映画って人生!

宮﨑あおいさんを応援します

「コヴェナント 約束の救出」(2024)友を見捨てないとガイ・リッチーが描くアフガン戦場描写の見事さ!

 

スナッチ」「シャーロック・ホームズ」シリーズのガイ・リッチー監督が、アフガニスタン問題とアフガン人通訳についてのドキュメンタリーに着想を得て撮りあげた社会派ドラマ

2021年8月21日、アメリカ軍がアフガニスタンから撤退することに伴い自衛隊機が救出に向かい邦人1名を救出したというニュースを覚えている。この米軍撤退に遡る3年前の米軍の状況が描かれる。

ガイ・リッチーのこれまでの作風、スタイリッシュで、ユーモアに満ちた痛快なクライムアクション作風とは異なる!という触れ込みに、いかなる作品に出来上がったかと、公開初日の劇場に掛け駆けつけました。なんと長い列が出来ている、それは「マッチング」狙いで、こちらはガラ空き!(笑)

生々しい戦場で咲いた米軍曹長と通訳の友情をリアルな戦場環境の中で、スタイリッシュに見せてくれ、なかなかのものでした。特に米国政府に“米国の信義”を問うテーマとしたことが良かった。

監督:ガイ・リッチー脚本:ガイ・リッチー アイバン・アトキンソン マーン・デイビス撮影:エド・ワイルド、美術:マーティン・ジョン、編集:ジェームズ・ハーバート、音楽:クリス・ベンステッド。

出演者ジェイク・ギレンホール、ダール・サリム、エミリー・ビーチャム、

ジョニー・リー・ミラー、アレクサンダー・ルドウィグ、アントニー・スター、ボビー・スコフィールド、ジェームズ・ネルソン・ジョイス、他。

物語は

2018年、アフガニスタンタリバンの武器や爆弾の隠し場所を探す部隊を率いる米軍曹長ジョン・キンリー(ジェイク・ギレンホール)は、優秀なアフガン人通訳アーメッド(ダール・サリム)を雇う。キンリーの部隊はタリバンの爆発物製造工場を突き止めるが、大量の兵を送り込まれキンリーとアーメッド以外は全滅してしまう。

キンリーも瀕死の重傷を負ったもののアーメッドに救出され、アメリカで待つ家族のもとへ無事帰還を果たす。

しかし自分を助けたためにアーメッドがタリバンに狙われていることを知ったキンリーは、彼を救うため再びアフガニスタンへ向かう。(映画CMより)

米軍は2001年9月11日のウサーマ・ビン・ラーディンによる同時多発テロに対抗すべく同年10月に1300人の兵士がアフガニスタンに進出。これが2011年には10万人、米軍に雇われたアフガニスタン通訳は5万人に及んだという。彼らはアメリカへの移住ビザが貰えると約束されていた。進駐から20年後、2021年多くの米軍協力のアフガニスタン通訳(数千人)を残して撤退した。物語がその3年前のタリバンのテロに苦しむ戦況下の物語


www.youtube.com

あらすじ&感想(ねたばれあり:注意)

冒頭、キンリー曹長の部隊が検問所でIED(即席爆破物)検問中に一両の車が突然爆破炎上、通訳が爆死するシーンからはじまる

キンリーは「頭に毛がないやつ」と数人の応募者のなかからアーメッドを通訳に選んだ。(笑)

隊の任務、タリバンの武器、爆薬物の隠し場所を暴くことを伝え、さっそくアーメッドを連れて、アヘン吸引所を捜索。アーメッドが状況をしっかり把握し的確に訳していることを確認した。

キンリーは諜報部からタリバン関係者ファラッシュの紹介を受け、バザールでごった返す路上で彼と接触し車に乗せて交渉。キンリーは「買値を上げろ」と指示するが、アーメッドはうまく交渉して、2か所のIED製造工場の位置情報を得た。基地に戻って、部下のデクソン軍曹(アレクサンダー・ルドウィグ)から「うまくやったのは彼がタリバンと組んで麻薬の仕事をしていたから。息子がタリバンに殺されて寝返った」と聞かされた。

キンリーはアーメッドを呼び「勝手なことをするな」と注意すると「貴方の目的に叶うからそうした、謝る」という。アーメッドの仕事は通訳だけでなく何をなすべきかを知っていた。キンリーは「ありがとう」と感謝した。

会話は少ないが、これでふたりが心を交わしていくところが本作の醍醐味

 30km先の工場を第1の目標にして捜索に出発

もうひとりの通訳ハディが悪路だからと進路変更を言い出す。これにアーメッドがおかしいと言い出す。キンリーは車を止めて、ドローンで偵察開始。

ハディとアーメッドの殴り合いの喧嘩が始まった。キンリーが止めに入った。8km先にタリバン兵を発見、キンリーは基地へ帰ることにした。ハディは家族がタリバンに捉われていたことが判明。アーメッドは高い戦術判断能力を持ち、遠慮なくキンリーを補佐する

その夜、キンリーはロサンゼルスの家族、妻のキャロライン(エミリー・ビーチャム)とふたりの子供にオンラインで話をする。戦場から家族に電話する時代なんですね!妻が「早く帰って!」という。キンリーは任務達成という他に“無事に帰る”ことが何よりも大切なことだった。

一方のアーメッドは妻のところに帰宅していた。妻は妊娠しており、タリバンに監視されているのが怖いという。アーメッドは何よりも妻を安全にしてやりたいという願いがあった。

キンリーとアーメッドは米軍曹長と通訳の関係で結ばれている他に、家族を守ることで結ばれていた。この関係を見過ごすことはできない。

2の目標は100km先の工場

険しい山岳路、荒廃した原野、河床地の通過を必要とし、所属部隊トップのヴォークス大佐(ジョニー・リー・ミラー)にヘリを要請したが断られた。車両と武器、金をたっぷり与えられた。(笑)

