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「リボルバー・リリー」(2023)綾瀬さんのアクションが素晴らしいが、それ以上に壮大な物語に驚き!

 

綾瀬はるかさん主演、監督は「リバーズエッジ」(2018)「窮鼠はチーズの夢を見る」(2020)等愛を描くことで定評のある行定勲さん。監督の描くアクション作品がどういうものかと劇場に駆けつけました。

原作はハードボイルド作の家長浦京さんの代表作「リボルバー・リリー」。原作は未読です。監督:行定勲脚本:林達夫 行定勲企画・プロデュース:紀伊宗之、撮影:今村圭佑、編集:今井剛、音楽:半野喜弘

出演者:冷徹非情な美しき諜報員として「リボルバー・リリー」と呼ばれた百合を綾瀬はるか。共演に、長谷川博己羽村仁成(Go!Go!kids/ジャニーズJr.)、シシド・カフカ、古川琴音、清水尋也ジェシーSixTONES)、阿部サダヲ野村萬斎豊川悦司ら豪華キャストが集結。

物語は、

大正末期の1924年関東大震災からの復興で鉄筋コンクリートのモダンな建物が増え、活気にあふれた東京。16歳からスパイ任務に従事し、東アジアを中心に3年間で57人の殺害に関与した経歴を持つ元敏腕スパイ・小曽根百合(綾瀬はるかは、いまは東京の花街の銘酒屋で女将をしていた。しかしある時、消えた陸軍資金の鍵を握る少年・慎太(羽村仁成)と出会ったことで、百合は慎太とともに陸軍の精鋭部隊から追われる身となる。(映画COMより)

映像が美しい!そしてアクションに圧倒されますが、ストーリーが壮大で、そしてたっぷりと「戦争の大義には矛盾があって正解なんか何もない!」という今の世界へのメッセージがあります!若い人に観て欲しい、お勧めの作品です


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あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)

冒頭、小曽根百合は台湾にいたころ愛してくれた男が汚された身を美しくするようと買ってくれたように滝田洋装店で白地のドレスを注文した。滝田(野村萬斎)も元スパイ仲間、「気をつけて!」と声を掛けられた。

1924年8月27日、投資家の細見欣也邸(豊川悦司)に、謎の男たちに欣也を捜しに来て見つからず家族を皆殺しにするという事件が起こった。謎の男たちを指揮していたのは陸軍大尉・津山(ジェシー)だった。この事件で息子の慎太は灘を逃れ、山小屋で生活している知合いの国松(石橋蓮司)を訪ねて行った。

百合は玉ノ井で自分が経営するカフェ、ランブルでこの事件を新聞で知った。昔、台湾時代に仕えてくれた国松が犯人にされていることに疑念を持ち秩父の山小屋に隠れ住んでいる国松を訪ねることにした。

小屋を訪ねると中は何者かに荒らされ、陸軍兵が捜索にやってきた。百合は小屋を去り、列車に乗ると、そこで男たちに襲われる少年に出合った。百合は男たちと格闘して少年を救い、ふたりで列車から外に飛び出した。そこで名を聞くと細見の息子慎太で「玉ノ井の百合を尋ねろ!」と父に言われたという。彼は父から渡された拳銃・バレッタを見せた。百合はこの銃に見覚えがあったが、なぜこの銃がこの少年の手にあったのか分からなかった。

百合は贔屓の弁護士・岩見(長谷川博己)に電話で細見の身元調査、なぜ陸軍が追うかの調査を依頼した。百合は慎太が父から託されたという文書を見た。振込銀行と金額が面々と綴られていた。何を示すのか見当もつかなかった。

百合と慎太は陸軍兵に追われながら玉ノ井のカッフェ・ランブルに急いだ。途中で謎の男・南(清水尋也に出会い一緒に行動するが、慎太の持つ文章を奪って逃げられた。

ランブルに戻った百合は岩見から調査結果を聞いた。岩見は山本五十六海軍大佐(阿部サダヲ)の後輩で元海軍将校。元陸軍中将の升本(橋爪功)から「細見は陸軍と手を組んで稼いだ金を盗み、銀行にバニシングという契約で預けた。期限はあと10日。陸軍と海軍が争って探している。受取人の指紋と暗証番号が必要だ」と聞き出していた。

南は慎太の持っていた資料を読んで破り捨てた。彼の狙いが分からない!

慎太がヤクザの平岡(佐藤二郎)に「陸軍の懸賞金稼ぎに必要だ」と攫われた。平岡は百合とある約束をして慎太を引き取った。(平岡は百合に惚れていた)

カフェ・ランブルに三島中尉(内田朝陽)に指揮された1コ小隊の陸軍兵が「慎太を出せ!」と攻めてきた。これに百合は台湾から一緒に行動している奈加(シシド・カフカ)と共に室内から銃撃戦に挑んだ。激しい銃撃戦だったが、ふたりは一歩も引かなかった。近所の子供が飛び出し岩見がこれを救いに出た。これを援護するため外にでた百合が背中に銃弾を受けた。陸軍が多大の負傷者を出し後退していった。

百合は岩見法律事務所で奈加によって銃弾を摘出した。慎太が百合の介護をする。まるで母と子のように見えてきた。

岩見は慎太が父から何か預かっていないかと調べた。慎太は父の手紙を包んでいた腹巻を出した。岩見は腹巻の模様を海軍式の暗号と捉え解析を始めた。バニシングの暗号ではなく場所を示していることが分かった。

