どうしても会いたい人がいると「アガルタ」からやってきたという。別れ際に「君には生きていて欲しい」と言われた。

 アスナが帰っていったあと、シュンは自分の歌を聞いてくれていたのはあの子だったと呟き“美しい星空”を眺めて、星を掴もうと手を伸ばし・・・。

 “アメンボーが泳ぐ水溜まり”雨の日、昨日と同じように山の基地に来ると少年が居なくなっていた。帰宅すると母が「あなたのスカーフを着けた男の子が川原で亡くなっていた」という。

 国語の時間。これまでの先生に代わって新任の森山先生が担当。先生はイザナミイサナギの話をした。日本には「黄泉の国」というのがあるが、世界の神話では「シャンデラ」「アガルタ」などという国があり、すべて地下世界の存在を伝えていると話した。これを聞いたアスナは「アガルタ」に興味を持ち図書館で調べ、先生の自宅を訪ねた。

 先生はアガルトについて研究していた。「3000年前、ケツアルトルという神が人類を導いていたが、人類が成長し不安になったケツアルトルは役割を終えたと、門番を残して、地下に潜った。そこにはあらゆる願いが叶う場所があり、死者が復活できる」という。

 先生の自宅からの帰り、ミミーに導かれて秘密基地に寄ると、シュンそっくりの少年が居て「兄は地上人と接触していたのか!」と話しかけてきた。この少年を追ってヘリで軍人たちがやってきた。

少年は洞窟の門をウラビス(鉱石)で開け、アスナと一緒に逃げ、ふたりを軍人たちが追った。少年は襲い掛かる怪獣を刺しながら前進、光がさすところでアスナにウラビスを光に向けろ!という。鉱石を向けると扉が開き、その先がアガルタだった。

軍人たちがやってきて、その一人が「ここからは自分ひとりで行く」という。その声の主は森崎先生だった。先生はアガルトの国を探す組織の一員で、階級は中佐だった。

少年はシュンの弟のシンだと言い、「兄は死んだ!俺はウラビスを回収するのが任務だった」とアガルトの方に消えていった。

 亡き妻に会いに行くという先生について行くことにした。先生に「シュンに会いに行くのか?」と聞かれたが、「分からない!」と答えた。

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 ヴィータファという水の中でも息ができる太古に池の底を歩いてアガルトに向かい、“水中に沈んだ街並”を見た。このとき父と母が「もうすぐ生まれてくるね!」と喜んでいる姿に出会った!

 美しい草原に出た。そこには“シャクナ・ヴィマーナ”という神が乗る船が空に浮かんでいた。この船の方向に行こうと、“険しい山の稜線”を歩き、“花畑”に出た。

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 廃墟の村に着き、そこで古文書を手に入れ、先生が死者への門・フィニス・テラへの道を見つけた。

 このころシンはカナ村に帰ったが、長老から地上人をアガルタに招き入れたと責められ、先生とアスナを殺すよう命じられた。シンは馬でふたりを追った。

 アスナと先生がフィニス・テラに急いでいると、“夷族”(死神)が襲われ、アスナは城壁の中に逃げ込んで、道に迷った小さな女の子・マナに出会った。そこにシンがやって来て「いい迷惑だ!」と言いながら、救い出してくれた。そして三人は夷族に追われ、川の中に飛び込んで、離れ離れになり、流された。

 美しい大地に流され、アスナは先生に助けられ、シンがマナを抱いて横になっていた。シンが先生に気付き、ナイフで襲った。が、先生に殴り倒され、怪我をした。

馬にシンとマナを乗せ、マナが示す方向に進むと美しい田園のなかに村があった。村はアモロート村と言い、村民は地上人だと寄せ付けなかったが、老人がマナを助けてくれたお礼にと1泊させてくれることになった。

 老人はマナの母は地球人だと教えてくれ、アスナを風呂に入れ着物を貸してくれ、とても親切にしてくれた。

老人は「地上人はアガルタから富や技を盗み、戦争を持ち込み、この地は荒れた。だから地上人を入れないようクラビスによって扉を閉じた。」と語り、「マナがこんなに元気になったのは初めて見た。この子は神ケツアルトとなり永遠に生きる」と喜んだ。

