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「シンドラーのリスト」(1993)ホローコストの奥にある“戦争の狂気”を描き、「不戦」を訴えた作品!

 

スティーブン・スピルバーグ監督が、ナチススによるユダヤ人大虐殺から多くの命を救った実在のドイツ人実業家オスカー・シンドラーを描いた名作

 恥かしながら、本作未鑑賞でした。「フェイブルマンズ」(2022)を観て、そのうち観ようと思っていたところに、NHKBSで放送してくれ助かりました。「フェイブルマンズ」で語られた母の言葉「すべての出来事には“意味”がある」を具現した作品で「ホローコスト」を描いただけの作品ではない、その“意味”を描いた作品であることが伝わり、涙を禁じ得ませんでした。ロシア・ウクライナ戦争の今だからこそ、見るべき映画です!

監督:スティーヴン・スピルバーグ原作:トーマス・キニーリー、脚本:スティーヴン・ザイリアン音楽:ジョン・ウィリアムズ ヴァイオリン・ソロ:イツァーク・パールマン撮影監督:ヤヌス・カミンスキー編集:マイケル・カー。

出演者:リーアム・ニーソンベン・キングズレーレイフ・ファインズ、キャロライン・グッドール、ジョナサン・セガールエンベス・デイヴィッツ

第66回アカデミー賞(1994)では12部門にノミネート、そのうち作品賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞美術賞作曲賞の7部門で受賞した。

物語は

1939年、ナチススドイツ占領下のポーランド。戦争を利用して一儲けしようと狙うドイツ人実業家シンドラーリーアム・ニーソン)は、軍の幹部に取り入り、ユダヤ人の所有していた工場を払い下げてもらう。軍用ホーロー容器工場を立ち上げた彼は、安価な労働力としてユダヤ人たちを雇い入れ、事業を軌道に乗せていく。しかしナチススによるユダヤ人の迫害は日ごとにエスカレートし、ついに虐殺が始まる。凄惨な光景を目の当たりにしたシンドラーは、私財を投じて彼らの命を救うことを決意する。(映画COMから引用)


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あらすじ&感想

1939年9月、ポーランドがドイツ軍に敗れた。戦争で一儲けしようと企むシンドラーは黄金ナチス党員章を胸にナチス親衛隊(SS)将校クラブに出かけ、高官たちに高級ワインを振る振る舞い、名を売った。

国内で暮らすユダヤ人は南部のクラクフに移動させられ、ユダヤ人の評議会によって管理されることになった。シンドラーは工場を立ち上げるために評議会から工場管理に明るいシュターン(ベン・キングズレー)をスカウトしたポーランドの敗戦による経済の混乱を上手く利用して、食品容器製造工場を買収。手なずけたSS将校たちを利用して軍の厨房用品受注を受け、労賃の安いユダヤ人を雇用して、事業をスタートさせた。

1941年3月20日ユダヤ人はゲットー(ユダヤ人居住区)への移動命令が決まり、高齢者等労働に就けない者は収容所に収容されることになった。高齢者の中から優秀な技術を持つ者を労働可能として偽証明書を発行して、会社が引きとり活用することにした。これらの施策が上手く軌道に乗り、食品容器製造事業は順調に進みだした

シンドラーは愛人と生活していたが、そこに故郷から妻エミリエ(キャロライン・グッドール)が訪ねてきた。上手く愛人が隠れてくれシンドラーは助かったが、妻が豪華な生活ぶりに驚く。“戦争”で運が開けたと聞いて、故郷に戻っていった。

シュターンの紹介で年老いたユダヤ人身障者が「この会社に採用されて命拾いした」とお礼にきても素気なかった。この老人が雪の朝、ナチスによって雪かきに駆り出され、役に立たないと銃殺された。シンドラーはSS将校に抗議したが、「ユダヤ人の障害者に頼るのは国への反逆だ」と無視された。

このころのシンドラーには儲けしか関心はなく、ユダヤ人を救おうなどという考えはなかった。

シュターンが高齢者として他収容所に移動させられることになった。これを愛人のベットの中で聞いたシンドラーは「彼が居ないと工場が動かない」と慌て、出発駅に直接赴き、護送担当兵を脅し、彼を取り戻した。この出来事でシンドラーとシュターンの関係は商売で結ばれた関係を超えたものとなっていった。