百合と慎太、岩見が浅草を散策。岩見は山本大佐に会うと別行動。百合は面を被った男たちに囲まれる。南らしい。百合は慎太に「昔台湾で殺しをやっていたころ、汚い仕事をしてもきれいな服を着ろと買ってくれる男がいたが死んだ」と話していた。

岩見は警察に捕まり、総務省警備局員の植村(吹越満)から訊問を受けた。植村は「国益の問題だから付き合ってくれ!」と言い出して百合の過去「百合は幣原機関の水野寛蔵が作った最高傑作だ。水野は何者かに襲われて居なくなり、その際、水野の子を死なせた百合は日本に帰国した」と話し「水野の秘密を明かしたい」という。岩見は守衛を殴って気絶させ拘置所を脱出した。

百合と慎太、岩見は暗号を解いて分かった震災で亡くなった人たちの遺骨を預る寺を訪ねた。慎太に身分を証明するものとして家族の写真を提出した。この写真を見た百合は動転して一時寺を出た。岩見が百合に付き添った。

慎太は母親の骨壺を受け取った。骨壺な中に暗唱番号が隠されていた。百合は細見が水野だと知って涙を流した

百合は慎太にレベッタの使い方を教えた。岩見は「あなたがあの子を守れ!」と説いた。百合は「私が守る」と覚悟した。

岩見は海軍省に出向き山本大佐と「細見の隠し資産を陸軍50%海軍50%で分け、百合と慎太の保護して欲しい」と願いでた。山本大佐がこの案を否定した。

慎太は電話で直接山本大佐に番号を報せた。これに納得した山本大佐は百合に「あす0900に海軍省に来い!保護は慎太だけだ」と伝えた。百合は「自分が保護されたら問題がある」とこれを了解した。

百合は滝田洋装店で白いドレスに着かえ、慎太と共に1000名の大沢陸軍大佐が警備する日比谷公園を突っ切って山本大佐は待つ海軍省に急いだ。これには奈加と琴子(古川琴音)、岩見が銃で支援する。果たして山本大佐のところに辿りつけるか。そして慎太と百合のその後は映画でみてください!霧の中での戦闘に感動すると思います。

まとめ

小曽根百合を演じる綾瀬はるかさんのリボルバー射撃や身体を張ったアクションが圧巻で楽しめました。が、物語を面白くしているのは時代背景、1924年の日本の社会状況だった!

関東大地震とその後の大恐慌を背景に、中国進出したい陸軍と台頭したヤクザが陸軍の隠し資産を巡り元女スパイ・リリーと戦うという設定。壮大な歴史感に裏打ちされた物語で、大きな社会の理不尽と不平等に挑むリリーの行動が爽快だった!

小曾根百合は中国で生まれ11歳で両親を失いどん底の中で陸軍の諜報機関員水野に拾われスパイに仕立てられ、水野と子をなす仲になった。しかし、水野が中国民に対する政策で陸軍と対立したため陸軍を追われ行方不明。陸軍から追われる水野の息子・慎太を壮烈な戦闘の中で懸命に守り、水野の正義を突き通すという大きな世界感の中での“愛の物語”だった。

綾瀬さんの演技は言葉では表現できないスタイリッシュな演技で身体全身からその正義と愛情が溢れていた。これまでに「ICHI」(08)「大河八重の桜」(13)等と観てきましたが、今回の戦技はこれらを集大成したような演技で、すばらしい動きで美しいものでした。銃捌の見事さ、弾の装填操作は頻繁に出てきますが、ブラインドでスムースに行い上手い自衛官顔負けではないでしょうか。それに空手での身体アクション、見事でした。

凄まじく寸断なく描かれる圧倒的な銃撃戦とアクション。陸軍の隠し財産情報を、何が何でも海軍省の山本十六に届けねばという、ハラハラドキドキの2人の逃亡劇。最大のクライマックス“百合と慎太VS帝国陸軍1000人”の壮絶な霧に中でのバトルは美しくて圧巻でした山本五十六がここで出てくる設定が面白い。まさか五十六が阿部サださんだとは思わないから・・。(笑)

この時代をどう描くか建築物や交通機関など社会インフラや文化をどう描くか。ロケ地やCG、VFXで東京銀座透等の再現見事でした。これを見るだけでこの時代が分かる描写でした。

「リバーズエッジ」(2018)「窮鼠はチーズの夢を見る」(2020)等その時代の愛を描くことに定評のある行定勲監督。監督の描くアクション作品がどういうものになるか。先ずは長編原作を2時間ちょっとでよくまとめたなと

脚本・演出がすばらしい!

1924年、慎太の家族が何者かに襲われ、国松の犯行であると新聞で知るリリー。細見という男から息子を頼むと言われ引き取りに。事件に陸軍は絡み、弁護士の岩見によって細見の身元が割れ、リリーの真の過去が明かされ、陸軍と海軍の闘いになっていくというストーリー展開、テンポが良くて、最高にミステリアスだった。特に細見は幣原機関の長・水野と明かされたときは驚くとともにこの物語は成功したと確信しました。小野の津山大尉に吐く言葉が凄かった!

大正末期、「日は戦争に走るのか?」歴史感にしっかり裏打ちされたアクション・エンターテインメント物語として楽しませてくれました。弁護士岩見が山本五十六「戦争の中に大義に矛盾があって正解なんか何もない!」と語らせる。また、作品の結末で細見慎太を外国に学ばせるシーンなど未来を見つめる視線があるのがすばらしい。「未来を救う悪になれ!」とこれが現在に通じる大きなテーマが含まれている。ラストシーン、続編が出来そうですね!見て観たい!(笑)

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