青春ミステリーと銘打ったこの作品、過去と現在、そしてトリックを読み解く楽しみがあります。小説は読んでいませんが、かなり違っている部分もあるようですが、映画として面白いです。
監督 | 行定勲 |
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脚本 | 蓬莱竜太 |
原作 | 加藤シゲアキ |
製作 | 井上文雄 片山宣 千綿英久 小川真司 |
製作総指揮 | 井上伸一郎 長澤修一 |
出演者 | 中島裕翔 菅田将暉 夏帆 |
音楽 | 半野喜弘 |
主題歌 | ASIAN KUNG-FU GENERATION「Right Now」 |
撮影 | 今井孝博 |
編集 | 今井剛 |
コピーにある「62分後の衝撃」という仕掛けの面白さもありますが、テーマとしての”青春とは何か”ということもしっかり描かれていて、監督が、年配の人にも見て欲しいというのも頷けます。
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ストーリーを紹介しておきますと、
映画冒頭での、ある女性のコンテンポラリーダンス場面とこれにリンクする形で男性が首に紐を掛け、ダンサーが階段を駆け上がり落下すると、男は脚立を蹴って首をつり、そこにやってきた別の男がこの死体を発見。その後、この男が大勢の報道陣に取り囲まれているシーンから一気に、この男の生い立ちが描かれ始めます。ここからは、自殺をした男鈴木信吾(芸名白木蓮吾)と発見した男河鳥大貴の話が始まり、画面はカラーで描かれています。
二人は、幼馴染の少女サリーとの三角関係で初恋を経験、中学生になるとき彼女は転向して行った。高校に入るとバンドをやりはじめ、信吾は姉(前述のダンサー)のダンス曲にと「ファレノプシス」というタイトルの曲を作ります。ダンサーは彼の姉で、彼は彼女に惹かれていきます。
そして雑誌の読者モデルをきっかけにバイト替わりの芸能活動をスタート。ここで偶然にもサリー(夏帆)と再会を果たします。
大学へ進学した二人は同居生活を始め芸能界に入り俳優になりますが、人気スターへの階段を駆け上った信吾「蓮吾」に対し、エキストラから抜け出せず大貴だけが取り残され、くやしさを癒すためにサリーを犯し自分の女にします。
やがて二人は決別、数年後同窓会で再会、昔の関係に戻ったように飲み歩き、泥酔します。蓮吾はサリーを可愛がってやって欲しいと言い、「スターになりたかったらおれの部屋に来い」と誘い、大貴が翌日部屋にいくと、彼は6通の遺書を残して自殺しており、驚きのショックで泣き叫ぶところで「はい、カット」の声がかかります。(ここで冒頭の映像に戻っている)
ここから状況は一転、これが「62分後の衝撃」と言われる大どんでん返しです。「はい、カット」と言って“ある人物”が出てきて、これまで観ていた映像は「劇中劇の映画だ」ということに気付きます。
これまでのカラーの映像がここからはモノクロに変わります。タイトルの「ピンクとグレー」が表しているのは、カラーの映像が劇中劇シーン、モノクロ風のグレーの映像が実際に起こったことという意味ですが、虚実が入り乱れる芸能界という独特の世界の暗喩なのかなとも思えます。
ここからは、白木蓮吾になりすました河島大貴の苦悩が描かれます。
映画化の話がくると自らが白木蓮吾役を演じたいという。俳優となった大貴は、女優と密会していたことをスクープされ、週刊誌にキス写真が乗り恋人サリーには逃げられ、自暴自棄になったり、性格の悪い遊び人俳優に暴行をはたらきケガを負わせて仕事も失い、絶望のなかでしばしば蓮吾の亡霊に出会うようになります。
蓮吾の母親から、作品のなかにひとつ間違いがあると、1本のビデオテープを預かります。ビデオには、蓮吾の姉は舞台中に自殺することをほのめかしており、姉の死が事故ではなく、蓮吾の死は実の姉への純粋な愛が引き起こした後追い自殺であったことを知ります。大貴は、蓮吾が自殺したマンションへ向かい蓮吾と同じように首吊り自殺を図るが縄がほどけて失敗、亡くなったはずの蓮吾の幻影に出会い、自殺を戒められます。
蓮吾になりすました大貴の行動が、劇中映画のなかの映像とだぶらせて描かれ、蓮吾とまったく同じ道をたどっていることが分って面白いです。
ラストの白木蓮吾の大ポスターに向けて「しょーもな」とはき捨てる大貴のつぶやきに作品のテーマが込められています。
この映画の面白さは、前段劇中劇のなかの俳優が後半の実世界のキャストにスライドしていることです。菅田さんと夏帆さんの役がなんであったか、どうスライドされたかが分れば、トリックの謎は全部解けます。
若い俳優さんたちの熱演がすばらしいです。そのなかでも、菅田将暉さんの前半の演技の上手さが光っており、またサリーを演じる夏帆さん、前半では映画「天然コケッコー」を再現する可愛い中学生で、後半の外見も内面もガラリと変わる・・・役は見ものです。
青春時代の、友への憧れ、嫉妬、そして後悔、痛みを感じる作品でした。
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