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「バルーン 奇蹟の脱出飛行」(2018)

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東西ベルリンの壁が取り払われる10年前手作り熱気球で西ドイツへの亡命を目指した家族がいたという実話。厳しい監視国家でよくもこんなことができたなと興味を持ち、WOWOWシネで観ました。

監督:ミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ監督、脚本:キット・ホプキンス ティロ・レーシャイゼン、ヒャエル・ブリー・ヘルビヒ。撮影:トルステン・ブロイアー。

出演者:フリードリヒ・ミッケ、カロリーヌ・シュッヘ、デビッド・クロス、アリシア・フォン・リットベルク、トーマス・クレッチマン、他。

あらすじ:

1979年、ベスネック市。東ドイツで抑圧された日常を送る電気技師ペーター(フリードリヒ・ミッケ)とその家族は、未来を信じて、手作りの熱気球で西ドイツを目指す。しかし、国境まであと数百メートルの地点に不時着してしまった。「必ず捕まる、このままでは生きていけない」と米大使館に逃げ込もうと企むが、厳格な監視のなかで実行できない。悲嘆にくれるペーター。

父ペーターに「もう一度やってもよう!」と励ますふたりの息子。息子たちのためにとピーターは、気球設計をして貰った親友ギュンター(デビッド・クロス)の家族も巻き込んで、新たな気球作りに着手する。

「気球脱出を企てた無法者を捕えなければ国家が持たない」とペーターたちを追う国家保安省幹部たち。秘密警察を使って落下気球を鑑定して、ピーターに近づいてくる。

ギュンターが兵役を控えているため、決行までのタイムリミットはわずか6週間。不眠不休の作業を続ける彼らに、幸運の風が吹くか、秘密警察の手を逃れ飛び立ち、無事西ドイツに着地できるか。

タイトルからその結果は分かってるんです!(笑)しかし、陰鬱な秘密警察の追跡にハラハラドキドキ。ラストでこれがデカいバルーンに託された!“自由”で吹っ飛ぶというカタルシス“大きな勇気”が貰える作品になっています。

感想:

成年式典挨拶、・・・

「将来労働者や農夫や兵士になりこの小さなIDでビールが飲めるだけでなく、自分の行動に責任を持つ証となる。だが忘れるな!我々は諸君を見守る。社会主義に忠誠を誓ってくれ!」と党幹部の訓示。

この式典に参加してペーターの長男ファラン。かれの恋人クララに目配せし、笑みをもらして聞いている。それもそのはず「西への脱出」を決めていた。

IDで国民を管理し、その行動を常に管理する国家という“自由ない国家”。この怖さを描いた作品と言っていいでしょう。

青みがかった映像、常に秘密警察に気配を感じる描写。テーマによく合っています!

式典に列席していたピーターは車“ヴァルド・ブルザ”にクララの父親エリックを乗せて帰宅中。エリックが「俺は旅行でブルガリアの海岸だ!どこへ行きたい西ドイツか?」と冗談を言ってピーターの家の前で下車。彼は国家保安省の役人だった。国家はこういう特権階級の人物たちによって支配されていた。

しかし、エリックが隣家にいたからこそ、ピーターの行動がバレるまでに時間がかかったとも言えます。(笑)

ピーターは車を降りて、式典を祝って空高く上がる風船が風に流されているのを見て、“バルーン脱出”を決意し、バルーンの設計者ギュンターに「一緒に今夜脱出しよう」と掛けあったが、「2家族登場の容量はない、君たちの幸運を祈っている」と言う。実はギュンターには別の理由「年老いた両親を残しては脱出できない」があった。

地上に国境を引けても、家族の中に国境を引くことはできない。このことも作品のテーマです。

ピーター一家4人は“ヴァルド・ブルザに”バルーンの資材を積んだトレーラーをけん引して、山奥深い発進基地へ向かった。途中でパットロール兵に遭うが、お咎めなし。誰もこんなバカげたことをするとは思ってもいなかった。しかし、このパトロール兵の失態で、のちに2人の士官候補生が首になった。

順調に飛行を開始し、地上からの監視、射撃を避けるために1700mに高度を上げ、32分間飛行したところでガスバーナーが消えて墜落

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あと3~400mで国境を越えていたのにと悔やまれた。10kmの道のりを急いで引返し、何事もないように朝方までに帰宅した。朝、隣のエリックが「カラーでチャーリーズ・エンジェルが見たい」とピーターにTV修理を依頼に来た。(笑)

警備隊が落下バルーンの残骸を発見した。秘密警察隊長の同志中佐(共産党員)がやってきて調査の開始。薬、バルーンの布地、ボンベ等を回収した。

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同志中佐は「一等兵の通報を無視した。逃亡を見逃したと言え!」と二人の士官候補生を処分した。自分たちの責任を回避するための醜い処分!