1942年の冬クラクフ郊外に建設中のプワシュフ収容所所長に任命されたアーモン・ゲート少佐レイフ・ファインズ)が視察に訪れ、基礎が不十分で危険と意見具申したユダヤ人女性をその場で射殺した。それを目の当たりにしたユダヤ人は、アーモンに恐怖を抱いた。

1943年3月13日。ゲットーを廃止し、働ける者はプワシュフ収容所に、働けないものは他の収容所に移すこと(射殺)になった。

突然のSS部隊によるゲットー捜索が始まりゲットーは大混乱となった。事前に準備した隠れ部屋や屋根裏に隠れる。地下道に逃げる。しかし、発見されたものは容赦なく銃撃された。万一の場合にはと決めていた毒薬を飲む。病院では患者に毒薬を与える。映画とは思えない、生々しい状況が映し出される

広場に集められた者たちの中に、赤いコートの穢れない可愛い同じ女の子がいる。逃亡等不審な行動、あるいは歩けない等作業に役に立たないと判定されればその場で射殺される。

シンドラーは愛人を連れて馬で丘に登り、この状況を眺めていた。彼の目に赤いコートの女の子が入ってきた。彼は「人として、こんなことが許されることなのか」と自分の良心に問うた!

成人男女は年齢を問わず、全員素っ裸にされてナチス医療班によって瞬時に健康状態が診断され、プワシュフ収容所か射殺される者に区分される。慄く住民たち。子供たちはまとめられてトラックに乗せられ他の施設に送られる。

やっとここに残れると安堵する女性たち。そこに子供たちを乗せたトラックが通る。我が子のことに気付きトラックを追う母親たち。

トラックから脱出した子たちが隠れ場所を捜すゴミ箱、下水道の陸地などすでに他の子に占領され居場所が見つからない。アパートに戻りトイレに中に入るが、そこにも糞だらけに子供たちで一杯だった。赤いコートの子はアパートに戻りベットの下に隠れ、ナチスが通り過るのをまっていたがその後は不明。

プワシュフ収容所所長のアーモン・ゲートは収容所が見下ろせる丘にある豪邸に入った。アーモンは若い女性たちを集め、ヘレンエンベス・デイヴィッツ)の美しさが気に入り、メイドに選んだ。

収容所に集められた女性たちは「アウシュヴィッツ収容所に送られた人たちはガス室で毒殺されている」という情報を聞き、「ここも?」と怯えたが「技術があるから殺さない!」という女性の言葉を信じることにした。

シュターンも収容所に収容されたシンドラーはアーモンに賄賂を渡し「工場は軍に役立つ。優秀な技術者を工場に残して欲しい」と訴えた。シンドラーは密かにアーモンに会い、彼から催促されSS高官への贈り物を欠かさなかった。この成果でシュターンも従業員の会社に戻ってきた。

ある日、女性から他の収容所に送られた父母を救出して欲しいという依頼があった。女性は偽造証明書で別人に成りすまし収容所の外で暮らしていたため、この話に乗気でなかった。が、熟練工として工場に引き取った。

シンドラーがヘレンに会うと、「アーモンはベランダから収容所を見降ろし、働かない者を見つけると銃殺する。どうせ私も銃殺される」と話す。シンドラーは「彼の心を慰めてやってくれ!」と励ました。そしてアーモンに会い「真の王様とは殺すよりも許す人間だ。その方が強い力を持つようになる」と説いた。こうしてアーモのン無意味な銃殺はなくなっていった。

シンドラーの誕生日、祝いの席に、ユダヤ人の母子からお祝いのケーキが贈られた。シンドラー母親にキスして感謝した。まわりにいたSSたちが驚いた。彼はユダヤ人を汚い!」と忌み嫌うSSたちにその考えを捨てるよう意識改革を促すために採った行動だった。パーティーでもこれをやって拘置所に入ったが、ナチス高官への鼻薬がよく利いて解放された。(笑)

収容所に新たなユダヤ人が送られてくることになり、現在いるユダヤ人の身体検査を実施して栄養不良や病気と判断された者はアウシュビッツ収容所に送ることになったアウシュビッツ行きの列車が停車すると閉じこめられたユダヤ人たちが水を欲しがる。シンドラーはこれらユダヤ人をバカにした振りをして放水器で水をかけ、SSの目を逃れて、水分補給をした。こうしてシンドラーユダヤ人たちに「生きて欲しい!」と願うようになっていった

1944年4月。町中に灰が降り注いだ。SSがこれまで殺害した大量の遺体を焼却していた。

プワシュフ収容所のユダヤ人たちは同胞の遺体の焼却作業にあたった。埋められた遺体を掘り起こし、車に乗せて焼却場に運び、深い壕に投げ入れる。ある遺体はコンベアーで壕の中に。そこに赤い子供のコートが見えた。この再現映像も凄い!

