映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「プレステージ」(2006)

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クリストファー・ノーラン監督の比較的初期の作品。WOWOWで観賞しました。

マジックは3つのパートから成り立っています。1番目は「確認(プレッジ)」、タネも仕掛けもないとことを観客に確認させる。2番目は「展開(ターン)」、確認したものを消す。3番目は「偉業(プレステージ)、消した物を戻す。

この作品では3番目(プレステージ)を作るマジシャンの生き様を描き、マジシャンに求められるものは何かを問うています。

舞台は19世紀末ロンドンのマジシャン世界。同じ師の下で修業中のアンジャーとボーデン。両脚・両手を縛られて水槽に入り脱出する“水槽脱出”マジックで、アンジャーの妻ジュリアが脱出できず亡くなるという事故が発生。アンジャーはボーデンの両手結びが死因だと疑念を持ち不仲となりふたりは別れた。以降、ふたりは相手のマッジクにいちゃもんをつけ激しく戦い、遂に“人間瞬間移動”マジックで決定的な対決を迎える。その戦いは・・・。

原作:クリストファー・プリーストの小説「奇術師」、未読です。監督:クリストファー・ノーラン脚本;クリストファー・ノーランジョナサン・ノーラン。撮影:ウォーリー・フィスター、音楽:デビッド・ジュリアン、美術:ネイサン・クロウリー

出演者:ヒュー・ジャックマンクリスチャン・ベールスカーレット・ヨハンソンマイケル・ケインパイパー・ペラーボレベッカ・ホールアンディ・サーキスデビッド・ボウイ、他。

難解な作品だと言われています。監督特有の“時間”マジックで、時間軸の異なる話が交わりながら展開する物語は分かり難い!しかし、「メメント」ほどの複雑さはなく、作品そのものが“マジック”になっていて、そのことが難しくしているので、結末を知ってもう一度確認しようとなり、面白さが分かるのは2度目以降ではないでしょうか。😊この作品で監督は“マジックとは何か”を問うています。

第79回アカデミー賞の撮影賞と美術賞部門にノミネートされただけに、美しい映像です。そして、キャストの皆さんの演技がすばらしい!

あらすじ:

冒頭、マジック作家のカッター(マイケル・ケイン)がマジックの3つのパート説明を、アンジャー(ヒュー・ジャックマン)が演じる“人間瞬間移動”マジックを使って説明する。アンジャーが客に手を振って存在を証明し、実在の電気発明家ニコラ・テスラデビッド・ボウイ)制作の放電仕掛け装置に入り消えてプレステージでアンジャーが水槽の中で溺れ、それをボーデン(クリスチャン・ベール)が覘いている。これがプレステージなぜこうなったのか?

いきなりこの映像が出てきて、何の物語だか分かりませんが、おいおい分かってきます。(笑)

ボーデンは殺人犯として捕らわれ、カッターが法廷で「なぜこの水槽がここにあったかはマジックの種明かしになるので喋れない」と証言を拒否します。かっての師としてカッターはなぜボーデンを擁護しないのか?

死刑囚として刑務所に収容されたボーデンのところにゴールドロウ卿の弁護士・オーウエインがボーデンの娘ジェスを伴って訪ねてきて、「答えないと娘は孤児院行き!」と脅し、ボーデンの“人間瞬間移動”マジックの種明かしを求めたが、ボーデンは「墓を掘り起こして本人に聞け!ゴールドロウ卿を寄こせ!」と拒否した。オーウエインはアンジャーが残した日記を渡して帰っていった。

この日記に基づきアンジャーがテスラから装置を手に入れた経緯と結末が、ボーデンと出会った1897年4月3日からの出来事と並列するように描かれます。

アンジャーは貴族出で、マジックのパフォーマンスが上手いことで人気があった。一方のボーデンは貧しい家の出でマッジク作家としての力があるがパフォーマンスではアンジャーに劣っていた。

