ひとつの事故を発端に追い詰められていく刑事の姿を描いたクライムサスペンス。2014年の同名韓国映画のリメイク。中国やフランスなど各国でもリメイクされた作品とのこと。監督が藤井道人、岡田准一、綾野剛出演ということで、リメイクでも観ると初日初回に出かけました。小さな劇場でしたがほぼ満席でした。多くは「TOKYO MER」に流れていました。(笑)
監督:藤井道人、オリジナル脚本:キム・ソンフン、脚本:平田研也 藤井道人、撮影:今村圭佑、編集:古川達馬、音楽:大間々昂。
出演者:岡田准一、綾野剛、広末涼子、磯村勇斗、駿河太郎、杉本哲太、柄本明、他。
物語は、
ある年の瀬の夜、刑事の工藤(岡田准一)は危篤の母のもとに向かうため雨の中で車を飛ばしていたが、妻・美佐子(広末涼子)からの着信で母の最期に間に合わなかったことを知る。そしてその時、車の前に現れたひとりの男をはねてしまう。工藤は男の遺体を車のトランクに入れ、その場を立ち去る。そして、男の遺体を母の棺桶に入れ、母とともに斎場で焼こうと試みる。しかし、その時、スマホに「お前は人を殺した。知っているぞ」というメッセージが入る。送り主は県警本部の監察官・矢崎(綾野剛)で、工藤は矢崎から追われる身になってしまう。(映画COMから)
「どこがどうリメイクされたか」、韓国版を観ていないで分からないですが、物語の背後に我が国の社会状況がしっかり組み込まれ、予想できる作りで、とてもうまい脚本、演出でした。
クライムサスペンスではあるが、人の繋がりも丁寧に描かれ、笑いが一杯。描き方はテンポが良くて、話の筋がよく繋がり、スリリングでちょっとホラーっぽく、格闘技にカーアクションありで説明より観て楽しむ作品となっている。これまでの藤井監督作品には見られないエンターテインメント作品となっています。
あらすじ&感想:(ねたばれあり:注意):
12月29日、大雨の夜。工藤は一杯飲んで、白い車で母親が危篤と病院に急いでいると、刑事課長の淡島から「お前、金取ったのか?週刊誌に載るぞ、なにやっている!」と電話は入る。「なんで俺が、(課のためだろうが)」と言い返していと、妻から「お母さん亡くなった」と。その時、目の前に女が横切り、男とぶつかった。「俺は刑事だ!なんとかなる」という工藤の顔。 (笑)
下車して男を調べると即死!まわりをパトカーが走るがこちらに気付いてない。工藤はトランクに遺体を載せて急ぐ。ところが飲酒取り締まりの口煩い警官・梶(山中崇)の検問に引っかかり、飲酒と車の傷がバレ、トランクを調べられる。遺体からスマホの着信音にびくつく工藤。早く何とかしたい!(笑)
「アウト!」と思っていたところに突然県警管理官の矢崎が現れ、工藤を引き取り、母親の遺体を見舞た後、警察署で会うことになった。
ここでの警察の内部事情がリアルで(笑)、岡田さんのちょとぶっ飛んだ刑事と綾野さんの冷たい、これ綾野さんという顔芸。これが結末でどんな表情になるか?(笑)
とりあえず工藤は病院に戻り、母の顔を見た。葬儀屋に母の遺体を預けるために同行。病院を出る際、妻から「あれ早く頂戴!」と言われ、「分かった」と返事し、葬儀屋に向かった。
交通課から「工藤のトランクに異物がある」と伝えられ、淡島課長が葬儀屋に飛んできて「仙葉からもらった金はどこだ?」とトランクを開けたが“空”!「遺体はどこに?」、ここを描かないという余白を持たせた編集が良い。(笑)淡島は「明日葬儀か」と確認して帰って行った。工藤はほっとした。
