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「天気の子」(2019)この世界で起こることにくよくよするな!前に進め


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「君の名は。」から3年、新海誠監督の新作。楽しみにしていました。前作の大ヒット作のあとだけに、大きなプレッシャーの中での作品つくり、想像を絶する苦しみがあったのではないかと推察します。 

matusima745.hatenablog.com

天候の調和が狂っていく時代を舞台に、不思議な能力を持つ少女と出会った家出少年が運命に翻弄されながら繰り広げる愛と冒険の物語。前作のような体の入れ替わりがないが、気象現象という謎、登場人物の謎めいたキャラクター、追跡劇に、そしてファンタジーな物語に魅せられ、面白かった。
天候が不順で雨が降り続く夏の東京。離島の実家を家出した高校生の森嶋帆高は、なかなかバイト先を見つけられず、東京の厳しさに打ちのめされかけていた。そんなとき、小さな編集プロダクションを経営する須賀圭介に拾われ、住み込みで働くことに。
さっそく事務所で働く女子大生の夏美とともに、怪しげなオカルト雑誌のための取材を任された帆高。やがて彼は、弟とふたりで暮らす明るい少女、天野陽菜と出会う。彼女にはある不思議な能力があった。なんと彼女は、祈るだけで雨空を青空に変えることができるのだったが…。<allcinema>

あらすじ&感想(ねたばれ:注意):
冒頭、「これは僕と彼女だけが知っている世界の秘密の物語だ」というナレーションで始まり、病室のベッドに横たわる人の隣に座る少女・天野陽菜。窓の外に目をやると虹が見える。虹を追って、病院を抜け出し古びたビルを登り屋上に着くと小さめの鳥居があり、願いに手を合わせると、ドーンと青空へ。この映像で、3年前の「君の名は。」の世界に一気に引っ張り込まれる。「これは夢ではない。あの空を僕たち、変えってしまったんだ!」とつぶやく僕。何故、変えたのか、秀逸なオープニングです。

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島を抜け出したフェリーの少年森嶋帆高。どしゃぶりの雨のなかデッキに出てみると、激しい揺れ。そのとき手を貸してくれたのが後に世話になる小さなオカルト雑誌社の社長・須賀(小栗旬)。このとき、一瞬で晴れ上がった空を見た。

帆高は、仕事を探すが見つからず、新宿に流れ着き、金も底をつき、歌舞伎町の路地をうろついているときに、拳銃を拾った。これが、最後まで彼の運命に関わってくる。そんなとき、空腹の彼に、ハンバーガーを恵んでくれたのが陽菜。

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帆高は、連絡船で偶然出会った須賀を訪ね、ここで働くことになる。アルバイトの大学生夏美(本田翼)と一緒にオカルト雑誌のネタ探しを始める。結構な尺を使って、帆高の「東京は怖いよ!」という孤独感や人と一緒にいることの喜びがしっかり描かれ、これが陽菜との強い結びつきの伏線となる。夏美とバイクで取材して回る様が、「RADWIMPS」の曲に乗って、テンポよく語られる。

雨、雨、雨の歌舞伎町。男に「稼ごうよ!」と言い寄られる女の子、陽菜だった。陽菜は、1年前病気で母を亡くし、孤児院に送られるのが嫌で自分で稼ぎ、弟と暮らす貧しい孤独な子。
帆高が彼女を救いだそうとして男に挑みかかり、拳銃を発砲してしまう。帆高はこのことで警察からマークされることになる。

陽菜が冒頭の古いビルの屋上に帆高を誘い、拳銃を発砲したことを責め、「ハンバーグ店を首になって仕事が必要なの」と言い、「今から晴れるよ!」と祈ると雨雲が一気に晴れ上がった!晴れた新宿の街の美しさに“あっ”と息を飲む。

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陽菜は「自分が18歳で帆高より年上、敬語使いなさい!」とお姉さん気取り。
こんな美しい年上の女の子?には、「ペンギン・ハイウエイ」(2018)に見るように、男の子の憧れ!
陽菜のアパートに招かれた帆高は、陽菜のために「天気を呼ぶ」商売を思いつき、ネットで紹介する。雨の毎日だからたちまち人気となり、大繁盛。

陽菜は、晴れることで心が癒されることを知り、このことが喜びなってくる。こんななかで頼まれた明治神宮外苑での花火大会、花火で浮かび上がる大都会東京の夜景、うつくしい映像だった!!