遂に工場を閉鎖してアウシュビッツ収容所に移動する日が来たシンドラーは故郷チェコに戻ることにしてシュターンと別れを惜しみ、酒を酌み交わしたが、その決心を翻した。私財を投げうってアーモンからユダヤ人を買い取りチェコに連れていくことにして、連行人名簿(シンドラーのリスト)を作成した。シュターン「これは善のリスト、生命のリスト」と称賛した。名簿の最後にヘレンを加えたが、アーモンは「死んでも話さない」と拒否した。

シンドラーは「軍需工場で彼らを雇い、ナチスに協力したい」とSSの許可を得た。

列車への乗車が始まった。列車は男性と女性に区分され1100名が乗り込んだ!そこにヘレンもいた。男性グループの列車は無事チェコのブリンリッツ駅に到着したが、女性グループの列車はアウシュビッツに向かったアウシュビッツでは次々と到着するユダヤ人女性をガス室に送り毒殺していた。この状況を子細に再現して見せてくれます!

シンドラーは宝石を持ってナチス高官を訪ね女性たちをチェコに運んでくれるよう陳情したシンドラー自らアウシュビッツに乗り込み女性たちをチェコに連れもどした。

シンドラーは「作業効率を上げるために」とSS兵士の工場内監視を断り、規格が合わない砲弾外筒を製作する等で戦争協力を拒否し早期終戦を待っていた。

終戦、労働者と警備兵を集め4時間後に終戦になること伝え、警備兵に「殺すなら今だ、殺せ!家庭に帰りたいなら帰れ!」と告げた。しかし全員がその場を去った。

シンドラーは妻と一緒に車で工場を去るとき、従業員全員が見守る中でシュターンから「ここにいる全員の著名だ」と感謝文が渡された。さらに、従業員の金歯を溶かして作った指輪が贈られた。シンドラーは「もっと救えた!くだらないことに金を使ったことが悔しい」と泣いた!シュターンは「感謝している!これから子が生まれ救った命は増えていく!」と感謝し「ひとりを生かす者は世界を救う!」という言葉を贈った。

労働者たちはロシア軍の手で解放されたが、西側へ走った。

まとめ

クラクフユダヤ人がナチスから受けた受難がまるで当時を見ているように詳細に描かれ映像でしたが、ドキュメントと違って、感情のあるドラマになっているのがすばらしい。ラストシーンでは涙が溢れました!

作品には数えきれないほどのエピソードが出てきますが、ここでは細部を書ききれないですが、どの人物にも物語があるよう丁寧に撮られています。そしてシンドラーの描き方ですが、これを英雄視するのではなく、悪いこともしっかり描かれて、普通の人でも善の心があれば世界が救えるというメッセージがいい。このことで、人類最大の悲劇が柔らかいヒューマンドラになっていると思いました。

ナチスの悪行が具体的に描かれ、二度と人類がこういう罪を犯してならないというメッセージがよく伝わります。

この作品が言いたいことは、冒頭で述べましたが、ナチスの悪行とこれによるユダヤ人の受難の奥にある“戦争の狂気”を訴え、「ひとりを生かす者は世界を救う!」の言葉、「不戦の誓い」です原作にこの言葉はなく、ユダヤ人であるスピルバーグ監督がつけ足した言葉と言われ、母親から教えられた「すべての出来事には“意味”がある」の“意味”の具現化でしょうか!

本作の「ひとりを生かす者は世界を救う!」が史上最大の上陸作戦で行方不明になったひとりの二等兵を1コ小隊が全滅してでも探し出す映画「プライベート・ライアン」(1997)に繋がり、再度「不戦の誓い」を念押ししたと捉えましたが・・・!

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