映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「ピータールー マンチェスターの悲劇」(2019)

f:id:matusima745:20210915194116p:plain

1819年にこんな凄惨な事件が英国であったということを知りませんでした。イギリスの名匠マイク・リー監督作品ということで、WOWOWで鑑賞しました。

日本では1819年に阿部正弘江戸幕府老中首座)、安藤信正江戸幕府老中)、1823年に勝海舟が誕生、こんな時代の話です。

監督・脚本マイク・リー撮影:ディック・ポープ、編集:ジョン・グレゴリー、衣装:ジャクリーン・デュラン、美術監督スージー・ディヴィス、音楽:ゲイリー・ヤーション。

出演者:ロリー・キニア、マキシン・ピーク、デヴィッド・ムースト、ピアース・クイグリー、ティム・マッキナリー、フィリップ・ジャクソン、レオ・ビル、他。マイク・リー監督作品ということで豪華です。

1819年、ナポレオン戦争後で困窮のさなかにあるマンチェスター。深刻化する貧困問題の改善を訴え、政治的改革を求める民衆6万人がセント・ピーターズ・フィールド広場に集まった。鎮圧のため派遣された政府の騎馬隊は、非武装の群衆の中へ突入していく。多くの死傷者を出し、イギリスの民主主義において大きな転機となったこの事件の全貌を描くというもの。

選挙権取得のための民衆運動マンチェスター生まれの監督がこの歴史を知らなかったというほどに、印象の薄い革命史だったんでしょうか?この映画で事件の概要を知ることができ、作品の意義はここにあると思います。

複雑な事件の背景がシンプルにまとめられ、美しい絵とセリフ特に演説で分かりやすい。Wikipediaを読んでもピンとこないが、この作品を観ると理解できます。😊

革命史における位置づけは分からないが、民主主義の原点を知り、衆議院選挙を前にしてこの作品を観たことに意義がありました。お勧めしたいと思います。

200年前の事件を民衆、革命家、行政官、国家の目線で、限られた尺の中で、描くのは大変だったろうと思います。特に衣装やメイク、乗り物と歴史再現がすばらしく、ラストの騒動描写は圧巻の絵巻物になっています。

あらすじ(ねたばれ):

ヨーロッパ諸国を巻き込んだナポレオン戦争はウォータールーの戦いで終結した。フランスを破った指揮官は英国のウエリントン侯爵だった。

ラッパ手・ジョセフ(ディヴィッド・アームスト)は戦場が静まり返ったことで終戦を知り、故郷マンチェスターを目指して帰還中であった。

そのころ、貴族院は国民の謝意を示す必要があるとウエリントン侯爵に75万ポンドの報奨金贈与を議決した。そしてウエリントン侯爵の指揮下で活躍したビング将軍がランカシャー地区の暴動鎮圧のため軍司令官を命じられた。

f:id:matusima745:20210915194153p:plain

ジョセフは帰宅を喜んで家族が集まったが、彼は寝た切りで戦の話もしない。

父・ロバートは織物工場の職工。マンチャスターは織物の街で栄えていたが、今では不景気で週数日の勤務。母(マキシム・ピーク)は自製のパンを路上で売ってるが、小麦の値上がりで儲けにならず、借金で卵を買わねばならない有様。兄は失業中。その嫁は小さな子どもを抱えていた。目が覚めたジョセフは仕事を探すが見つからない。

家族の中で生き辛さが話題になる。「穀物、庶民を苦しめる悪法だ。議員のほとんどは儲かっている地主!」と。

路上で老女が生活苦を歌にして唄っていて、これが心に響きます。不景気で泥酔者や窃盗犯がはびこっていた。公安判事は容赦なく刑を下す。

こんな世情で、酒場が演説会になっていた。

弁士が「政府の腐敗を誹謗や選挙権がないと自由も財産も保証されないと演説。これらのリーダーであるナイト(フリップ・ジャクソン)が演説を総括する。

今を救済できるのは議会だけだ。議会の役割は市民の幸せと法の下の平等だ。故人の安全と財産を守ることだ。労働を神聖なものだ。庶民院の議員を選ぶ権利は認められている。そのため以下の改革を求める・・

選挙区の区政の平等化。

人口に見合った議員数。

議員はその選挙区の居住者であること。

全ての成人男性が投票権を持つこと。

議員は毎年選挙で選ばれること。

この演説にミルトン出身の弁士サミュエル・バムフォーロ(ニール・パル)が

官憲は腐敗している。我々は自分の代表を選び政府に反論し、人間としての尊厳を取りもどす」と付け加えた。諄いですが、あえてこの文を載せておきます!