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アンジャーとボーデンは名優ミルトン(リッキー・シュイ)に師事してマジックを学ぶがホーデンは「危険が感じられない」とミツトンに批判的だった。そんなときに起こった事件が“水槽脱出”マジックの失敗だった。このマジックは手足を縛られたジュリアが水槽に投げ込まれ、数分間の後、縄を解いたジュリアが現れるというものだった。

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手足を縛るのはミルトンが指名した観客、いつもアンジャーとホーデンが選ばれ、アンジャーが脚をボーデンが手足を縛ることになっていた。(笑この日、ボーデンはいつもの一重結びを二重に変えた!これでジュリアは手を解けず溺れて亡くなった。何故ボーデンは結び方を変えたか?「船員によってしっかり縛られる」というミルトンの紹介を聞いて変えたと思われ、“いつものボーデン”ではなかったのではないか?この謎を解くのがこの映画の面白さで、幾重にも伏線が貼られています。

ジュリアの葬儀でアンジャーが「なぜ結び方を変えたか?」と聞いてもボーデンは「自問しているが分からない」としか答えなかった。これにアンジャーは激怒した。

だれでも分かる単純なマジック劇をいかに面白く見せるか?これがこの作品のテーマ。このために使った種が・・・・です。(ラストで明かされます)

ボーデンがサラ(レベッカ・ホール)と結婚したことも、妻を失ったアンジャーの怒りになっていった。この結婚も奇妙だった!ボーデンにサラへの愛情があったのか?

ボーデンが演じる“弾丸の手掴み”マッジク銃口から弾を込めたふりをして抜き取り、観客に拳銃を渡して自分を撃たせて弾を見せるというマジック。アンジャーは変装して会場に入り、種を見抜き、拳銃を受け取って密かにボタンを入れてボーデンを撃った。ボーデンは指を負傷し、マジックができなくなった。

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アンジャーはカッターと組んで「鳩を出し」マジックを行うことにした。観客の目くらましに美しい女優のオリビアスカーレット・ヨハンソン)を助手にした。しかし、初演当日、変装したボーデンによって、舞台上での“確認”のとき、種を晒され、公演は中止となった。こうしてふたりの種つぶしが激化していく。

カッターの発案でボードンの演じる新しい科学者ものを見て次作を決めることにした。アンジャーはテスラの助手に接触し、ボーデンが持つ装置が欲しいと伝えた。そしてロンドンで開かれたテクノロジー展でテスラの放電現象展示を見た。

そこに見学に来ていたボーデンがサラに優しく話し掛けるのを見て、ボーデンの日記(盗んだもの)にはない光景に「彼の心はふたつ?ホーデンは何者だ!」と不思議を感じていた。

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アンジャーはアメリカのコロラドスプリングにテスラを訪ねマシン製作を依頼した。テスラは「これを作ったらただのマジックだと紹介するのか?君は何かに憑りつかれているぞ」と言い「可能だが金がかかる」と引き受けた。

新聞にボーデンの新マジック“人間の瞬間移動”記事が載った。アンジャーはこれを観た。カッターは「替え玉を使っている」というが、アンジャーはあまりにもそっくりで替え玉とは信じられなかった。ふたりはアンジャーの演技力を期待して替え玉で対抗することにした。替え玉はオリビアが演劇仲間の中から選んだ男で、演技力があるが酒飲みで自尊心の強い男・ルートだった。

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ボーデンがサラにマンションの鍵を渡すが、サラは「先週は機嫌が悪かった」とこの優しさが信じられなかった。

アンジャーの“人間の瞬間移動”マジックはとても好評だったが、彼が“隠れ役”でルートがプレステージ喝采を受ける役だから不満だった。(笑)

アンジャーはボーデンの情報を掴むためにオリビアをスパイとして送った。オビリアがアンジャーの情報を与えたことで、ボーデンの日記を盗み出したが、暗号が使われていて理解できない。オリビアを守るためアンジャーはボーデンの作業場に忍び込み自分が日記を盗んだように見せかけた。しかし、オリビアはこんな役回りにアンジャーの愛を疑い、ボーデンへと接近していった。