12月30日。工藤は署に急ぐ途中、車の傷修理のため、路肩で取締中のパトカーにブチ当て、警察のつけにして代車で署に戻った。(笑)そこに矢崎が待っていた。
矢崎は「仙葉組との金の繋がり、わかります。これも仕事のうち。困ったことがあったら連絡してくれ!」とは帰っていった。刑事課は1件落着と大喜び。
工藤は葬儀屋に引返し、「葬式まで遺体に付き添っていたい」と申し出て葬儀屋に喜ばれる。誰も居なくなった遺体安置室で天井を見て、男の遺体処分法が見つかった。天井裏を通風口を使って隠した男の遺体をここに運びも込み、母の遺体の下に入れた。警備員に見つからずこれを成し遂げた。(笑)ところがこの時、ふたりの男が遺体の冷却剤交換にやってきた。(笑)なんとかこれも無事に終えた。(笑)
仙葉組長(柄本明)餞別を持って弔いにやってきた。そして本作最大のポイント「砂のトカゲ!」の話をする。「足掻いても足掻いても砂漠から出られないトカゲになるな!協力しろ」というもの。「寺には大金が集まる。政治家はお布施と称してここで金を洗浄して儲けている。金庫番の尾田(磯村勇斗)をパクれ!あとは俺が金をパックって、後を継ぐ。お前、砂漠から抜けられる」と持ち掛けた。真実味のある話で、これが物語の壺だった。(笑)工藤は、男を引き殺しており、この話に乗った!
署に戻った工藤は尾田の逮捕状を要請、許可が出た。大喜びの淡島課長。工藤は尾田の履歴表を見て驚いた。自分が車で轢いた男が尾田だった。(笑)
刑事課のメンバーとして尾田の隠れ場・廃品処理場を囲んだ。そこに「俺は知っているぞ!お前が犯人だ!尾田を殺した」と怪電話が入った。さらに久我山刑事(駿河太郎)が電柱に取り付けられた防犯カメラを見つけ解析を始めた。白い車が写っている。「車番が読めるか」と騒ぎ出す。工藤はもうだめだと思った。「読めない!」を聞いて、工藤は「葬式だ!」とこの場を離れた。(笑)
葬儀屋に戻りと、そこに矢崎が待っていた。「遺体を持ってこい!」という。「そんなものない」というと、激しく蹴とばして「持ってこい!」と娘のミナを連れ去った!
ここから、矢崎が「持って来い!」という根拠に至る物語が描かれる。
12月28日、矢崎は明日親父となる県警本部長・植松から「尾田が保管している金庫の鍵を持って来い」と命じられ、尾田が管理する金庫のある墓地を訪れたが会えず、仙葉の力を借りることにした。
妻となる由紀子(山田真歩)の待つアパートに戻ってきた。由紀子の作った料理の量の多さ!(笑)矢崎の夢は何だったか。
12月29日の結婚式。派手な結婚式だったが矢崎の表情は冴えなかった。植松から「絶対に捕えろ!命令だ!」と言われる。そこに仙葉から「居場所が見つかった」と知らせてきた。
矢崎が尾田の隠れ場・廃品処理場に行くと尾田の彼女(清水くるみ)がいた。そこに「仙葉と会ったが話が違う」と尾田が帰ってきた。矢崎を見て、ふたりが逃げる。矢崎が追って尾田に発砲した。ふらつき道路に出た尾田が工藤の車に跳ねられた。矢崎は工藤の行動の一部始終を見ていた。
矢崎が本部長の父に「遺体を持っていかれた」と報告すると「バカ者!娘と年が明けたら別れろ!」とゴルフクラブで殴られた。遂に矢崎がキレた!父をぶん殴って踏みつけた。「警察に居場所はない」と矢崎が狂った!
