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「言の葉の庭」(2013)人生を長い間温めてくれる特別な一瞬(出会い)とは!

 

美しい絵!少年の初恋の感情が伝わる作品で何度でも観たくなる!!

 「天気の子供」」(2019)のなかで、帆高と陽菜がホテルに泊まるシーン。このシーンについて監督は、「誰の人生にもそういう一瞬があるはず。その先の人生を長い間温めてくれる特別な一瞬、これを観客に経験して欲しかった」と明かしています。

この一瞬を描いた「言の葉の庭

15歳の男の子は27歳の女性に憧れ、恋したが、彼女に愛される男にはなれていなかった。愛するには、力が欲しいと思う一瞬。この一瞬を知って男の子は大きく育っていくという話。


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あらすじ

雨に濡れる公園、走る電車。「こういうことを知らなかった、制服を濡らす他人の傘、誰かのスーツに沁みついたナフタリンの匂い、背中にくっ付けられる体温」と電車の中のタカオが呟く。

新宿駅に降りて、空を仰ぎ、「空の匂いを連れてくる雨が好きだ」と地下鉄には乗り換えず、雨がなかのビル街、交差点、歩道を経て緑が濃い公園に着いた。

タカオの後を追うように“雨”、電車、ホーム、ビル街、道路、交差点、公園の絵が映し出される。うつくしい詩のような映像です

そこには赤い花が咲いていて、そこにひとり女性がベンチに座っていた。雨の音、滝水。タカオは靴のデザインを考えていた。

チョコレートでビールを飲む女性。「どこかで?」と声を掛けた。「いいえ」と彼女。雷鳴、赤い傘を開き短歌「雷神の少し響みてさし曇り雨も降らぬか君を留めむ」を口ずさみ去って行った。

タカオは兄と生活しているが、兄が恋人との生活で出て行くので、ひとりで生活することになる。家事もうまくこなせる子でした。

雨の日、午前中だけ公園に。公園で知合った女性の足をスケッチ、靴職人になることを話すようになった。あの人にとって俺は十分ガキに見えるだろうと思った。

雨のホームで、ユキノはどうしようかと悩み、公園にやってくる。タカオが「朝ごはんを一緒に!」と弁当のおかずを彼女に進める。彼女とおかずを交換しながら食事した。

ユキノが元彼に電話。「ゆっくり休め」とそっけない返事だった。

7月、ユキノが靴の絵本をタカオにプレゼントした。タカオは「いま靴を作っています」と話しドキドキしながら彼女の足の寸法を取った。明るいそらから雨が吹き付ける。足の大きさをノートに記した。

「私ね、うまく歩けなくなった」とユキノ。タカオは「このひとのことなにも知らないが、どうしようもなく惹かれていく」とつぶやいた。夕日のビルの風景が美しく見えた。

梅雨明け宣言。まるでスイッチは変わったように天気になる。「梅雨はあけて欲しくなかった」とユキノ。

兄が家を出て雨の降らない日ばかり。あの場所にいく口実のないままに夏休みが来た。

タカオは夏休み期間ほとんどバイトを入れ、専門学校の授業料のたしにと働いた。あの人に会いたいが、あのひとが沢山歩けるように靴を造ることに決めた。

9月、教室。学友と話していて、あの人に出会った。ユキノ先生!の声が聞こえた。「そうだったのか古文の先生だったのか」。

先生が好きな男子に好意を持つ3年生の女の子から逆恨みされ、すいぶん追い込まれたと聞いた。

タカオは先生を虐めた3年生の教室を訪ねた。「なんだ1年生!」という女の子を殴った。そのとき「あのババアに惚れてんのか」と男子生徒に殴られた。

公園の池、すり合う電車。“雨”を待っていた。公園に来るとそこにユキノ先生がいた。「雷神の少し響みて降らずとも我は留らむ妹し留めば」と短歌の返し歌を伝えた。「雨が降ったら君はここに留まってくれるだろうか?」に対する「雨なんか降らなくても、ここに居るよ」と答えたのだった。「万葉集の詩、教科書に載っていました」と答えた。

「ごめんなさい古典の先生と知っていると思って言わなかった。その傷どうしたの?」とユキノ先生が効いた。「喧嘩した」と答えた。突然の雷に雨。すごい雨。ずぶぬれになった。

先生のアパートでタカオが料理して、ふたりで食べた。「いままで生きてきて今が一番幸せかもしれない。ユキノさんが好きなんだと思う」と話した。

「ユキノさんではなく先生でしょう!わたし来週、四国に引っ越すの。私は、あの場所で、一人で歩けるようになる練習をしていたの、靴がなくても。今までありがとう」と答えた。

大粒の雨が降る出す。タカオは「俺、帰ります。ありがとうございました」と部屋を出た。

タカオが部屋を出てから、タカオと弁当を食べた日のことを思い出し、ユキノが泣いた。公園でタカオが作った弁当を一緒に食べたこと、また、あの詩を思い出していた。

ユキノが部屋を出て、階段を駆け降りると。そこにいたタカオに居た。

「ユキノさん、おれ、やっぱりあなたのことが嫌いです!最初から、朝からビールを飲んで訳のわからない歌をしゃべり、自分のことは何も話さないくせに人のことばかり聞き出して俺のことを生徒と知っていたんですよね!失礼ですよ

。こんなになって。あんたが先生なら、靴のことなどしゃべらなかった。出来っこない、かないっこないと思うから。どうしてあなたはそういわなかったんですか。適当に付き合えばいいと思っていた。俺がだれかに憧れたって、かないっこないって最初から分かっていたんだ。ちゃんと言ってくれよ!あんたはいつも関係ないという顔して生きていくんだ」。

これを聞くユキノの顔は涙で濡れていた。ユキノはタカオに駆け寄り抱いた。「学校に行こうとしてたの。でもどうしても怖くて。あの場所であなたに救われていたの」と大声で泣いた。

虹のなかで空が晴れてきた。晴れた帰り道、あかるい雨のなかを帰宅。

夏が終わり冬が来て、タカオは「あの人はどうしているか」と思う。

エンデイングのあと、雪が降り積もる公園。タカオが靴をベンチに置き、「歩く練習をしていたのはきっと俺も同じ。もっと遠くまで歩けるようになったら会いに行こう」と。

感想

滅茶苦茶に絵がキレイだ!写真以上だ!特に雨、雨だれ。ここでの雨は全てのものを洗い流して美しいものを見せる、それは人の心をも。そんな情景のなかで描かれる純真なタカオの年上ユキノへの恋心。このころの夢のような記憶を辿るにはこれくらいの幻想的なシチュエーションがあって丁度良い。

タカオが恋心を育っていくのは、隣に座るユキノの気配を感じ、彼女の靴のデザインをし、一緒に歩き、一緒に弁当を食べ、ユキノを救うために虐めの相手とやり合い、雨に濡れてユキノの部屋でシャツを着替え料理をつくる。これは「北の国」の初恋編だ!

タカオにとってこの体験は人生にとっての心躍る一瞬だった!

ユキノは先生として教室に立てなくなり、公園に逃げ場を求めていた。そこで会ったのはタカオ。靴を作ると言い、弁当を作ってくれる、何よりも心を開いて話ができる。孤独を満たしてくれる存在であった。しかし、真っ昼間からビール飲んだり、あざとく短歌を口にするなど突飛な行動に、高校の先生としてはちょっと情けない。が、この出会いが彼女の人生にとっての心躍る一瞬はあったのかな!

1時間足らずの作品のなかで、数分の「その一瞬」、美しい映像と歌で、とても記憶に残るものでした。

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