先生が「死者に会えるか?」と問うと、「アガルタでは死者の復活は禁じられている。アスナを巻き込んではならない!」と注意した。

 朝、先生とアスナは老人が準備してくれた舟で湖に出てフィニス・テラを目指した。“美しい川”を下って、“赤い湖”に出た。先生に「イザナギがのぞき見したイザナミは恐ろしい形相だった。それでも死んだ人を蘇らせるんですか?」と聞いた。先生は「人の生死の終わりに何を求めるか?明日決めなさい!」と言われた。夜になると夷族がうろついていた。

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 老人は残されたシンにマナを馬に乗せて、ケツアルトが現れる石柱のある野に行かせ、ふたりの運命をケツアルトに任せたが、喰われなかった。シンはそこに地上人を殺そうと現れたアモロートの僧兵を見て、「地上人には恩義がある」とアスナたちを追い、彼らと戦った。

 先生とアスナは大きなカルデラの淵からフィニス・テラを確認し、険しい崖っぷちに立った。しかし、この崖を下ることはアスナには無理と判断して、先生がひとりで降りることにして、アスナは老人のところに戻ることにした。お母さんに「祝福ってな~に?」と聞くと「生まれてきて良かったということ」と答えてくれたことを思い出した。

シュンに会ったこと、老人の家でもてなされたこと、そしてシンに「何でアガルタに来たんだ!」と言われたことを思い出し「な~んだ、私は寂しかっただけ!」と思った。

 アスナは夷族に追われ、川に入り、川の中を逃げた。が、捕まって首を絞められているところで再びシンに出会った。この運命にふたりは泣いた。そこでシャクナ・ヴィマーナを見つけて、まだ旅の中をぐるぐる回っていることに気づいた。

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 ケツアルトがやってきたので、彼の腹の中に入れてもらって、険しい崖を下りフィニス・テラの門にやってきた。そこで先生に会った。先生はウラビスを差し出してクナ・ヴィマーナが現れるのを待っていた。クナ・ヴィマーナは人の形に変わり、先生の望を聞いた。

 アスナが先生に近づくと自分の魂が吸い取られるような感じがして、そのときシンが「魂を渡すな!」と叫んだ。先生は自分の目玉をクナ・ヴィマーナに差し出し、さらにアスナをも差し出して妻リサに会っていたのだった。シンがウラビスを叩き割った。すると、クナ・ヴィマーナは去って行った。鉱石ラジオの鉱石が割れていた。

アスナがシュンと別れて目覚めると、許してくれと泣いて詫びる先生をそっと抱いた。

 シンと先生はアガルトに残ることにして、地上に戻るアスナを見送った。

 感想:

アスナがアガルタの旅で得たものは?

タイトル「星を追う子ども」から、アスナ、シュン、シン、マナの物語。子供たちのキャラクラーが見え難く、これに森崎先生が加わり、物語の焦点がぼやけ、テーマをうまく握り切れなかったように思います。

アスナはアガルタを旅し、死の門フィニス・テラを潜り、シャクナ・ヴィマーナの生贄に供せられそうになりながら地上に戻ってきた。さて、どんな体験をしたのか?

亡くなったシュンに会うためでも、父に会うためでもなく、ただ「孤独を癒すためだった」という。

命に限りがあるから星を見て、自分が誰からどうやって生まれたのかと自分のルーツを確認するシュやシン、マナら地上人と出会い、同じ仲間意識を持ち、危険に陥った際に幾度も助けられ、母の言葉に励まされ、最後には夢のなかでシュンにも会えて、“生きる力”を貰ったと思います。

 生を感じさせるに絵がすばらしい!

旅でみる風景がその時々に心情に合うよう清逸に描かれていました。美しい野原、湖沼、草原化したカルデラ、満天の星空、雨などが生彩で“命を感じる”ように描かれ、すばらしいです。この景色にアスナは生きる力を得ていくと思います。これらの絵のなかには、後の作品に生かされて、大きな作品へと繋がるものがあり、楽しめます。

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 シュンやシン、森崎先生が怪獣や夷族、僧兵と生きるために戦った。この戦闘シーンがジプリアニメで描かれるものに似ている

アニメ作家の志す人には、ジプリアニメは大きな憧れであり、壁。監督もこの大きな重圧に苛まれていたのでしょう。この作品がそうであったのではと想像します。

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