話が葬儀場に戻る。葬儀が終って火葬場に遺体が移される。棺を担ぐ刑事課の面々、「何でこんなに重い!」と。(笑)
火葬場で遺体が窯に移された。工藤が職権発動して点火を止めた。そこに久我山刑事が「車番が読めた。お前の車だ、何があった」と聞く。ご都合主義な展開だが!(笑)工藤は実情を話して尾田の遺体を取り出し詳しく調べた。久我山が「弾痕があり工藤が轢く前に死んでいた」と言いう。工藤は遺体のスマホの指紋認証を解除し、通話履歴から彼女に電話すると、彼女が「元気!」と出た。
遺体を車に乗せて彼女のいる廃品処理場にきて金庫の鍵のありかを聞いた。「カードと指紋だ」と聞き、遺体からカードを抜き1本指を切り落とした。
久我山の車の中で工藤が「娘を取り戻す」と話すと「課長と話しをつけるから動くな!」という。そこに矢崎が現れ「車から離れろ!」と指示した。離れると同時にドガーンと大音響!クレーンで釣りあげていた鉄材が久我山の車に落ちて、久我山は即死。狂った矢崎の殺し方だった。面白い!!
矢崎が父親を殴ったように工藤を虐め、「遺体を持って橋梁下に来い!」と去って行った。工藤はトカゲのように逃げ出し、遺体から金庫の鍵(カード)を取り出し指を切り落とし、仙葉から渡されていた爆薬を遺体に仕掛けて、矢崎の待つ橋梁下に出かけて、遺体と娘のミナの交換交渉に臨んだ。
交渉は上手く進んでミナを取り戻した。矢崎は「お前は俺に似ている俺を手伝え稼げるぞ」と車で去って行く。そのとき爆発!車ごと矢崎は河に落下した。
矢崎はミナを妻の元に返し、「俺はここに残る!」と寺の墓地にある金庫を鍵で開けてそこにある金を見た。山のようにあった。
大晦日の夜、花火が上がり、寺は大勢の人でごった返していた!
しみったれた工藤が小さなバッグに札束を詰めていると、亡くなったはずの矢崎が現れた。ふたりは札束の中で戦った。舞い上がる一万円札。そして墓場に出て戦い、ふたりは死闘の末にぶっ倒れた。その時除夜の鐘が鳴り始めた。
新年へのカウントワウンが始まった。そこに仙葉が現れ、「県警に知らせたのは俺だ!お前のお陰でふたりは焼け死んだ。全部おれのものだ」と尾田の彼女を連れて去っていった(笑)
目覚めた工藤はこいつは死んだと矢崎を残してこの場を去った。車で海に浮かぶ橋を走りながら妻に「もう一度初めからやり直したい」と申し出て許可を取ったところに、矢崎の車が並列して走っていた。真っ赤な顔の矢崎が笑い、最後まで行くとついてくる!(笑)
まとめ:
物語は12月28日から4日間、除夜の鐘で新しい年を迎える中での物語。除夜の鐘に絡む大寺院の莫大なお布施が絡む犯罪事件話だからほっておけない。(笑)
お布施を巡る事件で、何故警察官同志が戦わねばならない。絡むふたり刑事。工藤は母の介護にも金を欠くという貧乏刑事、も一方の矢崎は県警部長のバカ娘と結婚して出世をめざす。ところがいずれも警察内部の不正やヤクザ絡みの事件で窮地に立つ情けない警察官だった。これがリアルで、こんな面白い話は滅多に出てこない!
プロットは似ているが、日本のドラマになっていた。韓国作品を超えていると信じたい。(笑)
ラストシーン、ふたりは何が目的で戦っているのか?“最後まで行く”と車をぶっ飛ばす結末、もうこんな世界が嫌だと砂漠を飛び出すトカゲだった。 (笑)
このときのふたりの血だらけの微笑みのアップ顔は、岡田さんでも綾野さんでもない、お化け顔になっていました。ふたりでなければ醸し出せない「行けた!」という表情、すばらしい演技でした。
「この戦いを仕組んだのは俺だ」と女を連れて立ち去る仙葉。寺とヤクザに終わりはないという結末。柄本さんの長年鍛えた隠れたドスの利いた演技が見事で、全部持って行っちゃった。(笑)
笑って、笑って、笑いコケタ作品だった。
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