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「幼な子われらに生まれ」(2017)

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原作は重松清さんの同名小説。脚本担当が荒井晴彦さん、監督三島有紀子さん、主演に浅野忠信さん、ヒロイン田中麗奈さん、宮藤官九郎寺島しのぶさんらが共演です。公開日が「関ケ原」と競合して、どちらを先に観るかと悩みましたが、原作・脚本・監督・出演者からこの作品に決めました。(#^.^#) 原作は未読です。

原作は1996年に発表された小説で20年ぶりに映画化されたもので、現在社会の大きな社会問題のひとつ血縁で結ばれない家族像を描いた話しです。
物語は、再婚した中年サラリーマンが、現在の妻とその連れ子、前妻と暮らす実の娘、そして新たに授かった命をめぐり、家族の在り方を模索する物語です。
難しい話しではなく、生活しているなかで自然と気付く、教えられるという生活感のある物語になっているところがいいです。
血の繋がらない娘に「お父さんは嫌い」といわれた父親が元妻や妻の元夫らと交わることで、不器用な夫婦がなんとなく家庭という器にみごとに収まるのがとてもいい。
父親になるキーワードは「お父さんになろうとしない」「おともだち」「相手の気持ちを聞く」です。(#^.^#)

登場人物の間で交わされる会話がとても面白く、間を楽しみ、考えさせられます。重松さんの小説に荒井さんの脚本、三島監督の作風が見事にコラボした作品になっています。
 
キャスターの皆さんの演技が、とても自然でリアルです。浅野さんの娘の罵倒に耐えに耐えて耐え抜く演技。元妻寺島さんとの、出番はわずかですが、出会いから別れ、今の心境に見せる演技が見事です。そして親と子供の関係がとてもうまく描かれています。
このすばらしい物語がなぜTVドラマにならなかったのか?ならなくてよかった、「このスタッフとキャストで観たかった」。(#^.^#)
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物語、
主人公田中信(浅野忠信さん)は元妻友佳(寺島しのぶさん)との間にできた小学校6年生の沙織(鎌田らい樹ちゃん)と公園で遊びながら「もし、弟ができたらどうする」と聞くと「私は余り者になるんだよね」と言う。「絶対に余り者にはしない」と、現在の家族の元に帰るのでした。浅野さんがこんなにやさしいお父さんになるのかとびっくりです。イメージ 2

信はケーキを買って帰宅。妻奈苗(田中麗奈さん)とは再婚で、前夫との間に長女薫(南沙良さん)と次女恵理子(新井美羽ちゃん)がいます。妻と恵理は喜んで信を迎え、ケーキを食べるが薫は無視して食べない。再婚して、今度こそ、ちゃんとした家庭を築くためと頑張っているのに。原因は妻が子供たちに子供ができたことを喋ったこと。信はメールで実の子沙織に弟イメージ 3ができたことを知らせよい関係ですが、先夫との間にできた薫との関係に困惑し始めます。薫の態度に「新しい子供を家族に加える必要があるのか」と悩みます。ここでの、麗奈さんのべたべた妻がいい感じです。
 
出勤すると上司からやんわりとリストラを匂わされ、子会社のネット通販会社の倉庫番(注文品を探し台車に乗せる作業)に廻されます。妻に言い出せず、ひとりで悩むことになり、仕事の能率も上がらず職場のリーダーに嫌味を言われる。
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帰宅して、「次に生まれる子はどんな子がいいかな」と恵理に聞かれて「恵理のような女の子」と答えると薫が「やっぱりそういうと思った。嘘よ!」と言う。「余計なこと言うな!」と声を荒げると、「命令する権利はない、お父さんみたいに」と言い、「私の本当のお父さんに会わせてよ」と絡んでくる。
薫は信が菓子を買ってきても手も付けなくなる。朝の出勤時、「パパは一人でいい。昔の叔父さん、へんかな!」と嫌味を言う。信はものも言いたくなくなる。職場も出向が正規となり、「こんな毎日いやになる」と同僚に話すと「ひとりカラオケ」が良いと教えてくれる。
 
妻奈苗に「沢田(宮藤官九郎さん)さんどこに住んでいるの?。薫に会せてみようか」と相談すると「ボロボロになって別れたから居場所を知らない」という。「私としては薫が会うより、あなたが会って欲しくない」という。血の繋がりというのは何にも勝る親子関係で、妻は本気で自分と薫の関係を心配してくれているのかと悩む。
遂に、ベッドで妻に「転職で給料が上がらない。産むのを止めて欲しい」と話す。妻は「そうなの」と黙ってしまう。
 
出勤時、妻が「薫が昔のパパは何しているのと聞いてきた」と話す。これを聞いてムカつき皿を割る。
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仕事中に元妻の友佳から「会って話したいことがある」と電話がある。13年前、友佳は大学の助手で、お互いに愛していたが、ふたり目の子供ができたとき「子供が生まれたら今の仕事が続けられない」と始末し、これが原因で別れた。
友佳に会うと「沙織との面会は8月以降中止、夫と一緒に居させたい」という。「聞かないのね、今の私の気持ち。末期ガンの夫がいるのに前の亭主に会ってる私に」「なんで堕ろした、なんでそうした。理由ばっかり聞いて、産婦人科に行った私の気持ち、一人で決めた私の気持ち。何にも聞いてくれなかった。どんな気持ちか聞かれていたら・・・」と言い「あなたは後悔していることはないの?」と友佳が問いかける。
 
