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「MEN 同じ顔の男たち」(2022)男性優位の暴力体制へのテーゼ!アートだった!

 

夫の死を目撃した過去のトラウマと目の前に現れる同じ顔の男たちの恐怖に対峙する妻の物語。

「ヘレディタリー/継承」「ミッドサマー」のA24作品で「ジュディ虹の彼方に」のジェシー・パックリー、「007ノータイム・トゥ・ダイ」のロリー・キニア主演作ということで観ることにしました。監督はアレックス・ガーランド、とても評判のいい監督さんのようでした。(笑)

果たして私に分る作品か?情報入れずに挑んでみました!

監督・脚本:アレックス・ガーランド撮影:ロブ・ハーディ、美術:マーク・ディグビー、衣装:リサ・ダンカン、編集:ジェイク・ロバーツ、音楽:ベン・サリスベリー ジェフ・バロウ。

出演者:ジェシー・バックリー、ロリー・キニア、パーパ・エッシードゥ、ゲイル・ランキン。

物語は

夫ジェームス(パーパ・エッシードゥ)の死を目撃してしまったハーパー(ジェシー・バックリー)は、心の傷を癒すためイギリスの田舎町へやって来る。彼女は豪華なカントリーハウスの管理人ジェフリー(ロリー・キニア)と出会うが、街へ出かけると少年や牧師、警官に至るまで出会う男すべてがジェフリーと全く同じ顔だった。さらに廃トンネルから謎の影がついてきたり、木から大量の林檎が落下したり、夫の死がフラッシュバックするなど不穏な出来事が続発。ハーパーを襲う得体の知れない恐怖は、徐々にその正体を現し始めるというもの。

身構えてみることにしました。その結末に、一体俺は何を観たかと、絶句しました。(笑)


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あらすじ&感想(ねたばれ:注意)

マンションの一室。夕陽のさす部屋で「言うべき言葉がない!」と怒りを見せるハーパー。窓辺によると、夫ジェームスが目を見開いて、こちらを睨んで落ちて行った!

ハーパーは車で自然豊かなイギリスの田舎町にある小さなお城のようなカントリーハウスを訪ねた。庭にリンゴの木があり、一個もらって食べた。「リンゴを食べたらイヴとなるぞ!」と成り行きを身構えました。(笑)

 

管理人のジェフリーの案内で部屋を見て廻る。「マーロウ夫人」と問われ「今では夫人ではない。滞在は2週間の予定」と返事した。ジェフリーが「リンゴは沢山食べていい」という。窓から教会が見えた。ジェフリーは「この先に住んでいる」と出て行った。

早速、女友達のライリー(ゲイル・ランキン)に「夢のカントリーハウスよ、管理人は良い人、夫人でないと答えたのはまずかった」と電話した。電波が乱れ早めに切った。

ハーパーが離婚を言い出すと「俺の一生が消える、自殺してお前に罪を負わせてやる」というジェームスの姿を思いだした。

ハーパーはこの思い出を消すために散歩に出た。森の中の散歩、緑が爽やかで水溜まりが実に美しい。トンネルに入り声を出すと幾重にもコダマして帰ってくる。が、誰かにつけられている。

 

走ってトンネルを出ると野原。西洋タンポポの綿毛が飛んでいた。さらにその先が牧場で古い屋敷の前に頭に葉っぱをつけた裸の男がいた。ハーパーは、ベランダから落下して鉄柵のひっかかり腕が裂かれた夫の死様姿を思い出しながら、走ってハウスに逃げ帰った、

風呂に入って、テイリーに古い屋敷の映像を送って、拡大してみると裸の男が写っていた。

翌朝、ピアノを弾くと昨日の散歩の風景が出てくるが、大きな木の枝分かれが人間の股間に見えて、弾くのを止めた。ライリーに「ここはまずい」と各部屋を携帯で伝送しいて、リンゴをとる裸の男を見つけた警察に連絡し、逮捕してもらった。ハーパーはこのとき夫ともみ合い激しく殴られた記憶が重なり、ひどく怖がった。

裸の男を警察に渡したことをライリーに「いかれた男だった」と伝え、散歩に出た。

誰もいない教会に入った。そこには葉っぱを頭につけた?“男性の顔面”(グリーンマン)と性器を出している女性(シーラ・ナ・ギグ)のレプリカが掲げられていた。このふたつのレプリカが何度もこの作品の中でてきますが、いかなる意味をなすのか、よく分からなかった。

ハーパーは祭壇で「自殺するなどどうでもいい!出て行って!」と泣いた。これを牧師が観ていた。

 

