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「幸せなひとりぼっち」(2015)ひとりでは生きていけない!感謝してご近所に世話になればいい!

 

孤独な老人が隣人一家との触れあいを通して再生していく姿を描いたスウェーデン発のヒューマンドラマ。第89回アカデミー賞では外国語映画賞とメイクアップ&ヘアスタイリング賞にノミネートされた作品。わが国でもとても評判のよい作品。

本作のハリウッドリメイク作品トム・ハンクス主演作「オットーという男」(2022)を観てからの鑑賞です。結論を言うと、トム・ハンクスには申し訳ないが、圧倒的に本作が優れています

原作:世界的ベストセラーとなったフレドリック・バックマンの同名小説を映、未読です。

監督:ハンネス・ホルム、脚本:ハンネス・ホルム、撮影:ギョーラン・ハルベリ

出演者:ロルフ・ラスゴード、バハール・パルス、フィリップ・バーグ、イーダ・エングヴォル、カタリーナ・ラッソン、トビアス・アームボルグ、クラス・ウィルヘルガード、他。

物語は

愛する妻に先立たれ、悲しみに暮れる孤独な毎日を送っていた老人オーベ。そんなある日、隣の家にパルヴァネ一家が引っ越してくる。車のバック駐車や病院への送迎、娘たちの子守など、何かと問題を持ち込んでくるパルバネたちにうんざりするオーベだったが、次第に彼らに心を開くようになり、やがて妻との思い出を語りはじめる。(映画COM)


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あらすじ&感想

オーヴェ(ロルフ・ラスゴード)は1年半前に糟糠の妻ソーニャを亡くし孤独で、長年勤めた鉄道会社から厄介者のように解雇され、やることは妻の墓参と地区内をパトロールして駐車違反やゴミ清掃などを厳しく取り締まることだった。

これで住民からは嫌な男だと距離を置かれる。オーヴェには杓子定規で気が利かないところがある。

「もう嫌だ!」と居間で天井から紐を下ろして自殺を図るが、隣に引っ越してきたパルヴァネ(バハール・パルス)の大きな声が聞こえる。バックで車庫に入れられ姿を見て、首を吊ってはいられなくなり駆けつけた。オーヴェは車を趣味としている人物だから。

自殺をやり直そうとしていると、パルヴァネがお礼にと子供にペルシャ料理を持たせて寄こした。パルヴァネがペルシャ人でこういう近所付き合いをするところが面白い!日本もひと昔前はこうだった。

オーヴェは何回も自殺を図る。これがトム・ハンクス版と異なるところ。(笑)

隣に住むアニータ(カタリーナ・ラッソン)が「ヒーターがおかしいから見て!」といっても「空気を抜け!」と断わり、オーヴェは再々度天井から紐を吊るして自殺を図る。うまく紐が締まりオーヴェは父親と過ごした日々を思い出していたが、父親が電車に轢かれ亡くなったところで紐がきれ、未遂に終わった。(笑)

オーヴェはアニータのところにゴムホースを借りにきた。「3月に水撒き?」とアニータが聞く。オーヴェはリーターを修理をして、脳梗塞で直物人間になっているアイータの夫ルネに「お別れだ!ソーニャのところ行く」と伝えると、変な顔をする。(笑)

車庫に戻って4度目の自殺を図った。今度は車の排気ガスを使ったやつだった。今度はソーニャと出会って結婚するまでの夢だった。ところがパルヴァネが激しく車庫のドアを叩く音で目が覚めた。(笑)パルヴァネが臭い!と言った。彼女は何があったか分かった!ここがトム・ハンスス版にはない

ここでオーヴェが観た夢はとても素敵な二人の出会い、そしてプロポーズだった。列車の清掃員だったオーヴェは火災で家を亡くし清掃した列車で眠っていたら動き出し、起きたときにソーニャと出会い運賃を払ってもらった。その運賃を返そうとして3週間同時刻の列車に乗り続けやっと会えて、「軍人だ」と偽って食事をすることになった。食事のデートで彼は食べない。ソーニャが「何故食べないの?」と聞いた。「あなたに食べてもらうためだ!おれは軍人でない、列車の清掃員だ」と告白した。するとソーニャがキスを求めた!これには泣けた!トム・ハンクス版にない)

ソーニャの力添えでオーヴェは専門学校を卒業し、結婚した。ソーニャは教師を目指す大学生で、学生結婚だった。

パルヴァネが車庫のドアを叩いたのは怪我した夫を病院に運ぶためだった。オーヴェはこれを契機にパルヴァネの子供たちに童話を読み聞かせるようになった。オーヴェが童話を読むのは妻ソーニャの影響によるもの。

オーヴェは鉄道自殺を図るためホームに立って列車を待っていたが、先客があった。(笑)彼をお助けるためホームに降り、そのまま残るつもりだったが周りの人達に引き上げられた。

