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宮﨑あおいさんを応援します

「blank13」 (2017)

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斎藤工さんの長編映画初監督作品。これに今人気の高橋一生リリー・フランキー松岡茉優さんが出演と言う豪華版です。にもかかわらず見逃していて、WOWOWで観賞です。
原作者は、はしもとこうじさんの実体験に基づくストーリー。
工さんの溌溂とした若さが感じられる演出、一生さんをはじめ出演者みなさんのすばらしい演技を楽しむことができました。喪服の茉優さんは一段と美しく、成長した演技を見せてくれます!
 
あらすじ(感想):
麻雀・パチンコで借金を残して父親・松田正人(リリー・フランキー)が失踪した。13年後、病魔に侵され余命僅という状態で再会することにあった家族。母・洋子(神野三鈴)と兄(斎藤工)は会うことを拒否したが次男コゥジ(高橋一生)は楽しい想い出があり会ったが、父は相変わらずの金のだらしなさにうんざりする。そんなある日、父親は突然病院で亡くなった。そんな父親を送る家族の物語です。
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テーマは「人の評価は葬儀にあり!」です。工さんがこのテーマに取り組んだことに脱帽です! わずか70分という短い時間の中で、“ひとの人情”をうまく描いていて、これからの作品に期待です。
 
チラシのデザインが粋ですね! 監督は俺!というのが見えて面白いです。
 
作品のメイン部は葬儀の場で、僅かな参列者の想いで話に家族が知らなかった父親を知るというところです。
このため、タイトルが出てくるまでに時間の半分以上を費やすという異常な作品です。() さらに冒頭で、「火葬とは」と長々と解説があります。
何故この説明は必要であったか、瞬時に父親の一生の記憶が消えることへの哀惜でしょうか。
 
火葬の説明後、父親の葬儀会場「会館」でコウジの恋人西田サオリ(松岡茉優)が会葬者を受け付けるシーンから物語がはじまります。
隣の大きな寺院で行われる“西田家“の葬儀には、次々と会葬者が現れるが、こちらの”西田家“には、誰もやってこない。
会館にはコウジと兄が着座している。喪服の母親は、夫が書いた離婚届けと家を出て行ったときに残したタバコとライターをもって、公園で夫の思い出を偲んでいる。
 
葬儀が始まるまで、コウジの亡き父の思い出が描かれます。
幼いころ雀荘に父を訪ねたこと、よくキャッチボールをしてくれたこと、借金取りで身を潜めたこと、父が出て行ったときのこと、母の父への思い、兄弟が新聞配達で母を支えてことなどが、感情の籠った映像にまとめられていてとてもよい。
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また、身籠った恋人サオリのコウジが父正人に会って欲しいという感情もよく理解できます。
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僅かな会葬者で葬儀が始まり、僧侶の勧めで、会葬者の正人に送る言葉や想い出が語られます。いつの間にか会葬者のひとり岡村(佐藤二郎)が司会者となり、オカマに手を貸すなど弱い人に優しい人であったなど次々とユーモラスに語られます。これまでの重苦しい雰囲気が一変する演出がみごとで、とても愉快でした。
 
この葬儀に連接する形で母親蓉子の行動が描かれ、蓉子は夫の優しさを知っていて夫を愛し続けていたことが分る演出は見事でした。
蓉子が公園から家に戻り、窓辺に座り形見のたばこを外に向けてふかすと、す~と部屋に戻ってくるという映像には泣かされます。こういう絵を撮る人なんですね、工さんは!
 
隣の寺で行われている松田家の葬儀では、大勢の会葬者で溢れ、派手に泣く人が居る。これは、葬儀屋さんが頼んだ泣き演技専門の人とか。()
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最後に、コウジの挨拶「父が困った人に親切だったことが分かってよかったです。僕は父が大嫌いです。でも少し好きになってきました。正直、分かりません。今日はありがとうございました。」で締め括り、兄とコウジそれにサオリで火葬炉に入る父親を見送ります。
 
すっきりした小作品でしたが、とても感情の籠ったもので心に残る作品でした。エンデイングの主題歌が良いです!
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                                    笹川美和 / 家族の風景