ボーデンはルートを飲み屋に誘い飲ませてアンジャーを裏切ることを勧めた。これでアンジャーのマジック種が舞台で明かされ、消すために落ちた穴にマットがなくてアンジゃーは骨折、さらに観客をボーデンの劇場に連れて行かれるというひどい仕打ちを受けた。

一方、ボーデンのマジックにはテスラの放電装置やオリヴィアを助手にした目くらましで大盛況だった。舞台が引けたあとボーデンをアンジャーが追った。すると男・アフロンが「ボーデンが危ない!」とアンジャーをつけてきた。これはアンジャーの罠!アフロンを掴まえて脅し、ボーデンを呼び出し、暗号を手にいれた。暗号は「テスラ」だった。

アンジャーはコロラドスプリングに飛び、テラスから注文していたマシンを受け取った。テスラは「危険だから海に捨てろ!」と勧めたが、アンジャーは危険かどうかを自らテストしてみた。放電を浴びると物も自分自身もコピーされることを確認した。アンジャーはコピーを拳銃で消した。

この頃、ボーデンのマジックは大盛況であったが、サラはボーデンの気質が日々変わるしオリヴィアを恋人にしたことに苦しみ自殺した。またオリヴィアもボーデンの愛が信じられる別れることにした。

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アンジャーはコロラドスプリングスから装置を持ち帰り100個の水槽を作り、カッターには種を教えず、「これが最後だ、本物の人間移動を見せる」と一流劇場での100回の公演を準備させた。アンジャーは「純粋な科学マジックだ!」と観客の確認を取り、装置の中に消え、別の場所から姿を現す。大喝采だった。アンジャー(コピー)は水槽の中に落ちて水死してた。ボーデンがなかなか現れない。彼は何回も自殺を繰り返してボーデンが来るのを待っていた。フレディがボーデンに「完璧なマシックだからもう秘密をしらなくてよい」と勧めたが、彼がやってきた。ボーデンは舞台でアンジャーを確認し、地下に降りた。そこにあった水槽にアンジャーが落ちてきて水死した。(冒頭でアンジャーが水死するシーン)。

話は獄中のボーデンに戻ります。

コールドロウ卿がジェスを伴ってボーデンを訪ねた。ボーデンはコールドロウ卿がアンジャーであることに驚いた。ジェスを救うために書き留めていた種を差し出したが、「俺が勝った!」と破り捨てて帰っていった。

接見にきたフレディに「お前にはすまなかった。サラを苦しめたことも!俺たち二人分をしっかり生きてくれ!」と言い残した。

ボーデンの絞首刑執行日。コールドロウ卿は裁判所に押収されていた装置をカッターの手を借りて小屋に運んだ。カッターはコールドロウ卿に「君は何をした!」と去って行ったが、代わりにフレディが現れた。その顔はボーデン(双子)だった。

フレディがアンジャーを拳銃で撃って「俺たちは人生の半分でよかった。女たちとも別れた。完璧なトリックには犠牲が必要だった」とボーデンと同じ手にするため自分の指を切り落としたことを語った。アンジャーは「落ちる方なのか現れる方なのかとその苦しさが分かるか?」と反論し「観客を一瞬でも驚かせたときのすばらしさ!」と呟いて息を引き取った。

感想:

“人間瞬間移動”マジックの種が“双子”と電磁波を使った“人間コピー(クーロン)であったとは。双子に驚きはないですが、人間コピーというSF種には驚きました。この種を知って、作品を見直すと、種の伏線がしっかり巡らされ、よく繋がって、双子種ではアンジャーとふたりの女性の関係が、人間コピー種ではアンジャーの殺人鬼化やカッターの謎行動などが見えてきて、すばらしいサスペンス作品に仕上がっています。

マジックとは何か?アンジャーとボーデンが出会った頃中国人の「金魚鉢」マジック(彼は常に金魚鉢を股に挟んでいて、ショーで金魚鉢をプレステージする)から「日常を犠牲にして成し遂げられる技」と学んだはずだが、アンジャーは復讐心でこれを忘れ去ったようです。

「観客を一瞬でも驚かせたときのすばらしさ!」のために科学そのものの力を提示しただけでマジックと呼べるのか?アイデンティティが問われます。

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