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「アムステルダム」(2022)抜群のテーマ性を持つ作品、笑いが少ないのは時代のせい!

デビッド・O・ラッセル監督作。アメリカン・ハッスル」(2013)のコピーは「アカデミー賞確実!」だった。しかし10賞にノミネイトされながら0賞だった。今回も「アカデミー賞確実!」と予告で流れています。どうアカデミー賞に挑むのかと観ることにしました。

監督・脚本:デビッド・O・ラッセル、 撮影:ゼロ・グラビティ」「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」「レヴェナント 蘇えりし者」のエマニュエル・ルベツキ衣装アルバート・ウォルスキー J・R・ホウベーカー、編集:ジェイ・キャシディ、音楽:ヒドゥル・グドナドッティルと超豪華。

出演者:アメリカン・ハッスル」のクリスチャン・ベール、「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」「スキャンダル」のマーゴット・ロビー、「ブラック・クランズマン」「TENET テネット」のジョン・デビッド・ワシントンが物語の中心となる3人を演じ、共演に「ボヘミアン・ラプソディ」のラミ・マレック、「アイリッシュマン」のロバート・デ・ニーロをはじめ、クリス・ロック、アニヤ・テイラー=ジョイ、ゾーイ・サルダナマイク・マイヤーズマイケル・シャノンテイラー・スウィフトらと超超豪華。(笑)

こんな豪華なスタッフ、キャストで作られた作品、アカデニー賞に挑むには十分です!

物語は

1930年代のニューヨーク。かつて第1次世界大戦の戦地で知り合い、終戦後にオランダのアムステルダムで一緒の時間を過ごし、親友となったバート(デクリスチャン・ベール)、ハロルド(ジョン・デビッド・ワシントン)、ヴァレリーマーゴット・ロビー)。

3人は「何があってもお互いを守り合う」と誓い合い、固い友情で結ばれていた。

ある時、バートとハロルドがひょんなことから殺人事件に巻き込まれ、容疑者にされてしまう。濡れ衣を着せられた彼らは、疑いを晴らすためにある作戦を思いつくが、次第に自分たちが世界に渦巻く巨大な陰謀の中心にいることに気づくという、ある巨大な陰謀に巻き込まれた3人の男女の行く末を、史実とフィクションを巧みに交えて描いたクライムストーリー。ほぼ実話だという。(笑)

憧れのニューヨーク、その名の由来はどこか!これがテーマです!

史実の人物は米国海兵隊の英雄スメドリー・バトラー将軍(1881-1940)。退役後「海兵隊に33年間もいたが、その大半は大企業、ウォール街、銀行の高級用心棒」、「資本主義のためのゆすり屋であった」と告白している。沖縄の海兵隊基地にバトラーの名前がつけられているとのこと。

この告白は今の米国に生きている!これがテーマならアカデミー賞もいけるかなと?

時代をしっかり生かすために、「アメリカン・ハッスル」の命であったお笑いを控えています。その分、撮影監督にエマニュエル・ルベツキを使って、30年代のニューヨークの風情をたっぷりと味わわせてくれます。

作品は「恋と友情のクライムストーリーでコミカル、時にスリリングで予測不可能なストーリーテリングだ」と言い、ほぼ「アメリカン・ハッスル」の案内に同じ。(笑)ということでアメリカン・ハッスル」と比較しながら観ると面白です。


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あらすじと感想(ねたばれ:注意)

右目が義眼のバートは看護師のイルマ(ゾーイ・サルダナ)と診療所で治療、それも退役軍人たちの面倒見の良い医者だった。そこに第一次世界大戦でアルゴング森の作戦(米軍が初参加して独軍に勝利した作戦)に参加したときに世話になったミーキング将軍の娘リズ(テイラー・スイフト)に「父の死体を解剖して惜しい」という依頼を受けた。