外に出ると唇の大きな女性の面を被った少年が出てきて「かくれんぼしよう」と誘う。そこに牧師がやってきて少年を追い出し、ハーパーに「問題を抱えているようだが、話してみませんか」と寄ってきた。ハーパーは「夫婦喧嘩で夫がベランダから飛び降り自殺し、落下中に自分を一瞬見たことがトラウマになっている」と話した。すると牧師は「彼に謝る時間を与えていたら死ななかった」という。ハーパーは「バカにしないで!」と怒ってハウスに戻った。

 

ハーパーの頭の中を腐敗が進む鹿の遺体、教会のパブリカの像、裸の男の姿が浮ぶ。

ハーパーは気分直しにバーを尋ねると店主はジェフリーだった。客のふたり、それに警官がいた。みんなジェフリー似だった。ハーパーの頭がおかしくなったのか?警官が「裸の男は釈放した」という。ハーパーは慌ててハウスに戻った。

ハーパーはライリーに「このハウスは変だ!迎えにきて!」と電話した。「4時間かかる、居場所を送って!」という。電波状況が悪く、地図を上手く送れなかった。

街灯が点滅しだし、そこにジェフリーが、警官も来ている?リンゴが一斉に落ちた!

ハーパーはダイニングルームから包丁を取り出して身構えた。大きな音がして窓が割れた。そこにジェフリーが入ってきて「なんてこった!」と落ちた鳥の首をひねって殺した。「警官がいた」と訴えると「バカ言うな!」と言い「大家としてしっかり調べる」と部屋を点検して帰っていった。

庭に出てジェフリーが帰るのを見ていると裸の男が近づいてきて息を吹きかけた。

ハーパーが逃げると女の面を着けた少年が追ってきた。ハウスに戻って鍵を閉めた。すると郵便受け口に手を突っ込んでハーパーの手を掴み引っ張った。ハーパーは鉈でこの手を切り裂いた。ヒーヒーと声をあげながら少年がハウスに入ってきた。

 

ハーパーは二階の寝室に逃げた。するとそこに牧師がやってきて血だらけの手を洗い、「あなた誰?」と聞くと「白鳥だ!」と言い「お前は陰部を見せ、口を開いた」と背後から襲い掛かった。ハーパーは牧師を蹴とばして、庭に出て車で逃げ出した。

ところが車の前面にジェフリーが現れ、ハーパーは車から引きずり出され、この車でジェフリーが追いかけてきた。車は壁にぶち当たって止まった。ハーパーがほっとして泣いていると、頭に葉っぱをつけた裸の男が折れて脚を引きずりながら近づいてきた。

この裸の男の顔が“教会のレプリカ像の人面”となり、大きな女性の陰部となり、・・・ここからは書けない。私は何を観ているのか?

ハーパーがハウスのソファーに座っていると、ジェームスがやってきて「俺が死んで鉄柵に挟まれ腕が裂かれたのはお前がやったこと!」という。ハーパーが「何を私に求めるの?」と聞くと「愛だ!」という。

ライリーが迎えに来た。ハーパーは彼女を見て微笑んだ!衝突した車が転んでいた。

まとめ

ハーバーは夫とあまりにも衝撃的な別れを癒すためにこのカントリーハウスにやってきた。ハーバーの精神はかなり混乱きたしており、現実と妄想が区別できなくなる。

ラスト10分、頭に葉っぱをつけた裸の男が折れた脚を引きずりながら近づいてきてこの男から次の男が生まれ、さらにこの男から次nullお男が生まれ、最後に夫が生まれ、「何がして欲しいの?」と聞くと「愛が欲しい」という。ここまでh全て妄想の世界。ハーバーは恐怖のあまりハウスの外に出て車両事故を起こし、やっと生気に戻った。

「リンゴの木」「葉っぱを頭に付けた男」「教会のレプリカ像」「白鳥」は女性に苦痛を与えた古史からの引用。「西洋タンポポ」は受粉をせずに自分だけで種子を作ることができる。

ハーバーはこのハウスにやってきて、現実と妄想の中で、夫の暴力(言葉を含む)、レイプに晒されていた

10分の問題のシーンは「西洋タンポポ」をオマージュした「男どもは!」

何が原因でハーパとジェームスが離婚に至ったか、夫の性暴力だった「男は女を見るとセックスを求め、拒否すると暴力を振う」。#MeToo運動の今、10分間の「俺は何を観ているのか」という驚愕の映像もテーマ的には平凡なもので、男性優位の暴力体制をこのようなアートで表現した作品だった。

 「同じ顔の男たち」、これは余計だった同じに見えても見えなくてもよかった。

作品は美しい色彩と音楽、効果音でアクセントをつけてくれ、ホラーを楽しみました。(笑)そして、ハーパー役のジェシー・バックリーが、こんな恐怖に対して自然な表情で演じるので物語にリアリティを感じ、いくつもの人物を演じるロリー・キニアの演技がそれらしく、これも素晴らしかった。

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