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「BAD LANDS バッド・ランズ」暴力に屈しない、圧巻の安藤サクラ!

尾道での「百円の恋」舞台挨拶で写真に写り込んでもらって以来の安藤サクラさんフアン。(笑)原田眞人監督との初タッグ作品ということで劇場に駆けつけました。(笑)

原作:直木賞作家・黒川博行の小説「勁草」(2015)、未読です。最近のオレオレ詐欺事件はこの作品を真似たのではないのかと思うのですが。監督・脚本・プロデュース:「ヘルドッグス」「関ヶ原」の原田眞人撮影:北信康、編集:原田遊人音楽:土屋玲子

出演者:安藤サクラ、山田涼介、生瀬勝久、吉原光夫、サリngROCK、天童よしみ江口のりこ、宇崎竜童、他。

物語は

大阪で特殊詐欺に手を染める橋岡煉梨(ネリ)と弟の矢代穣(ジョー)。ある夜、思いがけず3億円もの大金を手にしたことから、2人はさまざまな巨悪から狙われることとなるというクライムサスペンス。(映画COM)


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あらすじ&感想

冒頭、月曜日。オレオレ詐欺で賭け子がゲットしたお婆ちゃんが銀行から金を降ろし受け子に渡す作戦開始前、西成に所在するビリヤードBAD LANDSで、名簿屋で現場指揮官の高城(生瀬勝久)と受け子のリーダー・ネリ(安藤サクラ)が会話するシーンから物語がはじまる。西成の街を巫女さんが走っていた。

高城がネリに「耳悪いんか?」「出所した弟、本当の弟か?」と聞くと「左耳」「血は繋がってない!」と答える。ネリが女性であること、そして弟・ジョーのキャラクターが原作と異なることを示している「ネリの左耳が聞こえない、弟と血が繋がらない、なぜそう改変したか」が問われる作品となっている。

作戦開始でお婆ちゃんは賭け子の誘導で銀行に、ネリが銀行で確認して、受け子の教授(大場康正)の服装を確認して「ターゲット、受取額、受取地点」を示し誘導しながら、お婆ちゃんに監視員が付いていないかを確認。ネリは監視員がいることに気付き、教授にサインを送って作戦を中止した。

ネリは教授にご馳走して次の連絡用携帯を渡す。高城は掛け子のアジトを訪れ「新しいストーリーを作れ!」と気合をかける。一連のオレオレ詐欺を大阪ロケでテンポよく見せてくれます。

大阪府警は特殊詐欺調査に乗り出していた。班長の江田(江口のりこ)と刑事の佐竹(吉原光夫)はネリが現れたことを確認し、彼女に繋がるXを追うことにした。

ここでの安藤サクラの野球帽姿、関西弁、滑らかな身のこなし、男を寄せ付けない圧巻の受け子リーダーとしての佇まいをみる

 ネリはふれあい荘の住人から生活保護費を徴取する。しかし、幼いころ世話になった元ヤクザの曼陀羅(宇崎竜童)からは徴取しない。時に幻覚症状の発作を起こす曼陀羅の面倒を看ていた。

ネリは出所したばかりの弟ジョーと名簿作りのため、ひとり住まいの老人を尋ね預金や老人ホームの入会を案内する。ふたりのファッションがいい!

ジョーが「この仕事は儲けがなく辞めたい。高城を殺そうか」と言い出す。ネリとジョーにはどこか謎めいた感じがある。ジョーは殺気立ったサイコパスの雰囲気とともにネリへの幼い憧れのようなものがある。ふたりの関係がとてもいい。

オレオレ詐欺のシステムにはいろいろな人が絡む。政治家も絡んでいて、末端の取り分は小さいという。数でこなすか質でこなすかというオレオレ詐欺の犯罪実態を突きつけられる。

金曜日。ジョーが浅間兄弟と賭場に男たちを運ぶ仕事を受けた。いろいろな仕事がある。(笑)ネリは監視役で参加。ところが曼陀羅の発作でネリが席を外したところで、ジョーが博打に嵌り250万円もの資金を作った。その代償に帳付の林田(サリngROCK)から暗殺の仕事を負うことになった。林田はヘーゲル精神現象学を読むという才女、サリngROCKさんにその雰囲気がある!怖い人です。

土曜日。ジョーは浅間兄弟と一緒に大豪邸に賭け麻雀をする検事たちを襲った。ところが岡田准一という検事では相手にならず、殺人請け合いは不発に終わった。(笑)