バートは戦友で今は弁護士のハロルドに立会さえ、当局の許可なく、イルマとともに将軍の解剖を行った。とういうものの解剖はイルマが行った。(笑) 胃の中には毒鬱が混入されていた形跡があった。結果を伝えるためリズが待つカフェに向かうが、いない!リズは何者かに連れ出され、車に跳ねられて死亡した。その場の野次馬の「この2人が押した!」という声で、バートはお回りに追われて逃げた。

ここからしばらくバート、ハロルド、ヴァレリーの出会いとアムステルダムの生活が各々のキャラクターを浮き上がるよう描かれます。

バートは妻のベアトリス(アンドレア・ライズボロー)の父親に学資に出してもらい医者になり、結婚した。「軍医になって帰って来い」と戦争には行きたくなかったが従軍、アルゴング森の作戦に参戦。ここで黒人(アメリカは多くの黒人を従軍させた)のハロルドと出会った。ハロルドが「白人の指揮官と一緒はいやだ!」というのを説得したのがミーキング将軍だった。この描写だけでもアカデミー賞ものです!(笑)フランスの軍服での参加。いかにアメリカがこの世界で“田舎もの”であったかが分かります。

パートとハロルドは負傷して野戦病院で療養。ここで看護士として従軍していたのがヴァレリー。彼女の目的は負傷兵の身体の中から砲弾破片(第一次世界大戦は砲撃戦だった、鉄不足に陥った)を取り出してそれを加工してアートにすること。(笑)これにどれほどの笑が込められているか?

ハロルデが“黒人”ということでこの三人には特別な友情が生まれた

1919戦争が終わって、どこで暮らすか?「自由と愛にあふれる」アムステルダムだった。ここでバートがヴァレリーの紹介で、情報屋のポール(マイク・マイヤーズ)とM16のスパイだというヘンリー(マイケル・シャノン) の「この戦争を始めたやつの首を吊る」という情報屋(笑)から義眼“ダークグリーン”を買った。

三人は自由をエンジョイしていたが、「妻がいる」とバートが本国に帰還。モルヒネ依存症のバートを救いたいとハロルドが「帰りたい」と言い出し、突然ヴァレリーアムステルダムから消えた。

出会ってから15年後、3人のニューヨークの物語が始まる

 1933、バートは家に戻ったが「退役軍人たちを助けた」と家を出て、辿りついたのが診療所だった。ハロルドが弁護士の資格を取った。

ミーキング将軍殺害事があって、バートは妻ベアトリスに会った。ベアトリスはバートの身体が傷だらけなのを見て「見るのが辛い!」と愛のない言葉を吐いた。バートは、事件解決のため、弁護士のトム(ラミ・マレックのことを聞くと「トムの会社はメーカー中のメーカーだ」と教えてくれた。

レム刑事(マティアス・スーナールツ)とヒルツ刑事(アレッサンドロ・ニヴォラが)が逮捕にやってきたが、「トム弁護士に保証人になってもらう」と引き取ってもらった。

バートとハロルドが大豪邸に住むトムを訪ねた。なんとここでヴァレリーがいた。彼女はトムの妹だという。変なアートのせいで今では精神病者扱いだった。このアートにはミーキング将軍のものもあるという。会ってすぐにアムスレルアム時代の三人に戻って行った。ハロルドはヴァレリーとの愛を取り戻した。

トムの妻リビー(アニャ・テイラー=ジョイ)が曲者で(笑)、ヴァレリーの喧嘩相手だった。

トムは「あの男()犯人は巣に帰った。弁護士はやらないが、ミーキング将軍を知るギレンベック将軍ロバート・デ・ニーロ)なら君たちの方が合える、会ってみたら!」と勧められた。この話を庭で話したが、ここに沢山の鳥が飼われていた。

診療所にふたりの刑事がやってきて「何で隠して解剖した?証明書があるのか!」とバートを責めてくる。看護師のイルマが気を利かしてこの場をうまく収めた。ここのシーンが一番の笑いどころ!

