映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「燃えよ剣」(2020)

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武士の理想を胸に、最期まで時代の流れに抵抗し続けた新選組副長・土方歳三の戦に明け暮れた壮絶な人生を圧倒的なスケールで描き出すという。

司馬遼太郎の名作歴史小説を「関ヶ原」の原田眞人監督&岡田准一主演コンビで映画化したスペクタクル歴史ドラマ。監督にとっては「日本のいちばん長い日」を合わせ、日本の三大変革期を描いた作品となります。いずれも敗者を主人公としてその正義を描く物語、今回の土方歳三はどう描かれるかと楽しみにしていました。

監督:脚本:原田眞人撮影:柴主高秀、録音:矢野正人、編集:原田遊人音楽:土屋玲子

出演:岡田准一柴崎コウ鈴木亮平山田亮介、伊東英明、尾上右近山田裕貴金田哲松下洸平村本大輔、他。とても豪華です。

けんかに明け暮れていた武州多摩の“バラガキ”土方歳三岡田准一)は、武士になるという夢を追い、盟友の近藤勇鈴木亮平)、沖田総司山田亮介)らと京都へ向かう。やがて元水戸藩士の芹沢鴨(伊東英明)と手を組み、京都守護職を拝命した会津藩預かりとなり、市中を警護する新選組を結成する。副長となった土方は組織を厳しく統率し、討幕派勢力の制圧に八面六臂の活躍を見せていく。そんな中、絵師のお雪(柴崎コウ)と出会い、恋に落ちる土方だったが…。

初めての人には物語の進展が速くてとっつき難いかもしれません。そんなことはお構いなく描くのが原田監督流です!(笑)

この長編小説を2時間半で描くことは大変だったでしょう。でもバラガキが新選組になり、新選組が崩壊するところは速足で、“土方が函館で亡くなる”までを描き切った。ここに監督の想いがあると考えます。どこかで石田三成に繋がっているようで、大動乱の中での敗者の正義を見るという監督の史観。司馬史観を借りで、自らの史観を描くという、監督がまさに土方の生き方でした。

幕末動乱期という時代再現映像がすばらしい。「燃えよ剣」のタイトルのように土方の剣で描く物語に、岡田准一さんという天才剣術俳優を迎え、小説にはない、岡田以蔵芹沢鴨との闘い、池田屋事件など、観たこともない剣術劇を見せてくれ、おそらく司馬遼太郎さんもびっくりでしょう。これは楽しめました。

さらに音楽がすばらしかった。冒頭からビゼー「真珠採りのタンゴ」が流れ、格闘中にワルツ、黒澤明監督の「羅生門」を彷彿とさせてくれ、ラストが“真珠採り”で終わるという、壮大感のある物語に感動しました。😊

ここからねたばれ(要注意)

冒頭、断髪し洋式軍服の土方が函館五稜郭で、これまでの“自分を語る”という回想物語であることを示します。

語りに合わせて、バラガキ時代が映し出されます。「イサムさんが・・」という呼び名を聞いていると、これがのちの新選組局長になるとは思えないほどに微笑ましく見せてくれます。歳三、勇、源三郎、武家の沖田の4人が村の水場を守るために隣村の若者と喧嘩するシーンから始まります。喧嘩、喧嘩。「将軍直参の武士の武士になりたい」と剣道に励み、天然理心流はめっぽう強かったと言います。

歳三は石田散薬という薬売りをしながら道場荒らし。1860年桜田門の変で井伊が失脚し、政治の中心が京に移っていった。

近藤勇が試衛館の4代目を継ぎ、長倉、藤堂、原田が脱藩して集まってきた。

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1862寺子屋の本田覚庵(市村正親)から「幕府は開国だ。お前どう生きる」と問われ「剣に生きる!」と答えた。すると「京に上れ!」と勧められた。「京に行くか!」と沖田と話し合った。ふたりで田舎道を歩きながら、延々と話すシーン、ふたりの仲の良さをよく示しています。

京は倒幕運動が激化し、治安維持のため会津藩松平容保尾上右近)が京都守護職に任命され浪人を募集することになった。

試衛館の運営が行きづまり、近藤に京行きを勧めた。歳三は古道具屋(柄本明)から名刀“ノサダ”を買った。

1863年2月芹沢鴨伊藤英明)ら4人と試衛館の8人が“浪士組”として京に上った。八木屋敷に屯所を置いた。

会津に認めてもらおうと、芹沢を使って、倒幕運動する清河八郎高嶋政宏)を討つことにした。ここらあたりから歳三のただならぬ才が見えてきます!