厳しい地形を踏破して目的地に着いた鉱山の跡地のようなところだった。30分かかる航空支援を要請、アーメッドを残して隊は施設の捜索に入った。

施設の人物を尋問すると「あっちだ!」という。細い鉄橋を渡った先に急ぐ。

施設の地下坑道でIEDを発見。激しい撃ち合いになった。タリバン本部から増援部隊が戦闘加入してきた。キンリー隊は全滅!工場は大音響とともに爆破炎上した。

キンリーはアーメッドの運転でタリバンピックアップトラックで逃亡。これを追ってくるタリバンとのカーチェイスタリバンが「生け捕りにする」と追ってくる。ふたりは逃げ切った

この戦闘シーンは鉄橋の通過、タリバンの増援と迫撃砲射撃、友軍のヘリ攻撃などと、見せ場の多いスリリングな戦闘シーンで、見事だった

夕暮れの中で、部下を失ったキンリーはしょんぼりと腰を下ろしていた。それをじっとアーメッドが見ていた。ここで寝ることにした。

朝起きるとタリバンの捜索が始まっていた

キンリーとアーメッドがバディとなってタリバンと戦いながら脱出を図る。接近する敵兵をふたりで刺し殺して、急峻な坂を転げながら逃げた深い渓谷の中をふたりが協力しながら、接近戦で相手を倒し逃げる。

無人小屋で一泊。タリパンの無線をアーメッドが聞く。敵は近い!小屋を出たところでキンリーが脚を打たれタリバンに捕獲された。銃床で頭をぶん殴られ引き回される。意識を失っているとことにアーメッドが拳銃(キンリーが貸し与えもの)をぶっ放してタリバンを皆殺しにしてキンリーを救出した

アーメッドが廃材を集めてソリを作成、これで空軍基地を目指す

敵に隠れての移動、悪路ばかりだ。アーメッドが食べさせ、ふたりで毛布にくるまりキンリーの体を温める。

途中で車を買う

検問に出会うが、アーメッドひとりで戦う。住民の群れに出会い、痛み止めと車を交換した。そこにタリバンが現れた。住民たちが「逃げなさい!」と車力をくれた。

車力を押すアーメッド。山道に疲れ果てて、天を仰ぐ

しかし諦めなかった。キンリーもかすかな記憶として残っていた。痛がるキンリーにアヘンを吸わせる。

空軍基地が見える丘までやってきた。店で水を買い、キンリーに飲ませ、自分が飲んだ。ほっとしたところに水を買いにタリバンが現れた。あわや・・。そこに基地から救援隊が駆けつけた。(笑)

4週間後、キンリーはロサンゼルスの病院で目覚めた

「100km這って帰ってきた。勲章だ」と言われ、「勲章はアーメッドにやって欲しい」というと「アーメッドの弟が言うには、彼は受け取らない、タリバンに追われ、消えた」という。

ここからキンリーの苦しみが始まった

キンリーはアーメッドを救うために移民局に電話するが取り合ってもらえない。キンリーの怒りが爆発した。ヴォークス大佐に電話すると9カ月後だと言われ、「待てない」と返事した。

毎晩キンリーはアーメッドと過ごした記憶を思い出し、「何故助けないのか」と悩み眠れない。

妻のキャロラインが「貴方が死んだと言われたときは苦しんだ。あの人には奥さんがいる。アーメッドはあなたの命の恩人、行きなさい!必ず帰って!」とキンリーを後押しした。

キンリーはヴォークス大佐に会い「貴方に貸した借り(8年前に命を救った)を返して欲しい。旅券と軍の協力だ。アフガニスタンに単独で行きアーメッドを米国に脱出させる」と告げた。

キンリーがアフガニスタンに戻ってきた

民間航空機会社のパーカー(アントニー・スター)に予約のヘリを確認すると「今は無理だ」と言われ、車でアーメッドの弟に会うことにした。パーカーには救出時のヘリ輸送と軍への要請を依頼した。

アーメッドはタリバンに発見され、弟のトラックで別の隠れ家に移動していた。キンリーは弟に会い、弟と一緒に隠れ家を尋ね、トラックで脱出した。しかし、タリバンに発見され、ダム湖の堰堤に逃げ込み、狭いところでタリバンと対峙し、軍の支援を待つことにした。

激しい銃撃戦。もはやダメかと思われたところに武装のC-130が現れた

まとめ

ラストシーンは空軍基地から飛び立つC-130の中で、アーメッドがビザを確認しキンリーに笑みを送るシーンで終る。そして、エンデイングで「300人以上の通訳とその家族が殺害され、今なお数千人が身を隠している」という字幕が現れる

アメリカの信義に対する強烈なメッセージとなっている

ドキュメンタリーにインスパイアされたガイ・リッチー。丁寧に多くのエピソードを集めリアルなストーリーを作り上げたという。キンリーとアーメッドに焦点を当てふたりの絆が、戦場を通して、シンプルに描かれていた。通訳の役割が如何に重要であったかが分かる。

ストーリーは3つのエピソード、米軍によるタリバンの隠匿武器の摘出作戦、戦場からの脱出、アーメッド救出のための作戦からなり、ふたりが生きて再会することが分かっているからハラハラドキドキ感は薄いが、バディで行動するふたりが真の友情になっていく過程が詳細に描かれていて感動した

戦場シーンをスペインロケで撮っているが、これがアフガニスタンの風景によく似ていて、戦闘アクションによく馴染み、見所のある戦闘シーンになっている。ドローンを使った空撮がスケール感を醸してよかった。

              ****