ここにロバートとジョセフが参加し感激して家の戻り家族に聴かせ、「このために団結するんだ!」と言い聞かせた。

工場でも演説会が持たれた。これにもロバートとジョセフの兄が参加していた。弁士に立ったバグリー、ドラモント、ジョンストンの過激な言動に、ナイトは「国王を追放するのが改革とは思えない!」と結んで演説会を終えた。

兄が「摂政王太子(ティム・マッキナリー)に会いに行くと言い出し、母が「暴力は捨てなさい!小さいところから始めないと」と厳しく諫めた。女性の家族を守るという本姓がよくでた言葉でした!

この演説会を隠れて副公安官のネイデンが聞いていた。治安判事たちはネイデンの「武装蜂起を企んでいる。証拠はないが作ればよい」という案に賛同して、貴族院議員シドマス卿に「膨大な敵の市民が蜂起を企んでいる。彼らのゴールは共和制だ」と書き送った。これは事実でないが、万一起こった場合の責任逃れでしょう。これを知った内務大臣は過激な活動家の排除を指示した。

ロンドンにおけるヘンリー・ハントの演説会。バムフォードと親友のドクター・サムが参加し演説を聞いた。「小さい波を大きくして悪しき体制を崩壊させる。そのための選挙法の改正が必要だ」という演説は見事でした。バムフォードはハントに会い「見事な演説だ!」と感想を伝えた。

シドマス卿のところに「改革派の情報ならなんでも売る」というシスター・チャーリーという男が現れた。

f:id:matusima745:20210915194235p:plain

貴族院で摂政王太子が「治安維持のためあらゆる手段を講じて不満分子を封じ込める」と宣言した。その帰り、不平分子(農夫)から芋をぶつけられ馬車のウンドウがひび割れるという事件が発生した。大法廷で「前代未聞の事件!石を投げつけられた。フランス革命の悪しき考えが今の英国民をそそのかしている。これには暴力のみが解決できる」と人身保護法の停止を決定した。

バムフォードはマンチェスターオブザーバー社を訪ねて「大集会にハントを呼びたい!聖ピーターズ広場で政治集会を行う演題は参政権マンチェスター独自の議員選出だ!」と社主・ジョンソン(トム・ギル)に提案した。ジョンソンは「この田舎に話が合うか?」と疑念に思ったが、ハントに依頼文を送った。

ハントに送った依頼文が内務省に伝わっていた。当時の通信システムなら簡単です!内務大臣はビンク将軍に「ハントが加わった集会は危険性がある」と通報した。

マンチェスターでは大集会にために、マンチェスター改革婦人会が結成され演説会が実施された。ジョセフの母も参加した。「男性たちを支援しよう。一致団結が大切、集会に参加しよう」と訴えた。話す言葉が分からないという女性たちとの言い争いが面白い!

ジョセフの家族は全員参加することに決まった。8月の第2月曜日(工場は休む)、平和的にやる、大人も子供も参加。しかし母親が「必ず治安部隊が出る」と不安を漏らした。

マンチェスター連合会を結成し、音楽隊も入って、集会を平和的にするため、済々と行進するなどの訓練が実施された。

しかし、急進派の活動家が大会の趣旨に反する「人民よ!武器を!」と激しい演説をする。彼らを副治安官ネイデンが牢に送った。

内務大臣はギング将軍に「大会当日現地に行って欲しい」と要請したが「所要がある」と断り、代理にストレンジ中佐を行かせることにした。

ハントがマンチャエターに到着したが、集会はマンチェスターの代表議員選挙を取り上げていると当局から1週間延期となっていた。ナントはここに長居すると危ないと言ったが、ジョンソンらが説得してジョンソンの家で過ごしていた。

