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「サイレント・トーキョー」(2020)総理に痛みは届いたか!

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クリスマスの東京を突如襲った連続爆破テロに翻弄される国家と人々の姿を克明に紡いだクライムサスペンス。

キャストで観ることにしました。(笑) ところが渋谷の爆破テロ事件映像には息を飲み、その後に明かされる爆破テロの目的には今の日本には必要だと“思える”メッセージがありました,が、自衛隊員が絡む事件の背景にはもっと大きな世界的視点が必要だと疑義を感じます。

原作は秦建日子さんの同名ベストセラー小説「サイレント・トーキョー And so this is Xmas」、未読です。未読では分からないという展開でしたね!(笑) 緊張感の持続時間:99分に収めるためにあえてこうしたんでしょうか。

監督は「SP」シリーズの波多野貴文。脚本:山浦雅大、撮影:山田康介、音楽:大間々昴。

出演者:佐藤浩市石田ゆり子西島秀俊中村倫也広瀬アリス井之脇海

勝地涼、加弥乃、鶴見辰吾、他。


映画『サイレント・トーキョー』予告 2020年12月4日(金)公開

あらすじ(ねたばれ):

12月24日。恵比寿、山口アイコ(石田ゆり子)は夫へのクリスマスプレゼントにと手袋を買い、アークブレイスの喫茶店でサンドウイッチを買い、広場のベンチで人待ち。11時07分、XTテレビに1200爆破との予告があり、アルバイト採用の来栖(井之脇海)が先輩の高沢(金井勇太)と恵比寿に急ぎ、ベンチでアイコに出会う。

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アイコの「座って!」で高沢が座ると、「爆弾が仕掛けられているから立たないで!」と、高沢を残して来栖を連れてアークブレイスの管理事務所に走り込み、「爆破が発生、放送して!」と管理人に訴える。1200定刻に爆発!しかし、音と風圧、煙のみ。それでも街は大混乱。これをじっと見る男・朝比奈仁(佐藤浩市)、「いつもそうとは限らんぞ!」と。

アイコが来栖を自分のアパートに連れていって、アパートにはTVと封書しかない、「この封書読んで!」と渡す。「俺は犯人と思われる」という来栖に、「みんな分かっています!ジャーナリストの志望は叶うね!」と励まして送り出した。このミステリアスな展開が面白い。

警察の現場検証が始まっていた。

須永(中村倫也)がアークブレイスの喫茶店に入って、サンドウイッチを食べ、新聞を読んでいた。

午後2時46分、渋谷署刑事課警部補の世田(西島秀俊)と同巡査部長の泉(勝地涼)が捜査会議に急いでいた。

捜査会議の途中で、「犯人声明」と伝令が飛び込んできた。「標的は渋谷・ハチ公前広場、総理大臣と一対一の対話を要求。期限は午後6時。」と。「これは戦争!」と犯人がTVを見ていた。

総理(鶴見辰吾)が「従来の方針ではこの国は守れない。万一侵略があった場合自らが立ち向かう」と訴えるTV放送を朝比奈が見ていた。

須永は喫茶店で待っていた探偵(野間口微)と面談。「頼んでいたもの!」と茶封筒の資料を受け取った。

午後3時21分、高梨真由美(広瀬アリス)と印南綾乃(加弥乃)がクリスマスイブをどう過ごそうかと。ふたりは合コンで須永に出会い、綾乃は須永に惹かれが話もできなかった。が、彼に自宅に呼び出され焼き鳥を御馳走になっていた。

そんなことから、渋谷でイタリア料理でもと誘ったが、「横浜!」と断られた。が、渋谷で食事と二人は急いでいた。

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警察が「渋谷駅周辺警備態勢」へと移行。世田と泉が恵比寿の現場を視察。ここで須永に出会った。「1200どこにいたか?」と職務質問。「アークショップです」と答えるが世田にはちょっと引っかかるところがあった。須永の携帯ストラップに手榴弾がぶら下がっているのが気になった!

須永は自分の事務所 に戻って“留守電”を確認し、TVで恵比寿の爆破事件を見ていた。

総理が「日本がテロに屈することはない。断固戦う」とTVで宣言。

渋谷ハチ公広場前では人が集まり始め、警察の規制が始まった。須永が結婚するために上京してきた母とその相手にホテルで会っていた。「渋谷にはいかないほうがいい」と伝えた。

午後3時55分、ヘリの監視、TV中継が始まった。機動隊が到着、DJポリスが登場、規制が強化される。

テロがあると予告されているにも関わらず夥しい人が集まり始めた。その中に真由美と綾乃がいた。世田と泉が到着し監視を続ける。

真由美が「横浜にいるはずの須永がいる」と彼を追う。須永は人混みのなかで動画写真を撮っていた。

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クラッカーの炸裂でパニックが起き、規制が崩れ、ハチ」公広場へのバリケードが崩れ、カウントダウンが始まった。

一瞬音が消えた! 「おめでとう、メリークリスマス」の歓声。そこに“バーン!!”

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吹っ飛ばされる様がスローモーションで描写される。爆破シナリオによる沢山“エキストラの演技”がみごとで、とても臨場感のある爆破シーンになった。

世田が目覚めた!負傷者の悲鳴の向こうのビルに光ものが見えた。ビルに上がると怯える来栖だった。「だから戦争と言ったのに!」と犯人が見ていた。

須永は事務所で爆破の映像を、朝比奈はTVで総理のテロに屈しない声明を見ていた。アイコが総理の声明に涙した。

来栖は「アイコさんの指示で動き、渋谷で撮った映像が全て。アイコさんは爆弾を運んでいる」と世田に証言した。

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真奈美は現地の応急治療所で目覚めた。綾乃を心臓マッサージしたことを思い出し、次第に記憶が戻り、須永が何か知っているかもしれないと事務所を訪ねた。須永が出かけるというのを止めて「あんた渋谷の現場にいたでしょう」と問うと「50m離れていた!」という。「どうしてあんたがそんなこと知っているの?」と彼が居なくなった部屋を調べた。机の中に新聞の切り抜き記事と」封筒を見つけ、須永が犯人ではないかと警察に駆け込んだ。

首相に再度爆破警告がなされた。鈴木が「総理が応じていれば!」と世田に話す。世田は「犯人は笑っているよ」と。こんな上司が偉くなるんです!