パルヴァネが「車の運転を教えて」と頼みにきた。これを引き受けた。休憩時間には喫茶店で彼女と話をした。隣のルネとの関係を話した。「子供は?」と聞かれ、答えなかった。パルヴァネ夫婦が外出するときには子供たちの面倒をみるようになった。パルヴァネに押し切られて捨て猫を飼うはめになった。(笑)

 オーヴェにソーニャの教え子・ジミー(クラス・ウィルヘルガード)が「彼女の自転車を修理して欲しい」と持ってきた。オーヴェは断るつもりだったが「ソーニャ先生ならやってくれる」というので受けた。自転車を修理してジミーのところに届けるとジミーがトランスジェンダーの子と一緒にいることを知った。

オーヴェのところに「鉄道自殺を救ったヒーローを取材したい」と女性記者のレーナが訪ねてきたが「バカもの!」と車庫に閉じ込めてた。(笑)そこにパルヴァネがやってきて「バカしないで!」と彼女を解放し、「家をかたずけさせて!」と提案した。オーヴェはソーニャの思い出に触らせたくないから断った。

さらに通りがかりの不動産屋が、オーヴェに駐車違反で責められた腹いせに、「お前のことは全部知っている。奥さんの事故を人のせいにして、あんたは甲斐性のない人間だ!」と侮った。これがオーヴェにはこたえた。

オーヴェは自宅に戻り、猟銃を持ち出し口に加え引き金を引いた。このとき呼び鈴が鳴り、弾が外れた。(笑)訪ねてきたのはジミーだった。「トランスジェンダーの子がカミングアウトして家主から追い出されたので泊めて欲しい」という。朝になるとジミーが食事を作って待っていた。

オーヴェがジミーと地区のパトロールをしていて、「アニータは反対なのにルネが施設に収容される」という話しを聞く。オーヴェがアニータに確認すると「不動産屋が役所と話をつけた。ソーニャに相談し、ここに居ると決め、居たい!」と話した。

オーヴェは不動産屋の資料を持ってパルヴァネのところの電話を借りて不動産屋に電話するが埒が明かない。見かねたパルヴァネが「周りはバカばかりだ、地球上で解決できるのは自分だけだと思っている。ひとりでは解決できない!帰ってよ」と言い出す。

オーヴェはソーニャの生き様を思い出していた

 オーヴェは身ごもったソーニャとスペイン旅行に出て、バスの墜落事故に遭い赤ちゃんを失うとともにソーニャが車椅子で生活する障害者になった。

希望の教職に就けにない、それでもソーニャは「今を必死に生きる!」と諦めなかった。

教員免許を持っていても学校の建物にスロープすらなく仕事に就けない。オーヴェはバス会社や旅行社、行政に訴えた。それでも出来ない、オーヴェは自分で木製スロープを作った。ソーニャが特殊学級の教師になり教えた子がジミーだった。この話も泣ける!

オーヴェはソーニャの勇気を貰い、記者のレーナの力を借りて不動産屋の資料を集め、住宅の皆が集まるなかで、不動産屋が不法営業を行っていることを暴いた。結果を知ったルネが笑顔を見せた。これに泣ける!

老後介護やトランスゼンダー、特殊学級の問題を描くというのはいかにスウエーデンらしい!

不動産屋との交渉が終ってオーヴェは持病の心臓発作で倒れた。介護してくれたのはパルヴァネだった。パルヴァネは「あなたは自殺が下手だ!」と笑った。これには驚いた。めんどくさいパルヴァネではなく、オーヴェを見張っていたんだ。近所のありがたさが分る。これこそがスウエーデンの介護のシステムかもしれない。

オーヴェはこの後、パルヴァネと一緒にパーテイを楽しみ旅行する仲になって行った。

雪の朝、オーヴェはパルヴァネに「葬儀をお願いだ、遺骨が空に撒いてくれ、参集者は俺を気にいったやつだけでいい(笑)」と書き残して亡くなった。墓の妻はどうなる?(笑)

まとめ

妻を失い、社交性のない、不器用なオーヴェがどう人生を全うするかと心配だった。隣にやってきためんどくさい女性だと思ったが、とても生きることに聡明なパルヴァネに出会い、そして何よりも妻ソーニャが残した愛と勇気に支えられ、人生を全うすることができた。

ひとりでは生きていけない!感謝してご近所に世話になればいいと教えてくれたとうに思う

トム・ハンク版に比して、こちらがいいと言ったのは、ソーニャとオーヴェの愛の生き様が実にうまく描かれていること。さらにソーニャとアニータやジミーの関係にも触れ、感情移入できる物語になっていたこと。

出演者の演技が、主役のロルフ・ラスゴードのいかつい演技が雰囲気をよく出していた。(笑)しかし、若い頃を演じたフィリップ・バーグとはあまりにも容姿、雰囲気が違うのでびっくり!(笑)でもユーモアたっぷりの作品だった。

アメリカとスウエーデンの介護に対する考え方の違いがでた作品のように思えた。泣けるだけでなくとても考えさせられる作品だった

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