ジョーは借金返済と姉のネリを救うため、浅間兄弟とカチコミすることにして高木の事務所に侵入した。そこにネリは訪れカチ合わせになった。高城はネリの父親だが、ネリは父親の暴力と借金のせいで母親と自分は売られ、母親が自殺するというどん底生活を思い出し、これを受け入れた。ジョーが刑務所に入ったもの暴力を振るう父親殺しの罪だった。この作品のテーマのひとつとして暴力的な男の支配から逃れて生きる生き方が描かれる。

高城の遺体を森の中に埋めたそして高城の遺産を整理する。沢山の預金通帳や株券、建物の権利書、これらに関わる印鑑。しかしこれだけでは金は受け取れない、暗唱番号が必要だった。

ネリは高城の帳簿管理をしていた曼陀羅を尋ね「高城を殺した。資産を受け取るために暗唱番号が必要だ」と訴えた。曼陀羅は「応援する!お前の誕生日だ」と教えた。そこに事務所のジョーから「ベンツを550万円で売却する話をつけた。事務所周辺にヤクザ男が徘徊している」と連絡してきた。曼陀羅は「24時間を経過したらやつらが押し寄せる。前の旦那に注意しろ!頑張れ!」と隠し持っていた拳銃を渡した。

ネリは事務所に戻りジョーに「曼陀羅は信用できる。資産は三分の一配分。明朝、難波のインターが開く。ベンツの金貰ったらトロ開始だ!」と告げた。

ジョーはネリの元旦那の投資家・胡屋(渕上泰史)に脅しの電話を入れた。胡屋は秘書からこの報告を受けて、秘書を激しく殴りつけた。ネリが胡屋と別れたのはこれが原因だった。耳が聞こえないのもそうかもしれない!

警察はXこと高城をマークして迫っていた。林田が「迷惑を掛けた、大阪を離れる!」と佐竹刑事に連絡した。これを契機に高城の居場所が明らかになってきた。林田も強かに生きていた。

ジョーがベンツを売り、林田に借金を返済した。林田は領収書の宛てが高城でないことに疑念を持った。

日曜日。ジョーが不在時、ネリは事務所でリュックに持ち出しものを詰め終わったところに、道具屋の新井ママ(天童よしみ)がヤクザを連れて「高城どないしとる!」とやってきた。ネリは「今はおらんがあす帰る」の一点張りで押し通すが、異変がバレた。ネリは特異なナイフで襲いかかつヤクザを倒し、リュックを持って逃げ出した。ネリはジョーに携帯で助けを求めた。駆けつけたジョーと曼陀羅に助けられた。

ビリヤードBAD LANDSにネリ、ジョー、曼陀羅が集った。ネリが「ここ、私がオーナーだ!」というと曼陀羅が「金には替えられないものがある。寿命が止まりかけている」という。目が覚めるとジョーがいない。ネリと曼陀羅は銀行で下ろせるだけの金を降ろし、別れた。そのあと、曼陀羅が亡くなった。

 警察は高城に辿りつき大喜び。新井ママも検挙された。

ネリは教授に権利書を与え、金を持たせた。

月曜日ジョーは胡屋のビットコイン投資法講演会場に駆けつけ、胡屋を射殺した。その警察に追われ射殺された。

林田がインドネシアで現金化できる。取引しよう」とネリのもとにやってきた。ネリは同意した。林田が「空港に送る」と申し出たのを断り、ある頼みをした。

ネリはジョーの手紙「東京で胡屋を殺す」を読んだ。ネリは月曜の巫女になって西成から脱出した。

まとめ:

詐欺師のネリは高城の資産を弱い立場の曼陀羅やジョー、林田の力を借りで西成を脱出し国外に逃亡するという結末。男たちの暴力で強いられた苦難の人生を“勁草”のように強く生きるネリ安藤サクラさんの演技に感動しました。

オレオレ詐欺が横行する社会の中にあっても、金には替えられないものがある。ネリとジョーの血の繋がらない姉弟であっても、強い絆が生きがいになる。そして曼陀羅とネリの絆にも。特にジョーの自己犠牲には泣かされる。こんなドロ臭いドラマは嫌いではない!

オレオレ詐欺をわかり易く描いたことに価値がある。しかし、クライムサスペンス、ノワール作品と期待した向きには不満な作品かもしれない。原田監督は「ヘルドッグス」ですでにこれを描いているのであえて人間くさい、役者でみせるクライムストーリーにしたのではないでしょうか。今という時代に求められるエンターテイメント作品。最後に林田を演じたサリngROCKさん。強烈な印象を残してくれました。

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