8月。夜間、清河を待ち伏せして芹沢と歳三が襲うことにしたが、芹沢が「俺がやる」と先に走りだし、これを歳三が追うと、芹沢が斬りかかってきた。ここでの歳三の闘い方、姿勢を低くして脚を狙う。芹沢には勝てない!沖田が中に入って、終った。

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清河暗殺は失敗したが、これで新選組が発足することになった。清河は江戸で暗殺された。俺たちは不良浪人を斬った。きらない人まで斬った!

土方は隊の編成を整えた。局長を芹沢と近藤。副長を自分と山南。

芹沢は「桜田門で死ぬべきであった」と言い、生きる目的を失っていた。女と酒に明け暮れ、商人から金を巻き上げる。そこに金集めに長けた山崎烝村本大輔)が入隊してきた。これで金管をしっかりえきる(はず)。入隊隊員の訓練を始めた。

次に土方が手を付けたのが“局法度”で、規律を維持することだった。芹沢を抜きにして、隊員を集め公開した。「きつすぎる!」という意見もあったが「武士道だ!」と押し切った。

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料亭で飲む芹沢に近藤と土方が「武士道だ!」と局法度を示した。芹沢は「俺たちは水戸の士道、主君のために死ぬ。武士道には尽くすべき主君がいる。この隊の主君は誰だ?」と聞き「再考せよ!」と剣え脅した。土方は「腑に落ちた!特別に選ばれた新しい士道だ!」と言い放った。

沖田たちが訓練をしているところに芹沢の腹心・新見錦(松角洋平)が隊服だと浅葱色の羽織を持ってきた。土方は「まだ決まってない!」とこれを拒否した。

天皇から勅勘会津だけでは守れない。新選組を集めよ」が下った。新選組への期待が如何に大きかったか。「芹沢を斬れ」という声が上がった。沖田が「好きな人なんだ、可哀そうだ。一の太刀は私に譲って欲しい」と言い出した。

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あばら屋を沖田とふたりで襲った。逃げる男を追って、三条河原で岡田以蔵と斬り合った。そこに一団が現れ、宿に逃げ込んだ。そこで会ったのが雪(柴崎コウ)だった。傷を手当してもらい、絵描きだと知った。

土方は「芹沢は俺が斬る。斬ってあんたのとこで死ぬ。新選組のテッペンを取ってくれ。沖田と一緒にやる」と近藤に告げた。

1863年8月、七卿の京落ちを見送って、雪に会いにいった。手料理を食べ、隊服の下絵を頼んだ。この作品では隊服にえらく拘っています。黒隊服に決めた。(笑)

山崎が新見が隊資金に手をつけたこと発見したので、新見を斬った。そして芹沢の処分にかかった。“島原の角屋“で酒宴中お芹沢を西郷らが踊りで盛り上げ、しかり飲ませて、女と寝ているところを襲った。逃げ回る芹沢は何とも哀れだった!

厳しい局法度に山南が難癖をつける。「緩めたらバラバラだ。新選組は違う」と突っぱねた。

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松平容保から隊旗を授かり、黒隊服で、隊員に近藤が「王城の大路小路が新鮮組の戦場!」と檄を飛ばした。そのあと、山南は「あんたの女の素性(夫が長州者だった)を調べたい」と言い出した。

1864年の正月の宴席で、山南に「副長はひとりでよい」と伝えた。沖田に急かされ、ひさしぶりに雪を訪ねると、池田屋足を東に向けて寝ているやからが集めっているという。厳重調査を命じた!謀議を図る日は分かったが、首謀者・宮部鼎造(三浦誠己)がどこに現れるか?