信は、いつもの斜交エレベーターを使わず階段を歩いて、深刻な表情で帰宅。「この家が嫌か。パパと会いたいか」と薫の気持ちを聞くと「一緒にいたくない」と言う。妻も加わって薫の気持ちを確認すると「この人はパパではない」と言う。真は止めていたタバコをふかします。
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信は、横田の米軍基地を訪ね、食堂で働いている沢田に会う。薫が会いたがっていることを話すと「そんな父親ではない、会いたくない」と言う。
「奈苗と一緒にいたころは、鬱陶しかった。今はひとりで、野垂れ死にしようがひとりがいい」と言い、妻に暴力を加えたことを告白します。いつもは怖いクドカンさんですが、ここでは精彩のないおやじさん役をうまく演じています。(笑)

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帰宅し、薫とふたりだけで話します。「お父さんは会いたくないと言っている」と言うと「本当のお父さんだから会う」という。「暴力を受けたんだろう」と言っても「そんなことはない」と否定する。話し中に薫が突然お腹が痛くなったとトイレに(生理)。信は、6年前、薫を背負って階段を上っているとき「あなたのこと、ママの一番仲のよいおじさんといってくれるんですよ」という奈苗のことばで結婚を決意したことを思い出します。
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薫が部屋に鍵を掛けると言い出し、奈苗が「このままだとこの家がおかしくなる」と取り乱す。「もともとおかしいんだ」と言うと泣き出す始末。「薫を沢田に会せる」と言っても「それは薫の嘘!」と受け入れない。
薫が恵理に「赤ちゃんができたら捨てられるよ!」と入れ智恵するようになる。そして鍵を買ってくる。遂に信はキレる。
こんな時に、奈苗が「妊娠高血圧、どうしたらいい」と聞いてくる。「俺はわからん。堕ろすしかない。今ならきれいに別れられる、子供を堕ろして別れよう。お金は全部払う」と、信の心は完全崩壊です。「こちらから閉じ込めてやる」と、薫の部屋に外から鍵を取り付け始めます。
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信は競艇場に沢田を訪ね、薫に会うための交渉をします。万が一、一緒に過ごすことも考えて50万円を渡し、明後日デパートで会うことを約束します。
 
その帰り道、沙織に会います。沙織は信の帰りを待っていたようで喫茶店に入り話しを聞くと「ママが死ぬと思ったときはキューンとしたけれど、お父さんが死ぬことに悲しみがない。仲よくした人が死ぬ感じ」と相談する。イメージ 10
「パパでもそれはしょうがないと思う」と話していると父親危篤の電話があり、病院に急ぐために奈苗に車で迎えに来させる。病院に向かう車のなかで恵理が「お姉ちゃんなんていうの?」と聞くと沙織が「私は恵理ちゃんのパパとお友達です」と答え、これでふたりがすっかり仲よくなっていく。病院に着くと奈苗が「沙織を病室まで送って行ったら」と勧める。病室に入ると沙織が「お父さん、私のパパだよ」と紹介する。そして父親の手をとって泣き始める。信は「江イメージ 11崎さん、沙織を育ててくれてありがとうございます。可愛がってくれてありがとうございます」と礼を言って部屋をでます。これまで沙織を慈しんでくれた江崎の生活や気持ちを思いやることになり、泣けます。
帰宅して恵理に「お姉ちゃんが話していることは本当で、パパは本当のパパではないが恵理が一番大切だ」と話して聞かせます。恵理は「ピンポン、わかった」と。
 
薫が沢田とデパートで会う日。奈苗が「聞かれたらママも恵理も元気ですと言って。それから体調には気おつけて」と送り出す。信は気になり恵理を連れてデパートの屋上遊具場に行くと、沢田がいつもと違ってスーツ姿でいる。沢田が「あれは恵理ですか、大きくなったんですね。ここで薫と遊んだ日のことを思い出していました。あの話しは止めましょう」と50万円を返し、薫にとプレゼントを渡します。喋りませんが、沢田の気持ちが伝わってきます。

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信が家に戻ると薫が居る。「楽しかったか」と聞くと「最高に楽しかった」と言う。「開けて見なさい」とプレゼントを渡す。白い犬の縫いぐるみに「薫ちゃんへ」のタグが添付されていた。

「嘘は言ってはいけない。どういう気持ちになったか分かったでしょう」と言うと薫が泣き出します。信はやさしく肩を抱くのでした。

いよいよ赤ちゃん誕生の日。産院で信と恵理がその時を待っているが、薫がまだやって来ない。恵理が「お姉ちゃんは?」と聞くので「お姉ちゃんは決めたんだよ、千葉のお婆ちゃんの家に行くと。中学になってからだけれど、今日はリハーサルなんだ」と話しているところに薫がやって来てくる。そのとき赤ちゃんの泣き声。3人は病室に入り生まれた幼な子に対面。「幼な子われに生まれ」、信は自信をもって父親になれるでしょう!
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