富美おばあちゃん(賠償千恵子)から「雨だと、帰ってきずらい」と旦那さんの初盆を晴れにするよう依頼されたふたり。陽菜が「お母さんも初盆です」というと、「あんたも迎え火を跨いで行きなさい。向こう岸から帰って来ると、空の上は、未知の世界よ」と勧められた。明るく振舞う陽菜だが、ふっと死の影が見える。

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このころ、須賀と夏美はある寺を訪ねて、天井絵の「竜雲と巫女」の絵を見て、住職の話を聞いていた。「この絵が800年前のもの。異常気象に人間がかけずり廻されている。巫女は天と人を繋ぐ糸だ。しかし、巫女は悲しい運命を背負っていた」という。須賀と夏美は「陽菜は巫女の再来でなないか」と疑念をもつ。

依頼の最後は、先年妻を亡くしていた須賀が公園で子供を喜ばせるために、晴れにするというもの。この仕事を終えての帰り、大雨が降り出す。帆高は用意していた彼女への誕生日プレゼントを渡そうとするが、陽菜が体の異変を訴える。彼女のアパートに戻り、晴れ女になったいきさつを聞いると、警察がやってきて陽菜に行方不明書が出ていることを告げて帰って行った。須賀も拳銃の件で警察に追われていることが分かった。

これを知った須賀から、帆高は実家に帰れと言われ、陽菜は弟・凪(吉柳咲良)を連れて逃げ出す準備をしていた。3人は、東京からの脱出を図るが、連日の大雨で首都圏に「大雨特別警報」が発令され、交通機関はすべて運行停止。帰宅難民で宿は大混乱。帆高らは警察の尋問に引っかかるが、これを振り切って逃げた。このとき陽菜が雷を呼び、落雷でビルが炎上大混乱となる。とてもスリリングな展開。

3人はやっとホテルに宿泊できる。帆高は「神様もう十分です。なんとかやってゆけます。このままにしてください」とやっと見つけた安堵に幸せを感じ陽菜に指輪を渡した。帆高は陽菜と泊まれることに胸が熱くしていると、陽菜が「夏美さんからあなたは雨を止める人柱と言われた」と片肌脱ぎ「晴れ女になると肌が透明になっていく」と訴える。帆高は「俺が稼ぐから、元の身体に戻る」と抱いてやる。とても切ないシーンでした。

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帆高が目覚めるとベッドに陽菜の姿がない! そこに警察が訪ねてきた。帆高はこれを振り切って外に出ると、奇跡的な快晴で、そこは水びたしの町だった。水の中に指輪を見つけ、帆高は泣いた。

出会った夏美のバイクに乗り、パトカーとカーチェイス、“あそこ”を目指して走った!拳銃で警察の追跡を振り切り、ビルの屋上の鳥居で陽菜を見つけ、ふたりで空に飛んだ。帆高は「帰ろう!青空なんかどうでもいい」と陽菜を連れ戻した。

突然大雨が降り出し、ふたりが鳥居のところに倒れていた。この日から雨は降り続き、3年を経ても降り続いた。

保護観察つきで島の高校を卒業した帆高が東京に戻ると、そこはまるでベネチアのような水浸しの町だった。見事な水浸しの東京の町を見せてくれます!
富美おばあちゃんを訪ねると「あの辺の東京は200年前は海だった。人間と天気が少しづつ変えていったんだよ」という。須賀に会うと「気にするな!世界はもともと狂っているんだ。あの女に会いにゆけ!」と促された。

帆高は探しに探して陽菜に会えた。「俺たちが世界を変えた!」と声を掛けると「帆高、どうしたの大丈夫!」。「きっと俺たち大丈夫だ!」。

まとめ:

作品は、背景映像美、自然災害と人間、若いふたりの熱い恋、「RADWIMPS」の音楽、いずれも前作の作りを引き継ぎ、さらにもう一歩先に進めたような壮大な作品でした。

気象異変に翻弄されている今、これをモチーフに若い二人の愛を描くという。その結末が、「世界なんかもともと狂っているんだ!」と地球起源に関るほどの大きな視点に立ち戻り「この世界で起こることにくよくよするな!前に進め!」と若い人に説くとともに、監督自らを鼓舞しているように思えた。

監督作品には、民話や風俗などを通じてうつくしい日本の心(言葉)が、時代を超えて繋がれていく。今回は、天気祈願する巫女、お盆行事、鶴の恩返しなどがうまく組み込まれている。

背景が東京の町、新宿。連立するビル群、猥雑な繁華街、それらが雨や晴れの光で変化する様、さらに変化する気象現象特に雨が、リアルで精緻に描かれてすばらしい。特に背景が都市であっただけにその苦労が忍ばれる。

演じる声優さんたち、キャラクターにとてもよく合っている。特に主人公の帆高とヒロインの陽菜。醍醐虎汰朗さんと森七菜さんというフレッシュな二人がすばらしい。そして、実は監督からの粋なプレゼントがあります。「君の名は。」でおふたりが出演したシーン。さてどのシーンで出ていたか?(笑)

この夏、泣けて勇気がもらえる、観るべき作品です。( ^)o(^ )

どこにも居場所がなくなり、世界が破滅したとしても一緒にいる事を願ったふたりの恋物語。監督も思い切った物語をつくりました。この心意気に、次作期待です。
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