1864年6月5日、池田屋事件。土方の案で隊は二手に分かれて捜索。沖田は俺の側に置いた。確率の高い池田屋に近藤たちが踏み込んだ。狭い部屋での剣劇が、いろいろなエピソードを交えて、丁寧に描かれていました。監督は凝り性ですね!(笑)

宮部発見の知らせで土方が駆けつけると、近藤は疲れ果てて座り込んでいた。「宮部はここ、斬れ!」という。土方が斬った。「攘夷より幕府が大切だ!」という近藤に「バラガキが新選組になった」と土方が応えた。沖田が吐血していた。しかし、新選組の輝かしい活動も、これが山だった。

近藤は化粧して公家のところに、慶喜に呼ばれて二条城通い。屯所を西本願寺に移すことに「俺たちは攘夷で、ここに来た!」と山岡が反対。山南が脱走したので沖田に追わせ、捕らえて沖田の介錯切腹させた。これが分裂の始まり

1866年1月薩長同盟が出来て、時流は一気に倒幕へと傾き、隊の中にも尊王派らの不平分子(伊東一派)が現れる始末。女たちに「もうこれで新選組も終わり」と噂され始めた。

1867年3月、近藤が「伊東に狙われている」というから、俺が謀って伊東一派を暗殺した。

1867年10月大政奉還。エッサエッサの踊りが始まった。沖田の病が重くなり見舞った。沖田は剣を振れなかった。「菊一文字を振って見せてくれ」というから振って見せた!沖田が「これで斬ったのは山南だけだ」と言う。土方は沖田の横に寝そべってやった。

雪から愛を告白され「どう戦ったかを絵にしたい」と同行を求めてきたが、懐中時計を渡して戻った。

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1868年1月、鳥羽伏見の闘い。沖田を荷車で連れてきた。敵の銃弾、砲弾を防ぐための壕を掘って準備した。大量の砲弾を浴びせられ、斬り合いになりになり、源三郎がここで戦死した。

1868年1月16日、錦繍の旗登場で、慶喜も容保も江戸に堕ちっていった。江戸への船の中で「容保がなぜ?」と近藤に聞いたら「お前にはわからんよ」と言われた。「沖田は?」と聞くから「預けてきた。お雪さんが助けてくれる」と答えた。沖田は「俺ひとりで防ぐ!」新選組?の土蔵のなかで、ひとりで亡くなった。(新説)

俺は「乱世で死ぬ!会津に行く!」と決めた。

流山で「自由にさせてくれ、世話になった」と言う近藤と別れ、俺は会津に走った。その後、近藤は賊軍に捕まり、伊東の残党がいて、殺された。

江戸で容保に会った。「すまなかった、会津では死なん!」というから「その変わり身が愚かで、生き抜く誠が大切!」と会津、猪苗代の戦闘に参加し、仙台に出て船で函館に来た。雪が函館に「土方の妻です」とやってきて、ふたりは再会した。

1869年5月(明治2年)新政府軍の攻撃が始まった。戦闘は西洋式の戦闘だった。五稜郭で、フランス砲兵大尉ジュール・ブリュネから「あなたはよく戦った。みごとな指揮だった。出会えて光栄だった」の言葉が贈られ、写真を撮って市村鉄之助(森本慎之介)に託した。函館山奪回を目指して馬を走らせた!

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土方が官軍に向かって剣を振りかざして突進するラストシーン。「剣に生き切った」姿を見せてくれる映像に“真珠採りのタンゴ”が響くと泣けますね!

幕末の大混乱のなかでの土方の生き方に、今日の多様な価値観の中でどう生きるか、「時代を追うな。夢を追え!」という生き方が分かるような作品でした。

雪が土方の遺骸を引き取りました。彼女の強い芯のある生き方、これまた土方流で、今の時代に土方の生き方を伝えてくれているようです。柴崎コウさんの演技が凛としてよかった。雪は想像上の人物ですが、彼女がいなければこの物語は成立しない、これで救われました。😊

キャステングがよかった。岡田さんは勿論ですが、沖田総司山田亮介さん、こんな魅力的な沖田はこれまでいません。近藤勇鈴木亮平さん、勇の度量の大きさが分かる演技でした。山崎烝、いろいろなシーンで大活躍でしたが、村木大輔さんのほのぼの演技が冴えていました。そして悪の芹沢鴨伊藤英明さんの死に際が凄かった。

大がかりな戦闘描写。ええじゃないか踊り、鳥羽伏見の闘い、会津の闘い、そして函館戦争、戦争がどう変わっていったかが分かるよう丁寧に作られ、壮大で、見応えがありました。

監督作品には欠かせないロケ地。すばらしい日本文化資産を見せてくれます。今回は私どもの県から7か所を選んでもらってとてもうれしいです。特に子供のころから慣れ親しんでいる吉備つぁま吉備津神社”の長廊下、屯所・八木屋敷に繋がる廊下、何度も近藤と土方が話しながら通ってくれます。どうか見てください!

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