そこにナイトが訪ねてきて「平和的にやるが、万一に備えたい。1000人に20名ほどの者に武器を持たせたい」と提案したが、ハントは「自分の演説でそんなことは怒らない!」とこれを拒否した。

そして彼は治安官らに会い「逮捕状が出ていない」ことを確認した。彼が帰ったあと、治安官らはあざけっていた。

ハントは雑誌記者のリチャード・カーライルが「参政権だけでない、教会の抑圧からの脱却、王政の廃止」で援助したいと訪ねてきたが「参政権だけだ!」と断った。

大集会の当日。

f:id:matusima745:20210915194317p:plain

各地区から、「議席の売買禁止」「自由と忠義」「愛でひとつ」等のスローガン旗を掲げ、音楽を奏でる中を行進しながら、ピーターズ広場に集まってきた。ナイトが参集者に「思慮深く行動すれば敵が嘘ついていることが証明できる。安全だ!武器は捨てて行け!」と声を掛けていた。広場が人、人で埋め尽くされていた。子供や婦人の姿が目を惹く。

治安刑事、治安官らは広場を見下ろせるビルに陣取り、集会の成り行きを見ていた。「すみやかにハントを逮捕しろ!」という声もあった。

広場の外では騎兵隊と義勇軍がシャンペンを煽って士気を高めていた。

ハントが無蓋の馬車で、他の弁士とともに登場すると、会場が大声援に包まれた。この状態に危険性を感じた治安刑事会の議長が「ランカシャー総督の指示だ」と軍隊に出動を命じた。このときビング将軍は競馬見物していた。これはひどすぎる!

f:id:matusima745:20210915194346p:plain

ハントが弁士たち、女性たちと一緒に壇上に立って「平和と団結!」と声を上げたところでネイデンが登場してハントを逮捕した。奇兵隊義勇軍が一気に広場に駆け込み、大会参加群衆は何をもなすことなく、軍馬に踏みにじられ、修羅場と化した。

f:id:matusima745:20210915194435p:plain

ジョセフは母親が見ている中で胸を剣で刺され絶命した。広場には遺体と負傷者、愛しい人を亡くし泣き崩れた家族が残っていた。この惨状を見た3人の記者は「これは屠殺だ!ピーターズ広場で起こったウォータールーの戦いだ!」と駆け出した。

f:id:matusima745:20210915194414p:plain

摂政王大公は食事中に内務大臣から事件の報告を受け「場所はどこだ?」と聞き「謝意を伝えろ!感謝している」と杯を上げた。

母がジョセフを埋葬しながら「神よ!・・・」。

感想:

今、思うとこんな当たり前の選挙法の要求で、悲惨な虐殺が起きていたんだすね!しかし、未だに完成しない。皮肉ですよね!

選挙の1票は、血を流して得た権利。この悲劇を知ったからには、投票は欠かせません!😊

大規模集会は平和的に行うよう慎重に計画されたものであったが、うその情報やデマで国はフランス改革が波及しては困ると暴力で平和運動を握り潰しました。「マンチェスターの悲劇」は国家がでっち上げた虐殺事件でした。これが恐ろしい!

ラストシーンはラッパ手としてウォータールーの戦に参戦した兵士ジョセフの家族が「神はいないのか」と悼むシーンでした。彼は生まれて、この事件で命を落とすまでに何を成し得たのでしょうか。時代が少し進んでいたらと惜しまれます。冒頭のウエリントン侯爵への報奨金贈与の逸話と比較することで、監督の目線がどこにあったかが分かったように思います。

作品に出てくる演説は説得力があって、今の時代でも使えるというすばらしいものでした。これを名優が行うから尚さらです。(笑)選挙法の改正を訴えたもので、今の日本の現状でもあり耳が痛いです!

         ****