政治家一族の孫娘誘拐事件の行方を描いた社会派サスペンス。予告編が茶番に見えて、公開時劇場では観なかった。WOWOWで公開されたので鑑賞。
まるで今日の日本の政治実態を見せられたような作品だった。が、作品は犯罪劇の形をとって終るが、設定に無理矢理感がある。これでは折角描いた日本の政治実態が薄れて見える。自民党は嫌がるだろうが、B’z。の主題歌を生かすためにも、政治の闇を徹底的に暴いて欲しかった。
原作：人気作家・真保裕一の同名小説。未読です。監督：「アイ・アム まきもと」「謝罪の王様」の水田伸生、脚本：久松真一、撮影：中山光一、編集：和田剛、音楽：平野義久、主題歌：B’z。
出演者：中島健人、堤真一、池田エライザ、山崎育三郎、中島、歩美波、浅利陽介、尾野真千子、角野卓造、金田明夫、他
物語は、
政治家一族である宇田家の次男・晄司（中島健人）は建築会社を設立したものの倒産し、政治スキャンダルの渦中にいる国会議員の父・清治郎（堤真一）の秘書を務めながら煮え切らない日々を過ごしていた。そんなある日、宇田家の長女・麻由美（池田エライザ）の幼い娘・柚葉（佐藤恋和）が誘拐されてしまう。
犯人の要求は身代金ではなく、翌日の午後5時までに記者会見を開いて清治郎が犯した「罪」を告白しろというものだった。それは国家を揺るがすほどの罪で、権力に固執する清治郎は口を開こうとしない。晄司は家族の命を救うため、罪に隠された真相を暴くべく立ちあがるが……。（映画COMより）
あらすじ＆感想：
宇田一家は国会議員で内閣府副大臣の宇田清治郎、長男・陽一郎（中島歩）は埼玉県議、次男・洸司は清治朗の秘書、長女・麻由美の夫・緒形恒之（浅利陽介）は戸畑市議という政治家一家。清治朗は真由美に身の周りを見てもらい、その孫の柚葉は目に入れても痛くない。
こんな一家の朝の出勤風景から物語が始める。
国会出勤途上の上荒川周辺には手書きの「建設反対」「住民激怒地域」の看板が立ち並ぶ。
国会では3年前上荒川地区に新設される予定であった橋が南に５ｋｍ離れた戸畑地区に変更になった“上荒川大橋談合事案”で、「夏川総理が関与した」と野党から激しく追及されるが、「その事実はない！」と内閣府副大臣の清治朗が否定して総理を庇う。
記者の神谷美咲（美波）が「5年前の“秋ヶ瀬遊水地拡張工事談合事件”でも夏川が関与したとみたが追求できず、今回も逃げる」と激しい怒りを見せる。
国会からの帰途、派閥の長・九條から「次の改造で通産大臣を考える」の電話が入る。同乗の秘書たちが大喜びする（総理は「これで清治朗の口は塞げた」と安堵していた）。洸司が父に「上荒川大橋のことは本当ですか？」と聞くと「それがどうした」と返ってきた。
このころ緒形恒之選挙事務所で働く麻由美は「帰ります」と事務員に挨拶して柚葉を自転車に乗せて帰る途中、人気のないところで、追い越しを掛けた後続車に押し倒されて失神、柚葉が誘拐された。
目覚めた真由美が事件を警察に知らせた。県警捜査1課が「宇田清治朗の娘からだ」と動き出す。“正義を守る会“が「宇田の孫娘を預かる。全通信手段を遮断することを許さない」と連絡してきた。
帰途の車の中で洸司のスマホに送られてきた拘束された柚葉の写真を見た。写真を清治朗も確認した。
清治朗は選挙事務所に帰り地元秘書に2億円の準備を命じた、県警1課の刑事・平尾（山崎育三郎）が駆けつけた。そこに犯人から脅迫状「金ではない！明日午後5時までに記者会見を開き、お前の罪を白状しろ！」が送られてきた。
記者会見まで22時間！
清治朗が自宅に戻ると、麻由美が「父さん助けて！」と土下座して頼むが清治朗の答えは「注意しろ！」と素気ないものだった。
政次郎は秘書から耳打ちされ、直ぐに木原秘書官（矢柴俊博）に指揮権発動要請を指示し、議員事務所に戻った。
清治朗が所属する九條派では「指揮権発動を求めているが、夏川総理が危なくなる。法務大臣が認めるわけがない」と清治朗の説得を試みる。清治朗は「総理を守ってきた。記者会見をする。孫娘を助けるために指揮権発動が必要だと官房長官に伝えてくれ」と応じた。
予定している捜査1課の会見に、刑事部参事官が「宇田を総理周辺がどう考えるかだ」と中止をほのめかした。平尾は「女の子の命が掛かっている」と激怒した。
記者会見まで12時間。麻由美に精神攪乱症状が出て来た。
清治朗が「内閣官房長官に会う」と洸司を連れて出かける。長男の洋一郎が「私も」と同行を求めたが断った。
清治朗は「指揮権発動なくば記者会見で不正を暴く」と指揮権発動を求めた。官房長官は「離党では済まない、上荒川大橋の件はどうする？」と問う。清治朗が「指揮権発動次第だ」と答えた。官房長は「総理に伝える」と約束した。清治朗は「責任は全て自分が負う。が、総理に“私の後継は宇田家が継続する”と伝えて欲しい」と要求した。
洸司は秘書官から「後援会会長に相談してみたら」と促がされた。洸司が後援会長に会い「宇田先生は戸畑市青少年研修センター移設の件で若鷺衆議院議員と対立している」と教わった。
清治朗は上荒川地区の研修センターを戸畑市に移し総合施設を作り、研修センターの跡地に競艇施設を持ってくるとして、研修センターの建設会社と繋がりのある若鷺議員と対立関係にあった。