家族は平静を装っていた。が、妻ドリス(カロリーヌ・シュッヘ)が持病の甲状腺治療薬を回収していないことに気付いた。薬局を調べられると発覚すると怯える。

家族はエリックの紹介でベルリンの豪華なホテルに宿をとり、米大使館への駆け込みを画策するが、秘密警察による厳しい監視の目があり近づけない。いつ秘密警察が踏み込んでくるかと不安な夜を過ごした。

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フランクの機転で米人に“助けて欲しい”という伝文を渡したが全く反応がなかった。

「あとわずかだった!」と悔やむピーターに次男フィッシャーが「もう一度やったが!」と声を掛けた。フランクも「前よりも大きいものを作ってやろう」と励まし、ピーターはもう一度挑戦することギュンターを誘った。

ギュンターは親父さんから「政府に関係ある仕事に就けるもの以外に未来はない、幸せになれ!」と声を掛けられていたので、ピーターの誘いを受けた。が、「兵役が6週間後に迫っているから、その時は自分のことを放って飛べ!」と条件をつけてバルーン設計を引き受けた。

秘密警察は落下バルーンの調査を終えて、薬局と布地の出所、車の目撃者を探し始めた。

ここからはバルーン製作と警察の捜査活動が交互に描かれスリリングでした。

バルーン製作の問題は、

バルーンの容積4200㎥を確保するための1300㎡の布地が必要なこと。手分けして幾つもの店から少しずつ集める。それでも店員が怪しむようになる。そこに秘密警察が聴き込みに現れる。

ギュンターの幼い娘が通う幼稚園で先生が「お父さんは何をしていますか?」と聞くと、娘が「運転手です。毎日ミシンで縫っています。でも言ってはさめなの!」と答える。

秘密警察が幼稚園に、

「園児で何か変なことを言っていないか?」と聞きにくる。先生は「30周年のペナント旗を作っていると話す子ならいました」とうまく話をつけた。こんなところにまでの手を伸ばしてくる“秘密警察の恐ろしさ”

フランクはクララとのデートを諦めざるを得ない。バーナーのテストが上手く行かず、ボンベを投げて父ピーターに当たる!(笑) ところが逆になったボンベからガスが吹き出した。先回のバーナーが消えた原因を「ボンベを逆に取り付ければ解決できる」と実験し、燃焼試験は大成功だった。

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ギュンターは昼夜突貫ミシン作業でデカいバルーンを縫製中。

「風速8m以上、北風」、

という気象情報を入手したピーターは明後日決行!」とギュンターに指示。「仕上げる!」とギュンターがバルーン縫製作業を急ぐ。ピーターはガス購入に走った。

隣のエリックが「薬局の手入れだ!」とクララに声を掛けて出ていくのをフランクが目撃。このことを父ピーターに告げると「すぐ出発!」と決まった。

秘密警察がやってきて勝手に合いカギでドアを開けて部屋に侵入。「誰もいない」。隣のエリックは秘密警察に「普段のとおりです」と証言、全く気付いていなかった!(笑)

国軍が動き出した!

バルーンを展張して熱風を送る。膨らむとこんなにデカかったのかと!色とりどりの布から出来たバルーンの輝きに目を奪われる。「最期に一目!」とバイクで父母に別れをしたギュンターが到着。舫綱を切って上昇!

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ヘリに追われる。バーナーが消え急降下、電線にひっかかった。上空にヘリ、犬が吠える、「ここは西か?」「違う、東部だ!」、「西に来た!超えた!」。

大空は自由。バルーンは自由のシンボルだった。“家族の絆”で勝ち取った!

10年後、東西の壁が取り払われた日。ピーター夫妻はセスナ機で父母のいるベスネックに飛んだ!空は自由だ!

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