バートはギレンベック将軍(退役)に会うことにして、ハロルドとヴァレリーを伴って、義眼の売人で情報屋のポールを訪ねた。ヘンリーもいた。

パートはトムから聞いた鳥類研究所の話、さらにハロルドとヴァレリーが突き止めた「ミーキング将軍の娘リズを突きだして死なせた男の居場所を突き止め、そこで見たもの不妊手術を行っている”施設」の話をした。ヘンリーが「その施設とヒトラーが結託して世界制覇を狙っている。ギレンベックに会え!」とバートたちの背中を押した。具体的に「五人委員会(有力企業で政府に圧力を加える)を潰す!このためのスピーチをギレンベック将軍にお願いしろ!君たちにとって大切なことだ」と示唆した。

バートたち3人がトムの豪邸でギレンベック将軍に会うことになった。おそろおそろ出向くと、邸の1階で五人委員会の連絡人マグワイヤーに出会った。トムがバートを使って将軍を誘き寄せ、5人委員会を援護するスピーチをしてもらうためだった。

玄関で派手に騒いで(笑)、将軍の注意を引き、マグワイヤーより先に将軍に会うことになった。

将軍に「どこで会ったか」と聞かれ、3人はアムステルダムで歌った歌を唄って認めてもらった。(笑)バートは「ミーキング将軍が“ひどいもの”を見て殺された。5人委員会が問題で、この委員会の広告塔にならないようスピーチをお願いした」と申し入れした。「陰謀は分かっている」と約束をした。

3人が帰ったあとマグワイヤーが将軍に「世界をよくする財団のためのスピーチ」と依頼した。将軍は「ひき受ける!退役軍人、兵士がいる前でやる」と言明した。

ギレンベック将軍のスピーチ会場

ギレンベック将軍はいずれの味方か?この思惑の中で、市民、退役軍人、軍人、大勢の人がホールに集まった。バードたちはふたりの刑事を味方につけ、義眼売人のふたり、義父とベアトリスもやってきた。トムとビリーが登場。ビリーが将軍に「フアンでした!お会いできてうれしい!」とド派手な挨拶。(笑)

そして五人委員会のメンバーが入ってきた。将軍とにこやかに挨拶!ヴァレリーが一部始終をカメラに収めていた。バートたちは不足事態に備えて準備し、将軍のスピーチを待った。

ダンスパーティーで始まり、退役軍人奏者の演奏、そして将軍のスピーチが始まった。

まとめ

三人のキャラクターを第一次戦争が作りだした人物と見立て、彼らが戦争のあとで見つけた「自由と愛、友情」のため、大きな国家的陰謀の中で奔走するドラマでした。後半、物語がごちゃごちゃして混乱をきたしますが、・・。(笑)

実在のスメドリー・バトラー将軍の告白を生かした、今の時代に通じる企業の儲け主義が戦争を引き起こすというテーマに主軸に置き、1930年代という世界を背景に、三人の恋と冒険で描き上げた本作、面白かったです!

 テーマが良いので、すべてよし!です

クリスチャン・ベールは義眼で冴えない姿の医者、義眼が外れて探しまわるという演技に笑い、妻に振られるが愛する看護師ゾーイ・サルダナと新しい人生を歩みだすという結末、「アメリカン・ハッスル」と全く同じでした。(笑)ゾーイ・サルダナが魅力的でした。

マーゴット・ロビーが、これまでに見たことのない、美しい貴婦人に見えました(笑)

アニャ・テイラー=ジョイのハッスルぶりは「アメリカン・ハッスル」のジェニファー・ローレを彷彿とさせます。ロバート・デ・ニーロがいいところを全部持って行ったという感じ。(笑)他の主演者の方の演技も繊細ですばらしいですが、作品の特性上、地味!でした。

この作品のもうひとつは1930年代の雰囲気を出した、セピア色がかかった映像です。美術、衣装に目を奪われます。特にヴァレリーが作ったアート。

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