清治朗は県警の聴取に、研修センターの建設会社として上荒川大橋を建設した会社が陳情してきたが県が決めることだと述べ、上荒川大橋の件については答えなかった。
記者会見まで19分。
夏川総理から「後継者の件は約束する。指揮権発動は法務大臣が結論を出せない」と伝えてきた。
記者会見。
清治朗は「幹事長に離党届を出し受理された」と明かし、上荒川大橋建設会社が福島県の駐車場建設で談合事件に関与した罪を認めたが上荒川大橋の件については答えなかった。記者たちから大きな批判を浴びた。
洸司は「これでは柚葉は救えない」と悔やんだ。議員事務所に平尾刑事がきて「“秋ヶ瀬遊水地拡張工事談合事件”のとき捜査を止められた。止めたのは宇田議員だと思っている。政治家は人の欲望で動かされ、いつか自分の欲望になる。貴方は何故政治家の秘書にンあった？」と聞く。洸司は「会社経営の力がなかった」と答えた。
そこに“正義を守る会“から「午後10時までに再度会見を開いて罪を告白せよ、娘の命はない」と通告してきた。
洸司が兄に「誰から情報が漏れたのか」と怒りをぶつける。秘書から「上荒川大橋の件が漏れたとき国交省の山本がいた」という。洸司は国交省に走り山本を捕まえ「誰が指示し、誰が漏らしたか」を激しく責めた。
洸司は木美塚幹事長（角野卓造）を尋ね「若鷺議員が野党に情報を渡したのは貴方の指示、夏川総理に対する離反です！」と詰め寄った。幹事長は「私にどうしろと言うのか？」と問う。「指示したことを認めないで欲しい。黙っていれば黒も白になる」と答えた。
そこに総理から「宇田君と話したいから電話をくれ」と電話が入る。幹事長が「すぐ連絡した方がいい」と言うが、洸司は「まもなく総理を下りる方より未来の総理になる人が大事だ」と言い、総理の電話を無視した。これに幹事長は「言うなお前は！」と答えた。
若鷺議員が「党のため、貴方のため会見を止めて欲しい」とやってきたが、洸司が父に「総理は宇田家を切り捨てた」と伝えた。清治朗は「よくやった」と褒めた。清治朗は
洸司の才能を見抜いていた。
第2回目の記者会見。
清治朗は上荒川大橋の件、夏川総理の知人の依頼で国交昌に交渉し便宜を図ったと告白した。幹事長はこの状況をTVで観て微笑んだ。
“正義を守る会“から「日の出緑地を捜せ！」と伝えてきた。捜索の結果、柚葉は言葉障害がある状況で発見された。
洸司は上荒川地区が橋の建設が変更になって以降、全く開発されてない状況に気付き、平尾刑事と図り、3回目の記者会見を開いた。
第3回目の記者会談。
清治朗が「衆議院議員を辞職する。県議の長男・陽一郎と尾形市議により競艇場と研修センターの建設に全力を尽くす。研修センター付近の地盤が弱く競艇場にふさわしくないという噂があるので第3者機関で調査をする」と発表した。この会見には記者から「何のための会見か」と不評を買った。
調査を開始。夜間、付近を赤外線暗視スコープで監視をつづけた。
すると、緒形県議選挙事務所の事務員・寺中初美（尾野真千子）と弟が父親の遺体を発掘する現場を取り押さえた。初美の父親は上荒川大橋の建設で事業が拡大すると読み工場を大きくしたが、橋の中止で莫大な借金を抱えた。父親は気が狂い、姉弟とつかみ合いの喧嘩となり、死亡。父親をここに埋葬したが、地質調査でバレることを恐れての行動だった。
宇田清治朗衆議院議員脅迫事件は解決した。
清治朗は洸司に「会社を倒産させたのは自分だ。跡を継がせたかった」と告白した。洸司は父親の跡を継いで国会議員となった。
まとめ：
宇田衆議院議員が迫害状に応える形で政治的罪を認め議員を辞職。秘書の洸司が迫害状差出人の寺中姉弟を炙り出し、警察署で寺中の姉とすれ違い様に「私たちの人生を変えたのは誰か？」と投げられた言葉で、洸司は国会議員となり、かって父清治郎を陥れた元幹事長で現総理の木実塚に「経済について質問する」と投げつけて終るドラマ。
政治一家の中で次男洸司の成長、政治手腕のすばらしさを描いた作品だが、一家の世襲というのが嫌だった。洸司が議員となり総理の木実塚を経済問題で追及するが、政治改革を追求すべきだと不満だった。
しかし、政治劇としては面白かった！
肝心の3施設に関わる談合話がややこしくて困った！「企業との関係が掴み切れない、何とかしてくれ！」という感じだった。(笑)
洸司が地盤調査で寺中姉弟を追い詰め犯罪ドラマで終ったが、この設定が大甘で無理矢理感一杯、これをさらりと描いて、政治ドラマで終った方がよかったと思った。
この点、「もしも徳川家康が総理大臣になったら」は政治改革を訴えていてよかった。
罪を感じ議員を辞職する清治朗こと堤さんの演技、潔さを感じ爽やかでよかった。洸司役中島健人さんの若くて正義感があり、政治取引に長けた野心がみえる演技も良い。さら池田エライザさんの母親役、これもよかった。が、皮肉なことに演技では角野卓造さん演じる木美塚幹事長が見栄えする。(笑)尾野真千子さんの役？びっくりしました。(笑)
国民生活とは全く関係ないところで繰り広げられる公共事業に絡む政治家と企業の癒着、自民党内の権力闘争。リアルで面白く観ました。が、もっと暴いて欲しい！今の日本ではこれが限界なんですかね！
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