原爆で荒廃した世紀末、バイオレンスなカーアクションで描いたジョージ・ミラー監督の代表作。恥ずかしながら、まだ観ていなかった。(笑)
第88回アカデミー賞(2016)で作品賞、監督賞ほか10部門でノミネートされ、編集、美術、衣装デザイン、音響編集、録音、メイクアップ&ヘアスタイリングの合計6部門を受賞。
監督:ジョージ・ミラー、脚本:ジョージ・ミラー 、ブレンダン・マッカーシー、ニコ・ラザウリス。撮影:ジョン・シール、美術:コリン・ギブソン、衣装:ジェニー・ビーバン、編集:マーガレット・シクセル、音楽:ジャンキー・XL。
出演者:トム・ハーディ、シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、ヒュー・キース=バーン、ゾーイ・クラビッツ、ロージー・ハンティントン=ホワイトレイ、ライリー・キーオ、他。
物語は、
資源が枯渇し、法も秩序も崩壊した世界。愛する者を奪われ、荒野をさまようマックス(トム・ハーディ)は、砂漠を支配する凶悪なイモータン・ジョー(ヒュー・キース=バーン)の軍団に捕らえられる。そこへジョー配下の女戦士フュリオサ(シャーリーズ・セロン)らが現れ、マックスはジョーへの反乱を計画する彼らと力をあわせ、自由への逃走を開始する。
あらすじ&感想:
世紀末。核戦争で地球は荒廃、身体は蝕まれ寿命は半分になり、人類は暴力に支配され、崩壊した世界。
警察官で使命感に燃えていたマックスは妻子を失い、インターセプターを駆って放浪の旅を続けていたが、デジタル砦の支配者・イモータン・ジョーの配下に捕まり、被爆兵士の輸血提供要員として拘置された。
ジョーは配下のウォー・ボーイ軍大隊長フェルオサにガスタウンに出向き石油の入手・運搬を命じた。フェルオサは8気筒2000馬力エンジンを持つ石油タンクトレーラー(ウォー・タンク)にミルク・タンクを牽引し、前後を武装車両、とバイクで警護させ砦を出発。
ジョーは出発にあたり砦から水を放出して飢える民を集め、「偉大な力を見せてやれ!」とフェルオサ出陣に檄を飛ばした。この映像は実に壮大!古代ローマ軍出陣の絵巻絵だ。
フェルオサはこの機会を利用してジョー専用の子産み女(性奴隷)5名を引き連れ、ジョーの女性圧政から逃れ生まれ故郷“緑の地”に亡命することにしていた。
荒廃した大平原を走るウォー・タンク。フェルオサは進路を“緑の地“方向に変更した。
この変更を砦でキャッチしたジョーはウォー・ボーイ隊を自ら率いて出陣。ジョーは肺を犯され人工呼吸器を背負いマウスで呼吸しながら、火傷の身体に鎧を着けての出陣。部隊はバイク、戦闘車、ショベルカー、棒吊りカー、楽団カー(火炎銃ギター、太鼓)など数十両で編成されている。いずれもユニークな車両だ。(笑)
先頭を走るのは死を名誉と心得るニュークス(ニコラス・ホルト)。彼は被爆者で輸血を必要とする。戦闘車の全面にマックスを鎖で繋いで立たせ、彼から受血しながら走った!
右方向から数量のハリネズミ車が、ウォータンクに並進して、火炎銃と車輪に装着のナイフで襲い掛かる。フェルオサが巧みな運転でこれを跳ね飛ばしてばく進。転倒するバイク。
そこにジョー軍が急迫してきた。ウォー・タンク車にショベル車が並進して襲いかかる。シャベルにウォーボーイズを載せ、ウォー・タンクに移り込んで子産み女の奪取にくる。これに護衛隊が火炎銃で対抗、敵の首が吹っ飛ぶ。フェルオサの巧みなドライビングで逃げ切り、天を覆うばかりの大砂塵に突入した。
大砂塵の中でジョー軍は車両がぶつかり合い大混乱!フェルオサは見事にジョー軍を振り切って大砂塵を抜けたが、ニュークス車がウォー・タンクの前面に出て横転!