栗栖は世田の事情聴取後、「お前のインタビュー記事を書かせてくれ!お前は正社員になれる!」とプロデューサーから原稿を渡され、ホテルに軟禁された。原稿みて、「こんなの書けない?」とゲロ吐いた。

須永が車で移動中、母からの電話で安全であることを確認しほっとしていた。

夜8時20分、須永がある喫茶店に「年配の店員さんは?」と入ると、世田の拳銃が頭に「知っていることを話せ!」

須永の頭にあったのは母親が止めるのを「お前に何が分かるか!」と出ていく親父の姿だった。(笑)

須永が「親父は自衛官だった。やっと母親が幸せを見つけたのに、こんな男が帰ってこられては困る。あんたが殺してくれ!取引しよう!」と父親・朝比奈仁からの留守電が事務所にあることを教えた。

世田が須永の事務所を調べると、須永が表紙の服飾雑誌が転がっており、メモがあり次の爆破場所が東京タワーと分かった。世田は鈴木に「頼みがある!」と連絡を入れた!

午後8時53分、世田が手錠した須永を連れて、東京タワーの見えるとある場所に向かっていた。須永は東京タワーが見えるレストランで食事し「しばらく居なくなる」と出て行った父親のことを思い出していた。

朝比奈とアイコがレストランで会っていた。朝比奈が「あんたの爆破コースは俺があんたの夫・里中(毎能克哉)に教えたもの。最後はレインボーブリッジだ。里中は不理尽な死、国民は知らない。あなたの悲しみは分かるだからあなたを救いた!」と話したところに世田と須永が現れた。

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須永が「もう止めて欲しい!東京タワー爆破爆弾の解除コードを教えてくれ!」と朝比奈に訴えると、「爆弾はここにある!爆発は無関心な日本人にだ!」と、朝比奈は中里とカンボジアで国連の要請に基づく地雷処理をいているとき、「あなたたちのせいでみんな死んだ!」と少女が地雷を踏み自爆し、里中が負傷した光景を思い出していた。

午後9時40分、

「今からレインボーブリッジに行く。無事着いたら東京タワーの爆弾の解除パスワードを教える!」と車でふたりは走り出した。これを世田と須永の車が負った。

アイコは車中で帰還した夫は精神を病み「あの国に学校を作ってやる。お前を守る為に!」と爆弾の作り方を教えた日々を回想していた。イブの日、夫の作ったルートを巡ってみようと思ったところで、首相の演説を聞いた。「戦争の何を知っているの?なんであんなことを話すの?私と夫が過ごした時間は僅かだったがずっと戦争だった。だから総理を選んだ国家に、戦争とはどういうものかを教えたかった。

朝比奈は「とんでもない思い違いをしてないか」と携帯で「サンドウイッチ美味かったか?悪かったな!無様でも良い、お前の信じるものを信じてくれ!開閉パスワードはwar is overだ」と須永に伝えた。

レインボーブリッジを走る朝比奈の車は東京湾に消え爆発した。遺体は朝比奈だけだった。

栗栖にアイコから「来栖君お元気!」とメールが入り須永に会いに行き「アイコはレインボーブリッジを爆破するつもりだったが朝比奈が止めたこと。朝比奈が『同じ痛みを感じていた。この国を信じたい!もう一度チャンスをやろう』とアイコを説得したこと」を知らされた。

爆弾はまだあります。あなたのそばに!」とアイコがつぶやいた!

感想:

爆破警告しても渋谷に集まって来る平和ボケの日本に、一瞬の沈黙を置いて修羅場に叩き込み、次の爆破があるぞ!さあどうすると犯人を追いながら、爆破テロの目的を明かす展開は見事でした。

個々の群像劇は上手く繋がり、疾走感がありましたが、時に差し込まれる回想シーンが、現在の人物にどう繋がるのか?いつのことか?深みがない!ということで混乱しました。(笑)

さて問題は犯人像の設定、

UN要請で某国の地雷処理のため派遣された自衛官朝比奈(里中)が一人の少女が死を掛けて訴えた自爆事故を目にして、戦争への道を切り開き始めた国に、戦とは何か訴えるためのテロを行う、こんなことがあるのかという疑念。帰国後精神的に病む里中を懸命に支えた妻・山口アイコが、夫の死は戦争(地雷処理)に参加したためと戦争のない世界を訴える心情は理解できますが、これほどのテロを個人として行えるかという疑念。

さすがに朝比奈は最後にブレーキがかかったようですが、こんなことが起こるなら日本は滅びます。このような設定こそがまさに平和ボケだと思いました。(笑)

「爆薬の効果範囲は50mだから近寄らなかった」という須永の話を聞いた真奈美は須永が犯人かも知れないと疑念を持った。50mは砲弾の致死半径。修羅場を経験したからこそ出てくる疑念、この疑念こそが今求められる。国内法で海外派遣される自衛官の苦しみを思うと、観念的な防衛論議でなく、痛みを知った論議が必要だと訴えている作品だと理解しています。

役者さんの演技で見せる作品だった、なかでも中村倫也さん、広瀬アリスさん、そしてエキストラの皆さんが頑張りましたね。とにかく渋谷の爆破テロ映像はすばらしかった!

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