フェルオサはウォー・タンクを止めて車両点検、女たちも下車して休憩中。横転したニュークスの車から、マックスが鎖で繋がれたニュークスを背負って現れ、鎖を切るよう求めた。鎖から解かれたマックスはウォー・タンクで逃げようとしたが、改造車で運転が出来なかった。マックスは女たちと一緒に、フェルオサの運転で、“緑の地”に向かうことにした。
フェルオサが何か引きずっているという。マックスが車体下を確認中にニュークスが運転席に顔を出す。フェルオサが突き落とした。
ジョーに協力する人食い男爵や武器将軍がバイク、火炎輔車、タンク車、棒跳び車などで追ってくる。
渓谷隘路を前に、フェルオサはイワオニ族にガソリと隘路封鎖を取引しているという。ジョーは途中でニュークスを拾い、渓谷に迫ってきた。大部隊の接近に気付いたイワオニ族は渓谷入り口を爆破して消えた。ジョー連合軍は渓谷入口で立往生。
しかし、ジョーは改良バギー車で爆破された土砂を乗り越え、フェルオサを追ってくる。バイクでウォー・タンクを囲み、跳躍してタンクに挑みかかる。ウォー・タンクのフロントボディーで火災発生。ドーザーで土砂をかき上げながら走行して消火。
人食い男爵軍が追ってくる。兵士が釣り棒車でタンクに乗り移り攻撃してくる。女たちに銃を持たせて戦わせ、マックスがタンク上で戦い、フェルオの運転で彼らの追撃を振り切った。
ジョーが「スプレンディ!腹の子はおれのものだ!」とわめく。スプレンディ(ドロージー・ハンティントン=ホワイトレイ)が「砦に戻って楽に暮らしたい!」と言い出し、車から身体を乗りだす。前方に岩!ウォータンク・タンクが接触しスプレンディが落下!
ジョーがスプレンディを抱き上げて泣く。ジョー連合軍の攻撃が止った。
ウォー・タンクは休止。ケイパブル(ライリー・キーオ)が「磐に戻って暮らす!」と逃げ出すのをフェルオサが引き止めた。
夕陽の中、緑の地をめざして走り始めた。ウォー・タンクの車体にすがりついていたニュークスが「俺のミスでスプレンディを死なせた」と運転席に顔を出す。フェルオサは高い整備技術を持つ彼を運転室に招き入れた。負傷しているニュークスをケイパブルが手当してやり、このふたりは次第に好意を持つようになった。
ウォー・タンクはツンドラ平原に突入。追撃するジョー連合軍の車両がスリップで衝突・横転して大混乱。ウォー・タンクは湿地にハマり込んだがニュークスの知恵で脱出作業中、武器将軍が現れた。マックスがガソリンによる決死行動で止めた。
緑の地に辿り着いた。故郷で“緑の民”に会うが「放射能に汚染され緑の地はない」という。フェルオサは潮の海を渡り緑の地を捜すとバイクで走り出したが、マックスが「砦を乗っ取れ!」と薦めた。「ジョー軍を峡谷隘路に誘い込みタンクを外して道をふさぎ混乱させて潰す」と提言した。緑の民も同行した。
途中で人殺し男爵軍が襲い掛かる。1基のエンジン故障にニュークスが車体下に潜って対応。人殺し男爵の棒飛び車から兵士がタンクに飛び乗り女たちを狙う。マックスが応戦し、額に矢を受けた。2台のタンク車でウォー・タンク挟んで攻撃してくる。マックスは人食い男爵の戦闘車に飛び乗って格闘。フェルオサが男爵を射殺した。
渓谷隘路の闘い。ニュークスがウォー・タンクを運転。緑の民がバイクで急襲!フェルオサはジョーの車に、マックスは楽団の車に乗り移り格闘。ニュークスは決死的な運転でタンク車を転倒させ敵車両を潰した。フェルオサがジョーを倒したが負傷したがマックスが自分の血を輸血し救命した。
ウォー・タンクはジョーの遺体を積んで砦に帰還。集まる民衆にジョーの遺体を披露。フェルオサは救世主と称えられ、砦の水門を開き、水を提供した。マックスは喜びの民衆の中に消えていった。
まとめ:
“ロードレース”が滅茶苦茶に面白い!格好良くて、真似したくなりますね!(笑)
マッドなカーチェイス、カーアクションの中、原爆で荒廃した世紀末を描く。結末が「英雄伝」、古史に求めたのが圧巻だった。モーゼの“出エジプト記”をひっくり返した人類の再生物語。人類の起源、女性社会に戻る、これがいい。
原爆で荒廃した世紀末様相。水源を確保して絶対的権力を振るう男性支配の社会制度。女性は子を産む機械。産まない女性は母乳生産機。植物は温室育成、石油エネルギーを母乳で取引、死を厭わない戦士の育成、古い車の改良・武器化。戦法は原始時代の狩りの戦法。
改造車の数々。
これを絵で描く。ジョーによる砦の支配体制。改造された数々の兵器で荒廃した砂漠、大砂塵、ツンドラ、渓谷におけるダイナミックな戦闘アクション、カーバトル。圧倒的な映像だった!
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